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ゲーム音楽から語る文化論、尺八の裏話、菊田氏のファッションの真相まで?!―「Playing Kikuta Works!」ライブ後インタビュー

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ロック調で一枚
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7月20日に吉祥寺CLUB SEATAにて開催されたLIVE「Playing Kikuta Works!~Melodies of Mana~」。終演後、作曲家・菊田裕樹氏と尺八奏者の神永さんにお時間をいただき、ライブの感想やゲーム音楽の文化などについてたっぷりと語っていただきました。

菊田裕樹氏(作曲家):『聖剣伝説2』『聖剣伝説3』『シャイニング』シリーズの楽曲を制作。ニコニコ動画上の楽曲投稿、コミックマーケットなどのイベント参加にも積極的で、この夏のC84では人狼ゲームのイメージBGM「人狼伴奏音楽集」を頒布予定。
神永“JOHN”大輔さん(尺八奏者):SUPER JOHN BROTHERS(略、SJB)のリーダーであり尺八奏者。国内では大学での講師も務め、海外での公演も盛ん。



■『聖剣伝説3』をやらなかった理由は世界観と楽器編成の違い
――まずは終演後の感想をお願いします。

神永さん:この企画(Playing Works)では、いつも僕が曲を選んでいるんですが、今回は曲を絞るのにすごく迷いました。『聖剣伝説2』って捨て曲がないんですよ。どの曲が飛びぬけているとかではなくて、みんながいい曲なので、「この曲やらないのになんでこっちやるんだろう」とか逆に「こっちやるのになんでこっちやらないんだろう」みたいな感じで、結局全部やるしかないということに。編成的にやれそうな曲を選んでいって、実際初めてリハーサルに入った時は、メンバー一同最初は絶望感に苛まれました・・・。「これどーするんだ」「できんのこれ?」みたいな。

菊田氏:ですよね。

神永さん:MCの中でもありましたが、対旋律とかリズムのすべてがメロディというような感じなので、音楽的な予測が普段どおりでは成り立たないんですよ。しっかりそれ用の対策をしなければいけないので、限られた時間でどうやっていくかと。最初は曲も絞れていない中で、でもやっぱりこの曲数をやらなきゃだめだというのもありましたし。でもあるところで急に菊田さんの音楽が見えてきて、そうなってからリハーサルでも演奏するのが楽しくて。最終的にライブでもすごく楽しく演奏させていただいて、それがお客さんにもうまく伝わったのかなと思っています。やっぱりゲーム音楽のライブって慣れない方が多くて、大抵シーンってなって終わってしまうんですが、今回はお客さんが拍手してくれて、「うおー!」って盛り上がってくれるところまで行ったっていうのが嬉しかったですね。あとMCでも、菊田さんが色々お話ししてくださったおかげで、リラックスできました。

――選曲については、泣く泣く曲を選び取ったという感じだったんですね。

神永さん:そうですね。最初に一番苦しかったのは、『聖剣伝説3』を今回やらないっていう決断をすることでした。『3』からやりたい曲もいっぱいあったんですが、多分『聖剣伝説2』と『3』って世界観も楽器の編成も違うので、やりたいことが変わってくるんです。次『聖剣伝説3』をやらせていただくとしたら和太鼓を入れたいですね。

■実はすごかった尺八パフォーマンス
――楽器といえば、まず尺八自体が珍しいのでおもしろいと思いました。

菊田氏:尺八がおもしろいのは、人間の表現が直接出る楽器だからだと思う。息をずっと吐いてるわけだから、バテ方もほかの楽器と比べて大変だと思うけど、それで人間の力を使って表現しているということにはやっぱり意味があるし、それはいい部分かな。


※尺八とは
前に4つ、後ろに1つ孔が開いていて、リードがないタイプのエアリード楽器。フルートと同様、息を入れるだけでは音は出せないが、逆に少ない穴数でも音色や音域の幅を広げられるのが特徴。


神永さん:尺八ってすごくシンプルな楽器なので、マニュアル的というか、やろうと思えば何でもできちゃう楽器なんですよ。ゲーム音楽っていろんな笛の音がありますけど、それらを幅広く表現するためにちょうどいい楽器なんじゃないかなと思います。最初から、ゲーム音楽を吹きたくて尺八を始めたっていう予感みたいなものはありますね。

