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【RETRO51】『たけしの挑戦状』に見た北野映画とクソゲーの源流

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【RETRO51】『たけしの挑戦状』に見た北野映画とクソゲーの源流
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SUDA51とレトロゲームを探訪する連載企画「RETRO51」。前回に引き続きグラスホッパー・マニファクチュアのオフィスで須田氏厳選のファミコンタイトルを遊びました。

『ミシシッピー殺人事件』に引き続き、今回のお題もクソゲーとして名高い『たけしの挑戦状』。もはや説明の必要すらない「キングオブザクソゲー」とでもいうべき存在です。1986年にタイトーから発売された本作は、ビートたけしの人気やファミコンブームが手伝って 大きくヒットを飛ばしています。しかしながら、その内容は荒唐無稽。2Dアクションアドベンチャーを基本としながらも、自由に通行人を殴ったり、パチンコやカラオケに興じたり、脱サラしたり、離婚したり......。

近年ではこの自由度の高さと斬新なアイデアから再評価され、2007年には東京ゲームショウの「レトロゲーム・アワード2007」で「ゲーム秘宝館・殿堂入りゲーム」となりました。また2009年3月31日には、Wiiのバーチャルコンソールで配信が開始。

この伝説のクソゲーにいかに切り込むか。ほぼ初プレイという須田氏には、再びぶっつけ本番で遊んでもらいました。理不尽な内容に苦戦しつつも、SUDA51が『たけしの挑戦状』の中に見たものは何か。存分に語ってもらいました。

まるでGTAのよう......混沌とした80年代日本のオープンワールド



須田:
これ、最初からどうしたら良いのかわからないですが......

――スタートとコンティニューもキャラクターの移動で決定する形式です。

須田:
コンティニューのところ来ちゃったけど、これは何をすればいいのかな。

――当時はまだセーブ機能がロムに内蔵されていないので、パスワード形式です。

須田:
あれ「なぐる」っていう選択肢が。あ、ゲームオーバー。すごいなー、スタート前からもう死んだ(笑)。次は普通にスタートして見ます。いきなり会社からで社長と話してみます。この「愛人」の書は有名ですね。

――社長からボーナスもらって、さらに退職金がもらえますね。

須田:
もう一回社長と話すと辞められるのか。辞表を出すとまた金くれた。良い社長じゃないですか!

――さすがバブル期ですね。脱サラすればいいじゃんみたいな(笑)。その社長もぶん殴れるんですか?

須田:
あ、殴れた。机の中にめり込みました(笑)。社長の下半身のグラフィックスがないようですね。外はチンピラがあふれています。



――2D横画面で描かれる商店街は味があって良いですね。

須田:
看板なんかもいいですよね。日本語の文字がフォントではなくドットで打たれています。「かもめ座」、「やくざ対やくざ」、東映映画みたい。

――これは何ですか?カルチャークラブ?

須田:
カルチャーセンターの走りのようですね。当時はこういった習い事が流行っていたのでしょう。

――当時の社会風俗をゲーム内で登場させるのが斬新ですね。

須田:
ジャズダンス、ポリネシアン......いろいろありますね。とりあえず外に出ますか。

――これまたネタ臭い看板が「パチンコ玉玉デル」(笑)。

須田:
これはビートたけしさんがいかにも言いそうなネタですね。

――パチンコ屋は実際に遊べます。デジパチではなくて懐かしいですね。

須田:
打つ強さによっていちおう軌道が変わりますね。

――これも当時の世相を反映していますね。サラリーマンといえばパチンコ。しかし、ぜんぜん入んないですね(笑)。

須田:
入んないですね(笑)。しかし、この街は完全にGTAですね。チンピラだらけだし、自由に殴ることができます。ここからどうしたらいいんですか?

――とりあえず、スナックを目指しましょう。スナックで会社をクビになった憂さ晴らしをする。まさに当時のサラリーマンの目線で行動します。

須田:
このあたりは危険な地域ですね。荒川土手の河川敷でしょうね。いかにも北野映画に出てきそう。あ、新成田空港まで歩いて来てしまいましたね。ちょっとまだ早いので戻りますか。

――下町っぽい場所はいかにもガラが悪いですね。



――ここにクラブとスナックがありますね。

須田:
では入りますか。クラブといってもお酒を飲む方のクラブですからね。水割り、オンザロック、ブランデー。

――お金払えるんですか(笑)?

須田:
払えるのかな。お金はどこにも表示されてない。どうしたらいいんだろうか。ガンガン飲んでいいんですか?

――飲みまくるとぶっ倒れるらしいですよ(笑)。

須田:
おお!気づいたら家にいた。これ妻から何か言われていますね。離婚してくれか、慰謝料払うか、なぐる(笑)。これどっちですかね。

――慰謝料が正解のようです。

須田:
これガキどもですか?攻撃してきますよ。おい、このやろう!

