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「ゲームの神様」がそろい踏みで議論した「ゲームアーカイブのあり方」

ゲームビジネス その他

立命館大学教授で学会長の細井浩一氏
  • 立命館大学教授で学会長の細井浩一氏
  • 同じく立命館大学の中村彰憲氏
  • 「ファミコンの父」として知られる立命館大・上村雅之氏
  • 『パックマン』で著名な岩谷徹氏
  • 『ゼビウス』を生み出した遠藤雅伸氏
  • 文化庁メディア芸術デジタルアーカイブ事業の全容
  • 米スタンフォード大のゲームアーカイブ
  • 英国立ビデオゲームアーカイブ米スタンフォード大のゲームアーカイブ
DiGRA JAPAN年次大会で3月4日、企画セッション「デジタルゲームのアーカイブ~世界の動向と日本」が開催されました。

会場では立命館大学の細井浩一氏、中村彰憲氏、上村雅之氏が登壇。ゲームの保存・収集活動に関する国際的な取り組みの現状と、その意義について報告されました。

立命館大学は京都府・任天堂と連携し、1998年にゲームアーカイブ・プロジェクトを発足させるなど、ゲームの保存・収集活動に積極的な学術機関として知られています。一昨年の年次大会においても同テーマで企画セッションを実施。2013年には国際シンポジウム「ゲーム保存国際カンファレンス:ビデオゲーム~保存?忘却?世界はどう考えているか~」を主催しています。

本企画セッションは三部構成をとり、はじめに細井氏が「日本におけるゲーム保存の取り組みの発展とその課題」と題して全体像を提示。続いて中村氏が「英米におけるゲームアーカイブの実践に関する比較事例に見る一考察」と題して海外の状況を俯瞰。最後に上村氏が「ゲーム保存はなぜ必要か」と題して精神的な支柱について考察しました。

■国内で粛々と進むゲームアーカイブの現状
国内では国会図書館が納本制度に基づき2000年からゲームソフトの保存収集を行っており、これが国による唯一のゲーム保存に関する取り組みとなっています。しかし「企業からの自主的な納本によるため、収集率が3割程度である」「収集対象はゲームソフトのみで、ゲーム機の収集は行われていない」など問題も少なくありません。

一方で「レベルX」(写真美術館)「テレビゲーム展」(国立科学博物館)などの展覧会や、諸団体・個人コレクターによるアーカイブなども行われています。このように、国内でもさまざまな個人・団体が独自にアーカイブに関する取り組みを進めていますが、全体を俯瞰する資料が存在せず、各々が継続性や網羅性について課題を抱えているなど、包括的な取り組みが必要とされています。

こうした中で文化庁が2010年度より「メディア芸術コンソーシアム及びデジタルアーカイブ事業」を開始しました。これはメディア芸術4分野(マンガ、アニメ、ゲーム、メディアアート)について横断的な作品データベースを構築し、これをもとに現物保存などの取り組みを行っていくというものです。

細井氏からは2012年より立命館大学も本格的に活動に協力していること。またデータベースの整備と共に、特定のタイトルやシリーズについて、開発資料や販促資料、攻略本など、関連資料も含めて深掘りし、現物収集を行っていくモデルアーカイブ事業が進められていることが報告されました。

■英米のゲームアーカイブと、そこからわかった共通課題
続いて中村氏からは2013年に京都で開催されたゲーム保存国際カンファレンスの内容を元に、米スタンフォード大学を中心としたゲームアーカイブと、英国立ゲームアーカイブの取り組みについて紹介されました。

スタンフォード大学のゲームアーカイブ事業は、1980年代にはじまったシリコンバレーアーカイブ構想にまで遡ります。これはIT・コンピュータなどを含む包括的なものでしたが、1998年にStephan M. Cabrinety氏より70点以上のプラットフォームと15000本以上のゲームソフト、関連資料の寄贈を受け、コレクションが拡大。2000年からは軍事用シミュレーターからゲームまで包括的に扱う「How to got game project」がスタートしました。今日ではバーチャルワールドやUGCもアーカイブの対象に広がっています。

