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『拡散性ミリオンアーサー』のローカライズ現場に初潜入!日本と繋がりを深める中国最大手「盛大ゲームス」

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オフィス外観
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  • ミリオンアーサー開発風景
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日本だけでなく中国市場でも大成功をおさめた『拡散性ミリオンアーサー』。スクウェア・エニックスの看板ソーシャルゲームです。その影には中国でのパブリッシングを担当した盛大ネットワークの存在がありました。今回チャイナジョイ2013にあわせて同社を訪問し、ローカライズ現場をはじめとした、開発現場を取材することに成功しました。

もともとPCオンラインゲームで急成長した同社ですが、今やオンライン小説・漫画・映画・音楽など、さまざまなコンテンツ配信事業を手がける総合エンタテインメント企業にまで成長しており、ゲーム部門は現在「盛大ゲームス」として分離されています。同社では過去90タイトル近くのオンラインゲームをリリースしてきました。古くは『ゲットアンプト』、最近では『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』の配信も予定されているなど、古くから日本と繋がりの深い企業です。

盛大ゲームの本社はチャイナジョイ会場から車で15分程度の場所にある、上海市の中心部に位置しており、さらにその周囲にいくつもの開発拠点が分散しています。我々が向かったのもその一つで、昨年新設されたばかりの「盛大ゲーム革新院」。その名の通りモバイルゲームをはじめ、新規事業を専門に扱っており、CEOが直轄する超重要部署。モバイルゲームが5本、PCオンラインゲームが3本、そして超大型マル秘プロジェクトが1本、合計で9本のプロジェクトが進行中とのことです。傍目にはそれとわからない地味なたたずまいながら、ビル全体を開発スタジオとして、さまざまな開発チームが働いていました。

■中国独自のカード展開も行う『拡散性ミリオンアーサー』

今回我々が見学したのは、モバイルソーシャルゲーム・ブラウザゲーム・MMORPGの開発部署。モバイルソーシャルゲームでは『拡散性ミリオンアーサー』のローカライズ。ブラウザゲームでは韓国産MOアクション「ドラゴンネスト」のブラウザゲーム版開発。MMORPGではチャイナジョイでも出展された武侠モノRPG「零世界」が開発されていました。いずれも一人当たりの開発スペースが広く、空間がゆったりとられており、日本よりも海外の欧米圏の開発スタジオといった感じ。当日はチャイナジョイのため多くのスタッフが出払っていましたが、残ったメンバーが精力的に業務を続けており、活気が感じられます。

モバイルソーシャルゲーム部署は約30名のスタッフで構成されており、『拡散性ミリオンアーサー』のローカライズもこちらで行われていました。中国では日本などと異なり、Androidの公式アプリサイト「Google Play」が存在せず、一説には100サイト以上ともいわれるアプリサイトが群雄割拠しています。そのため運営やサポートに多大な労力がかかる点が特徴で、そうした業務もこちらの部署で行われているとのことでした。またローカライズの一環として、中国版オリジナルのカードやイベントシーンなども存在するとのことです。我々もオリジナルカードを参照できましたが、日本のものと比べてまったく遜色のないクオリティ。中国トップレベルのアーティストを絵師として起用しており、今後も数多くの要素を加えていきたいと語られました。

なお、未公開カードの公開時期をのぞけば、特に日本側にチェックや報告を行う義務はないとのこと。カードの品質についても、日本側の意見を参考にすることはあっても、基本的には中国側の主導で作業が進められているとのことでした。同タイトルの成功要因について尋ねたところ「ゲームの世界観やストーリーが優れているため」だとか。中国でも多くのユーザーがストーリーやキャラクターの背景情報を楽しんでいるそうです。

他にローカライズのポイントとして「専門用語を一つひとつ丁寧に説明する必要があります」という答えが返ってきました。日本型のソーシャルカードゲームになれているユーザーばかりではないため、カードの強化や合成シーンなどで、チュートリアルをきちんと用意する必要もあるそうです。ちなみに「中国独自のカードを海外、たとえば日本で展開する予定はありますか?」と聞いたところ、「まだわかりません」とのこと。ファンとしては期待したいところではないでしょうか。

■MMORPG『零世界』ではベイシスケイプが音楽を担当

続いて新作MMORPG『零世界』の開発部署を見学しました。本作は中国でおなじみの「武侠モノ」タイトルで、プロデューサーの王佩雄氏が「国内トップレベルのグラフィック」と胸を張る内容。変身システムの「武魂」も中国オンラインゲームで初めての概念とのことです。またワールド作成ツールを開放し、高レベルになると独自のサブワールドをMOD的に作れるようになる機能も加えました。地形や建物、モンスター、ダンジョンなどを自由に作成し、オンライン上で共有して、友達と一緒にプレイできるのです。担当者によると『ワールド・オブ・ウォークラフト』でプレイヤーが自分の地図を作ることができる機能を見て、思いついたのだとか。伝統的なMMORPGにセカンドライフなどの要素を取り込んだ、かなり挑戦的な試みだと言えるでしょう。ゲームエンジンも自社開発のものが使われています。

