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フェイスブックとも"共闘"でVRを盛り上げていきたい、改めてSCE吉田修平氏に聞く「プロジェクト モーフィアス」

3月にサンフランシスコで開催された、世界最大のゲーム開発者向けカンファレンスイベントGDCにてSCE ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏らによって発表された“Project Morpheus”(以下プロジェクト モーフィアス)について改めて吉田氏を直撃しました。

ソニー PS4
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―――プロジェクト モーフィアスは日本での開発でしょうか?

はい、メカ部分は日本ですが、ソフトの開発はアメリカとロンドンのチームも参加して作っています。そして、ソフトの部分で大事なことは「トラッキング技術」です。

トラッキング技術の背景には、「プレイステーション2」時代の『EyeToy』や「プレイステーション3」時代の「PlayStation Moveモーションコントローラ」(PS Move)など、ずっとカメラを使った3D空間認識技術のアルゴリズムを研究しているアメリカのチームがあります。PS Moveは、その開発過程の商品としてのひとつの結果ですが、今から考えるとVRの入力コントローラーだったと思うんです。

PS MoveはPlayStation Eyeと組み合わせ、コントローラが3D空間上のどこにあり、どちらを向いているのかなどを確認できるものだったんです。PS Moveには、プレイヤーの手の位置がわかるポジショントラッキング技術が活用されています。前のフレームから次へ、ユーザーの手がどのように動いたかを図るのにジャイロセンサーだけでは相対的な動きしかわからないのですが、ある空間のなかで、絶対座標の位置がフレームごとにわかるのがPS Moveだったんです。ですから実は技術的には「ムーブすげぇえ!」とか思っていたわけです。

それで世の中に出したんですが、実は入力側で3D空間の処理ができたとしても、ゲームではテレビの画面(平面)上でしか表現ができませんでした。ですからPS Moveですぐれた技術を使ってゲーム体験を作るということはとても難しかったんです。ゆえに当時はPS Moveのポテンシャルをフルに活かした作品というのは生まれにくかったんです。例えば『スポーツチャンピオン』の卓球のゲームではPS Moveがデバイスとしてすごく喜ばれたんですが、それはやはり正確なトラッキングができたからなんですよ。一方フリスビーとか腕の正確な動きが反映できるもの以外は、残念ながらゲームにうまく活かすことがなかなかできなかった。

しかしプロジェクト モーフィアスは3D空間にユーザー(プレイヤー)が入るということですから、そうなると逆に入力装置も3D空間を扱わないと違和感が出る。それはサウンド面でもあてはまりますね。

高画質ディスプレイと、3Dセンサー、3Dグラフィックスをリアルタイムに再現するパワフルなPS4の組み合わせでバーチャルな映像や視覚が実現できると、重要な要素としてあと足りないのは入力、聴覚(サウンド)です。

つまり、ここに物体があって、ある音を発しているとしますね・・・そうするとコッチから聞こえてこないといけない。音の位相の部分がきちんと反映されていないとVR上では違和感があるわけです。そうすると、その違和感によって現実に引き戻されてしまうわけです。「ああ、ディスプレイでものを見ているだけなんだった・・・」ってことになるんですよ。ですから、そこを全部クリアすべく開発に取り組んでいます。GDCで展示したプロトイプはその3つの要素を全部実現しています。

指摘しないとなかなか気が付かれないのですが、こり3つの要素はSCEとしては実現できていると思っています。しかも、それらすべて、今からもっとよくなるように開発を行っています。ディスプレイ、センサー、ビジュアル、入力、トラッキング、3Dサウンド、すべてにおいて改善の余地があると思います。



■将来を考えると長時間装着しても違和感のないものになる

―――ちょっと話を戻しますがゲーム全編で装着しているものとして楽しむことになるのか。もしくはゲームのシーンによってプロジェクト モーフィアスを装着するような流れになるのか、デバイスを供給する側としての楽しみ方はどんなものになると思いますか?

