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【Xbox One 記者説明会】日本独自の戦略で ― その説明会から読み解けること

日本マイクロソフトは「Xbox One 記者説明会」を開催し、9月4日の国内発売に向けたソフトラインアップや、今後の戦略について明らかにしました。

マイクロソフト Xbox One
【Xbox One 記者説明会】日本独自の戦略で ― その説明会から読み解けること
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日本マイクロソフトは「Xbox One 記者説明会」を開催し、9月4日の国内発売に向けたソフトラインアップや、今後の戦略について明らかにしました。日本でのXbox事業を統括する泉水敬氏は、ゲームに加えてアプリなど非ゲーム関連の機能にも時間を割き、Xbox Oneの総合エンターテインメント機としての性格を改めてアピールしました。

説明会は大きく4つのフェーズに分かれていました。

1:新型Kinectを用いたボイスコマンドなどのデモ
2:セガ名越稔洋氏のゲスト登壇など、サードパーティの国内重点タイトルの紹介
3:コンセプト稲船敬二氏のゲスト登壇など、インディゲームの紹介
4:タレントの足立梨花さんをゲストに迎えた、アプリの紹介

中でも興味深かったのは、質疑応答で明らかになった「Xbox Oneの主要ターゲット層」です。同社では「ゲームのハードコアユーザー層」「エンタメや新しいライフスタイルなどに感度の高い、ガジェット好きな層」をあげました。そして「ゲームファンを皮切りに、テレビの機能をXbox Oneに取り込んだり、生活に密着するアプリを提供していくなどして、ユーザー層を広げていきたい」と語りました。

ゲームラインアップ的には(一年遅れの発売となるため当然ではありますが)、ローンチ時のタイトルに加えて、年末商戦に向けた発売予定ソフトの充実ぶりが目を引きました。E3で話題を呼んだ『Sunset Overdrive』や『Halo: The Master Cheif Collection』なども発売予定にあげられており、これまでになく厚みのあるソフト展開となっています。国産のAAAゲームが少ないのは残念ですが、コアゲーマーには嬉しい悲鳴でしょう。

また端々に「HDMI入力端子にDVDレコーダーなどを接続して、Xbox OneのUIでサクサクと家電を使える」「将来的には電子番組表の提供などでテレビを取り込んでいく」「日本独自の生活に役立つアプリを提供していく」などの、ゲーム以外の見通しが挟み込まれました。中でもご当地アイドル情報を提供する「U.M.U ご当地アイドルうぉーかー」は、過去のマイクロソフトには見られない、ユニークな取り組みだといえます。

もちろん、これにはE3で発信される情報がコアユーザーを対象にしていることや、今回が初めての国内発表であること、さらには日本と海外での市場の違いなど、さまざまな要因を総合的に判断した結果だと考えられます。その一方で「単純に海外で売れたモノを日本で売る」だけではなく、日本マイクロソフトとして独自にマーケティング戦略を行い、Xbox Oneの販促に繋げていく姿勢が提示されました。

その上で個人的には「新型Kinectの存在が改めてアピールされたこと」と、一部繰り返しになりますが「アプリの存在にフォーカスが当てられたこと」の2点を、重要なメッセージとして受け止めています。

ファミコンからPS2世代まで、ゲーム機はPCのイノベーションを凌駕してきました。ゲームプレイに特化して設計され、大量生産が可能なゲーム機では、設計・製造コストなどを抑えられるからです。その結果、ゲーム機は汎用器機(PC)では提供できない、独自の価値を生み出してきました。

しかし2000年代後半から、イノベーションの主役はウェブやスマートデバイスに移行しました。その背景にあるのが半導体技術やインターネットの飛躍的な成長です。Xbox 360が発売された当時、Facebookやスマートフォン、実況プレイ、そしてクラウドファウンディングは身近な存在ではありませんでした。今もさまざまなイノベーションの芽が世界中で生まれています。残念ながらゲーム機ビジネスは、こうしたマイクロイノベーションの波に乗り遅れていると、言わざるを得ません。

その一方で、ゲーム機から生まれたイノベーションの一つがKinectです。これは過去のゲーム機の強みだった「大量生産・大量販売によるコストダウン」という文脈から登場しています。泉水氏は「Kinectを排除したモデルはXbox Oneのユーザー層を広げる選択肢の一つ」であり、Kinect付属モデルが「本筋」であるとアピールしました。

これに対してアプリがウェブやスマートデバイスの文脈から登場しているのは、言うまでもないでしょう。ゲームソフトでは提供しづらい、ちょっとした機能やサービスを提供できます(Xbox OneとWindows 8向けアプリでは高い互換性が保たれているとのことです)。同社ではXbox One向けアプリ開発・サービス向けのスキームを明らかにしていませんが、よりオープンな施策が期待されます。

Xbox 360がそうであったように、Xbox Oneのライフスタイルも5年から10年にわたることが予想されます。この間、ゲーム機は基本的に同じスペックで販売されていきます。一方で5年先・10年先に私たちをとりまくエンタメや、ウェブサービス、デバイスなどを想像するのは困難です。この矛盾を解決することが、現世代のゲーム機に科せられた大きな使命となります。答えは一つではないでしょう。

ゲーム機という制約の中で、ますます早まる世の中の動きに、どのようにキャッチアップしていけるか。そしてゲーム機自体が、そうした新しい流れを作り出せるか。生まれたばかりのXbox Oneが、この課題に果敢に挑戦していくことを期待しています。
《小野憲史》
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