一方で英国立ゲームアーカイブはJames Newman教授、ジャーナリストのIan Simons氏、国立メディア博物館のTom Woolley氏の3名を中核に設立されました。Newman氏とSimons氏は英ノッティンガム市でゲームイベント「Gamecity」を開催。これにWoolley氏がコンタクトを取り、国立メディア博物館のニューメディア部門でビデオゲームアーカイブが設立します。こうした背景から、単にゲームソフトだけでなく、ゲームを歴史的・社会的・政治的・文化的コンテキストの中で保存することを重視しています。

もっともシンポジウムの結果、国際的な課題も浮かび上がってきました。日米欧では固有のゲーム文化が存在し、各地域でしか発売されていないタイトルも少なくありません。またローカライズや廉価版をはじめ、細部が異なるバージョンも多数存在します。これらをどのように管理していくかといった、国際標準IDの確立。公開を行う上での権利者に対する許諾。モデルアーカイブを行う上での規準確立。各国でのプレイスタイルの変化をどのように記録するか、などです。その上で今後も協力体制を進めていくこととなりました。

■ゲームは史上初めて「遊びの遺伝子」が刻まれた娯楽
最後に「ファミコンの父」として有名な上村氏から、ゲーム保存の必要性について考察がなされました。上村氏は「遊びの遺伝子」という概念を元に、開発者視点だけでなく、遊び手視点も含めた「ゲームの殿堂」を選出する意義について語りました。

鬼ごっこやけん玉といった伝承的な遊びは、時代の変遷と共に失われていく、いわゆる無形文化財でした。しかしゲームでは「遊び」それ自体が、ルールやストーリー、世界観といった形で、ゲームソフトの中に刻み込まれています。つまりゲームは史上初めて、「遊び」を記録することに成功したメディア、すなわち「遊びの文化伝承装置」だといえるでしょう。

上村氏はこれを「遺伝子」になぞらえ、「ルール遺伝子」「世界遺伝子」「感覚遺伝子」の3点で整理しました。それぞれ、「ルールやシステム」「ビジュアルやサウンドで表現される世界観」「実際に遊んで面白いと感じる感覚」という意味です。

もっとも、昔のお笑い番組を今、見てもつまらないように、「面白い」と人が感じる要素は時代と共に移り変わっていきます。つまりゲームをアーカイブするということは、その時代において人が「何を楽しがって遊んでいたか」という記録に他なりません。これを積み重ねていくことで、時代ごと、地域ごとにマッピングし、分析することも可能になります。「遊び」に対するこうした研究アプローチは、ゲームの登場で始めて可能になったこと。だからこそゲームアーカイブは重要なのだ、というわけです。

もっとも、過去全てのゲームを包括的にアーカイブすることは、次第に不可能になりつつあります。そこで上村氏は何らかの選出基準をもうけて「ゲームの殿堂」を定め、アーカイブすることが重要ではないかと指摘しました。また、その際もゲームはプレイヤーに遊ばれて初めて価値を持つものだから、作り手視点だけでなく、遊び手視点も含めた規準を設ける必要があると補足しました。

■「ゲームの殿堂」に必要な規準とは
その後東京工芸大学の岩谷徹氏、宮城大学の客員教授でモバイル&ゲームスタジオの遠藤雅伸氏も加わり、ディスカッションが行われました。岩谷氏は『パックマン』、遠藤氏は『ゼビウス』の生みの親として著名な人物です。上村氏とならんで、「ゲームの神様」がそろい踏みとなりました。

岩谷氏はゲームアーカイブは「作り手と遊び手の心の保存」だとして、何を持って保存とするか、その規準作りを行うのも学会の役割だと指摘。遠藤氏は「今の学生は『エヴァンゲリオン』すら見ていない、『スーパーマリオ』も遊んでいない」として、共通体験を確保する上でゲームアーカイブが必要だと指摘しました。

その後、議論は「ゲームの殿堂」の策定規準におよび、「歴史上のターニングポイントとなった作品」「新しいデバイスやセンサーなど、技術的なターニングポイントとなった作品」「遊び手の熱狂度といった、時代のうねりを感じさせる作品」という3つの評価軸が提唱され、終了となりました。
《小野憲史》

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