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光田康典氏も登場! 東京藝術大学にて開催された“ゲーム音楽シンポジウム”レポート

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光田康典氏(左)、齋藤健二氏
  • 光田康典氏(左)、齋藤健二氏
  • 今回の会場、東京藝術大学 千住キャンパス
  • 光田康典氏も登場! 東京藝術大学にて開催された“ゲーム音楽シンポジウム”レポート
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  • 毛利嘉孝氏(左)、土屋ユリ氏
  • 光田康典氏も登場! 東京藝術大学にて開催された“ゲーム音楽シンポジウム”レポート
  • 終始アットホームな雰囲気でした!
ゲーム音楽作曲家・光田康典氏を招いたゲーム音楽シンポジウム『「ゲーム音楽」の現在形』が2012年9月13日(木)に東京藝術大学 千住キャンパスにて開催されました。その模様をお伝えします。

このシンポジウムは、東京藝術大学大学院 音楽文化学専攻芸術環境創造部門 毛利研究室の研究教育活動の一環で開催されたもの。「ゲーム音楽」というジャンルを、ひとつの鑑賞対象として捉え直そうという試みです。一般参加者の来場も可能で、会場には多数の参加者が詰めかけました。

登壇者は、株式会社2083の齋藤健二氏、東京藝術大学院修士課程の土屋ユリ氏、東京藝術大学准教授の毛利嘉孝氏。そしてゲストに招かれたのは、『クロノ・トリガー』『クロノ・クロス』『ゼノギアス』などを代表作に持つゲーム音楽作曲家、光田康典氏です。今回は、光田氏のゲーム音楽制作における理念や想いが語られる形での会となりました。

シンポジウムと銘打たれてはいたものの、光田氏のやわらかな語り口で、終始アットホームな雰囲気。シンポジウムの最後には、尺八奏者・神永大輔氏を中心としたバンド、“SUPER JOHN BROTHERS”のメンバーによるゲーム音楽の実演も披露され、会場は大きな拍手に包まれました。なお、このシンポジウムの模様は後日インターネットで映像配信されるそうなので、ご興味のお持ちの方はゲーム音楽演奏会情報サイトの「2083WEB」をチェックしてみてください。

下記に、シンポジウムの内容をご紹介します。光田氏へのインタビューも本記事とは別に掲載しておりますので、ぜひ合わせてご覧ください。


■リスペクトと研究、光田氏の“民族音楽”
最初の話題は、光田氏のゲーム音楽制作について。光田氏は、ゲーム開発スタッフからイメージイラストやシナリオなどの資料をもらい、どのような音楽をつけるか考えていくとのことです。

たとえば『クロノ・クロス』では、きれいな青い海と青い空があって見た目は明るいものの、シナリオには“人生とは何か?”という深いテーマがあったため、地中海サウンドというイメージが浮かんで曲を書いていったとのこと。また『クロノ・トリガー』については、色々な時代を行き来するゲーム内容のため、一見音楽もバラバラになりがちですが、光田氏の中では「和」というテーマが芯としてあったそうです。「和」とは音楽的な和風という意味ではなく、“懐かしい気持ちを感じられるものを作りたい”という意味とのことでした。

続いては、光田氏の持ち味のひとつである“民族音楽”についてです。土屋氏が「光田さんの楽曲は民族音楽的なのが印象的ですが、完全に民族音楽というわけではないですよね」と問いかけると、光田氏は次のように答えました。

「僕は普段いろんな民族音楽を聴きますが、民族音楽はそのままの状態だと濃くて、身体に入ってこないんですよね。ゲームはエンターテインメントですから、分かりやすいかたちでアレンジするという重要性を感じているんです。なので、僕のフィルターを通った音楽をみなさんに届けています。日本人の気持ちでの民族音楽として、みなさんと同じ気持ちを持っているはずなので、聴きやすいのではないかと思います」(光田氏)

光田氏は現地の民族をリスペクトしており、適当に制作するのではなく、自分の中でしっかりと研究を重ねたうえで制作しているとのこと。また、極力いろんな国へ実際に行くようにしているそうです。
「今はインターネット時代で、GoogleMapでその土地に行けますけど、現地に行かないと分からないものもあるんです。やっぱり、自分の身体を連れていくというのは重要だと思います」

