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【DEVELOPER’S TALK】PS Vitaだから実現したF2Pゲーム『ピコットナイト』のミドルウェア活用法とは?

【DEVELOPER’S TALK】PS Vitaだから実現したF2Pゲーム『ピコットナイト』のミドルウェア活用法とは?

2013年2月1日(金) 19時40分
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PCオンラインゲームからソーシャルゲーム、そして今や家庭用ゲームへと拡大を続けるF2P(Free to Play=基本プレイ無料・アイテム課金)ゲーム。中でもPlayStation®VitaはF2Pゲームを公式にサポートしている、数少ない家庭用ゲーム機となっています。

本作のサウンド部分を下支えしたのが、CRI・ミドルウェアのオーディオシステム『CRI ADX2』です。ガンホー・オンライン・エンターテイメントのグループ会社で実際に開発を担当した株式会社ゲームアーツの「team Gajet(チームガジェット)」のメンバーに、開発現場での使い勝手などについて伺いました。

■参加者
鈴木 健 『ピコットナイト』ディレクター。主にゲームアーツの家庭用タイトルにプランナーとして携わる。
澤田 朗 『ピコットナイト』メインプログラマー。サウンド周りの組み込みも担当。
伊良波 穣 『ピコットナイト』サウンドクリエイター。古くからゲームアーツタイトルのサウンドスタッフとして活躍。

■聞き手
土本学 インサイド編集長
CRI・ミドルウェア

―――ゲームの概要について教えてください。

鈴木: オンライン専用のアクションRPGです。見た目はオーソドックスな横スクロールアクションですね。最大の特徴はリアルタイムで4人まで遊べることと、友達のキャラクターをNPCとして使えることです。NPCとして参戦する時は、活躍に応じてミッション報酬をお裾分けできます。つまり、自分がゲームを起動していなくても、その間に友達が自分のキャラクターのNPCを使ってくれれば、ゲームにログインする度に報酬がもらえるわけです。

―――なるほど。ログアウトしている時も、常に自分のキャラクターが活躍しているわけですね

鈴木: グラフィックも特徴的で、キャラクターのバリエーションも2千種類くらいあり、他にないようなデザインになっています。またRPGなのでレベルアップをしたり、アイテムを集めたり、武器合成などの要素もひととおり揃っていて、やり込み要素も充実しています。ミッション配信やキャラクター追加なども適宜行っており、長く遊べるよう心掛けています。ゲームの中身もキャラクターの見た目どおりで、いわゆる「ガチャプレイ」でも楽しめるようになっているんですよ。しばらくゲームから離れている人でも、わりと手軽に遊んでいただけるかと思います。

可愛らしいキャラクターが活躍するアクションRPG


■無課金でもとことん遊べるように作り込んだ

―――『ピコットナイト』というタイトルは、どこから決まったんですか?

鈴木: ゴロがいいし、小さくて可愛いキャラクターがいっぱい出てくるゲームということで、紆余曲折して『ピコットナイト』となりました。『ピコットハンター』なんてアイディアもありましたね。

『ピコットナイト』ロゴマーク


―――企画自体はPS Vitaを見て立てられましたか?

鈴木: いえ、もともと機種を明確にせずに、F2Pゲームの企画を研究していたんです。もっと軽い内容だったんですが、そこにコンシューマゲームのノリを加えてみました。そんな中でPS Vitaが登場してきて、いよいよこれはいけると。2011年のはじめににプロトタイプを作っていて、その後で本開発が始まりまして。開発期間は1年強でしょうか。

―――F2Pと聞くとスマートフォンを思い浮かべますが、スマートフォンと家庭用ゲームでの違いは考慮されましたか?

ディレクターの鈴木氏
鈴木: やはりスマホとPS Vitaではユーザーが違いますよね。PS Vitaユーザーはゲーム好きが多いと思いましたので、「ここから先は課金しなければ遊べませんよ」といった要素を排除して、ゲームの根幹部分はすべて無料で遊べるようにしたんです。なにしろ作っているのがガンホーのグループ会社であるゲームアーツのメンバーが中心ですから、昔ながらのゲームが好きなんですよね。結果「無料だからこのクオリティ」ではなくて、それこそフルプライスのパッケージゲームでも良いくらいに作りました。

―――とはいえオンラインゲームなので、一日で全てクリアされては困りますよね?

