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フィルムからデジタルへ…「平成ガメラ」シリーズへの道をふりかえる“樋口真嗣”の特別講演

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デジタルコンテンツ博覧会NAGOYAで映画監督の樋口真嗣氏が「特殊効果の転換点 オプチカルエフェクトからデジタルエフェクトへ」と題した講演を行い、フィルムからデジタルへの流れをVFXの観点からふり返りました。

樋口監督は1994年に登場したフィルムレコーダーがブレイクスルーとなり、デジタル処理が多用されるようになったと指摘して、自身が特技監督を務めた映画『ガメラ 大怪獣空中決戦』は過去の特撮技術とデジタル処理があわさった、集大成的な作品になったと位置づけました。

映画は発明以来、約100年間にわたってフィルムで撮影・流通・上映されてきました。今ではほとんど見られなくなりましたが、映画はかつて複数のロール缶に収納され、人力で搬送されていました。学生時代に搬送のアルバイトの経験もある樋口氏は、かなりの重労働に「長編映画は恨めしかった」と言います。

一方で銀塩フィルムの「暗い部分から明るい順に感光する」特性を活かして、二重露光やマスク処理といった特殊技術が発明されました。ただし一度撮影すると再利用できないため、手間とコストがかかりました。モノクロがカラーになり、モノラルがステレオになり、スタンダードサイズがシネスコになっても、映画の撮影・流通・上映は35ミリのフィルムが使われていたのです。

この呪縛を解き放ったのがデジタル技術です。画像をデジタルデータに変換して処理すれば、より多彩な表現が可能になるし、理論上劣化がありません。しかし撮影と上映は依然としてフィルムなので、フィルムとデジタルデータの変換がネックになります。デジタルで記録できる情報量も乏しく、膨大なデータを処理するためのインフラも必要でした。

これが1990年代から約20年かけて、ようやく実用レベルになってきたのです。きっっけは1980年代にテレビから始まりました。CM制作をきっかけにビデオ用のデジタル編集機「ハリー」が使用されるようになりました。

そして端境期のあだ花ともいえる「アナログハイビジョン」が導入され、特殊効果に使用され始めます。多重合成が困難で、画質もフィルムに劣りましたが、イメージシーンなどで限定的に使用されました。『ハイビジョンSFX西遊記』(1988)、『帝都物語』(1988)、『ゴジラVSモスラ』(1992)、『水の旅人』(1993)などです。

「ではアナログハイビジョンではない、本来の意味での『デジタル処理』が行われた最初の映画は何だったのでしょうか?」と、ここで樋口氏は問いかけました。いろいろと調査をした結果、どうも『ほしをつぐもの』(1990)らしいという結論にたどり着いたと言います(ただし異論もあるとのことで、継続調査が必要とのことでした)。北野武氏演じる「山の人」の顔が、一瞬だけモーフィングするシーンで使用されました。

ちなみに当時使用されたのがクォンテル社のペイントボックスという機材。電子的な絵筆で静止画を描き、フロッピーディスクに保存できるほか、テレビカメラで撮影した画像にはめ込むこともできます。編機メーカーの島精機が試験的に導入したのを借りて、樋口氏自らが作業をしたそうです。他に『大病人』(1993)の臨死体験シチュエーションでも前述のハリーが使用されています。

ただし、最大のネックは以前残されていました。デジタル処理で作成した画像を、どのようにフィルムに出力するかという問題です。これが解消したのが1994年に登場したフィルムレコーダー(Solitaire Cine II)でした。これによりデジタルデータを直接、フィルムに記録できるようになったのです(同時期にフィルムをデジタルデータ化するスキャナも登場しました)。

これ以降、デジタルエフェクトを活用した映画が急速に増えていきます。東宝の『ヤマトタケル』(1994)に対抗して、東映もコダックが1993年に開発した入出力一環システムのCineonを導入、『ノストラダムス 戦慄の啓次』(1994)、『河童』(1994)などの作品が製作されます。

こうしたデジタル技術を積極的に活用した最右翼として、樋口氏は篠田正浩監督をあげました。すでに60歳を越え、押しも押されぬ大家となっていた篠田監督ですが、最新技術を用いて新しい映像表現に取り組んでいきます。

『写楽』(1995)ではモーションコントロールカメラで撮影した素材をデジタル合成する、エキストラの数をCGで増やす、3DCGで江戸の街並みを再現するなどに挑戦します。「今では大河ドラマでもやっているようなことだけど、この当時は前衛的だった」(樋口氏)。その後も『梟の城』(1999)、『スパイゾルゲ』(2003)でデジタル化を推進する一翼を担っていきます。

こうしたノウハウの集大成が、樋口氏が特技監督を務めた『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)につながりました。もっとも、第一作では予算的に厳しかったのでデジタル処理は限定的で、フィルム時代の特撮技術もふんだんに使用されています。会場では実際に映像を上映しながら、解説が行われました。もっとも、こうしたシーンもシリーズが続くにつれ、デジタル処理の比重が増していきます。

・ガメラの吐く火球→デジタル処理
・ギャオスの吐く超音波メスによる空間の歪み表現→デジタル処理
・ガメラが街を歩くシーンの遠景→固定マスクのフィルム合成
・ガメラが回転飛翔するシーン→3DCGと煙素材をロケ撮影した素材にデジタル合成
・地対空ミサイル→3DCGをオプチカル合成・3DCGのミサイルを実景素材にデジタル合成
・ガメラとギャオスの空中戦→モーションコントロールカメラで撮影した素材をフィルム合成

最後に樋口氏は最新作『寄生獣』のデジタル処理について触れ、「日本映画で今、できることの集大成になっている」と話しました。もっとも樋口氏はデジタル処理が万能だと考えているわけではなく、自分のやりたい表現に対して現実的な手段で当てはめていった結果、デジタル処理を選択しているにすぎないといいます。常に固定概念から自由になろうと努力を続ける日々だと語り、講演を締めくくりました。
《小野憲史》

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