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静音性と冷却性を両立したPlayStation 4 本体設計者が語る改善の歴史

ソニー PS4

静音性と冷却性を両立したPlayStation 4 本体設計者が語る改善の歴史
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東京ビックサイトで17日まで開催されているインターネプコンジャパンの特別講演として、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の鳳康宏氏がPlayStation 4の冷却設計と題して登壇しました。



鳳氏はコリーで複写機の開発に従事した後、1998年に入社。PS2、PSX、PS3そしてPS4とその後の据え置き機の開発に携わってきました。第1事業部 設計部 5課を率い、冷却設計を含めた本体のメカ設計を統括しました。鳳氏はこの仕事の難しさについて「超大量生産が求められ、組み立てや材料確保も含めた設計が必要」と表現しました。



世代を経る毎に大きな進化を遂げていくゲーム機。プロセッサーの性能が向上すれば消費電力が上がり、発熱量も上がるためそれを冷やす努力も増していきます。冷やすには空気を送るしかありませんが、静音性も配慮する必要があります。どのようにして冷却性と静音性を両立していくか、長い戦いの歴史がここにはあります。

鳳氏はまずPS2以降の冷却設計を振り返りました。SCEでは少しでも内部設計が変更されるとVer.A、Ver.B、Ver.Cという風にアルファベットを変更していっているそうです。ちなみに基本的歯に、電源は本体に内蔵することを考えているそうです。電源は外部に持っていくことも可能ですが、外部にもファンを持つような設計となり「よほど消費電力を下げられない限りは」と話していました(実際に薄型PS2は外部電源)。



PS2ではVer.Kまで11通りの設計が存在し、チップシュリンクに伴い冷却系も変更していくという作業だったそうです。初代のPS2を設計した頃はまだ20代だったということで、モンスターマシンの対処に「とにかく精一杯でした」と振り返りました。



しかしPS3はさらなるモンスターマシンとして進化を遂げます。PS2のVer.Aが約80Wの熱処理能力だったのが、PS3のVer.Aは実に490Wとなります。超巨大なヒートシンクに、5本のヒートパイプ、でとにかくあらゆる手段で冷やすのが命題となり「本体の下半分が冷却系のようなマシン」だったそうです。PS2で1つだった温度センサーも4つに増えました。ヒートシンクの製造工程にも工夫が行われ、「とても弱電業界とは思えない」と話していました。



そんなPS3も世代を経るこどにチップサイズが縮小し、必要な冷却性能も減っていきます。Ver.C~Fでは外観のデザインは変わらず中身は変化していき、ヒートパイプは最終的には無い設計となりました。Ver.Gではフルモデルチェンジが行われ、とにかく小型化、高密度が図られました。小さくなったことで、一旦は削られたヒートパイプも復活しました。



現在販売されているPS3はVer.Nで、ここから設計思想が変わったといいます。それまではいかに少ない流量で冷やすか(=騒音を減らす)という点に主眼が置かれていたのが、Ver.Nからは空気抵抗を低減し流量を増やしても騒音が少ない設計が模索されるようになりました。そのためには、ファンを中心に吸気口から排気口まで、本体にどのような経路で空気を流すかという設計が重要になり、巻き貝や台風の目など自然界にあるらせん構造の研究も行われたそうです。空気抵抗値は1.5倍の改善があったとのこと。







そしてPS4ですが、PS3のVer.GとVer.Nの設計を基本的には踏襲し、両者の"良い所取り"を目指したそうです。吸気口は本体周囲を一周する溝にあり、排気口はリアのコネクタ以外の部分となります。吸気口から取り入れられた空気は二手に分かれてメイン基盤を上下から冷やし、ファンを通り、ヒートシンク、最後に電源を冷やして排気口から出ていきます。ファンを挟んで、負圧エリアと正圧エリアに分かれますが、正圧エリアの冷却部と電源部はユニット化され、リークを防ぐ機構となっています(ユニット化はPS3 Ver.Gから採用)。また、正圧ユニットは外部に露出して直接排気を行う仕組みになっていて、PS4でも電源はリアにあり、メインフレームの一部がダクトカバーの役割を果たしています。こうすることにより本体ケースに排気用の穴を開ける必要も無くなり、生産が容易になるというメリットもあるとのこと。





ヒートシンクはシンプルな設計で、ヒートパイプは2本あります。フィンピッチは高速域と低速域でピッチを異なるものにすることで改善されることが分かったそうです。ファンの羽についてもPS4に最適化したデザインを採用。モーターはこれまでの単相モーターではなく三相モーターを採用。コストは高くなるものの、ノイズや消費電力を抑えることができたとのこと。ファンの制御についても階段制御からPID制御に変更。負荷の変動により柔軟に対応できるようになったそうです。

最後に鳳氏はモデル別の性能比較を行いました。体積あたりの熱処理能力では、とにかく処理能力を重視したPS3 Ver.Aに匹敵する性能を持ち、1秒あたりの空気流量では、流麗を意識したPS3 Ver.Gを超える能力を持ち、吸排気口の面積でも外装が穴だらけのPS3 Ver.Aには叶わないものの、自然なデザインながら過去のモデルを上回る面積を確保。最終的に重要な騒音値でも「メニュー画面時」「ゲーム時」の両方でPS2以降で最小の数字となっています。PS4は当初からかなり完成度の高いマシンということが言えそうです。









最後に鳳氏は自身の設計思想として、「理に適い忠実な設計」「技術のみを追求する」という2つを紹介しました。前者については、魔法のような最新技術を使っているわけではなく、丁寧な基礎の積み上げだけであり、「ライバルとの差はどこまでやったかの違い」と述べました。後者については、「速いマシンは美しい、逆ではない」と言い、技術追求の結果が機能美となり、技術に誠実であることが良いものを作るためには必要ではないかと話しました。新ハードやモデルチェンジばかりが注目されますが、常に技術を追求し、目には見えない部分の改善を続けているエンジニアの話はこの業界の強さも感じさせるものでした。
《土本学》

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