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スクエニ和田会長とやまもといちろう氏が語る任天堂の苦境、これからのパブリッシャー、スクエニの経営戦略・・・黒川塾(16)レポート

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スクエニ和田会長とやまもといちろう氏が語る任天堂の苦境、これからのパブリッシャー、スクエニの経営戦略・・・黒川塾(16)レポート
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1月23日、毎月恒例となっている黒川文雄氏が開催するエンターテイメントの未来を考えるトークイベント、黒川塾が開催されました。新年一発目は会場を新たに御茶ノ水のデジタルハリウッド大学大学院駿河台キャンパスに移し、前スクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏とイレギュラーアンドパートナーズ代表取締役のやまもといちろう氏がゲストとして招かれました。

今回のテーマは「ゲームビジネス潮流観測~混迷の時代に新たな萌芽を探す」というもの。家庭用ゲームからスマートフォンコンテンツまで多様化しつつあるゲーム産業の未来とその経営のあり方について、自由闊達な議論が交わされました。

まずは黒川氏からゲストのお二人が紹介されました。和田洋一氏は2000年に株式会社スクウェア入社、2001年に代表取締役社長に就任。その後のスクウェアとエニックスの合併後、2013年まで代表取締役社長を務め、現在は会長を務めています。黒川氏はデジキューブ時代から和田氏とはお付き合いがあったそうですが、今回は新春一発目のビッグゲストとして登壇を依頼したそうです。

やまもといちろう氏はイレギュラーアンドパートナーズにてゲームの企画・制作を行う一方、ゲームにとどまらずITや政治などについて様々な記事を執筆しているブロガー。黒川塾にはこれまで何度も出演しており、刺激的な発言で会場を盛り上げるレギュラー的存在になりつつあります。

低迷する任天堂の将来!?

ゲストの紹介が終わると、黒川氏は本日の趣旨を説明しました。スマートフォンゲームにおけるビジネスモデルもやや陰りが見えつつあり、先日、発表された任天堂の大幅な赤字決算が話題になるなど、昨今のゲーム業界は混迷の時代に入っているといいます。とはいえ、PS4やXbox Oneといった次世代機の売上は好調ということもあり、今年2014年は業界の大きなターニングポイントに入っていると言えます。そこでまずはゲストのお二人に任天堂の動向についての質問が投げかけられました。

やまもと氏は、任天堂不調説はありますが、莫大な資金力を抱える企業であるため、いずれ盛り返してくると見ています。そもそも現在の任天堂は何度かの危機に直面しつつも、それに乗り越えることで成功してきました。前社長であった山内溥氏が昨年、逝去されたこともあり、これまでの成長時代の変わり目として見られやすいのかもしれないと、やまもと氏は分析しています。和田氏もそれに同意して、「任天堂が潰れるということはない」と主張。そして、次なる挑戦をぜひともして欲しいとエールを送っています。

また、やまもと氏は任天堂だけではなく、子ども向けの事業を行っている企業はどこも低迷していると指摘しています。例えば、「進研ゼミ」で一気に子どもの人気を勝ち取ったベネッセコーポレーションは、子ども向けの事業が低迷しており、大人向けの事業に力を入れています。

とはいえ、子ども向けゲームの任天堂のシェアは未だ衰えていません。気になる動きとしては、ミクシィのスマートフォンゲーム『モンスターストライク』に見られるように、本来ならば任天堂が出すべき内容のゲームが他社から次々リリースされていることです。任天堂の岩田聡社長は依然としてスマートフォンゲームと家庭用ゲームが競合しないという立場を崩していませんが、やまもと氏は「失った市場」があるのではないかと指摘しております。

和田氏はそれを踏まえつつ、ニンテンドーDSやWiiによってゲーム人口を爆発的に増やした任天堂の貢献を認めつつも、それらのユーザーがスマートフォンやタブレットに移っていることを指摘します。特に印象的なこととして、2011年の3DSの発表の数ヶ月後にiPad2が突然、発表されたことだそうです。3DSが「通勤途中にすれちがい通信を行う」、「飲み会の席で通信機能を利用する」といった大人向けのネットワーク機能をフィーチャーしていただけに、似たようなガジェットであるiPadと競合することになりました。結果、DSで獲得したゲーム人口をスマートフォンやタブレットに奪われたと、和田氏は分析しています。