菊田氏:それがおもしろいよね、本当に。

――神永さんは演奏中すごく楽しそうでしたね。尺八ってあんなに動けるんだと思いました。

神永さん:いや、尺八って実はそんなに動けないんですよ。口と手の距離が固定だから、首を振る以外の動きができなくて、困るんです。ステージ上では目線で会話してるので、首を振っていると「まだだ、俺のソロがまだだ」って言ってるように思われたりして…。

(一同、笑)

神永さん:あとは吹き込む角度で音の高さが変わるので、常に周りにあわせて、ピッチをそろえています。ちょっと口の位置がずれると音の高さが変わっちゃうのであんまり動けないんですけど、でも気持ちを出したいなという部分がすごくあって。こういうライブの時は、お客さんにも体を動かして欲しいなーと思うので、なるべく動かせるところは動かせるようにという意識はしています。尺八は穴が5つしかないので、穴を1/3とか2/3とかふさいだり、角度とか色々調節して音を出しているんですよ。

菊田氏:尊敬する。すごい人だったんだね!

神永さん:菊田さんの曲は、途中で半音上がったキーになってまた戻る、みたいなのがあるんです。尺八はあれがすっごい苦手で…。

菊田氏:いや、本当によく吹いたよね。

神永さん:全部の穴が半分ずつとかになっちゃうこともあります。

菊田氏:ジョイントをちょっと伸ばすとかできないの?

神永さん:フルートはそれがあるんですけど、尺八はないので出来ないんですよー。

――演奏の途中で尺八を変えていた時があったように思うんですが。

神永さん:はい、今日は3本使いました。

――その違いというのは?

神永さん:キーが違います。「この曲はこの尺八を持てばやりやすい」っていうのがあるんですけど、菊田さんの曲の場合容赦がないのは、持ち替える隙もなく転調が入るってことですね。結局1本で対応しなきゃいけない時が今日もかなりありました。

――マリンバもかなり激しかったですね。

神永さん:細谷さんは素晴らしい(マリンバ)奏者です。最初は控えめに、楽そうなものを3曲くらいお願いしたんです。でも最初のリハーサルでこれは大丈夫だなと思って追加したら1日で音を取ってきてくださって、それで「危機」とか「愛に時間を」とか大変なのもお願いしました。


※マリンバとは
木製の音板打楽器のひとつ。音域が最も広く、メロディーと和音の両方を演奏できるため、マリンバだけで独奏することもできる。「マレット」という、棒の先に柔らかい素材の玉がついた道具で叩く。



「NAVEN」



■「死なないように」地獄を目指す
――それではSUPER JOHN BROTHERSのサウンドを聴かれて、菊田さんはいかがでしたか?

菊田氏:やっぱ狂ってるよね。

(一同、笑)

菊田氏:そもそもやろうと思うことがおかしいからね。すごいと思います。

神永さん:最初はメロディだけ原曲どおりやって、コードをつけて違うアレンジにするとかも考えたんですけど、やっぱり『聖剣2』の曲をやるならあの形だったんです。「逃げちゃだめだ」と。

菊田氏:それがすごい。それって見えてるじゃないですか、地獄が。見えてるのに、そこに行こうっていうのが素敵だと思うし、表現者はそうじゃないといけないよね。

――それは作曲をされる時もそうなんでしょうか。

菊田氏:そうそう、すごい大変だとわかっていても行くの。だから人の心を打つんだと思うよね。まあそれで死んだらしょうがないので、「死なないように」って言いながら頑張るんだけれども。

――死ぬと言えば、アンコールで「死んじゃうほどのことじゃない」が飛び出すとは驚きでしたね。

菊田氏:あれは本当によかったよね。みんなで合唱していただいて、本当に嬉しい。

神永さん:「死んじゃうほどのことじゃない」は『聖剣』シリーズの楽曲とは違って急に力が抜けてますよね。でもシンプルなんですけど、楽曲としてはしっかり固まっている。

菊田氏:いい曲でしょ?





■40歳からの「渋谷系」
――作詞はまた作曲とは違う労力を使うと思うんですが、どうでしたか?

