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その物語は7年前に始まっていた─ 劇場版「ペルソナ3」へと至る『P3』と『P4』の紡いだ道程

そんな中、現代日本を舞台とし、思春期の少年少女の成長にスポットを当てるという、RPGシリーズでは珍しい切り口ながらも、その発想や確かな完成度が多くのユーザーを魅了した作品に『ペルソナ』というシリーズがあります。

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PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth
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日本のRPGシリーズは、ファンタジーを主体としたものが比較的多く、必然的に息の長いシリーズもファンタジー関連の作品が目立ちます。そんな中、現代日本を舞台とし、思春期の少年少女の成長にスポットを当てるという、RPGシリーズでは珍しい切り口ながらも、その発想や確かな完成度が多くのユーザーを魅了した作品に『ペルソナ』というシリーズがあります。

■シリーズファンから新規まで幅広いユーザーが魅了された『ペルソナ3』
特に2006年7月13日に発売されたPS2向けソフト『ペルソナ3』(以下P3)は、その魅力を更に進化させ、本シリーズの知名度を一段と高めました。

シリーズ作品というのは、続けば続くほどコアなファンが増え新作に対しての賛否両論が出がちですが、ペルソナ同士を合体させることで新たなペルソナを作り出せる「ペルソナ合体」や、『真・女神転生III』の「プレスターンバトル」を進化させたシステムが搭載されるなど、過去作の長所を貪欲に取り込んでもおり、多くのユーザーを魅了しました。

また『P3』は、これまでのシリーズとは趣の異なる面も多々組み込みました。顕著な例としては、約1年というゲーム内での時間経過に合わせて様々な事件が起こったり、イベントが発生したりするなど、より「学生としての日常」に重きを置いた作りとなっている点です。これは、RPGシリーズとしては最新作である『ペルソナ4』にも引き継がれており、今現在の『ペルソナ』シリーズの基礎のひとつとも言えるかもしれません。

この他にも『P3』では、「タルタロス」と呼ばれる巨大なダンジョンの塔を登っていくのが特徴。またペルソナ能力も、主人公を除き、これまでのような付け替えは出来ず、同一のものを使い続けて本人の成長と共にペルソナも強くなっていくというスタイルが採用されています。これにより、唯一自在にペルソナを付け替えられる主人公の立ち回りがより重要性を増すと同時に、プレイヤーの投影対象になりやすい主人公の特異性が強調されて、よりゲームに没頭しやすくなっています。

また『P3』では、コミュニケーションにより重きを置き、仲間や校内の学生だけでなく、老若男女様々な立場の相手と、時には直接、時にはネット越しにその絆を深めていくことができます。この人間関係の経験を積むことで、主人公は文字通り成長していくため、欠かせない見どころのひとつとなります。

■『P3』のEpisode AegisとPORTABLE
『P3』では、ある出来事をきっかけにペルソナ能力に目覚めた主人公が、生徒会長が部長を務める特別課外活動部に参加することとなり、昼は学園生活の中でコミュニケーションを深め、夜は「影時間」に姿を現すシャドウと相対しながら、紡がれる物語が描かれました。

さらに、その後日談となる「Episode Aegis」を収録した追加ディスク『ペルソナ3 フェス』が翌年に発売。衝撃的なエピローグの後を語る物語だけでなく、「Episode Yourself」と名付けられた本編にも改善点や新要素が加わっており、新規イベントの追加や新ペルソナの導入など、見逃せない点が数多く用意されています。

さらにその本編をベースに、一部の演出を機種に合わせて最適化させた『ペルソナ3ポータブル』がPSPでリリース。しかもこちらは、大胆にも女性主人公という要素を追加しており、それに伴いコミュニティの内容なども一部変更するという、刺激たっぷり内容となっています。

■『ペルソナ4』が果たした、深化と拡大
愛されたが故に派生作も多く登場した『P3』の方向性や完成度を受け継ぎ、RPGシリーズ最新作となる『ペルソナ4』(以下P4)が登場したのは、前作発売より2年後となる2008年。今から振り返ること5年前となります。

