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初めての方にこそ遊んでほしい推理アドベンチャーゲーム ― 6年ぶりとなるシリーズ最新作『逆転裁判5』開発陣インタビュー(1)

任天堂 3DS

プロデューサー・江城元秀氏
  • プロデューサー・江城元秀氏
  • シナリオディレクター・山崎剛氏
  • 3Dになっても変わらないモーションを魅せるナルホドくん
  • 探偵パートに出てくるナルホドくんは斬新な印象
  • アニメパート成歩堂龍一
  • アニメパート王泥喜法介
  • アニメパート希月心音
  • アニメパート夕神迅
カプコンより、7月25日に発売されたニンテンドー3DSソフト『逆転裁判5』。本作について、プロデューサー・江城元秀氏、シナリオディレクター・山崎剛氏にインタビューを行いました。こちらでは、本作のコンセプトや体験版、アニメーションの導入などについてお話しいただきました。

――約6年ぶりとなる『逆転裁判』シリーズの新作ですが、とくに重視したのはどのような部分でしょうか?

江城:ナンバリングタイトルとなる『逆転裁判5』ですが、今回初めて触れる方でも楽しめる作品にすることを重視しています。『逆転裁判』シリーズは、これまで映画化や宝塚歌劇団によるミュージカル化もありました。ですから、これまで全くゲームに触れていないけれど「最新作が出るなら遊んでみたい」という方もいらっしゃると思うんです。そうしたユーザーがストレスなく遊べる作品というのをコンセプトにしているので、チュートリアルはとくに丁寧に作りました。

例えばシリーズのキャラクターが出てきてもバックボーンをしっかり描き、本作で完結するように作っています。どういったキャラクターなのかはゲームをプレイしていれば自然と分かるようになっていますので、前作を知らないと楽しめないような会話、いわゆる内輪ネタになるようなものは一切入っていません。

ただ会話中に、もっと深く考えると楽しめるようなものはたくさん仕込みました。ファンだからこそクスッとくるような面白さはテキストの裏側に見えるようにしていますので、それだけ見ても意味が分からないというようなものは全くありません。安心して本作から遊んでほしいというのは、しっかりお伝えしたい部分です。

――推理アドベンチャーというと、どうしてもユーザー層が偏ってしまう面もありますが。

江城:本当に何も知らないユーザーさんからすると、漢字4文字の「逆転裁判」というロゴだけでも「難しいんじゃないか」と思われてしまうんですよね。とはいえ、最近はテレビドラマでも推理をベースにしたものが数多く登場していますし、ハードルはずいぶん下がってきていると感じています。『逆転裁判』シリーズは、キャラクターにフォーカスした推理ドラマや駆け引きの面白さといった「個性的なキャラクター」という部分にスポットを当てつつ、ミステリーもちゃんと作っているのでそんなに難しくはありません。

それと、開発側の「縛り」もなくしました。DSで展開していた頃は「緊張感を持たせる」ということからセーブは1つのみ、「一気に遊びたくなるシナリオにする」ということで見返すためのバックログがなかったんです。しかし本作ではセーブを2つ用意し、シナリオもバックログでしっかり確認できます。普段あまりゲームをしない人でも十分楽しんでもらえると思うので、そういう人たちにこそ手にとってもらいたいですね。

――初めての方「でも」というより、初めての方に「こそ」遊んでほしいタイトルになっているんですね。

江城:『逆転裁判5』というナンバリングタイトルですと、なかなか手に取りにくいと思うんですよね。シリーズをきちんと知らないと面白くないんじゃないのかと。今回はそういう側面を払拭したくて、シナリオ面もシステム面もUIのデザインなども一新し、初めてプレイされる方でものめり込めるような工夫をしっかり行いました。そのあたりは安心して触っていただきたいですし、まずはWEB体験版やニンテンドーeショップで配信している体験版を遊んでほしいですね。「これだけ面白いものがあるんですよ、ぜひ遊んでみてください」というのを世の中にどう見せていくか。これが僕たちの仕事だと思います。