また、宗教的な問題でゲームに入れられない音楽もあるそうで、「非常に怖いが、そういう音楽を入れるとどうなるのだろう、という思いは僕の中にある」そうです。それを踏まえて、光田氏は未来のサウンドクリエイターに向けてメッセージを送りました。

「だからこそ、きちんと現地へ行って民族音楽について紐解いていかないといけないんです。ただ面白いからというだけでやると、非常に危ない。民族音楽を研究せずに取り入れている作曲家さんもいると思いますが、やるのであれば徹底的に研究してからのほうがよいですね。今後、作曲家の道に進みたい方がいれば、そういうことを是非やっていただきたいと思っています」(光田氏)


■ゲーム音楽とアニメ音楽の違い
続いては、ゲーム音楽とアニメ音楽、それぞれの制作方法の違いについての話題に。スクリーンには、光田氏が作曲を担当したゲーム『イナズマイレブン』の楽曲リストが映し出され、光田氏本人によって解説されました。

楽曲リストの備考欄に何も書かれていない曲については、充分にイメージがわかないとのこと。そのため、ゲーム開発スタッフにイラストを見せてもらったり、「この街に住む人はどういう会話をするのか?」など、スタッフに質問をして作品の詳細を聞き出すそうです。“ゲームでどういうことをやりたいのか”が見えた段階で、初めて曲が書けるとのことでした。

続いて、ゲームと同様に光田氏が作曲を担当するアニメ版『イナズマイレブン』での楽曲リストを紹介。こちらは、リズムやテンポ、展開、編成といった指定が記号で書かれていました。「アニメ音楽にはフェードアウトがなく、最後にキメ(曲の終了部分)を入れなければならないが、それを数多く作る必要がある」、「似たような終わり方にならないよう、色々なエンディングパターンを考えなければいけない」と語られました。

一方、ゲーム音楽の場合はループ曲がメイン。飽きさせないように途中で転調する必要があり、必ず同じキーに戻ってこなければいけないという制約があるようです。

毛利氏からの「アニメとゲームの作曲は、どちらがお好きなんですか?」という質問に光田氏は、「かっちり作りたいほうなので、どちらも向いていないかもしれません(笑)」と答えました。アニメの場合は、音響監督が絵に合わせて曲の切り貼りをするものの、光田氏の意図しないところでカットされ、「このフレーズの後にこれが来るから気持ちいいのに…」とガッカリする場合もあるとのことです。

また光田氏はゲーム音楽の音作りについて、昔は小さなメモリに音のデータを詰め込んでいたため、職人気質の人じゃないとできないところがあったと振り返りました。最近は生演奏の音楽をゲーム機でそのまま流すこともできるものの、近年、携帯ゲーム機のニンテンドーDSが売れたために、内蔵音源の職人がまた必要になってきたと語りました。

「“限られた中でいかに綺麗で音楽的なものを作るか”というのが、ゲーム音楽作曲家のステータスのようなところがあって、僕と同年代だとそこに燃える人はたくさんいると思いますね。ゲーム音楽って、フルオーケストラのレコーディングから電子音楽まで、ジャンルがとても幅広く、非常におもしろいエンターテインメントではないかと僕は感じます」(光田氏)


■ゲームの思い出を、演奏で追体験する時代に
続いては齋藤氏が、近年のゲーム音楽演奏会の状況について説明。4~5年ほど前からアマチュアでゲーム音楽を演奏する団体が増えてきており、最近はプロの楽団が、メーカーから委託されてではなく楽団自身が主体的にゲーム音楽を演奏するケースが増えてきたとのこと。今後さらに、一般のオーケストラやバンドがゲーム音楽を取り上げていくのではないかと思う、とのことです。

齋藤氏によると、光田氏の楽曲はアマチュアの演奏会でも非常に人気があり、自身も『クロノ・トリガー』のメインテーマは何十回聴いたか分からないそうです。20代くらいの人だと、初めて聴いた音楽がポップスやクラシックではなくゲーム音楽というケースも多く、“自らの原点になっている音楽を、自分たちが本当に好きだから演奏する”という流れが強くなってきているのでは、と語りました。

光田氏は、「『クロノ・トリガー』や『クロノ・クロス』など、昔書いた曲のほうが演奏しやすいのではないかと思います」とのこと。その理由として、「内蔵音源で作った音楽は、僕が表現したいものを全部入れられなかったので、楽曲にスペースがあるから」だそうです。「皆が印象に残ったメロディをどのようにアレンジして、どのように演奏するかという、“遊ぶ余地”があるのでは」とのことでした。