学園都市を舞台とした前作とはうって変わり、田舎町が活躍の場となります。事情により親戚の家へ1年間預けられた主人公が、「マヨナカテレビ」という奇怪な体験を通して目覚めたペルソナ能力を駆使し、連続殺人犯の正体を掴むべく、仲間たちと共に限られた青春のひとときを駆け抜けていきます。

『P3』では小学生や犬、ロボットといったキャラクターたちも参戦しましたが、『P4』で仲間となる面子は、唯一の例外を除いて全員高校生となり、高校生の日常という部分をより「深化」させた形を提案し、ジュブナイルという側面をより踏み込んで描きます。なお唯一の例外である「クマ」は、「マヨナカテレビ」に住んでいる謎の存在でありながらも、主人公らにとって欠かせない良きチームメイトです。

また、1年という時間軸で描かれる本作の物語性は、前作となる『P3』のスタイルを踏襲しており、そこに天候の概念や複数に増えたダンジョン、そしてエンディングの分岐など、様々な要素を取り入れ、より深く再構築を果たしています。

ですが『P4』が遂げた変化は、深まるばかりではありません。一昨年から昨年にかけては、『P4』を原作としたTVアニメ「ペルソナ4」が放映され、2012年6月には『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』としてPS Vitaに華々しく登場。新規のキャラクターやイベント、アニメーションなど数々の新要素を付加し、まさにゴールデンの名を冠する通りのパワーアップを果たしています。加えて、PS Vitaの性能をふんだんに活かし、通信機能を用いた「救援要請」に判断を助けてくれる「みんなの声」や、ゲームをより深く満喫できる「番組表」など、オリジナル版を遊んだ方も楽しめる仕掛けが満載されました。

またドラマCDやVISUALIVE(舞台)といった他媒体への展開へと拡がりを見せました。その最たるもののひとつとして「その後の話を、始めようか」とのキャッチコピーでユーザーの心を掴んだ『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』(以下P4U)があります。

『P4U』は、そのジャンルを格闘ゲームへと大きく姿を変えながらも、『P4』の直接的な続編として後の物語を描いており、ファンが楽しめる更なる展開と、全く新たなゲーム性による刺激が、『ペルソナ』の世界をいっそう拡げてくれました。しかも『P4U』には、『P4』のメインキャラクターだけでなく、桐条美鶴や真田明彦、アイギスなどの『3』から参戦を果たしたキャラもおり、シリーズのファンには一層嬉しい内容となっています。

『P4U』はアーケードゲームとして登場し、現在PS3とXbox 360でリリースされていますが、この続編となる『ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド』が現在鋭意制作中。追加キャラとして、岳羽ゆかりや伊織順平が発表されており、更なる激戦を楽しませてくれそうです。

ビジュアル面の変化やシリーズの新たな基盤となるシステムを切り開いた『3』に、ゲーム性の更なる深まりと共に、TVアニメ化から格闘ゲーム化まで、実に多彩なマルチメディア展開という拡がりを見せてくれた『4』。それは、このシリーズが長く、そして多くのユーザーに支えられ続けた結果が実を結んだ証に他なりません。

■その拡がりは、劇場へ
そしてその実は種となり、この冬に新たな花を銀幕にて咲かせることとなりました。『ペルソナ3』を原作とした、劇場版アニメ「PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth」が、2013年11月23日から全国26館にて上映を開始します。

影時間という、今日と明日の狭間に潜む「シャドウ」との戦いに、主人公や仲間たち、そして目覚めた「もうひとりの自分」と共に立ち向かう、春の物語。原作をプレイした方は、当時を振り返りながら新たな『ペルソナ3』の物語を楽しむため、そして未プレイの人は、この記事を原作予習のきっかけとし、劇場へと足を運んでみてはいかがでしょうか。彼らとあなたが目覚める物語の開幕は、すぐそこです。


劇場版「ペルソナ3」第1章(PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth)
2013年11月23日公開
配給:アニプレックス
公式Twitterアカウント:@P3movie

(C)Index Corporation/劇場版「ペルソナ3」製作委員会
《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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