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【TGS 2014】驚きと興奮のゲームの世界「センス・オブ・ワンダーナイト」今年も多数の作品が登場

東京ゲームショウで恒例となった「センス・オブ・ワンダーナイト(SOWN)」が開催され、体の両端に頭のついたヘンテコな生物を二人で操作し、ボールを相手の陣地に運ぶスポーツゲーム『Push Me Pull You』が、大賞にあたるオーディエンスアワードを獲得しました。

ゲームビジネス 開発
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東京ゲームショウで恒例となった「センス・オブ・ワンダーナイト(SOWN)」が開催され、体の両端に頭のついたヘンテコな生物を二人で操作し、ボールを相手の陣地に運ぶスポーツゲーム『Push Me Pull You』が、大賞にあたるオーディエンスアワードを獲得しました。

また『Push Me Pull You』と最後まで大賞を競い合った、大人数で協力プレイを楽しむパズルアクション『PICOLECITTA』がベストプレゼンテーションアワードを獲得しました。このほか、部門賞の受賞作リストはこちらとなります。

・ベストエクスペリメンタルゲームアワード:Miegakure
・ベストテクノロジカルゲームアワード:8BitMMO
・ベストグラフィックアワード:Chained
・ベストゲームデザインアワード:Push Me Pull You
・ベストプレゼンテーションアワード:PICOLECITTA



■商業作品として大きく羽ばたくセンスオブワンダーの世界

インディーゲームのムーブメントにのって、すっかり国際的なアワードに成長したSOWN。2008年に幕張メッセ1FのレストランNOA(現在は閉店)で始まった本イベントも年々規模が拡大し、今年は基調講演などと同じイベントステージで、午後2時から開催されるまでになりました(センス・オブ・アフタヌーン!)。

応募作品も史上最多の27カ国・地域から136作品が集まり、10作品がファイナリストに選出されました。今年は大きく「新しい対戦ゲームの可能性」「音と探るインタラクション」「パズルと生み出す物語の世界」という3つの傾向がみられたとのこと。内訳はアメリカが5作品、日本とオーストラリアから2作品ずつ、シンガポールから1作品となっています。

昨年のファイナリストも市場で高い評価を受けており、ベストゲームデザインアワードを受賞したパズルゲーム『Lost Toy』がApp Storeで2014年9月に「アメージングパズルゲーム」として紹介されたほど。ベストオーディエンスアワードを含む2冠に輝いた『Museum of Simulation Technology』もIGFのスチューデントショーケースを獲得し、現在商品化に向けて開発が着々と進んでいます。

また昨年度から始まったTGSインディーゲームコーナーで、受賞作品が実際にプレイできるようになったことも、SOWNの知名度をさらに押し上げた模様。ビジネスデイの午後から開始して、どの程度の参加者が見込めるのか不安もありましたが、蓋を開けてみたら客席の多くが埋まり、会場におなじみのピコピコハンマーの音が鳴り響きました。

【新しい対戦ゲームの可能性】

■SpeedRunners(Casper Van Est / tinyBuild Games / アメリカ)



4人同時対戦ができるアクションレースゲームです。プレイヤーはスーパーヒーローとなり、ロケット弾・爆弾・引っ掛け鉤・スパイクなどを駆使して、さまざまな仕掛けのあるステージを進みながら、ゴールまでのクリアタイムを競います。この時、あるキャラクターの進行が遅れて画面外に出てしまうと、そこでバンされてしまう(=ミス)仕組み。つまり「相手をいかにバンさせるか」という遊びも踏まえたゲームとなっています。

プレゼンターのEst氏は「子どものころに『Halo Combat』の画面分割対戦に夢中になった。画面分割対戦は相手の動きが画面内でモロ見えなので、『相手の動きを踏まえた上で行動を選択する』という遊びが含まれていた。この感覚を再現したかった」と語りました。また途中でバンされたままでは退屈なので、再登場する度に画面の表示領域が狭くなるというペナルティも加えられています。

■『Push Me Pull You』(Stuart Gillespie-Cook / House House / オーストラリア)



「子どもから大人まで誰でも楽しめる、協力プレイが楽しい『新しいスポーツ』のようなゲームを作りたい・・・」という開発者の思いが明後日の方向にツイストして、イモムシのようなキャラクターを操作する、ヘンテコなゲームになりました。

細長い胴体の両端に顔があるキャラクターを、コントトーラーの左右スティックでそれぞれ操作します。胴体でフィールド上のボールを包むようにして動かし、互いに相手の陣地に押し込みます。タイムアップ時にボールが相手の陣地にあれば勝ち、押し込まれれば負けというシンプルな内容です。一人でも遊べますが、コントローラーを二人でもって遊べば、まさに二人三脚のノリで楽しめます。