菊田氏:やっぱり楽曲の才能と作詞の才能は別ですね。僕は長いこと詞が書けなくて、「俺には詞が書けないんだなー」と思っていたんだけど、ある時突然イナズマが降りてきて、「ああできる」って。人間やっぱり若い内は色んなものに縛られている。自分はこういう人間だとか、こんなことがいいんだとかいう考えを持っているんだけど、本当はそんなものなくても「死んじゃうほどのことじゃない(笑)」40歳を越えると、どんどん自由になる。

――40歳がタイミングですか。

菊田氏:人によって違うかもしれないけど、僕は40歳を越えたときに、生きていくカウントから死ぬまでのカウントになるんだなと気づきました。そうしたらなにをしてもいいんだし、人生は楽しむことが大事なんだし、どれだけ世の中を自由に生きるかってことがいいんだって分かってくる。例えば服も、「なにを着ようが関係ないんだ」って思うようになる。だから僕はある日「そうだ渋谷系の格好になろう」思い立って、雑誌を買ってきて、「これ全部着よう」ということをしたんだよね。

神永さん:確かに昔の写真を拝見すると劇的なイメチェンを遂げてますよね。

菊田氏:昔はそんな格好しなかったけど、ある時「渋谷系になろう」「どうしたらいいだろう?」「まず美容院に行こう」という感じで、まず表参道の美容院に行って、それから109に行って、上から下まで全部服を買った。似合う似合わないじゃない!着てみると、おもしろいよー!自分の好みからも自由になれるんだよ。人からどう見られるかとか関係なくて、何でもいいんだってことだよね。

■日本の血に流れる「ゲーム音楽」のルーツ
――菊田さんはSJBのリハーサルを見に行かれたことはあったんですか?

菊田氏:いえ、今日初めて。すげえなーと思ったね。やっぱり人間のやる曲じゃないので。

神永さん:菊田さんの対旋律というのは、実は尺八の古典と同じなんです。琴と尺八と三味線でやる「三曲」という音楽は、みんな変拍子といえば変拍子なんですけど、フレーズが合わさってできています。ゲーム音楽が日本人らしさにすごく入り込んでいるんじゃないかなというのは感じますね。

菊田氏:そうだね。昔、恵比寿に異国のバーがあって、バンドがカウベルを叩きながら歌っていたんだけど、それを見たときに「これは日本人には絶対できない」ってわかった。音楽って血なんだって思ったな。

――ブラジル人の持つリズム感のようなものですね。

菊田氏:そう。日本人には絶対できない、無理。でも逆に、彼らに無理なことが日本人はできるから。

神永さん:日本のゲーム音楽ってやはり日本人だからできあがったって要素がすごくあると思っています。僕たちもまた日本人だから、まだ菊田さんの曲が演奏できた。これは他の国の人がやろうとすると、もっと訳わかんない部分が色々あって難しいと思うんです。ゲーム音楽を演奏してる海外のバンドっていっぱいあるんですけれど、そういう中で日本から日本人が演奏するバンドとして世界に発信したいな、と。ゲーム音楽を日本人が演奏するのって、ジャズを黒人が来て演奏しているのと同じような感じで、「本物だー!」と感じると思います。それをすごくやりたいです。

菊田氏:もちろん売れるウケるかは大事だけど、根本に何を表現したいかっていうのがあった場合は、そもそも自分はどんな人間なのかと。「日本が」「和風が」っていうのを振りかざすんじゃないけど、自分の血があるんだよ。

神永さん:ゲームがあって、そこでゲーム音楽というのができあがって、たくさんいい曲があって、それで育った人たちがいて、僕たちみたいな演奏したいって人たちが現れて、それを聴きたいって人たちが集まってくれるというのは、自然な流れだと思うんですよ。僕はアメリカの教会とかで演奏することもあるんですけど、向こうの教会ってすごく生活に馴染んでいて、みんなそこに集まってゴスペルをやっている。何かみんなで共有しているものがあって、音楽で天にあがっていくんだけど、ゲーム音楽のライブにはアメリカのゴスペルと同じものを感じます。同じ知識を共有していて、集まった場でどんどん上をめざせるみたいな。教会に集まってゴスペルをやったり聴いたりするのと一緒じゃないかなと思うんですよね。

菊田氏:僕たちにとってはゲーム音楽って、自分たちのルーツミュージックのひとつなの。

神永さん:ゲーム音楽は自分が好きだからやっていて、ライブをやっていて嘘じゃないなって自分でも思える。

菊田氏:いいね、いいね!