鈴木: そうですね。そこは難易度を増やしてバリエーションを広げたり、キャラクターを増やしたりと、いろんな遊びを入れました。それでも、これは嬉しい誤算だったのですが、皆さん思った以上にガッツリと遊んでもらえて、想定よりも早くレベルキャップに到達しちゃったんです。僕らは今までコンシューマを中心に開発してきたこともあって、そこは計算が甘かったところです。

―――追加コンテンツはどうなっていますか?

鈴木: 随時アップデートしていて、キャラクターやミッションの追加だったり、システム改善などを行っています。2013年も定期的なアップデートはしていくつもりです。ユーザーさんの声も反映させていきますので、ぜひ公式サイトからご要望を送ってください。

―――開発規模はどれくらいでしたか?

鈴木: 初期リリースまでは15人弱くらいのチームで、それに加えてサーバーエンジニアさんとテスターさんがいます。プログラマは大きくサーバ担当、バトル担当、メニュー担当が1人ずついて、グラフィッカーは4人ですね。リリース後も基本的にはそのままで、追加コンテンツなどの仕事をしています。実はリリース後の運営フェーズに入ってからの方が、プランナーの作業が増えているんですよ。そのため人も増やしています。

―――家庭用ゲーム機でF2Pゲームをリリースされた感触はいかがですか?

鈴木: コンシューマ機ではあまりない形態のゲームだったので、最初は不安でしたが、リリースすると意外とすんなり受け入れられたのでありがたかったです。こういった基本無料のゲームは、スマホで慣れた人も多いんじゃないでしょうか。コンテンツに満足いただけて、「もっといっぱい遊びたい!」という方のみが課金をする、という。

―――「ピコットナイト」での課金要素はどういったところなんでしょう?

鈴木: たとえばイベントミッションで、死んだときのコンティニューであるとか、特定イベントでしか入手できない宝箱の鍵を入手するだとか。ゲームをがっつり遊んでいる人が、さらに深く楽しみたくて課金してくれているイメージでしょうか。


■ミドルウェア採用の決め手は安定動作とツールの完成度の高さ

CRI 企画が立ち上がった1年半くらい前は、まだ弊社のミドルウェアもF2Pゲームでの採用事例がほとんどなかったかと思います。そんな中で、サウンドのミドルウェアを使おうと決められた経緯は何でしたか? 

サウンドクリエイターの伊良波氏
伊良波: 開発当初はPS Vita向けタイトルの開発が始まったばかり、ということで、社内にあまり開発ノウハウがなかったんです。一方CRIさんとは前からおつきあいもありましたし、「ADX2」がPS Vitaに対応済みだと伺っていましたので、だったら安心して使えると思ったんです。

澤田: プログラマとしてもサウンド専任を立てられるほど開発の規模が大きくなかったので、仮に社内ライブラリを作ったとしても、メンテナンスが負担になりそうでした。そのためコスト的にもミドルウェアを導入した方が有利だと思いまして。

鈴木: いろんなところで、『ピコットナイト仕様』として対応してもらえて、助かりました。笑

―――実際に使用されていかがでしたか?

伊良波: 「ADX2」で特に素晴らしかったのは、サウンドオーサリングツールですね。あそこまでUIをしっかり作ったミドルウェアは少ないと思いますし、同じレベルのものを社内で作ろうとすると、年単位で時間がかかります。ツール上でいろんなことができて、プログラマの負担も最小限で、実機上での音出しまで完結していたので助かりました。通常はサウンドデータを作って、データをパックして、プログラマがプログラミングして、ソースをコンパイルして、やっと実機で聞けるようになります。これが、サウンドデータを作ったら、すぐに実機で聞けるので感動しました。

CRI: ありがとうございます。ちなみに、サウンドオーサリングツールでよく使った機能は何でしたか?

