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【俺の電子遊戯】第1回 ファミコンと『ドンキーコング』

小学5年生だった私は、エポック社の『カセットビジョン』が欲しかった。さして親しくもない兄の同級生が所有しており、ゲーム目当てに図々しくも遊びに行ってはプレイをし、なかでも『木こりの与作』には本体据え付けのレバーを折るほど夢中になっていたのだ。

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俺の電子遊戯 第一回

    73年生まれ。インベーダーが日本中を侵略した頃、小学生だった筆者の目に映ったビデオゲームは間違いなく「未来へのパスポート」だった。その魅力に取り憑かれ、気づけば不惑の40代となったオッサンが、ビデオゲームと共に過ごした30年を語る連載。

「テレビゲームが欲しい」1983年小学5年生だった私は、エポック社の『カセットビジョン』が欲しかった。さして親しくもない兄の同級生が『カセットビジョン』を所有しており、ゲーム目当てに図々しくも遊びに行ってはプレイをし、なかでも『木こりの与作』には本体据え付けのレバーを折るほど夢中になっていたのだ。

夏のおもいで '83

高校野球、池田高校の夏、春、夏の3連覇を阻止した、PL学園1年生のKKコンビの活躍をテレビで観戦していたことぐらいしか印象になかった夏休み。『カセットビジョン』を所有していた知人は、夏休みに東京ディズニーランドに行った自慢話を聞かせてくれた。神戸のポートピアにすら行けなくて、生まれてこの方、居住地の四国から一歩も出たことのない当時の私には、縁のない話だとミッキーマウスの写真を見ながら特にその行為をうらやむ訳でもなく、冷静に今の自分の立ち位置を理解していた。

あらしもLSIゲームをやる時代

そんな変哲のない日々に衝撃的なニュースが飛び込む。当時ゲーム好きの情報元といえば、小学館の児童雑誌「コロコロコミック」。そのコロコロに掲載された、任天堂の新しいテレビゲーム「ファミリーコンピュータ」の情報。あの「ゲーム&ウォッチ」でヒットを飛ばした任天堂が造るテレビゲーム機がハズレる訳がない。しかもソフトのラインアップには『ドンキーコング』の名が! 駄菓子屋にところ狭しと設置されたテーブル筐体で見た『ドンキーコング』を好きなだけ家でプレイできる。そのことを思うだけで期待に胸がふくらんだ。

『マリオブラザーズ』

ソフトと合わせて約2万円の予算をどうひねり出すのか? 当時のお小遣いが月500円だった私にとって、こんな大きな買い物ができるのはお正月しかなかった。学年で1コ上の兄と結託し、次のお年玉はふたりでテレビゲームを買う。と、年明けから「カセットビジョン」に照準をあわせて情報収集に余念がなかった兄と私だったが、気持ちはすっかりファミリーコンピュータに。秋口、いち早くファミリーコンピュータを購入した兄の知人宅で、兄は『マリオブラザーズ』をプレイする。帰宅後「とんでもなく面白かったぞ、お前はマリオブラザーズを買うべきだ」と兄はすっかりその魅力にハマっていた。そんな兄の助言などどこ吹く風、私には『ドンキーコング』を家で思う存分プレイすることしか頭になかった。

俺の電子遊戯 ドンキーコング

ファミコンブーム前夜

そして1984年1月2日。初売りで人がごった返すデパートのおもちゃ売り場に、銀色のパッケージが積み上げられていた。兄と共にファミリーコンピュータの箱を手にする。ソフトはもちろん『ドンキーコング』だ。興奮する私と兄をよそ目に、発売されて半年、ゲーム好きのこども以外には注目を浴びていないのか、ファミリーコンピュータの山は一向に崩れる気配はなかった。カウンターのショーケースに置かれたデモ機代わりのシャープC1の画面には『ポパイの英語遊び』が映しだされていた。

ゴムのボタンはもどらない

ファミリーコンピュータを手にした私は、時間さえあれば『ドンキーコング』をプレイした。2面となる50mステージが省略されていたものの、アーケード版の体験をそのまま家庭で遊べることに興奮した。兄は『ドンキーコングJR.』を購入し、共に初期型コントローラー角ボタンのゴムが戻らなくなり、擦り切れるほどプレイした。

俺の『ドンキーコング』と引き換えに

我が家にファミリーコンピュータが導入され、ひとつ問題が発生する。それは、本体、ソフトの所有権だ。兄は全て共同所有物としてふたりのモノにしようと当然の提案をしてきたのだが、『ドンキーコング』が大好きだった私は、何故か『ドンキーコング』ソフトの所有権を激しく主張した。どうしても自分のモノにしたかったのでその様な主張を行い、その主張は認められたのだが、代わりに本体の所有権を兄が独占するという、とんでもない不平等条約を結んでしまったのであった。

それでも、大好きな『ドンキーコング』を自分のモノにできた喜びは、何事にも代えがたい喜びだった。しかし、その不平等条約を締結してしまったことで、私の自宅におけるファミコンライフに暗雲が漂うことになるとは、この時には知る由もなかったのである。
《Game*Spark》
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