――さまざまな体験会を経てから体験版が配信となりましたが、かなり色々なパターンが登場しましたね。

江城:戦略というと大げさなんですが、今回の『逆転裁判5』は、できるだけ早いタイミングで体験版を公開したいという考えがありました。そこで2012年の東京ゲームショウで公開したバージョンでは、まずナルホドくんの復活や新しい逆転裁判に触れてもらう場として出展しました。この時点では、まだオドロキくんは入っていません。それから2013年4月の「ニコニコ超会議2」にはオドロキくんが登場し、どういう経緯で包帯を巻いたのかが分かるようになっていました。

しかし、どちらも来場したユーザーしか遊べません。5月には発売日も公表しましたので、ユーザーさんは当然早く体験したいし、触ってみたくなりますよね。そこで公開したのが、PCで遊べるWEB体験版です。外部の会社さんにもご協力いただき、3Dになって大きく変わったビジュアルをできる限りPCで再現すべく社内のスタッフが細かくチェックしました。もちろんコアなユーザーはすでに体験会に参加していただいている
でしょうから、最後には今後の事件、こういうことがおこりますよというダイジェストをムービーでお見せして、より期待していただこうと。

こうして6月、ニンテンドーeショップでの体験版が配信スタートとなりました。Wi-Fi環境さえあれば誰でもプレイできますし、ニンテンドー3DSでの立体視を実際に体感可能です。こちらもWEB体験版と同じ事をやっても面白くありませんから、オープニングアニメーションをまるっと入れました。「こんなアニメが入って、こういう展開をするんだ」というのをしっかり分かった上で、3DSの立体視による法廷を見てもらおうと。このように細かくステップを踏んだ、異なるコンセプトの体験版を展開してきたんです。

――アニメーションの導入は、本作ならではの魅力の1つですね。

山崎:アニメーションは『レイトン教授VS逆転裁判』で初めて取り入れられました。すごく高いクオリティのアニメを作られている「ボンズ」さんに制作いただけたんです。『逆転裁判5』でもお願いすることになりましたが、すでに『逆転裁判』シリーズの世界観を分かっていらっしゃったのですごくやりやすかったです。

制作にあたり、まずはこちらでゲーム用のキャラクターデザインをして、それを元にアニメを作ってもらいました。ボンズさんの描かれるデザインも非常に素晴らしいのですが、こちらのキャラクターデザイナーが『逆転裁判』シリーズの世界に合わせた絵柄にするため、しっかり監修しています。

2Dと3Dという別の世界なので、イメージが離れると興ざめしちゃうじゃないですか。そのため、できるだけ近づけるように注力しました。ミーティングもしながら打ち合わせていったので、ゲームの世界観とアニメの世界観がずれていないアニメを作れたと思います。

江城:『レイトン教授 VS 逆転裁判』を実際にプレイしてみた時、ストーリー的な部分を重厚に語るところにアニメを使っているなと感じました。ですので『逆転裁判5』では、アニメの使いどころを変えてみようと。

例えば、これまで『逆転裁判』シリーズでは裁判中、こんなことがあったという経緯を説明する時に1枚のビジュアルを使っていました。挿絵とテキストで状況を説明していた部分にアニメを取り入れて、より事件についてイメージしやすくなるようにしています。この部分の状況をしっかりユーザーに分かってほしいとか、ドラマチックな展開がある部分にアニメーションを挿入して、よりテンションを上げてもらえるような使い方をしました。

山崎:ストーリーにのめり込んでいる時、急にゲームからアニメに切り替わるとユーザーさんの気持ちを阻害してしまうと思うんです。そうならない位置にアニメを入れるよう、挿入シーンはとても気をつけて選びました。それと、アニメになって映える部分をアニメにしないと勿体無いですよね。今回は最初からアニメが入ると分かっていたので、シナリオも「アニメにしたら面白いシーンを作ろう」と考えました。

