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【CEDEC 2014】『新生FF XIV』の環境音はこうして作られた! 社内開発環境と共にテクニックが惜しみなく披露

ゲームビジネス 開発

【CEDEC 2014】『新生FF XIV』の環境音はこうして作られた! 社内開発環境と共にテクニックが惜しみなく披露
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PS3世代からPS4世代への移行に伴い、ゲーム内における環境音(BGサウンド)のデザインも進化が求められています。PC向けのMMORPGは、その中間に位置する存在だと言えるかもしれません。

スクウェア・エニックス、サウンド部の土田善紀氏と土橋稔氏は「俺らはこうした! FINAL FANTASY XIVのBGサウンド構築 ~次世代開発への橋渡し~」で、社内の開発環境をCEDEC会場に再現し、5.1chのサラウンド音響で再生しながら、開発プロセスを惜しみなく紹介しました。

■BGサウンドはこうして作られた

BGサウンドは大きく、ステージ全体で共通に流れる「天候環境音」と、特定の場所でしか聞こえない「スポット配置音」に分かれます。前者の例は風がそよぐ音や雨音、後者の例は川や滝の音などです。このうち基本となるのは天候環境音です。

制作は完成直前のステージを実際にプレイするところから始まります。サウンドデザイナーがステージを移動しながら(当然ながら、この段階では無音です)、どこにどのようなBGサウンドが必要か、イメージをふくらませていくのです。草原で聞こえる風の音や鳥のさえずり、雨音、稲妻、川のせせらぎや滝の爆音・・・このように、ゲーム内で再生されるBGサウンドは多岐にわたります。これらを一つずつリストアップしていきます。



リスト出しが終わったら、音素材の収録開始です。社内のサウンドライブラリを流用する場合もありますが、適切な音素材がない場合は、野外で録音します。録音されたWAVファイルはノンリニア動画編集ソフトウェアの「Vegas Pro」で成形していきます。ループ再生がばれにくいように、特徴的な音が流れる部分をカットしていき、当たり障りのない音にしていくのがポイントです。

完成したWAVファイルはサウンドのループ専用に制作された社内ツール「MUGEN」で、ループ指定を行います。ループの頭と終わりでクロスフェードを指定し、減衰率をカーブで設定できるなど、簡単にループ指定ができるようになっています。これで天候環境音のベースは完成です。

もっとも、これだけでは少々寂しい監事になってしまいます。そこで鳥の鳴き声や、風の音などのスポットと呼ばれる音素材も、別途録音しておきます。そのうえで、これらの素材を内製のシーケンスツール「KOHROGI」に組み込み、編集していきます。「スポットをたくさん組み込むほど、ループがばれにくいのでオススメです」(土橋氏)。

さらに「KOHROGI」では、それぞれの音素材の音量やサラウンド感、再生間隔、再生率などをランダムで変更させられます。実際のゲームでは、これに加えてスポット配置音が再生されるため、一層複雑な印象を与えます。そのため、同じ環境音を繰り返し再生しても、自然な形で聞こえるのです。

ちなみに同社ではプロジェクトごとにゲームエンジンが異なるため、こうした内製ツールが必要になると言います。「ゲームエンジンはバラバラでも、サウンドデザイナーは同じような手順で作業をしたいため、環境の違いを吸収する内製ツールが必要になります」(土田氏)。どのゲームエンジンでも、これらの内製ツールが使用できるように、サウンドドライバやプラグインなどを開発し、組み込んでいると言います。

■配置方法、全部見せます

このようにして制作された音素材は、マップエディタ上に設定されていきます。マップエディタは読んで字の通りステージをデザインするためのツールですが、音素材を組み込むための機能も追加されました。なお、余談ながら『新生FF XIV』では特定のゲームエンジンが使用されているのではなく、さまざまなツールやエディタの複合体で制作されていると言います。そのためプログラマの役割も直接ゲームを作るというよりは、アーティストやサウンドデザイナーなどが作業しやすい環境整備を行うことにあるそうです。



