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次のステージに進むソーシャルゲームの課題・・・スクエニ安藤プロデューサーが考える「スマゲ」の未来

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25日、「未来のソーシャルゲームはこうつくる!クラウドを活用したスマートで迅速なゲーム開発」と題されたセミナーが開催。本セミナーはマイクロソフトのクラウドサービスWindows Azureのコンサルティングやマネジメントを手がける株式会社FIXERの主催によるもの。この中で株式会社スクウェア・エニックスの安藤武博氏は「喋る!スマゲ☆革命」と題した講演を行いました。

「スマゲ」という名前の生みの親である安藤氏は、メディアでの露出も多い名プロデューサーとして知られています。もともとはコンシューマゲームの開発を行なっていましたが、スクウェア・エニックスの特モバイル二部で『拡散性ミリオンアーサー』や『星葬ドラグニル』などスマートフォン向けゲームを幅広く手掛けています。

ソーシャルゲームとクラウドサービスがテーマのセミナーであるため、まずは開発現場から見た時のWindows Azureの良い点と悪い点が説明されました。良い点としては、普段使用しているWindows OSと似ていて使いやすい、サーバー増強に強いといった点が上げられました。他方、他のクラウドサービスと比べて普及していないため、日本語の資料が少ないといったデメリットがあります。とはいえ、今回のイベントを主催しているFIXERのようにAzureのマネジメントを行う会社と組むことで、これらのデメリットは十分に補うことが可能だといいます。実際にスクウェア・エニックスはAzureを採用したオンラインゲームを1年以上運営している実績があるそうです。

■SAPとゲーム会社の戦い
さて、ここからが「喋る!スマゲ☆革命」という本題です。まず紹介されたのは、『拡散性ミリオンアーサー』がPS Vitaで健闘している点です。DAUは2万人と規模は少なめですが、KPIはPCにおけるオンラインゲームに近く、非常にロイヤリティの高い顧客が付いているそうです。ビジネスの規模としては、年間を通してパッケージゲームが30万本売れているくらいのもので、他のPS Vitaのソフトと比べても遜色ない売上です。

このようにゲーム専用機でもスマートフォン発のネットワークゲームが健闘することがわかったため、今後はF2PのネットワークゲームはPS4やXbox Oneといった次世代機とのクロスプラットフォームが当たり前になってくると予想しました。

次にソーシャルゲーム業界を賑わしているネイティブかブラウザかという論点に移りました。結論から言うと、ネイティブゲームはますます勢いを増していますが、ブラウザゲームもまだまだ健闘するだろうと、安藤氏は述べます。今年一番のトピックは、GREEからリリースされたブラウザゲーム『神獄のヴァルハラゲート』が予想以上に健闘している点だそうです。時代の流れとしては、ネイティブで開発していかなければならないが、実はブラウザゲームの息は長く、今後は両者共存していくだろうと、安藤氏は予想しています。

さらにソーシャルゲームで一気に躍進してきたSAP(Social Application Provider)とコンシューマゲームを開発しきた既存のゲーム会社の比較に移りました。何をするにも動きが速いSAPに比べて、ゲーム会社の動きは遅く、スマートフォンゲームの時代にようやく本格的な参入を果たしました。とはいえ、2年間ほど続いたソーシャルゲームパブルは完全にはじけ、新奇性のないゲームはどんどん淘汰されています。

安藤氏は今後のスマートフォンゲームを占うために、あえてSAPとゲーム会社の両者の欠点を挙げました。まずSAP側の課題ですが、何よりも真似ばかりでゲームとしての発明を何もできていないと指摘されました。またコンシューマゲームをプロデュースしてきた人間としては、世界観、キャラクター、物語作りの点でもまだまだ未熟であるように映るそうです。さらにエンジニアの意見を重視しすぎたり、KPIといった数字にこだわりすぎたりといった問題点も指摘され、10年、20年というタイムスパンでユーザーに楽しんでもらえるものを作る努力に欠けていると厳しい意見を突きつけました。

他方、ゲーム会社の課題としては、まず何をやるにも会議が必要で、スピードが遅すぎると指摘されました。また旧来のゲームの文法に従った結果、ゲームのテンポが悪すぎたり、ユーザーにとっては必要のない部分を作りこみすぎたり、といった問題点があります。その点では、データから判断するSAPのゲームデザインの鮮やかな切り落とし方は勉強になると述べています。

