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【SIG-Glocal#11】レーティングへの取り組みと未知のアフリカゲーム市場について・・・GDC2013報告会

NPO法人IGDA日本のグローカリゼーション専門部会は、2013年05月25日(土)に東洋美術学校で「GDC2013ローカリゼーションサミット報告会」を開催しました。報告会で3番目に登壇したのは、IGDA日本の代表を務める小野憲史氏。

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NPO法人IGDA日本のグローカリゼーション専門部会(SIG-Glocalization)は、2013年05月25日(土)に東洋美術学校で「GDC2013ローカリゼーションサミット報告会」を開催しました。報告会で3番目に登壇したのは、IGDA日本の代表を務める小野憲史氏。小野氏はレーティングに関するセッションとアフリカのゲーム産業のセッションの2つを取り上げて報告しました。

レーティングを取り扱ったセッションは、MicrosoftのZeb Wedell氏が「Leveraging Geopolitical Content Review & Worldwide Age Ratings Submissions」と題して行ったものです。家庭用ゲーム機での炎上、回収騒ぎは少なく見積もっても70タイトルはあり、それらを鑑みるとレーティング対応だけでは潰すことのできない問題が多数存在し、回収のようなトラブルを回避するには、地政学的な諸問題をクリアしておかなければなりません。

ゲームが起こしたトラブルで著名なものでは「イスラム教に対する不適切な表現があった」として、発売後まもなく全世界で回収となったXbox用ソフト『格闘超人』が挙げられます。また、パキスタン軍をネガティブに描いたとしてパキスタンで回収となった『Call of Duty: Black Ops 2』のように特定の地域で問題が噴出する場合もあり、販売エリアのゲームファンはもちろんのこと、ゲームファン以外の層にも誠意ある対応をすることが重要であるとのことでした。

こういった問題に臨むにあたっては、ついつい金銭的な事情に目が行きがちなのですが、ブランドイメージや顧客との関係といったように金銭で解決できない問題も多々あるので、それらを大切にして考えていく必要がある、とWedell氏は主張したそうです。具体策としては、ゲームの開発段階から地政学の専門家を入れて問題の早期発見に努めることが特に有効なそうで、事例のデータベースを作って社内資産とすることや、他社の事例を情報収集して自社のコンテンツ開発に活かしていくことも有効だということでした。

レーティングについて話を移すと、そもそもゲームに関するレーティングが多数あるうえに、それらがどんどん変わっていってしまうという側面があります。さらにプラットフォームの多様化、デジタル配信の普及によるリリース地域の拡大などにより、当初想定していなかったような地域で予期せぬ問題が生じる可能性もあるというのが現状です。したがって開発側の意識に合わせた内容ではなく、顧客側の意識に合わせた内容にしていかなければなりません。

世界各国のレーティングもさまざまで、国によって規制のかかる内容が大きく異なります。アメリカでは性的な描写への規制が強く、そこに言葉、暴力表現が続きます。講演中「暴力、それに続いて全部」と冗談めかして形容されたドイツは規制が厳しいことで知られていますし、ホラーゲームはレーティングが上がりやすいという韓国のような特殊な事例もあり、レーティングと一口に言ってもその内容は多岐に渡ります。また、日本で言うCERO C相当の内容はレーティングによって細かく分類されることが多いため、あらかじめ注意を払っておく必要があります

Wedell氏は販売地域の顧客との信頼構築が重要である、とセッションを総括し、レーティングそのものについても、レーティングから外れた部分に目を向けるにしても顧客目線に立った動きが求められることを強調しました。

レーティングに続いて小野氏が報告を行ったのは、「The Emerging Landscape of African Game Development」というセッションです。GDC初のアフリカからの講演者によるセッションということで、アフリカのゲーム産業を概観する内容となっています。

アフリカで初めてと言われるPCゲームがリリースされたのが2005年です。その後、2007年に入って海外のレースゲームの下請けが行われ、その頃から南アフリカのスタジオを中心にグラフィックについては国際分業に参加できるほどの力をつけるに至ります。2005年にはUBISOFTのスタジオも設立されたほか、今ではUnityの普及によってモバイルゲームの開発が徐々に盛んになりつつあるのだそうです。

アフリカは多数の国と民族からなる広大な地域であるため、リリースされるゲームにもお国柄が出るとのこと。例えば北アフリカや南アフリカはどちらかというと写実的なゲームが多く、そういったゲームを開発する技術力も備わっています。一方の東アフリカや西アフリカではアフリカンテイストのゲームが好まれる傾向があるのだそうです。また、ローカライズにあたっては言語の選択も重要な問題ですが、国に合わせて英語(ガーナやケニア)、フランス語(セネガル)、スワヒリ語(ケニアやウガンダ)の3つをベースに考えておくのがよいとのこと。

ジャンルについては、数学を学ぶゲームやゲームデザインを学べるようなシリアスゲームがまず人気があるそうで、これにはそもそもゲームを開発できる人材がまだまだ少ないといった背景があるそうです。また、学校教育に使えるようなゲームも強く求められており、助成金がつくこともあるとのことでした

ゲームと実在の歴史を絡める手法は今でもよく見られるものですが、Letiではヨーロッパ由来のコンテンツだけではなく、アフリカ由来のコンテンツを作ることも重要と考えています。ただし、エジプトの「ファラオ」といえどもアフリカでも知らない人がいるといったように、地域によってその認知度には偏りがあるため、それらを今風にカルチャライズし、ゲームや出版物に登場させる試みをしているとのことでした。

Naija Game Evoのような400名規模のゲームイベントも行われるようになってきたことや、IGDA Cape TownやIGDA SENEGAL、IGDA NIGERIAといった開発者コミュニティも設立されていることもあり、ゲーム産業が盛んになりつつあるのを感じさせます。しかし、その一方で人材の不足、開発リソースやマーケットが分断されているといったような問題を抱えているとのこと。このため、ファンディングやパブリッシングを行う会社、またコミックや映画のローカライズ会社などがあればより望ましいと、セッションを行ったLetiは今後について語りました。
《千葉芳樹》
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