BGサウンドのうち天候環境音は「セット」という概念でステージに設定されます。朝・昼・夜と時間帯によってステージ全体の照明が変化するなど、ライトやエフェクトを設定するために作られた機能ですが、サウンドも設定できるようになっているのです。ここに晴れ・雨・曇り・嵐・雪などの天候を指定し、さらに細かい気候を選択することで、天候環境音を切り替えられるようになっています。

その上でステージ上にスポット配置音をドラッグ&ドロップで設定していきます。スポット配置音には内周と外周の2つの範囲指摘ができ、キャラクターが外周に入ると次第に音が大きくなり、内周内に入ると最大音量で再生されます。これにより、たき火などの音が適切に聞こえるようになります。川などの線上に配置されるエリアでは、スポット配置音を連続して折れ線のように配置する「ポリライン音源」などが設定されます。スポット配置音には「アンビエント・並行・点・線・面・ポリライン・ポリゴン・指向性点」の8種類が存在し、それぞれ使い分けられています。

ただし、建物の中に入ると戸外の音量が低下するといったように、適切な「遮蔽」を設定する必要があります。ここで使われるのが「エンブボックス」という設定で、ステージ上の特定の場所に箱形のエリアを設定することで、音量を調整するのです。複雑な建物の場合は板状の遮蔽物を外壁にそって設定したり、洞窟内などではチューブ状のポリライン遮蔽が使われることもあります。遮蔽は「板・箱・ポリゴン・ポリライン」の4種類があり、状況によって使い分けられます。

■難しい遮蔽アレコレ

続いて土田氏は複雑な形状の建物で、どのようにBGサウンドを適切に遮断するか、いくつかの例を紹介しました。音は遮蔽物がなければ、全方向に均等に伝播して減衰していきます。自然界では地形や建物などで自然に遮蔽できますが、ゲーム内では場所毎に適切なスポット配置音を設定した上で、前述の遮蔽テクニックを用いて、自然な形で「聞こえ方」を設定する必要があります。

土田氏は「コロシアム」や「内側にらせん階段をもった塔」などの例を紹介しました。コロシアムの場合は外壁の高さが場所によって異なります。壁の高い場所と低い場所では、反対側の音の聞こえ方が異なって欲しい。塔では階層ごとに異なる音が、らせん階段にそって聞こえて欲しい・・・。そうした複雑な注文に対して、一つずつサウンドデザイナーが手作業で配置を行っているそうです。「もはやモデリング作業で、サウンドデザイナーの領分を越えていますよね」(土田氏)



また「厚さゼロ問題」の対処法についても紹介されました。板状の遮蔽を組み合わせた、屏風状の遮蔽物で一方から声を発した場合、声は遮蔽物の形状にそって反対側に伝わります。しかしゲームでは音源から壁の距離を一つずつ計測して形状を測定し、音の伝わり方を計算で求める必要があります。しかし遮蔽物は座標によって設定され、厚さがゼロなので、そのまま計算すると壁の頂点で反対側にすり抜けてしまうのです。

そこで音を線分の衝突法線で少しだけはじき飛ばすというテクニックを使用していると説明されました。高速化のために壁の法線は事前に演算しておくのがコツ。こうした数多くの工夫の積み重ねで、適切な音の鳴り方・聞こえ方が調整されているのです。



■次世代にむけて

このように「手間暇かけて」設定されている『新生FF XIV』のBGサウンド。次世代に向けても、メモリやCPUパワーは増大しており、スペック的には余裕があります。一方で限界に近づいているのが、遮蔽配置や例外処理の指定といった、サウンドデザイナーの人的労力。また現状のやり方では地形変化に追従できません。建物が破壊されたり、地形が変化した時などに、音の聞こえ方が動的に変化できないのです。

そのため同社では現在、AIとBGサウンドの連携について研究開発が行われています。キャラクターAIの移動経路をサウンドの伝播に利用したり、地形のモデルデータを解析して、遮蔽データを自動算出させられないか、というわけです。こうしたプロシージャルな手法と、従来の手作業をくみあわせて、次世代のサウンドデザインに取り組んでいきたいといいます。

なお、同社ではこうした成果を順次公開していく予定とのことです。土田氏は「皆さんと一緒に業界を盛り上げましょう」と呼びかけ、講演を締めくくりました。
《小野憲史》

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