「ザ・ハフィントン・ポスト日本語版」は米国本社と134年の伝統を持つ朝日新聞社との合弁事業。編集長に就任した松浦氏はNHN Japanで「BLOGOS」の立ち上げに関わり、コンデナスト・ジャパンでは「WIRED」の日本版の再立ち上げ、そしてグリーでは「グリーニュース」の統括をしてきた、紙とデジタルの両方に携わってきた編集者です。テーマとして掲げるのは「あなたのコトバが、未来をつくる」。編集部による記事だけでなく、有名無名を問わず"語るべきものを持つ人"に発信の場を提供。ネガティブではなく、未来を提言していくような"良質な言論空間"を目指します。
オリジナルのハフィントン・ポストは月間4600万人以上が訪問し、3万人以上のブロガーを抱えます。特筆すべきは800万件を超えるユーザーによるコメントが投稿されるという活気のあるコミュニティ。同社はテクノロジーへの投資でも知られ、人力とテクノロジーの融合で良質なコメントを上手く拾い上げ、ネガティブではなく、ポジティブな言論空間を作り出しています。海外展開は6カ国目で、アジアとしては日本が初となります。
冒頭、創設者のアリアナ・ハフィントン氏は「アジアで最初に日本でロンチできることをとても嬉しく思っています。日本は歴史的に、重要な転換点にあります。アベノミクスによって再び成長に投資をしていく日本の姿を世界が注目しています。また、政治や経済だけでなく、日本や日本人が持つ特性、伝統というものに世界はますます興味を示すようになってきています。そうした非常に重要な時期に日本語版を立ち上げられた事はとても喜ばしいことです」とコメントしました。
続いて日本語版の編集長である松浦茂樹氏は「日本のインターネットにおいて、コメントという存在は残念なものと思われる事が多く、個人的にもニュースにコメント欄は不要なのではないかと絶望していた」と振り返ります。しかし、「本国のハフィントン・ポストを詳しく知っていくと、ネガティブな意見は淘汰され、ポジティブな言論が作り上がっていっていた。そこに未来を感じたんです。もちろん、適切な議論を引き出すために編集者として出来ることもまだまだ多くあると思っています」と述べました。日本では異なる意見に対して強く反対するようなコメントが多く見受けられますが、反対ではなく対案の提示、議論の積み重ねによってボトムアップで世の中を変える手助けとなりたい、とのこと。
メディアのターゲットとしては団塊ジュニア世代を目指すようです。松浦氏自身も団塊ジュニア世代ですが、氏は「層が厚いが意見が聞こえてこない世代でもあります。10年後、日本を牽引すべき世代に発信の場を提供していきたいと思っています」と話していました。
朝日新聞社の木村伊量社長は134年の歴史を振り返りながら、「言論機関としての役割は時代を超えても不変」としながらも「情報発信の形には創意工夫が必要」と指摘。朝日新聞でも1995年にデジタル版を初めて以来、現在では12万人の有料会員、100万人を超えるログイン会員を抱えるまでになっていると述べました。木村氏は「あなたのコトバが、未来をつくる」というキャッチフレーズには明確な意思が込められているとして、「ハフィントン・ポスト日本語版が目指す、質の高いコンテンツと、それに呼応する肉声の数々が、良質で持続的な言論空間を築いていく事に繋がるでしょう。インターネットはますます生活に欠かせないインフラとなっていますが、その中で何が信頼でき、何が世界の理解に役立ち、何が生活を良くし、どこに真実があるのか、照らしていくようなメディアとなりたい」と話していました。
発表会を通じて繰り返されたのは、一辺倒な反対論ではなく、議論を通じた"ポジティブな言論空間"を作りたいということ。そして、その発信者は選ばれし者ではなく、"誰もが語るべき物語を持っている"ということです。広く万人に開かれたプラットフォームであり、編集力とテクノロジーによって良質な言論空間を構築していく。日本語版でも目指す所は同じです。
こうした場が日本で成立するはずがない、という懐疑論に対してハフィントン氏は「アメリカで始めた時も多くの人がこう言いました―――良質な言論空間がインターネットで成立するはずがない。しかしそれは可能であり、更には他の国でも実証されたことなのです」と自信を示しました。僅か8年間で巨大新聞社と肩を並べる影響力を得て、ピューリッツァー賞まで受賞したハフィントン・ポスト。日本語版の行方に注目が集まります。
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