人生にゲームをプラスするメディア

ゲームと映画から考える海外と日本の感性の違いとは・・・黒川塾(19)

6月26日、ゲーム業界の恒例イベントである黒川塾が開催されました。第19回目のテーマは「ゲームと映画の創造性と、その未来へ」です。同じエンターテイメント産業として発展してきたビデオゲームと映画ですが、それぞれの世界の共通点と相違点はどこにあるのでしょうか。

ゲームビジネス 開発
ゲームと映画から考える海外と日本の感性の違いとは・・・黒川塾(19)
  • ゲームと映画から考える海外と日本の感性の違いとは・・・黒川塾(19)
  • ゲームと映画から考える海外と日本の感性の違いとは・・・黒川塾(19)
  • ゲームと映画から考える海外と日本の感性の違いとは・・・黒川塾(19)
  • ゲームと映画から考える海外と日本の感性の違いとは・・・黒川塾(19)
  • ゲームと映画から考える海外と日本の感性の違いとは・・・黒川塾(19)
  • 西部劇の世界を描いた『レッド・デッド・リデンプション』
  • 須田氏の新作『LET IT DIE』
話はここで地上波テレビの「洋画劇場」に移りました。昨今の地上波では、ほぼ消えてしまった洋画劇場ですが、高橋氏はそれらの番組が与えた影響の大きさを指摘しました。アクション、バイオレンス、ホラー、エロスといった大人向けのコンテンツが渾然一体となっていた洋画劇場ですが、それらの体験があったからこそ、ディープな映画好きになっていったと高橋氏も千葉氏も語っています。

グラフィックデザイナー・ライターの高橋ヨシキ氏


それに対して今の時代は、コンテンツの量も多く、選択肢も多様です。結局、何を摂取したらいいのかわからなくなり、人々はランキングやレビューサイトといった手段に逃げているのではないかと、高橋氏は指摘しています。ランキングやレビューサイトといった中からは人々は安心して楽しめるコンテツを選択する傾向があるため、個性的な作品との出会いが少なくなるのではないかと高橋氏は主張。名画座の三本立てや洋画劇場といった暴力的に与えられるコンテンツの良さもあったのではないかと振り返っています。

ここで須田氏の新作『LET IT DIE』のトレーラーが公開されました。このトレーラーはE3のソニーのカンファレンスで公開されたものですが、須田氏が言うには「ゴア表現を突き詰めた」そうです。この『LET IT DIE』映像は千葉氏も関わった『地獄甲子園』などで知られる映画監督の山口雄大氏が制作しています。



山口雄大氏は現在、海外で活躍しており、彼自身もコアなゲーマーであるそうです。千葉氏によると、彼は登竜門になる映画祭でも過激な表現の映画を撮影していましたが、なかなか認められることがなかったそうです。海外にはホラーやスプラッターといったジャンルから成功したピーター・ジャクソンやサム・ライミといった監督がいるのにもかかわらず、日本国内におけるそれらのジャンルの扱いは非常に低く、結果として多様なクリエイターがなかなか育たないそうです。

さらにゲーム業界の新人育成に関して黒川氏に問われたところ、須田氏自身は日本のゲーム業界をリードしているつもりはないと述べています。たまたま世界のマーケットに自分の作品を届いたことを強調して、自身のルーツはデビュー作であるファイアープロレスリングシリーズにあり、今でもプロレスラーとして戦っていると話しました。

最後に千葉氏の新作である園子温監督『TOKYO TRIBE』の海外向けの予告映像が初公開されました。普段は映画祭などでバイヤーにしか公開されないバージョンで、海外の映画マーケットでは制作会社がいかに作品を高く売ろうかしのぎを削っているそうです。しかし残念なことに日本映画の海外向け配給権は、一本50万円クラスという低価格で買われているそうです。そのような中、千葉氏は海外向けのパッケージやプロモーションを企画、ポスターは高橋氏が担当しています。

映画とゲームという二つのエンターテイメント業界を横断する今回の黒川塾でしたが、ポイントとなったのはグローバルな感性という問題のようでした。ゴア表現やスプラッター表現といったものは映画でもゲームでも世界的にウケる表現ですが、日本ではやましいものとして自粛の対象となります。それらの表現が受け入れられている理由には、育ってきた文化の差といったものはありますが、それ以上に映画やゲームといったエンターテイメントが大人の文化として根付いているという側面が決定的なもののように感じました。

《今井晋》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

ゲームビジネス アクセスランキング

  1. 【CEDEC 2011】ゲームクリエイターのキャリアを考える/セガ石倉氏と専修大・藤原氏

    【CEDEC 2011】ゲームクリエイターのキャリアを考える/セガ石倉氏と専修大・藤原氏

  2. 小島監督、コナミデジタルエンタテインメント執行役員副社長に

    小島監督、コナミデジタルエンタテインメント執行役員副社長に

  3. 【GTMF 2014】コンソール並のサウンドをスマホで実現する~『かぶりん』にみるWwise導入事例

    【GTMF 2014】コンソール並のサウンドをスマホで実現する~『かぶりん』にみるWwise導入事例

  4. 『マギア☆レコード』開発者向けセミナーを開催ーf4samurai設立者が語るエンジニアの役割とは?

  5. 任天堂ミュージアムに行ってきました!

  6. 『うたプリ』公式、二次創作グッズ制作・取引に対しツイッターで警告

  7. なぜ「アイカツ」のライブ映像は、ユーザーを魅了するのか…製作の裏側をサムライピクチャーズ谷口氏が語る

  8. ゲームボーイ版『マインクラフト』はこんな感じ?―レトロ愛が伝わるファンメイド映像が公開

  9. シフトがWW向け新作アクションRPGを開発中と明らかに!『ゴッドイーター』や『フリーダムウォーズ』を手掛けたスタジオ

  10. 「Alienbrain」と画像管理ツールの融合でゲーム開発が「見えるようになる」

アクセスランキングをもっと見る