――殺伐とした家庭ですね(笑)。

須田:
しかし、本当にチンピラが多いな。倒しても経験値とか入らないのキツい。あああああああああ!!



――やられてしまいましたね。回復する場所がないと厳しいです。

北野映画の源流としての『たけしの挑戦状』



『ミシシッピー殺人事件』と同様、ぶっつけ本番でプレイするのは無謀でした。今ではメジャーになった本作。攻略サイトなどを利用すればクリア可能のようですが、今回も時間の都合上でギブアップとさせていただきます。ここからはゲームのその後の展開も踏まえながら、『たけしの挑戦状』が何を目指したのかについて須田氏に語ってもらいました。

――この後は宝の地図をもらって南の島に飛行機で旅立ちます。シューティングのステージもあり、かなり壮大な展開です。

須田:
あんまりジャンルとしての型がないですね。この世界でやれることはなんでもやろうという発想もGTA的。そして社会派のゲームですね。

――社会派(笑)。

須田:
サラリーマンが仕事を辞めて南の島へ。当時の日本人がいちばん共感できるキャラクターの物語だと思います。そして、ファンタジーではなくて社会派。唯一のファンタジーはこの南の島ですね。まさに北野映画における沖縄みたいな存在です。この世界観は圧倒的ですね。子供にはわかんないですよ。これを洋ゲーとして海外に出した方が絶対に面白い。70年代の東映映画やアメリカン・ニューシネマの雰囲気がしますね。

――ストーリー自体は明確ですよね。サラリーマンという存在も結構まじめに描かれているような気もします。町や商店街を再現するという意味では洋ゲー的なリアル志向です。

須田:
本当にリアル志向。やはり北野映画の源流ですよ。北野映画は好きなんです。特に『3-4X10月』が好きで。

――渋い!二作目ですね。



須田:
あの主人公はヤクザではなく、普通の人なんですよね。たけしさんが脇役として登場するのも珍しい。

――確かあの作品も沖縄に行く話ですよね。そういった意味では本作にも通じるところがあります。

須田:
『たけしの挑戦状』が1986年、映画の処女作『その男、凶暴につき』が1989年。その意味ではこれは完全にたけし映画の源流ですね。実際にたけしさんは本作のためにかなりのネタを用意したようです。そうじゃないとこのリアリズムは出せないですから。

――さきほどテストで『ドラゴンクエスト4』を立ち上げたんですが、最初にスタッフの名前が表示されます。堀井雄二、鳥山明、すぎやまこういち。当時では珍しい事例ですよね。

須田:
そうですね。いわゆるゲームの作家というイメージはそれくらいから始まりました。

――同時期の『たけしの挑戦状』も実は作家性が強いゲームだったのだと思います。あの時代はファミコンでタレントが主役になったゲームはありましたが。

須田:
『中山美穂のトキメキハイスクール』(笑)。

――アイドル系もありましたね。芸人だとカトちゃんケンちゃん、田代まさしさん、さんまさんのゲームなどがあります。

須田:
『さんまの名探偵』は有名ですね。



――そういったゲームの中でも『たけしの挑戦状』はたけしさん本人がほとんど登場せず、自分が作りたいものを作ったそうです。

須田:
一言で言えば当時のファミコンブームはアナーキーだったんですよ。でもその辺のゲームと比べても『たけしの挑戦状』は特別におかしなゲームでした。筆舌に尽くしがたい。そして斬新でした。それこそGTAよりも早かったわけです。この当時出来る技術でやっただけであって、別の時代にこれを作るならば必然的にオープンワールドになります。実際、最初の街のシーンはオープンワールドみたいですよね。

ゲーミングの定義を壊すのは、その文脈を学んでいる人よりもまったく知らない人のほうがやりやすいんですよね。純粋な視点で見たとき、ゲームというのは装置なんです。なにかしらを再生する装置。その中で何ができるのかと考え、純粋に具現化していった結果だと思います。後から検証してみるとやはりやりたいことはGTAと一緒のように見えますね。GTAもかならず現代劇であり、アウトローの視点で社会を描いています。70年代、80年代と舞台は様々ですが、アウトローの視点で社会を描くという点は一貫しています。『たけしの挑戦状』の主人公も当時の社会ではアウトローなんですよ。会社を辞めて家庭を捨てて南の島に飛び立つ。本当はチンピラや暴力団と抗争するシーンも作りたかったんだと思いますが、ハードの制約上はそこまでできなかった。



――確かに当時の世相を反映するものがたくさん出てきましたね。何が印象的でした?

