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【CEDEC 2014】大西洋を越えた協業をスクラムで実現~『FORZA MOTORSPORT 5』の舞台裏

ゲームビジネス 開発

【CEDEC 2014】大西洋を越えた協業をスクラムで実現~『FORZA MOTORSPORT 5』の舞台裏
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ゲームの開発規模に対して社内リソースが不足している場合、開発スタジオには大きく2つの選択肢があります。中途採用するか、協力企業を探すかです。しかし、求める人材が都合よく募集できるとは限りませんし、教育コストも発生します。一方で協力企業に外注する場合は、作業の切り分けや情報伝達で課題が生じます。協力企業から出向してもらう場合もありますが、これが最良の解決法でないことも明らかでしょう。

こうした中で『FORZA MOTORSPORT 5』の開発では、これまでにないやり方が採用されました。外注企業のプログラマを出向ではなく、リモート(オンライン)で開発チームに有機的に組み込み、共同開発したのです。「外部プログラミングを活用したFORZA MOTORSPORT 5の開発」という講演で、ターン10スタジオのダニエル・アテンド氏があきらかにしました。

ターン10スタジオのダニエル・アテンド氏


■泥縄式で外部の開発会社をアテンド

『FORZA MOTORSPORT 5』はXbox Oneのローンチタイトルとして、海外では昨年11月22日に発売されました。パブリッシャーはマイクロソフト・ゲームスタジオですが、開発は傘下のゲームスタジオ、ターン10が担当しています。一方でこのタイトルはイギリスのプレイグラウンド・ゲームが開発協力を行っています。ターン10はマイクロソフトの本社があるレッドモンドにスタジオをかまえており、両社の距離は約9500キロ。時差にして8時間の開きがあります。

しかしスケジュールと作業量を考えたとき、これ以外の判断はありませんでした。一例を挙げると、これまではXbox 360向けにDirectX 9、32ビットOSで開発されていましたが、『5』では一気にDirectX 11、64ビットOS環境に移行となり、エンジン部分や内製ツールをはじめ、全てが作り直されました。一方でゲームのフィーチャーは『4』以上が求めらました。その結果プリプロダクションが終了し、リリースまであと1年というタイミングで、開発リソースが不足する事態に直面したのです。

とにかく業務量が増えた


普通に考えると、これはプロジェクトが失敗するパターンです。しかし、幸いにもプレイグラウンドは2012年にシリーズのスピンアウトタイトル『フォルツァ・ホライゾン』を開発した経緯がありました。シリーズのイロハを習熟している同社は格好のパートナーだったのです。その結果12人のプログラマがリモートで7ヶ月間、開発に参加しました。これによりエンジニアリングのキャパシティが28%上昇したといいます。開発はクライアント・オンライン・コンテンツの各チームに分かれており、各々のプログラマはエンジン・ゲームプレイ・UIなど、さらに小セクションのチームに振り分けられました。

チームの体制


ちなみに同社では以前のタイトルで、ゲーム開発の一部を協力会社に外注に出した経験もありました。しかし「コードの保全性が難しい」「知見が社内に蓄積されない」「柔軟性が低い」「作業のオーバーヘッドが発生する」「会社単位での契約になるため、社内のトップクリエイターに作業してもらえるとは限らないし、先方の都合で作業が後回しになる恐れもある」など、課題が多かったと言います。

また同社ではグラフィックアセット制作(自動車のモデリングなど)についてもアウトソーシングしています。しかしプログラミングとの違いは明らかで、いかに関係性を構築し、開発を「自分ごと」に感じてもらうかが重要だといいます。そのため、はじめに8名のプログラマをレッドモンドに招待して、キックオフミーティングが実施されました。アテンド氏は「たとえ出張費がかさんでも、これによって得られるリターンは10倍以上になるため、ぜひ実施すべき」だといいます。