任天堂の今後の課題として、新たなプラットフォームを再構築するため、大胆な改革に乗り出す必要があります。やまもと氏も和田氏も現岩田社長以外にそのような改革を実行できる人材はいないのではないかと見ているようです。

パブリッシャー/デベロッパー体制の疲弊

次に話題は日本のゲーム業界全体に移りました。任天堂の苦境とはすなわち、これまでの日本のゲーム業界の行き詰まりを示しており、特に従来のパブリッシャー/デベロッパーという体制は疲弊してきているとやまもと氏は見ています。

和田氏もスクウェア・エニックスでの経営を振り返って、ゲーム業界のファイナンスの難しさを三点指摘しました。第一にゲームに投資する投資家が集まりにくい点、次にゲームの場合、完成保証や納期保証を設定することが難しく、投資家を募る時にハードルが上がること、最後にパッケージ販売のみで資金回収するのがリスキーであるということです。

この三つの困難のうち、現在でも解消されたのは三番目だけといいます。F2Pやサブスクリプションといった新しいビジネスモデルが登場した結果、リスキーなパッケージ販売での一発回収だけではなく、時間に応じて収益を上げる余地が発生したことが大きいと和田氏は説明します。

また完成保証や納期保証の問題点に関しては、現在、海外で人気が高いKickstarterなどのクラウドファンディングなどの事例が話題に上がりました。クラウドファンディングは消費者に直接リスクを負わせることにより、実質的に完成保証が存在していません。和田氏はクラウドファンディングという手法には、まだ疑問を持っているが、現在のゲーム制作の多様化は歓迎しているそうです。

このようなゲーム業界のファイナンスの変化によって、これまでのパブリッシャーとデベロッパーの関係も変化してきています。デベロッパーに対する資金の投下の仕方は国や地域によって様々ですが、基本的に従来はパブリッシャーが開発コストを持ち、ディストリビュートとプロモーションを行い、その資金力においてデベロッパーが開発を行ってきました。しかしながら、インターネットの登場以降、ユーザーと開発側の距離が近くなり、現在ではデベロッパーが管轄する範囲が増加・多様化しています。結果、パブリッシャーの役割が希薄化しており、その存在価値が疑問視されてきています。

和田氏はこのような時代にスクウェア・エニックスのようなパブリッシャーが「どういった価値をユーザーとデベロッパーに提供できるのか?」ということを真剣に考えていく必要があると訴えます。パブリッシャーの存在価値が問われる中、相対的に比重が上がっているのはソニーやマイクロソフトなどのプラットフォーマーであり、現在、彼らは積極的にインディーのデベロッパーに資金を投下しています。

現在のインディー・ゲームの盛り上がりに対して、やまもと氏は「現在は過渡期である」と見ています。数々のアワードを獲得した『風ノ旅ビト』のような傑作も出現しましたが、今後の成り行きを冷静に見ていくしかないといいます。パブリッシャーの機能が制度疲労を起こしているのは間違いないですが、現在、業界がインディーに大きく傾いているのは従来通りのビジネスモデルがうまく行かないことが明らかであるため、「インディーに張る」ことしか打開策が見つからないからだと分析しています。

和田氏はパブリッシャーの視点から言うと厳しい状況であるが、インディー・ゲームの盛り上がりはゲーム業界にプラスであると見ています。しかしながら、プロモーション中心のパブリッシャーの存在意義は低下しているが、ゲーム制作のマネジメントやIPの調達といった「デベロッパーの側に向いたパブリッシャーの機能」が今後、重要になってくると分析しています。

「3層構造」のスクウェア・エニックスの経営戦略

さらに話はスクウェア・エニックスの経営戦略に移りました。和田氏は様々な不安要素もありながらも、スマートフォンという新しいマーケット、F2Pという新しいビジネスモデルによって今後のゲーム業界の成長を予想しています。実際に最近のスクウェア・エニックスはスマートフォンに対して非常に積極的です。

この点をやまもと氏から指摘され、和田氏は現状をスマートフォンに傾きすぎていると応えています。事実、これまでの経営を振り返って和田氏は、常にリスクを分散することに注力してきたと述べています。2001年に社長に就任されたときは、会社がかなり傾いていたため、それぞれの部署が自信を持って開発できるタイトルに注力させたそうです。その結果、リリースされたタイトルはこれまでのIPを生かした続編がリメイク作中心になりました。

