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【プレイレビュー】『BIOSHOCK INFINITE』をより深く楽しむために知っておくべき4つの事(世界背景&ヘビー・ヒッター編)

ゲームデザイナーKen Levin氏とIrrational Gamesによるシリーズの最新作『BIOSHOCK INFINITE』。連載第2回となる今回は、コロンビアとアメリカの歴史的な背景や脅威の存在である敵キャラクターなど、知っておけばゲームのプレイをより深く楽しめる4つの要素をご紹介します。

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【プレイレビュー】『BIOSHOCK INFINITE』をより深く楽しむために知っておくべき4つの事(世界背景&ヘビー・ヒッター編)
  • 【プレイレビュー】『BIOSHOCK INFINITE』をより深く楽しむために知っておくべき4つの事(世界背景&ヘビー・ヒッター編)
  • 初代『BioShock』の時代背景が冷戦であったのに対し、『BioShock Infinite』は西部開拓時代を終え第一次世界大戦が始まる直前の発展時代
  • 前作のアンドリュー・ライアン的なポジションに居ると思われるザッカリー・カムストック。コロンビアを統治している政治勢力ファウンダーズのリーダーであり、自身を預言者であるとも語っている
  • 他にもアメリカの工業化に伴い大量の移民が発生、貧富の差が大きく拡大し、移民と米国市民との間で抗争も起きたこの時代。この辺りの歴史的背景はコロンビアにおける保守派のファウンダーズとアナーキー派のヴォックス・ポピュライの関係に落とし込まれています
  • どうやらファウンダーズにもボックス・ポピュライにも属してはいないソングバード。鋼鉄の体を操るその意思は一体どこから生まれているのか
  • ボーイズ・オブ・サイレンス
  • ハンディマン
  • モーター・パトリオット
初代『BIOSHOCK』を手掛けたゲームデザイナーKen Levin氏とIrrational Gamesによるシリーズの最新作『BIOSHOCK INFINITE』。前回はゲームのあらすじやメインキャラクター達のプロフィールなど、プレイする上で覚えておくべき4つの基本情報をお伝えしました。第2回となる今回は、コロンビアとアメリカの歴史的な背景や脅威の存在である敵キャラクターなど、知っておけばゲームのプレイをより深く楽しめる4つの要素をご紹介します。

■1.コロンビアを生んだアメリカの躍進と帝国主義
今作の主人公ブッカー・デュイットと、コロンビアの一大政治勢力の1つファウンダーズのリーダーであるザッカリー・カムストックが、1900年に発生したインディアン戦争における戦いの1つ「ウンデット・ニーの虐殺」に従軍したのは先日もお伝えしたところ。空中都市コロンビアを生み出した当時のアメリカ政府は、そんな南北戦争やインディアン戦争によりフロンティア・スピリット(開拓精神)を完遂、つまりところアメリカ大陸内部の開拓を終え、科学的にも産業的にも大きく発展と変革を遂げていく時期でした。

初代『BioShock』の時代背景が冷戦であったのに対し、『BioShock Infinite』は西部開拓時代を終え第一次世界大戦が始まる直前の発展時代


初代『BIOSHOCK』では冷戦の中、科学者や芸術家たちが自由を求め、アンドリュー・ライアンが建造した海底都市ラプチャーへ向かうという秘密結社的な経緯が語られていました。一方で空中都市コロンビアは、当時の第25代大統領ウィリアム・マッキンリー下のアメリカ政府にておおやけに製造が進められたという設定。1893年、当時は世界最大級の万博だったシカゴ万博博覧会にてその計画が発表され、カムストックがプロジェクトリーダーとして建造に取り掛かっています。

前作のアンドリュー・ライアン的なポジションに居ると思われるザッカリー・カムストック。コロンビアを統治している政治勢力ファウンダーズのリーダーであり、自身を預言者であるとも語っている


