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【SIG-Indie第10回勉強会】PS Mobileで世界同時配信を目指す国際的な同人サークル

本勉強会は「PlayStation Mobileの現状と可能性」と題され、今後、インディーゲームのプラットフォームとして期待されるPlayStation Mobile(以下PSM)についての報告が行われました

ソニー PS3
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6月1日、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のSSJ品川ビルにてIGDA日本の同人・インディーゲーム部会(SIG-Indie)が主催する第10回研究会が開かれました。本勉強会は「PlayStation Mobileの現状と可能性」と題され、今後、インディーゲームのプラットフォームとして期待されるPlayStation Mobile(以下PSM)についての報告が行われました。勉強会の後半では、実際にPSMでゲームを開発している同人・インディーズゲームの開発者の方々が、様々なノウハウやこぼれ話について語りました。

同人ゲームサークルのぜろじげん代表のマサシロウ氏は、現在開発中のPSM向けゲームを多言語対応版として全世界同時リリースすることを目指しています。前作の声優学校を舞台にしたアドベンチャーゲーム『こえんちゅ!代乃木声優物語』も日本語・英語・スペイン語対応でリリースするなど、海外進出に積極的な同人サークルです。

「ぜろじげん」というサークルの名前は「どこにもないもの」を作るというモットーに由来しており、メンバーの6人は全員社会人です。マサシロウ氏の趣味はポーカーとのことですが、全日本ポーカー選手権2012で優勝するなど、趣味のレベルにとどまらないようです。アメリカのAnimeExpo、タイのMangaMarche、マレーシアのComicFiestaなど、海外のアニメ関連のコンベンションにも多数出席して、まさに国際的に活躍しています。

今回の報告では、現在開発中のPSM向けゲームの紹介、開発してみた感想、多言語開発の取り組みなどが説明されました。

■同人ゲームを世界同時配信
現在開発している『RoyalRedRoyal』は、全年齢向けのアドベンチャー&ポーカーゲームです。筆者は東京ロケテゲームショウにて、PS Vitaでデモプレイをしましたが、ポーカーゲームの部分はかなり完成していた印象があります。目標としている対応言語は日英仏独西の5言語。PSMの配信国の言語は、この5言語に加えてイタリア語ですので、ほぼ全世界に向けたリリースとなる予定です。

ポーカーゲームを制作するきっかけは、もちろんマサシロウ氏が好きだからということもありますが、世界中で人気のあるゲームであることも理由の一つです。アドベンチャーパートはノベルゲームのようにキャラクターの立ち絵があり、舞台は豪華客船です。ノベルやアドベンチャーといった読み物という性格が強いゲームは、携帯機で遊べた方が良いと考え、PSM向けに開発を始めたそうです。

■PSMでの開発のメリットとデメリット
マサシロウ氏は、2012年の東京ゲームショウの直後から、PS Vitaを触りながら開発しています。その感想として以下の点が指摘されました。高解像度でスペックは高く、有機ELディスプレイの発色も良い、さらにサンプルコードも使いやすいとのこと。一方、結構な割合で処理落ちするといった問題点もあり、何よりもましてPS Vitaがまだまだ普及していないことが一番の問題です。

開発環境としては、UIデザインツールであるUIComposerが使いやすく、使用言語もC#で作りやすいとのこと。PS Vitaの解像度が高いため、デザインやレイアウトがしやすく、視認性が高いのも特徴です。逆に開発しにくい点として、動画再生に対応していない、サンプルコードを使って様々なことができるが、独自の実装をしようとすると大変、Flashの未対応部分があるといったことが指摘されました。

またデベロッパー向けの公式サイトが掲示板形式のもののみで、あまり活性化していないという問題点もあるそうです。しかしながら、そもそも日本の開発者フォーラムはPlayStationに限らず、あまり活性化しない傾向にあり、これはSCEの問題というよりは、日本の開発者が取り組むべき問題だと、マサシロウ氏は指摘しました。

■多言語開発の実際
次に世界同時提供(シムシップ)への取り組みが紹介されました。PSMでは開発から審査・販売の流れが一貫しており、多言語開発に取り組みやすいそうです。審査に関しては、CERO、ESRB、PEGIといった各国の機関による審査を一括で行えることが強みです。とはいえ、ゲームを全世界に配信するために、PC版のゲーム開発の頃から、様々なことを配慮してきたとマサシロウ氏は述べています。さらにPSMでは、これらの審査に関して、日本語のドキュメントがあるのが何よりの強みだそうです。

多言語開発の実例として、マサシロウ氏はゲーム内のテキストデータが記載されたExcelファイルを紹介しました。日本語から英語、ドイツ語などの5言語がセルの中を満たしている様子は圧巻で、その作業量は大変なものになることが容易に理解できます。同人サークルでやるため、これらの作業も地道にこなすほかなく、日本が大好きな外国人のボランティアスタッフと協力してローカライズ作業を進めているそうです。

多言語開発のワークフローは、まずテキストデータを作成、次にそれをXMLに変化してExcelと台本のファイルに分割します。それらをもとにテキストとボイスを収録して最終的にデータを統合する流れです。海外の方とのコラボレーションであるため、SkypeやDropboxなどのウェブサービスを最大限駆使しているそうです。ちなみにマサシロウ氏はスクラム開発におけるスクラムマスターやプロダクトオーナーの認定を受けており、アジャイル的開発のノウハウがここでも活かされるのだろうと思われます。

このように海を超えたコラボレーションのもとに多言語開発を行なっていますが、いくつかの懸念が指摘されました。まず、表現規制のガイドラインを開発側が意識していないと問題が発生すること。特に現在開発しているアドベンチャーゲームは、恋愛の要素が絡むため、センシティブになる必要があるそうです。また海外ではPS VitaやXperiaといったPSMを利用できる端末が普及していない地域もあるため、多言語版を作ったもののユーザーがいないという事態も懸念しています。今後は端末の普及とともに、現在の6言語以上の対応をPSMには期待しているそうです。

■SCEに同人サークルが望むこと
最後に、SCE側に同人・インディー開発者側としての要望を述べました。まず、現在キャンペーンとして行なっているパブリッシャーライセンスの無償化について。マサシロウ氏自身は無償化する以前にライセンス登録を行っています。しかしながら、すぐにキャンペーンを止めるのではなく、開発者が盛り上がってくるまで、続行してほしいと要望を述べました。

さらにPSMの一つの魅力であるFlash対応にもっと尽力すること、開発者のサポート体制を整えること、ゲーム紹介やレビューを取り入れるなどStoreを改善することなど、具体的な要望が述べられました。PS Vitaの値下げとともにユーザー数が伸びているPSMですが、SCEにはより多くの開発者を取り込み、コミュニティを盛り上げてほしいと、マサシロウ氏は訴えました。
《今井晋》
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