その後、現行機世代では逆に新しいIPを生み出すことに注力したそうです。変革期はリスクヘッジするのが難しいため、キャッシュ・フローのモデルによってポートフォリオを組んだそうです。

具体的には毎月一定のキャッシュが入るMMOを一番安定した基盤として捉え、その上に当たれば大きいソーシャルゲーム、さらに上には「HDゲーム」と呼ぶ大型なタイトルを置く「3層構造」を意識したそうです。

またスマートフォンにおける戦略でも、初期はあえてチームを複数独立して走らせたそうです。そうしなければ、どのチームも同じようなゲームを作ったり、パブリッシャーの権限を持つ部署が勝手にゲームの優劣をつけてしまったりするといいます。

このような3層構造の中で、2010年にリリースされたMMORPG『ファイナルファンタジーXIV』のサービス当初の不具合は大きなダメージであったと振り返っています。一番、安定収益を上げるポートフォリオの土台部分であるにも関わらず、トラブルが頻出。ファイナルファンタジーシリーズのブランドイメージにもダメージもあり、今でも申し訳ないとのこと。シリーズの信頼を取り戻すため、チームに作り直しを命じ、結果、昨年ローンチした『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』は好調であるそうです。

3層構造は6年ほど前から意識したものですが、一番上に位置づけられる「HDゲーム」の良いビジネスモデルはまだ切り開いていないといいます。世界的に見てもAAAタイトルと呼ばれる大型作品はパッケージによる回収以外の主だったビジネスモデルは存在しません。和田氏は今後、そういった既存のビジネスモデルによらない「HDゲーム」を作っていきたいと述べています。

これまでのスクウェア・エニックスの経営戦略を振り返る中で、黒川氏からはアイドスの買収についての質問がなされました。トゥームレイダーシリーズなどで知られるイギリスのデベロッパーのアイドスは2009年にスクウェア・エニックスの傘下に入っています。しかしながら、近年リリースされたアイドスの作品は予想よりも売上が低迷し、スクウェア・エニックスの不振の一因としてしばしば指摘されています。

和田氏はアイドスの買収の理由を以下の3点あげています。ひとつは世界に進出する手がかりとして、欧米のスタジオが欲しかったこと、次にアイドスはスクウェア・エニックスが得意とするRPG以外のジャンルに強いこと、加えて自社IPを持っていること。特に最後のIPの保有に関しては、コードを持っているかいないかに関わるため、ゲーム関連のM&Aには非常に重要な要素であるそうです。

またスクウェア・エニックスが得意とするRPGに関しては、物量で開発できる、長い時間遊んでもらえるといったメリットがあるものの、ゲームデザインが似通ってくるというデメリットがあるそうです。見た目には異なったゲームでも基本構造が同じ場合が多いため、デザインの多様性のため、アイドスのような他のジャンルに強いスタジオを獲得することは重要であると、和田氏は説明しています。

それに対してやまもと氏はこれまでのスクウェア・エニックスのファンはRPGのような作品を求めているのではないか、そういったファンの期待を裏切ってしまう心配はなかったのかと疑問を投げかけました。

確かにスクウェア・エニックスといえばファイナルファンタジーやドラゴンクエストといった人気シリーズのイメージが大きいですが、現在はそれ以外のラインナップも持っていることをアピールするようにタイトルロゴの横にスクウェア・エニックスという文字を表記しているそうです。そして、そういった異なるジャンルのタイトルを意図的にポートフォリオとして組んでいると和田氏は応えています。

今年を占う新年一発目の黒川塾

議論はその後ゲームだけに収まらず、和田氏が今後注目しているメディアであるテレビ、トレンドの移り変わりの速さ、インディー・ゲームと開発者コミュニティの成長、ゲームユーザーのセグメント化など多岐に渡りました。

新たに会場をデジタルハリウッド大学大学院の講義室に移して行われた今年初の黒川塾。そのためか、いつもより「フォーマル」なセミナーという雰囲気が強かったですが、トークセッションの後は恒例の懇親会も開催されました。和田氏とやまもと氏も懇親会に参加され、来場者にとっては直接話をする貴重な機会となりました。
《今井晋》

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