「仕事的には最近オーケストラが多いですけど、オーケストラでも遊びを入れられないかと思っています。きっちりとした音楽だけれども、なんとか、他の人が僕の音楽を使って遊べるようなものを作れないかなと思って曲を書いていますね。ここ最近の僕のテーマです」(光田氏)

ゲーム音楽演奏会が増えたことについて毛利氏は、「ゲーム音楽は、ある世代にとっては共通の思い出や記憶で結びついているんだなと思いました」とのこと。「ビートルズやキャンディーズの音楽で育った…など、今まではポップスの音楽で語りがちでした。しかしそれは80年代で終わっていて、80年代以降に育った人は『クロノ・トリガー』の音楽で育ったというように変わってきており、その思い出を演奏で追体験する時代に入ってきたのかもしれませんね」と述べました。

齋藤氏はゲーム音楽の演奏の際、特に幼少期にプレイした作品には、当時の時代と交信しているようなスピリチュアルなものを感じることがあるとのこと。また、それは生演奏でこそ、気持ちを持つ奏者や聴衆がいてこそなのだ、と力説されました。

「ゲーム音楽は、最初登場した頃にはピコピコサウンドしかできなかったために、“魂がない”かのように言われることもありました。しかし近年、生演奏されることによって、そもそも持っていたスピリチュアルなものが、最初から入っているものだったと気づいてきたのではないかと思います。僕もこれからは、聴き方が変わる気がしていますね」(毛利氏)


■光田氏の楽曲を生演奏! 本人による楽曲解説も
演奏会の話題の後はゲーム音楽を実演!ということで、バンド“SUPER JOHN BROTHERS”のメンバーが登場し、光田氏の楽曲を披露しました。
(尺八:神永大輔、ヴァイオリン&ボーカル:水谷美月、ピアノ:有木竜郎、ベース:岩田亨、パーカッション:岡島俊治)※敬称略

演奏されたのは、『クロノ・クロス』より「CHRONO CROSS ~時の傷痕~」、『tsugunai~つぐない~』より「昼下がりの町」、『ゼノサーガ エピソードI』より「pain」の3曲です。

演奏の合間には、光田氏が楽曲に関する秘話を語られました。「CHRONO CROSS ~時の傷痕~」で書かれた尺八とフィドルのメロディは、『クロノ・クロス』の“ホーム”と“アナザー”という次元の違う2つの世界にそれぞれ置き換えられるとのこと。最初は重なっている尺八とフィドルのメロディがそれぞれ変化していくのが、“自分の選択肢によって運命が変化する”ことを表しているのだそうです。「今回、そういう風に演奏してくれてすごくうれしいです!」と光田氏は感激されていました。

また光田氏によると、『pain』はゼノサーガの主人公シオンと、アンドロイドのKOS-MOSの2人の曲であるとのこと。2人は物語の最後まで心が通わないままでしたが、最後に理解し合える瞬間を、ボーカルが入らない部分で表現したと解説されました。

なお、SUPER JOHN BROTHERSの神永氏と岩田氏は、大の光田さんファンだそうで、光田氏本人の目の前で演奏できることをとても喜んでいました。

「愛する光田さんの音楽を、ご本人の前で、そして同じく光田さんの音楽を愛する皆さんの前で演奏できることを光栄に思います」(神永氏)

神永氏が尺八を始めるきっかけも、光田氏の音楽だったのだそうです。光田氏を敬愛するだけあり、非常に熱のこもった演奏でした! すべての演奏が終了後、盛大な拍手の中シンポジウムは幕を閉じました。

SUPER JOHN BROTHERSは、齋藤氏の2083が主催するゲーム音楽ライブ『DeepCrystal』の来年1月公演に出演するそうなので、ぜひチェックしてみましょう! また、神永氏が出演するゲーム音楽ライブ、『playing game music!! ~光田康典特集~』も9月29日に開催されます。こちらはチケットの残り枚数がわずかとのことですので、ご予約はお早めにどうぞ。

最後に、シンポジウム終了直後の光田康典氏へ直撃インタビューを敢行しました。こちらの記事もあわせてご覧ください!
http://www.inside-games.jp/article/2012/09/23/60000.html
《hide/永芳英敬》

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