ゲームは相手のディフェンスをいかに破るかが決め手になるため、キャラクター同士が体を伸縮させながら、互いにぶつかり合という、まるでレスリングのような展開になります。奇天烈な発想もさることながら、これが初めて作った本格的なゲームという点に、会場の誰もがセンスオブワンダーを感じていたようでした。

■PICOLECITTA(TECO / 日本)



「子どもの頃はみんなでゲームを楽しんだ。でもオンラインゲームを遊びたいわけじゃない。もっと大勢の人で一つの画面を囲んで楽しめるゲームはできないか・・・」こんな思いで開発されたのが本作です。2人から10人までプレイできるアクションパズルで、ステージの仕掛けをクリアしながら、ゴールにたどり着けばOKです。

プレゼンでは10体の四角いキャラクターが表示されたステージが紹介されました。画面中央の鍵をとって、全員がゴールにたどり着けばクリアですが、とても鍵まで届きません。一方、画面下には数字の書かれたキューブがあります。数字以上のキャラクターでキューブを押せば動かせるので、これを台にするなどすれば鍵にたどり着くというわけです。

また別のステージでは、全員で同じコントローラのボタンを押して1つのキャラクターを操作するという遊びも紹介されました。現在は最大10人まででしたが、できればUSBコントローラーの最大接続数までプレイできるように改良を続けたいとのこと。ドット絵のキャラクターやファミコン風のサウンドもあわさって、楽しげな雰囲気が良く伝わってくる内容でした。

■8BitMMO(Robby Zinchak / Archive Entertainment / アメリカ)



たった一人のプログラマーの手によって創り上げられたサンドボックス型のコンストラクションゲームです。プレゼンターのZinchak氏は『ゼルダの伝説』や『クロノトリガー』などを遊び、ゲームクリエイターになることを決意。その後『ウルティマオンライン』に衝撃を受けて、MMOゲームを作りはじめました・・・たった一人で。

そこから13年が経過し、やっと夢が叶ったといいます。プレイヤーは自由に自分だけのダンジョンや世界を作ることができ、多くの人と世界を共有できます。今や登録ユーザー数は60万人で、その世界はイギリスを越えるほどの面積を持ち、街や村、ダンジョン、PVP向けのアリーナまであります。何百ページものwikiやファンビデオまで作られました。

Zinchak氏は「プレイヤーの創造性にはいつも驚かされます」と語りましたが、多くの来場者が「あんたに一番驚かされた」と心の中で突っ込んだに違いありません。

【音と探るインタラクション】

■FILL(林 陽一 / YO1 KOMORI GAMES / 日本)



「パズルのルールを探し出すこと自体がパズル」という、「ゲームって何?」という哲学的な問いかけを内包するタイトルです。ゲーム画面は白と黒で幾何学的に塗り分けられており、画面をタッチすれば白い部分を動かすことができます。ゲームの目的は画面に触りながら、同じ色でうめつくすこと。動かせる場所が下に隠されていたり、ある操作が別の操作と連動したり、一見すると操作がわからないものもあります。

画面をタップしたり、スライドしたり、回転させたりしながら色を揃えていく様は、まるでルービックキューブをシャカシャカやっているかのよう。制作者の林さん曰く「操作を発見する楽しさ」「変化する図形の面白さ」「シンプルでソリッドな美しさ」が内包されており、文字を必要としないので動物や異星人でもプレイできるかも、とのこと。「AAAタイトルにインディが対抗するには全力で別方向に行くしかない」と前置きし、「AAAゲーム」に対して「ZZZゲーム」という呼称を提案すると、会場から拍手が巻き起こりました。

■DubWars(Joe Albrethsen / MURA Interactive Inc / アメリカ)



インタラクティブサウンドの新しい可能性を提示したタイトルです。ゲームは全方位シューティングで、プレイヤーの操作は自機の移動と目標選択だけ。この手のゲームでは通常、攻撃はオートで行われますが、本作ではダブステップサウンド(2000年代前半にイギリスのロンドンで誕生したエレクトロニック・ダンス・ミュージックの一種)のリズムやメロディラインにあわせて攻撃が行われます。

つまりベースのリズムにあわせてノーマル攻撃が行われ、サビの部分でドカーンと大口径レーザーが発射されるという形です。プレイヤーの操作にあわせてサウンドがなるのではなく、サウンドの展開にあわせてプレイヤーが操作するという、ありそうでなかった新しいゲーム体験を提示したタイトルとなりました。単調にならないように、さまざまなステージやキャラクターも登場するとのこと。ゲームエンジンにはUnityを使用しており、コンソールへの移植も予定中とのことで、非常に気になる一本でした。

■LURKING(Justin Ng Guo Xiong / DIGIPEN INSTITUTE OF TECHNOLOGY SINGAPORE / シンガポール)



