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【カジュアルコネクトアジア2013】シンガポールのインキュベーション施設「Game Solution Center」レポート

ゲームビジネス その他

GCSが入居している複合研究施設
  • GCSが入居している複合研究施設
  • GCSの正面玄関
  • GCSのメインロビー
  • さまざまな有名企業が協賛している
  • ミーティング用の会議室
  • 有名企業の盾
  • 賞状などが並ぶ
  • 賞状
カジュアルコネクトアジアの期間中、シンガポールのゲーム業界向けインキュベーションセンター「Game Solution Center(GCS)」を視察する機会に恵まれました。この知られざる施設の概要についてレポートしましょう。

GCSはシンガポール政府のメディア開発庁に属し、同国で最高水準を誇るNanyang Polytechnic(南洋理工大学)によって運営される産官学連携の公的機関です。GCSの目的はシンガポールのスタートアップ企業を対象に、ラピッドプロトタイピング開発を行うためのワンストップサービスを提供することで、2009年からスタートしました。

施設はシンガポールの中心部から西に8キロ程度のクイーンズタウンにあり、5-6名が作業できる開発室が10部屋、会議室やセミナールーム、ゲームをプレーできる共有エリアやロビーなどがあります。またSCEアジアが展開するプレイステーション・インキュベーションセンターも併設されており、こちらでは開発室が4部屋設けられています。

GCSに入居した企業には専用の開発室が与えられるほか、ゲーム開発に必要なハードウェア・ソフトウェア、開発やビジネスでアドバイスが受けられるメンター、海外パブリッシャーとのマッチング支援などが6ヶ月間、無償で受けられます。筆者が訪れた際は8団体が入居しており、日本のモバイル向けパブリッシャーとの商談が行われていました。他に学生向けインターンシップもおこなわれています。

Vinova Pte LtdはGCSに入居しているベトナム系のITベンチャー企業です。ハノイに25名の開発拠点が存在し、シンガポールの開発スタッフ5名と連携が行われています。もともと企業向けウェブ制作からスタートし、ウェブやモバイル向けの音楽向けストリーミング配信エンジン、モバイル向けアプリなどに進出。2012年からスマートフォン向けのカジュアルゲーム開発をスタートし、現在まで3本のアプリをリリースしています。

カジュアルコネクトアジアのインディショーケースでは開発中の新作『ULTIMATE ARROW』を出展し、来場者の投票で決まる「INDIE PRIZE」に輝きました。ゲームは紀元前3世紀にベトナムに存在したとされる蜀ハン国の王、安陽王が主人公のタワーディフェンスゲーム。プレーヤーは外敵の侵入から城を守るために、弓矢などの防御兵器を設置し、戦っていきます。通常のタワーディフェンスと異なり、実際に画面を指でスワイプして弓を発射し、敵を倒していくシューティング要素が加わっている点がミソ。プチプチと敵を倒していく爽快感がくせ者で、一度始めるとなかなか止められないスルメゲームになっていました。

過去の3作品がスマートフォン向けのシンプルなゲームだったのに対して、本作はコアユーザーも視野に入れた、かなり腰の入った作りで、グラフィックもタブレットでのプレーに耐える内容。名作『プランツVSゾンビ』にアクション要素が加わった感じでしょうか。ビジネスモデルは基本プレー無料のアイテム課金で、プレーするたびに経験値が溜まり、兵器を改良させられますが、課金すれば早くクリアできる形です。ディレクターのマイク・ニュヤン氏は「ベトナム人なら誰でも知っている歴史上のキャラクターを主人公にすることで、間口を広げたかった」と語りました。

開発メンバーはプログラマー1名、ゲームデザイナー1名、アーティスト2名、キャラクターアニメーターが2名の全6名で、開発期間は約半年。開発は当初ユニティ上で進められましたが、2Dのアートスタイルとあわず、途中からCOCOS2d-xにゲームエンジンを変更。もともとGCSの入居期限が5月末となっており、カジュアルコネクトアジアで賞が取れて良かったと語っていました。ゲームは英語版で作られ、6月にiOS・Androidでリリースを予定しており、SteamでのPC向け配信も視野に入れているとのこと。主要市場は北米ですが、日本でもチャンスがあればリリースしたいとのことです。

また5月にiOSでリアルタイムストラテジー『Autumn Dynasty(秋戦)』をリリースしたTouch Dimensionsも、GCSに入居中のベンチャー企業の一つ。『Autumn Dynasty』は中国古代の合戦をモチーフとしており、プレーヤーは弓兵・騎馬兵・槍兵・刀兵・カタパルトなどの部隊を操作して敵軍を攻略していきます(Bulkypixにより配信中)。ゲーム内容もさることながら、グラフィックが中国の絵巻物を想像させるテイストで、指で画面をなぞって行う移動指示も、墨の筆でなぞるような感覚と雰囲気たっぷり。ちなみに同社はシンガポール企業で、中心メンバーは中国系シンガポーリアンなので、ツボを心得た開発になっているのでしょう。

ちなみに同社の紅一点でビジネス開拓担当のリヤナさんによると、スタッフはみなボードゲーム好きで、ゲームデザインの参考も兼ねて、よく皆でプレーするとのことです。開発室にも戦略系ボードゲームのマップがいくつか広げられていました。またディレクターのジェフリー・ジャング氏は家族がみな医者というハイソな家系。その中で自分だけがゲーム開発者になったということで、家族の視線が痛いと苦笑していました。

いまだ日本では知名度の少ないシンガポールの開発スタジオですが、PS3・PS Vita向けにリリースされたアクションシューティング『ロケットバード:ハードボイルド・チキン』を生み出したラットループアジアなど、成功事例も出始めています(シンガポールの主要ゲームについては、SINGAPORE GAMEBOX http://www.sggb.sg/ でチェックできます)国内市場が圧倒的に少なく、海外展開(特に北米)が前提となる同国のゲーム産業は、モバイル&カジュアル市場の拡大に伴い、大きな可能性があるように感じられました。

もっともGCSに入居したすべての企業がビジネス的な成功を収められるわけではないのも事実。GCSのプロデューサー、ジェイソン・ヤップ氏はGCSの予算が限られており、スタートアップ企業向けのファイナンス支援などができればいいのだが、手が回らないと話していました。その上で「自分はシンガポールの公務員で、シンガポールのゲーム産業発展に尽くしたい」とコメント。シンガポールのゲーム業界、企業などに興味があれば、ぜひコンタクトして欲しいとアピールしていました。
《小野憲史》

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