伊良波: ランダムパラメータという機能をよく使いました。もともとゲームなので、同じ音が一緒に鳴ることが多いんですよ。それが発音ごとに、ランダムで音色が変えられるので、単調にならずにすみました。基本的なところから応用的な部分まで、いろんなランダム再生が可能だったので、積極的に使いました。

―――戦闘中だと何音くらい同時になっているんですか?

伊良波: SEだけで最大12~13種類、ストリーミングは常時BGMと環境音で2本が鳴っています。

―――「ADX2」の「AISAC(アイザック)」(※1)は使われましたか?

(※1) 「AISAC(アイザック)」…「ADX2」の機能。サウンドの音量やエフェクト、ピッチなどのパラメータが条件によって変化する、インタラクティブなサウンドを作成できる機能。

伊良波: 距離に応じた音量変化で使用しています。自分で書いた音量の減衰カーブが使えましたので、いちばん聞こえの良いカーブを描いて使わせてもらいました。


―――エフェクトなどはいかがですか?

伊良波: 今回はエフェクトは使っていませんね。それより、音のボリュームを優先度でコントロールして、重要な音を目立たせる「REACT(リアクト)」をいくつかの場所で使いました。本作ではゲームの都合上、ジングル(短い音楽)が鳴るシーンが多いんです。これがBGMと一緒になるとうるさいので、リアクトでBGMを消したり、音量を下げたりしました。通常だとプログラマさんの手を煩わさなければできないので、非常にありがたかったですね。

CRI: 他に使用感についてご意見、ご要望などありますか?

伊良波: 基本的な部分は一般のサウンドツールと変わらない感覚で使えたので、とっつきが良かったですね。さらにツールのバージョンアップと共に機能がどんどん改良されていったので、むしろ、これだけの機能を使いこなせないことの方が悔しいくらいで。笑


■WindowsとPS Vitaのマルチプラットフォームで開発

―――サウンドでプロキオンスタジオ社のクレジットもありましたね。

伊良波: SEは私が作り、BGMはプロキオンスタジオさんにお願いしました。SEの種類は数だけでいえば4-500種類くらいでしょうか。もっとも、ランダムの素材を含めると、もっと広がりますね。
シーケンス(連続再生)も使用しています。シーケンスは中のパラメータを細かく設定できるので、音一つからステレオに設定したりといったこともできました。ゲーム内で時間軸がずれたとしても、その中ですべて完結できましたし。通常は間の時間も含めた、長い波形にする必要がありましたが、中間部分をつめて容量を削減できました。

CRI: サウンドの実機プレビューは多く使われましたか?

伊良波: 実機プレビューは前述の通り、非常に便利な機能でしたので、かなり初期の頃から多用していました。

―――ちなみに本体のスピーカーとヘッドフォンの、どちらを前提に調整されたのでしょうか?

伊良波: やはり携帯ゲーム機ですから、ヘッドフォンで聞くのがベストな音環境になるかと思います。そのためヘッドフォンで調整してから、本体側のスピーカーでもバランスをとりました。

―――そもそもマルチプレイでは、いろんな音がランダムに重なりがちですよね。

伊良波: そうですね。それが本作はマルチプレイ前提のゲームですので、ほおっておいたら何が起きているか、わかりにくい音になりがちなんです。そのため細かいところは、ゲームを実際にテストプレイしながら、その都度修正していきました。そうした意味でも「ADX2」は便利でしたね。

―――WindowsとPS Vitaの平行開発だったとのことですが。

メインプログラマーの澤田氏
澤田: 本作はPS Vitaだけでなく、Windowsでも同時に開発しました。そこでWindowsでサウンドデータを実装して確認してもらったりもしました。

伊良波: そうですね。「ADX2」にはWindows版のライブラリもありましたし、マルチプラットフォーム対応でしたので助かりました。

澤田: もともと社内ライブラリがマルチプラットフォーム対応でしたので、そのサウンド部分にCRIのミドルウェアを組み込んで、Windows版とPS Vita版の両方で動かせるようにしました。

―――他に何か困った点はありましたか?