■スクラム開発でQAを組み込む

さて、開発途中のプロジェクトに途中から参画して、佳境の時だけ働いてもらい、ピークが過ぎたら(できれば速やかに)離脱いただきたい・・・。こうした(ターン10側からすれば都合の良い)マネジメントを行うためには、それに即した開発体制が必要になります。特に重要なのがQA(品質管理)です。ゲーム開発にバグはつきもので、開発終盤に外注プログラマが係わらないとしたら、その分のデバッグを社内プログラマが負担する必要があります。一般にプログラマは他人の書いたコードのデバッグを嫌がる傾向にあり、これはターン10でもかわりません。

そこで『5』の開発では、開発に積極的にQAを組み込む手法が取り入れられました。ゲーム開発はスクラムで進められ、チームはフィーチャーごとにできるだけ小さい単位で分割されます。はじめにチーム内のリードレベルデザイナーがコンセプトを決定します。次にエリアオーナーがコンセプトにしたがってバックログ(タスクリスト)を作成し、プログラマが開発を進めます。開発の要所でエリアオーナーがコードレビューを行い、受け入れテストが行われます。最後にフィーチャー単位で統合された受け入れテストが行われ、クローズとなります。

最小セットごとに作りながらQAを行っていく


中核となるのは開発段階でのコードレビューとバグ修正です。これは内部のプログラマだけでなく、リモート先の外部プログラマを活用する際、特に重要になります。コードレビューによって知見の移転が計れるからです。QAチームの統合化も重要です。アテンド氏は「現在は設計・実装・テストという段階をとることが多いが、バックログ単位と統合化された物とでテストを分けることが望ましい。その上でバックログ単位のテストはプログラマが行うべき。自動化テストにも、もっと投資をしたい」と語りました。

なお、アテンド氏は当初プレイグラウンドのプログラマは、ターン10の8割程度の作業量を見積もっていたそうです(同社の力量が劣っているという意味ではなく、リモートでの作業など総合的な見知からです)。しかし、蓋をあけてみると予想は良い意味で外れ、ターン10のプログラマより作業量が多い時期もみられるほどでした。バグの修正率も特に違いは見られなかったそうです。

開発終盤のデバッグ期間におけるバグの修正率も『4』と『5』で大きな違いはなく、UI周りでは『4』よりも減少したほど。エンジンから作り直したにしては好成績となりました。これも開発段階からQAを組み込んだ成果だと言います。

■開発を通して得られた知見とは

最後にアテンド氏は「教訓」と「課題」を5つずつあげました。前者では「協力関係の構築」「対面でのキックオフミーティング」「外部のプログラマを直接チームに組み込むこと」「エリアオーナーとコードレビュー」「コミュニケーションを重視した開発スタイル」となります。中でも重視したのが対面でのキックオフミーティングです。ちなみに席上で宣伝素材を見せたところ、当初あまりの無反応ぶりに驚いたそうですが、「イギリス式で興奮しているだけ」とわかり、安堵したそうです。

うまくできたこと


一方で後者では「テスト自動化へのさらなる投資」「開発段階でのQAスタッフの増員」「増え続ける要求に対する適切な計画」「より早い段階から協力会社を巻き込むこと」「開発にもっと多くの事柄を引き込む」ことが上げられました。テストの自動化については、本作でもビルド単位でテストできる環境を構築したとのことですが、コードレビューの段階から自動化を図っていきたいといいます。

できなかったこと


いずれにせよ、出向ではなくリモートで外部のプログラマを開発チームに組むこむやり方は、あまり日本では聞かないやり方です。そのためにスクラムやコードレビュー、テストの自動化などを進めるというやり方は、正しい手順のように感じられました。具体的なツールなどは明かされませんでしたが(マイクロソフト製品ではないかと推察されます)、そこはSkypeでもGitHubでも、環境にあわせて取捨選択しろということでしょう。ともすれば手段と目的が逆転しがちな中で、参考になる事例ではないでしょうか。
《小野憲史》

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