開発チームも国際色豊かで、元EAや元BLIZZARDの開発者もいるとのこと。開発中に10数名のアメリカ人チームが数ヶ月間滞在し、技術的課題を克服したこともありました。これ以外にも、海外の専門家に来社してもらい、指導を受けることもあるそうです。また音楽についても、『伝説のオウガバトル』『ファイナルファンタジーXII』などの音楽で知られるベイシスケイプの崎元仁氏に発注しており、大作感は十分(崎元氏によると全50曲近くを一人で作曲したそうです)。日本を含めた海外展開については、今まさにマーケティングチームが交渉を進めているところで、まずは国内展開からといったところ。このほかマンガ化や小説化といったメディア展開も視野に入れていると話されました。公式サイトの映像と共に「崎元サウンド」を視聴するのも良いでしょう。

このほか、『ドラゴンネスト』を原作としたブラウザゲームも開発が進められていました。もともと3DアクションのMOゲームですが、こちらは2Dの横スクロールアクション。開発チームは14名で、グラフィックアセットは韓国側から提供を受けているそうです。

また、三国志を題材としたモバイル向けSLGゲーム『御三国』の開発風景も見学できました。5人の武将からなるパーティを操作し、スキルカードを発動させて敵を倒していきます。ゲームエンジンにはUnityが使用されています。なお、運営にはモバイルゲームの経験が豊富な外部企業と提携を予定しているとのことで、盛大ゲームほどの大手にしては珍しいスタイル。これも「ケースバイケースで、もっとも良い形を取っている」と説明がありました。

■「盛大文学」では年収1億円を数える作家も輩出

さて、冒頭にも記したとおり、盛大ネットワークはゲームだけでなく、総合コンテンツプロバイダーをめざして、さまざまな分野に進出しています。その中でもユニークな存在として、漫画や小説の出版を手がける「盛大文学」があげられます。もともとPCやケータイ文学の課金プラットフォームからスタートし、そこからヒット作を連発させて、現在は電子書籍端末を用いた電子出版にも進出。さらにグループ会社を介して、紙の出版事業にも進出してきました。さらに自社ゲームのノベライズや、人気作家の作品をゲーム化するなど、メディアミックスも積極的に手がけているとのことです。

盛大文学の中核をになうのは、オンライン小説の課金プラットフォーム「起点中文網」。多くのネットノベル作家と契約しており、作家数は登録ベースで200万人にも登るといいます。編集部では作家に対して最低限のマーケティング資料は提供しますが、基本的には書きたいものを自由に書いてもらい、ネット上で読者に指示された作品がランキングの上位に来るというアプリストア方式。一方で著作権違反やアダルト作品、体制批判などの作品が掲載されることのないように、学生編集スタッフも雇ってチェックが行われているそうです。

最近では「起点中文網」の成功に伴い、古くから人気のある紙ベースの作家に直接発注するケースも増えてきました。新鋭のネットノベル作家とこれらの作家でコンビを組ませたり、イベントを開催して交流を深めたりといったことも行われています。さらに国内だけでなく海外での出版も支援するのだとか。また盛大文学の傘下に7つのサイトが存在し、そのうち4社から紙製の出版物が出版されているため、ネット文学の中には紙の出版物になる例もあります。小説だけでなく児童文学や漫画なども出版されています。

ちなみに同社マーケティング&パブリックリレーションシップ部ブランドマネージャのLeo氏によると、ネット文学を原作として漫画家された作品の中には、売上が1000万部を越えるものもあるとのこと。さらにネットゲーム化やモバイルゲーム化などによって、年収が1000万元(1億6千万円)を越える作家も存在するそうです。俗に海賊版大国といわれる中国で、著作権ビジネスがしっかり成立しており、1億円プレイヤーまで存在している点に、改めて驚かされました。

ゲームを起点に小説・漫画とメディアミックス戦略を進める盛大ネットワーク。その姿はかつて漫画を起点にアニメ、ゲームと展開してきた日本の出版社を彷彿とさせます。何より大きいのはオリジナルの「原作」を作り出す力を、すでに中国が備えているという事実でしょう。中国でオンラインゲーム市場が成立して、わずか十数年でここまで成熟してきた点に感嘆を禁じ得ません。中国政府の保護主義政策などもあり、日本企業にとっては進出が難しいのも事実ですが、今後も目が離せない存在と言えそうです。
《小野憲史》

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