澤田: 不明な点があってもすぐにサポートしていただけましたし、先行して社内で「ADX2」を使っていた部隊があり、情報共有もできましたので、問い合わせる必要もなかったくらいで。

伊良波: 今回はショートプロジェクトでしたし、基本的なことでトラブルがなかったのが一番良かったですね。

CRI: 「ADX2」の追加機能の要望はありますか? 

伊良波: インゲームプレビュー(※2)で中のパラメータもチェックできるようになると、デバッグも楽になるので、期待したいですね。

(※2) 「インゲームプレビュー」…「ADX2」の機能。開発中のゲームプログラムのサウンドにおける、音量、パン、エフェクトなどの各種パラメータ設定を実際のゲームを動作させながら調整することができる機能。


■F2Pゲームでも今後はサウンドが重要になる

―――CRI社に限らず、今後ミドルウェアでカバーしたい領域は何ですか?

澤田: キャラクターAI部分で、複雑な動きを手軽に使える仕組みがあれば、もっとゲームに深みを持たせられるので興味があります。

―――こういう技術を使ってみたいというのはありますか?

澤田: 本作では3GでもWi-Fiでもプレイできるように、非同期で作っています。3G回線で完全同期は難しいと思いますので、「非同期でも完全同期のように遊べる」ゲームは作ってみたいですね。ネットワークを使ったゲームは今後も増えていくと思いますし、そうした技術に挑戦してみたいです。

CRI: 弊社でも本作を皮切りに、F2Pゲームのサポートに力を入れていくようになりました。家庭用でも今後F2Pゲームは増えていくと思いますか? 

鈴木: もっと増えるだろうと思ったんですが、まだまだこれから、という感じでしょうか。ソフトの容量などの関係もあると思います。本作もリリース時で800MB、今はパッチなどで1GBくらいになっています。パッチ部分はくるくるとデータが入れ替わっていくスタイルです。アップデートの度に全体の容量が増えていくわけではありませんが、そうはいっても多いですよね。

―――それでは、最後にユーザーとディベロッパー向けに、一言ずつコメントをお願いします。

鈴木: 本作はオンライン専用タイトルということで、遊ばれている方の声を受けてどんどん変えていきたいと考えています。これから遊ばれる皆様もどんどんメッセージをいただければと思います。また『ラグナロクオンライン』『グランディア』といった、他のタイトルとのコラボもやっていきますので、期待してください。

また今後も面白いコラボは積極的に行っていきたいと思っていますので、ぜひご連絡いただければと思います。笑

伊良波: F2Pゲームといえばソーシャルゲームが一般的で、中には音が鳴らないゲームも多いんですが、本作はプロキオンスタジオ様にすばらしい音楽を作っていただいて、「ADX2」によって良い音で再生しています。ユーザーの皆様にも高い評価をいただいていますので、ぜひゲームを遊んで聞いていただければと思います。

開発者様へのメッセージは、据え置き機では、そろそろ「音圧戦争」にも終止符が打たれつつある中、音が聞きやすい状況になってきました。一方、携帯機では戸外で遊ぶこともあって、音量も据え置き機ほど作りやすい状況にはなっていないと思います。まだ各社様も試行錯誤だと思いますが、F2Pゲームでも今後はサウンドが重要になってくると思います。情報交換をしていきながら、良いゲームサウンドを作っていきましょう。

澤田: 本作はガンホーのPS Vita第一弾のF2Pタイトルですので、まだまだ改善できる点があるかと思いますが、そこはどんどんアップデートで対応していきたいと思っています。ぜひ遊んでいただいて、ご意見をお寄せいただけると助かりますので、よろしくお願いいたします。

開発者様に対してですが、今回はPS Vitaの3G回線を活かすため、通信が途切れてしまう環境でもプレイできるように、完全同期ではなく非同期でプレイできるタイトルに仕上げました。ハードの特性を活用して、ハードメーカーとソフトメーカーが一緒になってゲーム業界を盛り上げていけるようなタイトル作りを、これからもしていきたいですね。

―――ありがとうございました。

有楽町のガンホー本社にて


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株式会社CRI・ミドルウェア
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DEVELOPER'S TALK記事一覧

(Article written by 小野憲史)

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