――体験版のような冒頭部分だけでなく、かなりアニメが入るんですね。

江城:1つのエピソードの中に、とても細かくアニメを取り込みました。1分半のもあれば30秒や20秒のものもありますし、尺はすごくバラバラです。法廷バトルのテンポを崩さないために1枚の絵で語る部分もありますね。

その分背景画など、色々なシーンの設定が必要になりました。まずそこの素材をしっかり作らないと、アニメが作れないんです。種類が増えれば増えるほど、場面が変われば変わるほど作らなくてはいけない資料が増えてしまったので非常に大変でした。

山崎:通常のアニメですと、1つの背景を何度も利用することが多いんです。でも『逆転裁判5』では、たった20秒のシーンにしか使いませんという背景がたくさんあるんです。それを1つ1つ作るのは大変だったと思います。

江城:元々クオリティの高いにアニメを作られているのは知っていましたが、ボンズさんはモノづくりに厳しい会社さんです。実際一緒に仕事をさせてらって、こだわりを強く感じました。例えばスケジュール的に厳しいリテイクが発生しても、最終的にはきちっと修正をしていただいています。開発的には「ちょっとこれは間に合わなくても仕方ないかな」と思った部分でも、納品されたものは完全に直っていましたね。

先方のこだわりというか、関わったものは最高のクオリティで仕上げるというスタジオの方針というんでしょうか。製品を買ってプレイするユーザー、映像を見てくれる人に対し、1番良いものを提供したいという考え方、理念には、カプコンのモノづくりに通じるこだわりを感じました。

より深く世界観を楽しめるようになったので、どのような部分にアニメが入っているのか、ぜひ製品版で確かめていただきたいですね。「この状況でこんなことが起きてるんだな」としっかり理解して裁判に臨んだり、事件の推理中に「こんなことがあったから、この証言が怪しい」とか思ってもらえたりしたら嬉しいです。

――ニンテンドーeショップの体験版と製品版では、どの程度の差があるのでしょうか?

江城:製品版のモデルは、体験版よりも更に良くなっています。体験版でも十分なクオリティは出ているんですが、ナルホドくんをはじめとした主要キャラクターは、スケジュールの最終ギリギリまで細かな調整をしています。

公式ブログでキャラクターモデル担当の上田がお話ししていますが、3Dのモデルはたくさんの種類を作ったんですよ。というのも、3Dモデルはカメラアングルによって見え方が全然違うので、カメラが少し振れただけでも違和感を覚えることがあるんです。作り手のこだわりなんですけど、そうした部分にはすぐ調整を入れました。その分、現場は相当苦労しましたね。

――さまざまな体験版に対するユーザーの反応はいかがでしょうか?

江城:当然、良い意見も悪い意見も両方出てくるのは覚悟していましたが、想像以上に良い評価をいただけたので、開発としては一安心というか、ほっとしたところです。「ポリゴンのナルホドくんやゲームシステムが、思ったよりも違和感なくすんなり受け入れられて安心しました」とか「『逆転裁判』シリーズの懐かしい感じ、プレイ所感は一緒だから期待できます」とか「3Dでも違和感なくプレイできた」という感想をいただきました。

山崎:WEB体験版と一緒に、Twitterを使ったキャンペーンもスタートしています。ユーザーに感想とか所感を自由に書いてもらったんですけど、開発陣はみんな見てましたよ。昼休みなど、みんなで感想を見て「あーよかったー」とか言いながら、とても励みになってました。

――キャンペーンでは、ドット絵が入ったオリジナルTシャツをプレゼントに用意していますね。

江城:このTシャツも、デザインは色々と考えたんですよ。普通にロゴだけ入れてもつまらないし、メインビジュアルをプリントしても、普段着るにはちょっと抵抗あるよねと(笑)

