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【BitSummit】SWERY氏基調講演「海外デベロッパーに学ぶ成功のためのプロセス」

3月9日に京都で開催された、日本のインディーゲームデベロッパーにフォーカスした初のイベントBitSummit。デベロッパー基調講演の先発を務めたのは、『レッドシーズプロファイル』を手がけたアクセスゲームズのディレクターSWERYこと末弘秀孝氏。

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【BitSummit】SWERY氏基調講演「海外デベロッパーに学ぶ成功のためのプロセス」
  • 【BitSummit】SWERY氏基調講演「海外デベロッパーに学ぶ成功のためのプロセス」
3月9日に京都で開催された、日本のインディーゲームデベロッパーにフォーカスした初のイベントBitSummit(ビット・サミット)。主催者であるジェームズ・ミルキー氏をはじめ関係者やスポンサーのあいさつに続いて、デベロッパー基調講演の先発を務めたのは、『レッドシーズプロファイル(Deadly Premonitio)』を手がけたアクセスゲームズのディレクターSWERYこと末弘秀孝氏。

氏は自身がこよなく愛する“コーヒー”を例えにしながら、「海外デベロッパーに学ぶ成功のためのプロセス」という議題で、最近の『Journey(風ノ旅ビト)』や『The Walking Dead』に代表される、海外でのインディー系ダウンロードタイトルの著しい成功を手本に、日本のインディーゲームシーンに今何が求められるのかを語りました。

■1. コーヒー豆の選び方
「ゲーム作りにおいてどんなタイトルにするのかという、最初にアプローチする部分。ここで重要なことがひとつあり、ずばり「作りたいものを作りましょう」ということ。短い言葉ですが非常に重要なことで、作りたいものを作るからこそインディペンデントだというところをもう一度見直していただきたい。日本デベロッパーさんは、僕も含めてですが、独立する前のスタジオで行なっていた仕事、あるいは手がけたことのあるゲームと同じものを作りたがる傾向にあると思っています。その結果、独立前と同じように予算が膨大になってしまったり、または独立前のスタジオとコンペティター(競争相手)になってしまうことが見受けられます。そうではなく、やはりインディペンデントなので、もっと自由に、やりたいことに立ち戻って、自分たちが何をやりたかったかを考えないといけない。」

SWERY氏は、月並みな言葉であるものの“オリジナリティ”こそが改めて重要な点であると主張、この“コーヒー豆の選び方”で成功しているインディー作品として、『The Unfinished Swan』、『Journey(風ノ旅ビト)』、『Superbrothers: Sword & Sworcery EP(スキタイのムスメ)』、『Bastion』、『Machinarium』の名前を挙げ、「やりたいことをやっている、作りたいものを作っているんだと感じるゲーム」と述べました。

「今まで作ってきたゲームのリフレインや今の流行を単に追うのではなく、他にない、作りたいものを作る姿勢、これこそがインディペンデントであり、日本のデベロッパーもかつては持っていたし、皆さんの内にも秘められているからこそ、ここに集まられたのだと思う。それを強く持って発信していくことが、この先我々のような(日本の)開発会社が海外のデベロッパーのように成功していくためのポイント」と同氏は熱く説明。

また、作品に強いオリジナリティがあることで、コンペティターが少なくなり、ゲームを気に入ったユーザーが似たような別のゲームに移ってしまうことないので、長く売れ続けることになり、結果的に成功できるチャンスも大きくなると提言。そして、インディー作品といえど、海外タイトルを見ても分かるように重要なのは中身で、クオリティーの高い作品をしっかりと作り上げるのが大切だと話しています。

■2. コーヒーカップの選び方
「僕も含め、皆さん、せっかくインディペンデントでやっているのだから、市場分析して今受ける物をこう作りましょう、というやり方ではなくて、作りたいゲームを作って買ってくれるお客さんを探す、という発想をしてみてください。自分が作りたいゲームはこう、それをこだわって他にないオリジナルの物に仕上げる、それを遊んでくれるのはどんな人か。と考えていくほうが、ものすごく健全で、元々のクリエイティブという意味で原始的な欲求に繋がっていると思います。

今は21世紀で、インターネットや交通環境のおかげで世界はどんどん狭くなっています。もっともっと視野を広く持って、選択肢を広げていくことに目を向けてください。例えば、こんなゲームを作りたい、こういうことを考えた、でも隣人にはいらないと言われるかもしれない。ある日本のパブリッシャーにはダメと言われても、別のパブリッシャーは良いというかもしれない。もっと言えば、地球の裏側であなたの作ったゲームを待っている人がいるかもしれない。」

氏はゲーム本編やダウンロードコンテンツの配信手法を、コーヒーの“砂糖とミルク”に例え、エピソード累計850万本以上のセールスを打ち出した2012年の海外ヒット作『The Walking Dead』の成功を参考に、どうやって最初に作った作品を長く認知させて売っていくのか、ユーザーに叩かれてしまうようなあからさまな追加DLCの提供方法とは異なる、インディペンデントならではの工夫や理解が必要であると指摘。そうすることで、海外のインディーデベロッパーのような成功に近づけるのではないかと語っています。

最後にSWERY氏は「手前味噌で申し訳ないが」とした上で、来月発売予定という自身の新作『Deadly Premonition: The Director's Cut』が今回話した内容の証明になるはずだと伝え、来場した日本のインディー開発者に向けて、独立したなら「作りたいものを作る」「地球の裏側まで視野を広げて売る」この2つのポイントを改めて強調し、基調講演を締めくくっています。
《Game*Spark》
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