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【GDC 2013 報告会】インディーゲームにもレッドオーシャンの波が・・・新清士氏

国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)は4月13日に毎年好例となっている「GDC2013報告会」を開催しました。本会合でジャーナリストの新清士氏はGDC 2013全体を振り返る報告を行いました。

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国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)は4月13日に毎年好例となっている「GDC2013報告会」を開催しました。本会合でジャーナリストの新清士氏はGDC 2013全体を振り返る報告を行いました。

新氏は今回のGDCを「ソーシャルゲーム」、「F2P」、「インディーゲーム」というテーマを中心に回りました。中でも今年のトレンドは「Free to Play(基本プレイ無料)」を意味するF2P。「Free to Play Design & Business Summit」が開催された他、F2Pを扱ったセッションもかなり多かったそうです。

■まだまだ先行きがわからないF2Pとソーシャルゲーム

しかしながら、それらのセッションでは重要なデータはほとんど、公開されず、実際問題としてF2Pがビジネスとして成功しているかどうかは、現在のところそれほどわからないと新氏は述べています。またF2Pのビジネスモデルは日本のソーシャルゲームとほとんど変わらないため、ユーザーのデータ解析などの技術は日本の方が進んでいるのではないかと推察しております。

一方、King.comの『Candy Crush Saga』やKabamの『Kingdoms of Camelot』など日本ではほとんど話題にならないモバイルゲーム大ヒットもあります。ただしそれらも日本のソーシャルゲームと同じく、大ヒットしたゲームをうまくアレンジして、マーケティングと課金モデルをブラッシュアップしたものがほとんどで、ゲームシステムのレベルでオリジナリティはあまりないといいます。

また欧米圏と日本ではソーシャルゲームの方向性に差が出てきたことも指摘されました。アメリカではZyngaが中心となり、実際のお金を賭けるカジノゲームの方向性が打ち出されています。また40代の女性向けのカジュアルゲームが人気で、日本のソーシャルゲーム市場とはユーザー層のレベルでもかなり差が見られるといいます。いずれにせよ、海外ソーシャルゲーム企業もFacebookなどのSNSからモバイルプラットフォームに急速にシフトしております。

そのような中で日本のソーシャルゲームの海外進出についても触れられました。まず日本の「ガチャ」のようなシステムは海外でも受け入れられているのでしょうか?新氏はこの問いを様々の人に質問したところ、正直なところ「わからない」という答えがほとんどであったといいます。とはいえ、徐々に「ガチャ」のようなアイテム課金のシステムや「コレクション要素」といった日本のソーシャルゲームの特徴はアメリカでも徐々に受け入れられつつあるといいます。

実際、Mobageの『Blood Brothers』などのカードバトル系のソーシャルゲームはゲームとしても非常に洗練されてきており、海外でも人気があります。とはいえ、売上自体はAAAタイトルと比べれば桁違いに低く、そもそもAndroid市場自体が予想以上に小さいことを新氏は指摘しています。欧米でのiPhoneを100とすれば、Android市場はその四分の一くらいの規模であるため、Androidの世界ランキングのトップを取ることは、広告さえだせば容易であるそうです。

他方、日本や韓国ではAndroid市場は大きく、特に日本の市場は「異常」と言ってよいほど、大きいといいます。そのため、欧米でも既存のソーシャルゲームの中にガチャのシステムを取り入れたり、日本のカードバトルゲームを参考にしたゲームが数多く開発されたりしています。とはいえ、そもそもAndroidの市場規模がまだまだ小さく、日本での成功事例がそのまま参考になるとは思えず、Androidプラットフォームでソーシャルゲームの成長余地があることに対して、新氏は懐疑的です。

■インディーゲームの盛り上がりとレッドオーシャン化

次にインディーゲームシーンに触れられました。インディーゲームはゼロ年代後半から急速に成長したため、現在では新規参入のチャンスはかなり減っているといいます。言うならば「インディーゲーム」という領域は、すでに「レッドオーシャン化」しているといいます。そこでの勝敗は広告や宣伝の力が大きいですが、Kickstarterなどのクラウドファンディングも参入者が多すぎてレッドオーシャンとなっていると指摘されました。

しかしながら、ビジネスとしてのインディーゲームは厳しいものの、良い作品は山ほどリリースされているそうです。インディーゲームの登竜門であったIGFアワードには700作品もの応募があり、それらはすでにゲームメディアなどで高く評価されたものばかりです。そのため、登竜門としての機能はIndieCadeやPaxなどの他のイベントに移っているのではないかと、新氏は指摘しています。また新氏自身が関わっている東京ゲームショウで行われるセンス・オブ・ワンダーナイトなども、そういった役割を果たせるのではないかと述べています。

今年は東京ゲームショウでもインディーゲームが取り扱われるなど、国内での盛り上がりも期待されます。IGDA日本でも、去年に引き続き、インディーゲームの展示会である東京ロケテゲームショウを開催するなど、その勢いに後押しをしていく予定です。

以上、全体を総括して新氏はゲーム業界の全体がますます把握しづらくなっていると述べています。モバイルの成長が目覚ましい一方、AAAタイトルの売上と影響力は未だに桁違いであり、海外では中古市場が活性化しております。インディーゲームは依然として勢いがあるものの、ビジネスとして見た場合は厳しくなってきているといいます。今後はモバイル市場がゲーム産業を牽引していき、ビジネスモデルとしてはF2P以外の選択肢がなくなるのではないかと予想しています。
《今井晋》
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