コンセプトとしては「普段着」です。普段から着てもそれほど恥ずかしくない、オシャレな感じを目指しました。あのドット絵は、すべて開発チームが作ったんですよ。自分たちが作ったキャラクターをドットにしたオリジナルのものですし、レイアウトも「こんなのどうですか」と開発チームから意見をもらいました。

『逆転裁判』シリーズにはコアなユーザーも多いですけど、比較的カジュアルなユーザーさんも多いのが特徴です。こうしたユーザーさんでも使いやすい、ぱっと見てゲームのグッズだと分かりにくいとうか、ファンだけがニヤリとできるものというコンセプトでグッズを作ることがままありますね。

山崎:あのドットキャラは、被害者を含めて登場するキャラクター全員分を作ったんですよ。ゲーム後半のキャラクターとかはもちろん使えないのですけど、段々作ってるうちに楽しくなっちゃったみたいで(笑)

江城:全員いるの?!(笑)。それはどこかで出したいね。

――それはぜひ拝見したいです!Tシャツのキャンペーンは25日の10時まででしたが、このインタビューを読んでくださってる読者の方に当たるといいですね。

山崎:ドット絵のクオリティはものすごく高いですよね。開発チームの人たちは、自分達のPCの壁紙とかにして楽しんでますよ。

江城:開発チームの壁紙は、絶対外に出せないようなイラストばかりです。開発用に設けた雑談コーナーみたいなところでも、どんどん色んな作品が投稿されていて。才能の無駄遣いというか、息抜きというか、悪ふざけというか(笑)。「好きなことをやりたい!」という爆発力は本当にすごいです。

――それだけ自分達の作品に愛情を持っていらっしゃると(笑)

江城:お見せできないものが多いのですけど、この中の一部は公式ブログに掲載しています。今回はとくに、どんな人たちが開発したのかという「生の声」をファンに見ていただきたいなと。そのため一応チェックはしてますが、内容についてはほとんど検閲していません。よっぽどネタバレはだめですけど、どう思って作ったかという部分はそのまま出しています。ぜひ見てください。

――ここまで開発チームの生の声が聞ける機会は、そうそうありませんよね。

江城:先日、その公式ブログでアートディレクターの布施が1番最初のナルホドくんのモデルを公開しました。下手したらマイナスプロモーションですから、普通だったら外すんですよ。でも、これがあったから今のナルホドくんがあるんだよという変遷を分かってもらえるかなと。最初はこういう方向で作ってみて、違うな、これかな、最終的にはこうなりましたといった感じですね。

熱心なファンの方は「どんなふうに3Dになったんだろう」「どんな経緯でこのゲームが作られたんだろう」と興味があると思うんです。本来なら、発売してから改めて特集を組めるような内容をブログに出していますよ。開発チームは思いの強い人たちが多いので、書いてくれというと、みんなものすごい書くんですよ。モデルやアニメーション、プランナーなど、これから公開となる部分もまだまだあります。

ちなみに今回、僕はあまり書かないようにしています。プロデューサーはこうして発信する機会もありますので、どちらかというと普段あまり表にでない、でも強い思いを抱えて作っている開発チームの言葉を出せるほうが興味深いでしょうし。決してサボりたかったわけではありません(笑)

(続く)


7月31日掲載予定:ココロスコープ&カンガエルートだけじゃない!従来システムやサウンド面もパワーアップした『逆転裁判5』開発陣インタビュー(2)

8月1日掲載予定:ナルホド&ミツルギにヒゲが生えていた?!シリーズ最大のボリュームとなったシナリオにも注目 ―『逆転裁判5』開発陣インタビュー(3)

8月2日掲載予定:シャチを弁護して無罪を勝ち取れ!クリア後にも楽しめるDLCやタイアップも盛りだくさんの『逆転裁判5』開発陣インタビュー(4)
《近藤智子》

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