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バーススパ大学ジェームス・ニューマン教授が語る、英国のゲーム保存活動の現状と問題点

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ジェームス・ニューマン教授
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  • ゲーム保存国際カンファレンス
京都市嵐山にある時雨殿にて、ゲーム保存国際カンファレンスが1月18日に開催され、英国バーススパ大学のジェームス・ニューマン教授によるプレゼンテーションが行われました。

このカンファレンス「ゲーム保存国際カンファレンス:ビデオゲーム~保存?忘却?世界はどう考えているか~」では、産学官の協調関係を前提に、ビデオゲームやその文化の保存についてこれまで積極的に取り組んできた米英のキーマンを招いて、国内において文化庁の「平成24年度メディア芸術デジタルアーカイブ事業」に採択された、立命館大学ゲーム研究センター、RCGSにおけるゲームアーカイブの取り組みをあわせて紹介しながら、「ビデオゲームやそれらを取り巻く文化」の保存に関し、改めてその社会文化的意義について国際的な視野を織り込みつつ考えるとともに、それらが地域活性化にもたらす可能性についてを題材にプレゼンテーションやシンポジウムが行われました。

ヘンリー博士に続いてプレゼンテーションを行ったのはジェームス・ニューマン教授。ニューマン教授は、国立メディア博物館に設置された国立ビデオゲームアーカイブの共同創設者や、英国における国際的なゲームフェスティバル、「Gamecity」の共同プロデューサーなど歴任。現在、英国ウェブアーカイブゲーミングカルチャースペシャルセレクション理事にも就任。また、デジタルメディア、ビデオゲーム並びに遊戯文化を対象に、これまで「Routledge」や「BFI」といった権威ある出版社から多数の書籍を発売しています。『Videogames 改訂版』、『Playing with Videogames』、『100 Videogames,』等。ゲームアーカイブを取り上げた書籍に「Best Before: videogames, supersession and obsolescence」などが代表的な書籍となっています。

ニューマン教授はプレゼンテーションのはじめに自身のビデオゲームの原体験について振り返りました。ニューマン教授が初めて触ったビデオゲームは入院中にプレイした任天堂の「ゲームウォッチ」のゲームの一つである「パラシュート」であったと言います。このゲームは自身の中でとても重要なファクターになったとのこと。

まずニューマン教授は1981年に創設された英国のナショナルビデオゲームアーカイブ(NVA)について語り始めました。英国では当時、ゲームは子供のものであるという観念が社会的に強く、ニューマン教授は学術書を書くのは大変難儀したと当時の様子を振り返りつつ話を進められました。また、苦労してゲームについて学術書を書いても肝心のゲームの保存がされていないために実際にプレイしてもらうことが出来ないという事態に直面したといいます。

「保存」という行為は10年や20年という単位ではなく100年、500年を見据えなければならないとニューマン教授は語ります。学術書やレポートによって伝聞するのと実際にゲームをプレイする事はやはり全然違う事であると熱弁。最初に挙げられたゲームウォッチのパラシュートでも、PC上でFlashやブラウザゲームとして再現されたものを現在でも遊ぶことはできるかもしれないが、実際のゲームウォッチでプレイするのとはやっぱり違う、リメイク作も出ているかもしれないが、オリジナルを入手しプレイするのは現在では困難であると感慨深げに語られていました。

当時、ニューマン教授は国内の様々な博物館にゲームの保存がなされているか問い合わせたと言いますが何処にもそのようなアーカイブは存在していなかったとのことです。デベロッパーにも問い合わせたと言いますが開発者ですら保存という取り組みは行われておらず、フィルムやデザインとして保存されているものはあったものの、ゲームをゲームとして保存しているアーカイブはなかったそうです。そこでナショナルメディアミュージアムでは「新しい時代のメディアも収集しなければならない」との英国政府からの言葉もありゲームの収集が開始されることになり、ナショナルビデオゲームアーカイブとして発足することになりました。このアーカイブは国によって行われているもので保存は半永久的に行われるものであるということです。

ビデオゲームのアーカイブというのは、大切に鍵を掛けてしまっておくのでは意味がなく、実際に動作している状態をディスプレイすることが大切であるとニューマン教授は語ります。「プレイされる状態」を保存するには実際にプレイしてもらうほかなく、プレイアブルである状況は重要とのことです。しかし、プレイアブル状態での保存というのは想像以上に難しく物理的なハードの劣化、主にプラスチックの劣化などがあり保存は難航していると言われています。また、意外な所ではゲームに欠かせない「テレビ」の保存も難しとのこと。適切なブラウン管がないとディスプレイ出来ないタイトルもあるためテレビの保存はゲームの保存において不可欠なものであると言います。

活動は「保存」だけでなく「創る」事も行う必要があるニューマン教授は語ります。これからは関連資料などのドキュメント作成など、ゲームそのものだけではなく、ゲーム文化自体をアーカイブしたいと語り、これは今後の課題でもあるとされています。

目下の一番の課題としては「ゲームの崩壊をいかに食い止めるか」というところにあると言います。特にオンラインゲームサービスなどは一旦停止されると途端に保存が困難になるものであり、サーバーが止まるとそこまでのものである非常に脆いものであるとされています。挙げられた例の中には2011年に登場したタイトルですらもう2012年には既に消滅していくものも存在し、こういったものは2度と復活させることが出来ないのだと言います。

ゲームの保存の意義とは何か、という点ではゲームを今するために保存するのか、ゲームを将来の人にプレイしてもらうために保存するのか、こういうゲームがあったと未来に思い出すために保存するのか意義は様々であるとニューマン教授は語ります。プレゼンテーションの最後で教授は「人によってゲームのプレイは違う、ゲームが示すものはぜんぜん違うのだ」と締めくくられました。
《ひびき》

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