SOWNではしばしば、真っ暗な画面に対してインタラクションをするという、逆転の発想のゲームが登場します。本作もその系統の作品で、プレイヤー自身が発する呼吸音などで周囲の状況を把握し、ゴールに進んでいくというアクションアドベンチャー。コウモリが超音波レーダーで周囲の状況を理解するように、マイクで入力された音がパルスに変換され、周囲の状況が線画で表示される仕組みです。

ただしステージ内にはプレイヤーを捕まえようとする敵も徘徊しており、赤いビジュアルで表示されます。敵はプレイヤーの呼吸音などをキャッチし、徐々に近づいてきます。相手から隠れるには物音を立てず、息も殺さなければなりませんが、それでは周囲の状況がわからず、なによりプレイヤー自身が苦しくなってしまいます。

そこでアイテムを床に投げたり、レコーダーなどのアイテムを使って、特定の地点で音を発生させ続ければ、敵をおびき寄せられます。こんな風にして敵をやりすごして先に進んでいくのです。制作したのはデジペン工科大学シンガポール校の学生チームで、真っ暗な画面に表示される線画の世界が印象的。まさにセンスオブワンダーを感じさせる作品でした。

【パズルと生み出す物語の世界】

■Chained(KeithLeiker / DigiPen Team Those Guys / アメリカ)



本作は足に鉄球を鎖で繋がれた、しょぼくれた男性が主人公の横スクロール型アドベンチャーゲームです。ポイントはパズルとナラティブの融合で、メッセージや台詞をまったく発することなく、ゲームプレイだけで哲学的なストーリーを体験させようとしている点にあります。

プレイヤーはゲーム内で鉄球と鎖を使いながら、建物内の仕掛けをクリアしていきます。鉄球を床や壁に投げつけ、壁を壊したりしながら進んでいくのです。もっとも本作では仕掛けをとき、先に進むたびに何か不吉な雰囲気が漂っていきます。そして雰囲気が最高にダークになったところで、不意に足の鉄球が外され、自由の身になるのです。ここで多くのプレイヤーは鉄球を探そうとしますが、発見するとバッドエンド。逆に鉄球を探すことなく先に進むとトゥルーエンドですが、それでも完全にハッピーエンドとはいえないエンディングになっています。

制作したのはデジペン工科大学の学生で、「負の依存関係に頼るとどんな悪いことがおき、その結果どんなみじめな気持ちになるか、ゲームで再現したかった」と答えました。純粋なエンタテインメントとは言いにくい面もありましたが、それだけにゲームの可能性をさらに広げる作品だと言えるでしょう。

■Expand(Chris Johnson and Chris Larkin / オーストラリア)



ねじれたり、伸び縮みしたりする円形の迷路を進みながら、ゴールをめざしていくアクションパズルです。迷路の壁に押しつぶされたり、先に進めなくなったり、特定の色の壁に触れたりするとミスとなり、直前のセーブポイントまで引き戻されます。伸縮する迷路は心臓の鼓動のようでもあり、なぜか体内を探索している気分にもさせてくれます。

幾何学的で美しいステージ構成、シンプルなピアノのBGM、ときおり表示される詩編の一部のようなテキストが組み合わさって、プレイヤーを瞑想的な雰囲気に導いてくれます。なんだか良くわからないけれど、何か濃密な物語体験が味わえるという、ナラティブ的な要素を強く含んだゲームです。来年にはリリースしたいと話していました。

■Miegakure(Marc ten Bosch / mtb design works, Inc. / アメリカ)



「4次元の世界を探索する」というアクションパズルです。通常4次元というと時間をさしますが、本作はボタンを押すとステージがモーフィングし、新しいルートが開く状態を示しています。このルートを活用しながらステージを探索し、ゴールまで到達することがゲームの目的です。2.5Dのステージで、そのままでは障害物で先に進めないが、ステージをくるっと回転させると迂回路が見つかる・・・そんなゲームメカニクスを3Dのステージで当てはめた作品だと言えるでしょう。ゲーム内容もさることながら「見え隠れ」という和風のタイトルがすべてを物語る、興味深い作品になっていました。

■ ■ ■ ■ ■ ■


センス・オブ・ワンダーナイトの最大の特徴は「アイディアが素晴らしければ、ゲームが完成していなくても良いこと」です。そのため過去には技術デモのような作品も見られましたが、今年はいずれもアイディアだけでなく、ゲームとしての体裁がしっかり整えられており、非常にハイレベルなプレゼンになっていました。

最終審査ではそれまでのピコピコ音から『Push Me Pull You』と『PICOLECITTA』が選出され、決戦ピコピコ大会が開催されましたが、もはや人間の耳では聞き分けられないレベル。最終的に審査委員長でもある司会の新氏の判断で『Push Me Pull You』が大賞に輝きました。もっとも制作者のStuart Gillespie-Cookは「僕は『PICOLECITTA』の方が良かった。みんなでこれから一緒に遊びに行こう!」と受賞スピーチを行い、会場をわかせる一幕も。最後まで和気あいあいとした展開で終了しました。

《小野憲史》
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