須田:
カラオケもスナックも良かったですが、やはりカルチャークラブ。

――カルチャークラブは面白いですね。ゲームに登場させようとは普通は思わないです。でも実はゲームと親和性が高いんですよね。たとえばスキルを習得する場面に使えます。

須田:
そうですよ、たしかにそうですよ。

――須田さんのゲームもスキルのアンロックはカルチャーセンターで行うというのはどうですか?

須田:
そうですよね(笑)。実際につじつまが合っています。結局、僕らがこの社会でスキルを獲得するというと、そういう特殊なところ行かないといけない。そして、対価としてお金を払って修得する。そういう意味では確かに使えるネタですよね。

クソゲーの思い出とビデオゲームの再評価



――ところで他にもクソゲーの思い出はありますか?

須田:
自分で遊んで「なんだこれ」というのはいろいろあります。僕の場合は、『スーパーマリオブラザーズ』の発売日とまったく同じ日に買った『スーパーアラビアン』。当時、2本が並んで売っていたんですよ。みんなは当然、『スーパーマリオ』を買うわけですよ。僕は『アラビアン』をゲーセンでプレイしていて、ぜんぜんクリアできなくて悔しかった。そこで『スーパーアラビアン』を買えば、家で遊び放題になると思ったんです。でもクソゲーでしたね。すごく後悔しました。なんであの時、僕は『スーパーマリオブラザーズ』を買わなかったのか。当時、まだクソゲーという言葉ありませんでしたが、鮮明に覚えています。

あとは『レリクス 暗黒要塞』かな。ディスクシステムが好きだったんですよ。書き換えるのが安かったのでいっぱい遊んでいました。それで『レリクス』もやったんですが、上のフロアにひとつ登るたびにローディングが発生するんですよ。あれはきつかったですね。初期のインターネットみたいな感じですよ。ページを見るのに20秒くらいかかる。あれ以来、ゲームは直感的で爽快であるべきだなと思いました。

――私もタイトルすら思い出せないのがいくつかあります。本当のクソゲーは語られることすら少ないですから。

須田:
クソゲーという言葉自体はみうらじゅん先生が生み出し、90年代に入ってから定着した言葉ですからね。ある種の再評価の意味があります。



――ようやくファミコンの歴史が成立してからの再評価ですね。今回、『たけしの挑戦状』を選んだのは須田さんですよね。

須田:
あえての選択ですよね。カルトゲームの王道ですし、「ゲームセンターCX」でも最初で取り上げられたそうです。そういう意味でなめ尽くされたタイトルだと思います。プレイされたことはありましたか?

――子供のときにプレイしました。ただ昔はクソゲーが多かったので、実はそんなに印象に残ってないです。その面白さを知ったのは、大人になってからインターネットの攻略サイトを通してです。攻略を読みながらすべて頭の中でプレイした感じですね(笑)。

須田:
それもすごい(笑)。

――実際、攻略サイト読んでいるだけでも楽しいですよ。子供のときはカラオケのところまでは行けました。そこから先はまったく未知のゲームでした。南の島に行ったり、探検したり、そんなに壮大なゲームとは思いませんでしたよ(笑)。須田さんはリアルタイムではプレイしていましたか?

須田:
プレイしてないですね。僕も攻略サイトか何かで知ったのです。その謎解きの方法がすごいじゃないですか。それに驚きましたね。ただ北野映画が定着してから、『たけしの挑戦状』は再評価されたように感じます。『たけしの挑戦状』はクソゲーの源流でもあり、北野映画の源流でもあるというのは未来絵図が見えているかのようです。やはり天才が生み出すものは、凄みがあります。今日、プレイして『3-4X10月』など初期の北野映画が見たくなる。



――『たけしの挑戦状』はどこかリリシズムに満ちていますよね。南の島に行くシーンの音楽もなんだか切ない。北野映画の中でも最近の『アウトレイジ』などよりも、初期の作品に近いテイストを感じます。バイオレンスや派手なアクションは少なめですが、孤独な男が仕事も家族も投げ出し南の島に出かける。

須田:
『ソナチネ』や『3-4X10月』に近いテイストですよね。僕はバイオレンスエンターテイメントに振りきれた『アウトレイジ』も好きです。だけど『たけしの挑戦状』はとにかくカルト中のカルトでアナーキーでいながら叙情的です。そこが初期のたけし映画を感じさせますよね。

――今、ビートたけしがゲームを作ったらまた違った表現になるかもしれませんね。

須田:
すごいものを放り込んでくると思います。ゲームの価値観にとらわれず、ゲームでできることがなんなのかを突き詰めた作品。もしかしたらたけしさんがまたゲームを制作することがあるかもしれません。もし実現したら本当に楽しみですね。

(C)TAITO CORPORATION 1986 ALL RIGHTS RESERVED. / ビートたけし

記事提供元: Game*Spark
《今井晋》

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