当時のアメリカは大陸内の開拓を終え、海外へと新たなフロンティアを求めていた時代。そんな中、空中都市コロンビアは躍進する米国の最新技術の粋を集めた特異な存在であり、また“アメリカ例外主義”―アメリカは他国とは文化的にも環境的にも違い、抜きん出た国家である―という考えのシンボルでもありました。ラプチャーが才能や芸術を発揮するための“民衆の自由な都市”であるとするなら、コロンビアはアメリカの独自性や先進性を象徴する“国家の偉大な都市”になろうとしていたのです。

そして1901年についに完成したコロンビアは運行を開始。予定通り各国を周遊していましたが、同年発生した清(当時の中国)における義和団事件にて攻撃を開始、大量の武装を有した巨大な空中戦艦であることが判明します。そしてアメリカ政府からの帰国の命令を無視し、空中都市コロンビアは雲の中へと行方知れずになりました。なお本作の世界観を解説した公式トレイラー“コロンビアは現代のイカロスか?”内では、1981年にアルプス山頂で落下した空中都市コロンビアが発見されたことも明らかにされており、ゲーム終盤の展開には熱い注目が集まるところとなっています。

他にもアメリカの工業化に伴い大量の移民が発生、貧富の差が大きく拡大し、移民と米国市民との間で抗争も起きたこの時代。この辺りの歴史的背景はコロンビアにおける保守派のファウンダーズとアナーキー派のヴォックス・ポピュライの関係に落とし込まれています


■2.電気に車に映画もラジオも―1900年に開花したアメリカ近代文化
先述したように、空中都市コロンビアが完成した1901年前後は産業的にも文化的にもアメリカが大きく躍進した時代でした。1800年代半ばから利用されていた石炭自動車に続いて石油自動車が誕生し、さらにライト兄弟が史上初の有人飛行を成功させたのも1903年。建築物は頑丈な鋼鉄が製造されるようになり高層化。また1880年代にはトーマス・エジソンが白熱電球や発電機を発明し、電力が本格的に町中へと徐々に広まっていきます。

レコードは既に当時広まっていましたが、新たにラジオによる実験放送も開始されました。上流階級はオペラを好み、大衆向けに娯楽的な要素が強かったオペレッタ、現代で言うミュージカルの文化がで根付きはじめています。また“映画”という概念が生まれたのも1900年前後で、映画史に造詣が深い方ならご存知、黎明期の名作SF映画『月世界旅行』も1902年に生まれた作品です。



文化的にも大きな躍進を遂げた1900年前後のアメリカですが、やはり『BIOSHOCK INFINITE』内で気になるのは楽曲、特に歌謡曲でしょう。前作は実際に存在した様々なオールディーズがゲームを色濃く彩りましたが、今作ではLevin氏が黒人霊歌や聖歌、ゴスペルやラグタイム、初期のブルースやジャズといった楽曲を調べたと海外メディアのインタビューにて語っています。実際にどのような曲が登場するかは明らかにされていませんが、ラグタイムの名曲エンターテイナーやメープル・リーフ・ラグなどは聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。



■3.本作のビッグダディ的存在、巨大な怪鳥ソングバード
歴史的な考察も楽しい『BIOSHOCK INFINITE』ですが、やはり狂気と特異な背景を孕んだ刺激的な敵キャラクター達も、シリーズで脈々と受け継がれてきた大きな魅力の1つ。初代『BIOSHOCK』では、潜水士のような姿でリトルシスターを守り、プレイヤー達に恐怖と畏怖を植えつけた敵キャラクター、ビッグダディが存在しましたが、今作でも同様にヒロインのエリザベスを守るソングバードが登場します。

体長およそ9メートルにも及ぶソングバードは、鋼鉄の体と独自の意思を持つ怪鳥です。ソングバードは空中都市コロンビアに幽閉されたエリザベスに食料や本を運び、唯一の友人、或いは親として彼女に接してきました。ブッカーがエリザベスを救い出そうとする中、ソングバードはその鋼鉄の体で全てを破壊し、何としてでもエリザベスを戻そうと試みます。