またサーバーなどのインフラ面での技術力は、まだまだSAPに負けているそうです。人材面も足りておらず、やはりデータマイニングの専門家がいるようなSAPは強いと述べています。さらにゲーム会社にはマネタイズについてのノウハウが少なく、これまでのパッケージゲームのスキームにこだわりすぎている部分があるといいます。ゲーム会社の人間がフリーミアムゲームのユーザーを理解できていない場合も多く、ユーザーにとっては課金したいのに課金ができないということもあるそうです。

結論としてはSAPもゲーム会社もそれぞれ課題が多く、「どっちもどっち」であると安藤氏は述べています。よって、これからはSAPとゲーム会社の協業案件が増加するだろうと、予想しています。これまでは人材の引き抜き合戦で対立していた部分が大きいですが、これからは両者が補い合いながらやっていくこと案件が増えていくそうです。とはいえ、実態としては「ゲーム屋がマネタイズわからないのでSAPに泣きつく」という事例が多いと安藤氏は述べています。

■SAPとゲーム会社の協業は長続きしない?
このようなSAPとゲーム会社の蜜月がしばらく続くと予想する一方、協業案件の多くは長続きしないであろうと安藤氏は予想しています。その理由としては、一言で言えば「イデオロギーが違いすぎる」からだそうです。つまり、ゲーム会社とSAPが持っている価値観が対立していることを安藤氏は指摘しています。

例えば何が面白いかという点に関しては、直感や主観性を重視するゲーム会社と分析や客観性を重視するSAPでは考え方がかなり異なるといいます。多くのゲーム会社のプロデューサーは、自分が面白いと思えるものを作っているのに対して、SAPでは常にマーケティングが先行します。そのため、SAPが開発するゲームは無難なものが多く、目の覚めるような発明はほとんどありません。

また仕事に対する価値観も異なるといいます。ゲーム会社の人間にとっては、優れた作品を作ることそれ自体が報酬ですが、SAPにとってはゲームが売れて儲かることが報酬と考えています。このような価値観の違いがあるため、SAPとゲーム会社の協業案件は徐々に対立する部分が表面化してくるのではないかと、安藤氏は予想しています。

最終的には、それぞれ自社だけでスマートフォンゲームを開発して、運用していくことが求められると、安藤氏はまとめています。お互いの苦手な部分を埋め合わせる補完関係が成り立っていることは、スマートフォン市場におけるゲーム産業がまだまだ未熟であることの証左であると、安藤氏はみなしています。

■次ステージに移行するスマートフォンゲーム
実際にいち早く自立してスマートフォンゲームを開発して大ヒットを飛ばした事例として、ガンホーの『パズル&ドラゴンズ』が挙げられました。『パズル&ドラゴンズ』は開発から運営までガンホーが行っており、さらにGREEやMobageといったプラットフォーマーの力も借りていません。それどころか、既存のソーシャルゲームプラットフォームを破壊する勢いで現在もヒットを継続しています。つまり、スマートフォンにおけるオンラインゲームの完成系をいち早く作り出したのが『パズル&ドラゴンズ』のヒットの一因であるだろうと、安藤氏は分析しているのです。

このような自力による開発の重要性は、ファミコンの黎明期である80年代前半を思い出せば当然のことであると安藤氏は述べています。当時はアーケードでヒットを飛ばしたインベーダーゲームをいかに超えるかがゲーム会社の課題でありました。ナムコやコナミ、カプコンといった企業がしのぎを削り、その後のコンシューマゲーム産業が成立したというわけです。

よって、自力で高品質なスマートフォンゲームを開発する会社が増えることで、これから本当のスマートフォンゲーム市場が成熟していくと安藤氏は見込んでいます。ゲーム会社とSAPの価値観はどちらも大切であると述べる一方、安藤氏は自らを「ゲーム屋」として認識しつつ、これからもスマートフォンゲームに尽力していくそうです。

事実、『拡散性ミリオンアーサー』もこれまでのゲーム作りと同じくらいの設定資料などを用意して、マーケティングに頼るのではなく、日本人にしかわからないものを作ったそうです。そのため、海外展開についてはほとんど何も考えていなかったそうですが、現在は韓国や台湾で高い人気を獲得しています。

ゲーム会社としてのプライドである「とにかく面白いものを作る」という姿勢を保ちながら、今後はSAPとゲーム会社がお互いに刺激を与えつつスマートフォンゲームを盛り上げて行きたいと述べ、安藤氏は講演を終えました。
《今井晋》

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