それは、これから議論していくところだと思っています。将来を考えると、当然ながら長く装着しても違和感がないものになると思いますし、そういうものを創ろうと思っています。しかし、今のプロトタイプで何時間も装着というのは慣れていないと疲れますよね。そういう部分について例えば「装着後30分で休んでください」とアナウンスするかどうかは、これからハードの完成度をどれくらいまで追い込めるかにかかってくると思います。

楽しく使えるかどうかは、ソフトとデバイスの使い方によっても違ってきます。ソフトの部分で違和感が出るケースもありますので、今からノウハウを構築して、デベロッパーのみなさんとそれを共有しながら、ユーザーの皆さんが気持ちよく長く楽しめるようなものを作っていきたいですね。専門家の方とも必要に応じて臨床試験的など行い、その結果も踏まえて考えていきたいです。

まだ世の中に存在しない商品なので、ユーザーの皆さんが楽しく遊んでくれるようなものを、正しく理解して使ってもらうことも考えています。コンシューマー向けのプロダクトでPS4をターゲットにしていますから、接続すればすぐに遊んでもらえるようなものを目指しています。

―――プロジェクト モーフィアスは、人間の脳を直接的に刺激するエンタテインメントだと思うのですが、つまり視覚、聴覚、平衡感覚など人間の本能的な部分を刺激するもので、ややもすると危険な部分もあると思うのですが・・・つまりフィリップ・K・ディックが「アンドロイドは電気羊の夢を見るのか」で書いたようなリアルバーチャルワールドですね。ある種の危険性もあるような気がするのですがいかがですか?

その心配の前に実現したい夢の世界がありますね。今、黒川さんがおっしゃったことは目の前の夢が実現したあとにやってくる心配事なのではないかと思います。

たとえば、われわれが実現したいのは、プロジェクト・モーフィアスをかぶると楽しい世界に行けることです。人によって異なりますが、景色の綺麗なところ、ファンタジーの世界の入り口、火星なんかも考えられますよね。あくまでもVR環境での話ですが、その人がそこに行くことでわくわくできる、例えば自分の能力が高められて、ヒーローになれる体験を提供したいんです。

それをコンシューマーレベルで実現したいのですが、一時期言われた、ネットゲームに夢中になるあまりご飯を食べない「ネット廃人」のようなものになってしまう可能性もありますね。アディクション(嗜癖、中毒性)というのは夢の世界が実現した時にはきちんと考えないといけないと思っています。

また、VR技術が十分でないときや、ソフトが十分に練り込まれてないとき、三半規管がやられてしまうVR酔いのようなものがありますが、これはできる限りおこらないようにしたいです。最初のプロダクトを出すときには実現していなかればいけないですね。ただし普通のジェットコースターに乗っても気持ちが悪くなる人もいるわけですから、100%問題が起こらないようにするのは難しいですね。

ひとつYouTubeでアップされていた面白い映像がありまして、ロシアのショッピングモールで、オキュラス・リフトのジェットコースターのデモソフトを、ジェットコースター嫌いの人が体験しているんですが、コースターの頂上に上がったときに「バン」と背中を押されたら、立っていられなくなって床をのたうちまわってしまうんです・・・周りでみんなが笑っていて、やられた本人も笑っちゃうというものです。そういう体験がどういう影響をもたらすのかって興味ありますよね。やはり、色々なテストをしていますが、ホラー的なものはソフトとしてVRと相性がいいと思いますね。むちゃくちゃ怖いです。テンション高まりますね。(笑)。

―――普通にできない体験 ジャンピングフラッシュのようなものも実現すると思い白いですね。

そうそう、あとは空中浮遊とかハンググライダーのようなエクストリーム系スポーツや疑似的な旅行などもあっているソフトだと思います。

■VRは新しい産業を開拓するようなものに匹敵する!
《黒川文雄》
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