本作のメインデザイナーKen Levin氏への過去のインタビューでは「エリザベスとプレイヤーを常に追跡し続けるターミネーターのような脅威」であると評されたソングバード。ゲーム中でビッグダディと同様か、それ以上の強敵となることは想像に難しくありません。

どうやらファウンダーズにもボックス・ポピュライにも属してはいないソングバード


■4.コロンビアモンスター図鑑!強敵となる4人のヘビー・ヒッターたち
ソングバードに引き続き、『BIOSHOCK INFINITE』では更に4体の特徴的な敵キャラクター達が登場します。ここではビッグダディ的かつ中ボス的な存在にあたるクラス“ヘビー・ヒッター”の情報を一挙にご紹介しましょう。

●ボーイズ・オブ・サイレンス



管楽器のようなマスクを被った奇妙な姿の敵キャラクターがボーイズ・オブ・サイレンス。中身は盲目の青年であり、両耳のホーンで音を聞き分けてプレイヤーを探しだす、初代『BIOSHOCK』における監視カメラのような存在です。彼の姿を見たら気づかれる前に一目散に逃げるか、或いは攻撃して排除するか。発見されてしまえば、ボーイズ・オブ・サイレンスはマスク中央の口から耳をつんざくような悲鳴を挙げ、仲間たちを呼び寄せることになります。

●ハンディマン



ビッグダディのような強大なパワーとスピードを持つハンディマンは、剥き出しの顔と心臓を見せ、鋼鉄のボディースーツに身を包まれたフランケンシュタインのような人造人間。公式トレイラーでは、ボディスーツを提供したBettermen's Autobodies社の宣伝として、見世物の如く扱われる彼の悲しげな姿も見ることもできました。元は重症を負ったコロンビアの一住人だったハンディマンですが、「Live Forever!(永遠の生命!)」との広告文句通り、ゲーム中でもその頑丈な体でブッカー達を追い詰めることになります。

●モーター・パトリオット



アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンを模したこのロボットは、元はコロンビア内のツアーガイドとして運用。現在はツアー客の手を引く変わりにクランクガンをその手に持ち、口からはコロンビアの情報では無くプロパカンダの罵声を吐き続けます。ロボットであるが故に攻撃を受けても怯むことは無く、クランクガンを回す手は決して止まりません。主人公ブッカーの“ポゼッション”ビガーをアップグレードしておけば、彼をハッキングし味方につけることも可能です。

●セイレーン



白いローブで全身を覆った謎の女性Sirenは、その不気味な歌声で死者と交信し、死んだ者を一時的に蘇らせるという厄介なヘビー・ヒッター。ただしセイレーンを倒せば蘇った死者も共に倒すことができます。無理をしてでもセイレーンを先に倒すのか、或いは周囲の死者を打ち倒してからセイレーン撃破を狙うのか、プレイヤーに選択を課す強敵です。

歴史的な考察や当時の文化に触れ、また狂気を孕んだ敵キャラクター達とのエピックな体験が期待される『BIOSHOCK INFINITE』。次回の記事では、『BIOSHOCK INFINITE』が作られた背景を更に追求すべく、ゲームの外に飛び出して、シリーズのメインゲームデザイナーとして知られるKen Levin氏やシリーズの元祖的な存在にあたる『System Shock 2』などをご紹介していく予定です。

【製品情報】
タイトル:バイオショック インフィニット
発売元:テイクツー・インタラクティブ・ジャパン/2K Games
ジャンル:アクションアドベンチャー
対応機種:PlayStation3/Xbox360
発売日:2013年4月25日発売予定
価格:PlayStation3版 7,770円(税込)
Xbox360版 7,770円(税込)
CERO表記:D
公式サイト:http://www.bioshockinfinite.com/ja
(C)Take-Two Interactive Software, Inc. Developed by Irrational Games. BioShock, BioShock Infinite, Irrational Games, 2K Games, Take-Two Interactive Software and their respective logos are all trademarks of Take-Two Interactive Software, Inc. All rights reserved. All other trademarks are property of their respective owners.
《Game*Spark》
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