神永さん:ゲーム音楽ってやっぱり僕たちのルーツになっている気がするんですよね。体に染み着いていて。僕はゲーム音楽から離れた仕事をするときもゲーム音楽くささが出ちゃっている気がする。そのゲーム音楽らしさってなんだろうと考えると、結局「日本人」ということなのかもしれない。

菊田氏:土地もそうだけど、文化とか時代とか、色んなものがぎゅうっとなったものが中に入るんだね。

神永さん:最初に、「うおー」っていう鳴き声(「天使の怖れ」)を流してもらったじゃないですか。やっぱりあれが流れた瞬間に、自分のその当時の部屋が出てきましたね。

菊田氏:CDを買ってきたら3、4回聴いて、あとは仕舞っちゃうけど、ゲームは違ったんだよ。買ってきて、50時間聴くんだよ。8つの子供が50時間聴くんだよ?それはすごいし、僕らはその責任を負っていると思っていた。それに値するだけのもんじゃなきゃだめだって。何十年か後に聴いても、「あ、本当にすごかったんだ」と思ってもらえなければ、それは嘘だよ。

■これまでとこれからの20年
――最後に、『聖剣伝説2』が20周年ということなので、それにちなんでこの先20年の抱負をお願いします。

菊田氏:生きているのか?!

一同:生きていますよ(笑)

神永さん:20年なんて死んじゃうほどのことじゃない(笑)。

菊田氏:正直、自分は21世紀見ないと、30歳なんてないと思っていたから。そう考えた中で、今の若い人みんなが持っている問題が本当は問題じゃない・どうでもいいんだということを見せたい。何かの形でちゃんと見せて、「あ、そうなんだ」って思ってもらえたら無駄がない。僕は、色んなことに縛られていて、自分はこういう人間だって思っていて無駄がいっぱいあったの。もっと早く自由になればよかったと思った。もっとすごいこと・好きなことがいっぱいできた。そのチャンスを封印したから、若い人にはもっともっと自由になってほしくて、そのためのことができたらいいなと思う。

――それはやはり音楽で、ですか?

菊田氏:音楽に限らずだけど、今は音楽が一番できるからやっているって感じだよね。本当は書いても、話してもいい。今日も、話を聴いてわかる部分もあったかもしれないし、何かのきっかけになるかもしれない。そのちょっとしたことが大事なのよ、人生って。舵をきゅって変えて、行き先はぜんぜん違うかもしれないけど、そのためのちょっとした何かになりたいと思うよ。

――ライブ後に菊田さんがお客さん1人1人とすごく真剣に話をして、写真も撮ってサインも書いて、ということをされていて。その時間ってライブ中と同じくらい重要だなと思いました。

神永さん:その時間もちゃんと作った方がいいですね、Playing Worksシリーズは。

菊田氏:あの30秒で、彼らの人生変わるかもしれないんだから。すごい意味があるんだよ、それは。僕はやっぱり表現者で、表現するから、届いてほしいじゃん。で、届いたらその人に幸せになってほしいじゃない。その「幸せになる」ってことが大事なんだよ。音楽は方法だから。その最後の瞬間に立ち会えたら、最高だよね。

――神永さんはどうですか?

神永さん:20年か…。これまでの20年を考えると、20年前の自分に自慢したいですね。今『聖剣2』やって曲聴いているけど、20年後その作曲家の人と会って、一緒にライブやってんだよって。もう生きる希望湧きまくりですよ。

(一同、笑)

神永さん:すごく幸せなことですね。個人的に今幸せなので、あとは元々自分の中にある「ゲーム音楽を色んな人に広めたい」っていうのをもっと。一生の仕事だと思っているので、20年後もそうだと思うんですけど、広げていけたらいいなって。いい曲なんだから100年後も200年後もあってほしいよね、っていうのは純粋に思います。

菊田氏:時代を超えられたらいいなと僕も思いますね。

――ありがとうございました。

今回はおよそ1時間弱にもわたるロングインタビューとなりました。どの質問にも丁寧に、熱く答えてくださった菊田裕樹氏と神永”JOHN“大輔さんに感謝いたします。音楽に限らず表現が伝わる相手のことを考えておられる菊田氏と、ゲーム音楽の伝道を世界という大きな目で構想されている神永さん、お2人のこれからのご活躍にご期待ください。
《井口 宏菜》

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