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【CEDEC 2012】桜井政博氏が問い掛ける「あなたはなぜゲームを作るのか」

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【CEDEC 2012】桜井政博氏が問い掛ける「あなたはなぜゲームを作るのか」
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  • 星のカービィ
  • 星のカービィ 星の泉の物語
  • 大乱闘スマッシュブラザーズ
『星のカービィ』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』で知られるゲームデザイナーの桜井政博氏。実は桜井氏はCEDECに訪れた事が無く、今回が初参加。そして初参加にして「あなたはなぜゲームを作るのか」と題した初日の基調講演を行いました。

桜井氏は「ゲームの作り方は人それぞれ、それは自分が考えればいい」とコメント。しかし「あなたはなぜゲームを作るのか」というテーマを考える事は意味があると言います。そして、「基調講演の会場に来る前に、それを少しでも考えたなら目的は果たせたかもしれない」と言い、自分自身への問い掛けが非常に重要であると語りました。

まず桜井氏は自身のバックグラウンドを話しました。「私はコンピューターゲームの成長と共に成長してきました」と語るように、幼少期から青年時代、そしてゲーム業界に入っていった時代はゲームの黎明期から成長の時代と重なります。70年代後半に『Pong』が歴史を始め、『ブロック崩し』が敵という概念を生み出し、『スペースインベーダー』が日本を熱狂させます。桜井氏は1970年生まれで幼少期を始まりの時期を過ごし、インタラクティブな遊びにすっかり取り憑かれてしまったと言います。

ゲーム機では任天堂が「テレビゲーム15」という家庭用ゲーム機を出したり、「ゲーム&ウォッチ」で一時代を築きます。80年代に入ると「カセットビジョン」、83年に「ファミリーコンピューター」が登場。さらにホビー用途のパソコンが普及したのもこの頃です。ソフトでは『ウルティマ』『ウィザードリィ』という金字塔が生まれ、ファミコンでは『スーパーマリオブラザーズ』や『ドラゴンクエスト』が時代を作ります。

桜井氏の人生を変えることになったのは1994年の「ファミリーベーシック」です。これはファミコンでプログラム言語のBASICが書けるというシステムで、桜井氏は半年分のお小遣いを貯めて購入。これがゲーム開発という世界を志すきっかけになったそうです。

コンビニ弁当にスタッフロールがあれば何千人もの名前が書かれるだろう―――おぼろげながら進路を考えるようになっていた桜井氏が感じたのは「人は人の仕事によって生かされている」ということだそうです。身に着けている服、何気なく食べているご飯、あるいはクルマや道路、身の回りのあらゆる物は「誰かがやった仕事」であり、それによって人は生きているということです。そして「専門家が専門家に特化することで何かをより快適にできる」と感じた桜井氏は早く現場に入って実践的に学ぶことが重要ではないかと考え高専に入学、エンジニアの道を目指します。

しかしこの決断は桜井氏が何度か過去に言及したようにやや失敗だったようで「高専の学業に疑問を持つようになってしまい、普通高校に行くことになりました」。学校に通いながらバイトで貯めたお金でゲームを買う(なるべく沢山のゲームを遊びたかったので当時流行った"抱き合わせ販売"も歓迎だったそう)。メモなどは取らず、どの瞬間に"面白さ"が生まれるのか体で学んでいったそうです。同時にファミリーベーシックで得たプログラムの楽しさも継続して、ポケコンで即興でゲーム作りを行なっていたりしたそうです。

■リスク&リターンというゲームデザインの考え方

高校卒業後はHAL研究所へ。「バブルだったからか、最初からゲームデザイナーというのが許されていた」そうで、処女作として19歳の頃に手がけた『星のカービィ』(ゲームボーイ)がいきなりの大ヒット作品となります(開発が終わったのは21歳の頃)。『星のカービィ』が目指したのは「簡単過ぎるゲーム」。当時のゲームは難易度がどんどん上がり、初心者に対する敷居が上がっていっていました。誰でも遊べて初心者でも十分に楽しめるゲーム、それがテーマでした。桜井氏のゲームにはこのように確たる芯が感じられます。

ファミコン『星のカービィ 星の泉の物語』ではコピー能力が導入。上級ユーザーが多いファミコンで、初心者でも上級者でも自分なりの楽しみ方を見つけて欲しいという思いが込められています。スーパーファミコン『星のカービィ スーパーデラックス』は大作ゲームばかりの時代に軽く遊べるオムニバス形式を採用し、更に2人協力プレイが導入されました。NINTENDO 64『大乱闘スマッシュブラザーズ』では難易度が上がる一方の格闘ゲームにアドリブ性を導入。ちなみに画面の外に吹き飛ぶとミスになるというアイデアは初代の『星のカービィ』の企画書にもあったそうです(もちろんボツになったそうですが)。ゲームキューブ『カービィのエアライド』はワンボタンの簡単操作でレースゲームを実現。ゲームではありませんが週刊ファミ通では「桜井政博のゲームについて思うこと」というコラムを連載、これまでに400回を超えています。

その後桜井氏はHAL研究所を退社し、個人事務所ソラを立ち上げフリーとして活動することになります。最初に手がけた『メテオス』では打ち上げパズルという新境地を開拓。『そだてて!昆虫王者ムシキング』では初めて携帯ゲームを手がけ、筐体デザインを含めてデザインに挑戦します。2006年からは「PRESS START」というゲーム音楽のコンサートをスタート。曲目の選定に携わります。ゲームキューブではシリーズ最大のヒットとなった『大乱闘スマッシュブラザーズDX』を開発。通常であればHAL研究所が作るべきところを岩田社長の決断で、辞めたディレクターの元にチームが集められ開発が行われます。続く3DS『新・光神話 パルテナの鏡』も同様に新たにスタッフを集めて開発されました。

携わってきたゲームを常にヒットさせてきた桜井氏、最も重視しているのは「リスク&リターン」という考え方だそうです。桜井氏はゲーム開発に当たって、自分の中の引き出しからアイデアを出すのではなく、必要に応じて「リスク&リターン」に基づいてロジカルに考えてゲームデザインを描くそうです。桜井氏はパズルゲームが苦手だそうですが、『メテオス』の打ち上げパズルというデザインは5分で完成したそうです。

「リスク&リターン」は例えば『スペースインベーダー』におけるインベーダー(敵)と砲台(プレイヤー)の駆け引きで表されます。両者に距離があれば敵の攻撃も当たらないし、自分の攻撃も当たらないので、ローリスク・ローリターン。距離が縮まってくると逆で敵の攻撃を受ける可能性も高いけど、攻撃を喰らわせる可能性も高い、ハイリスク・ハイリターンとなります。ここには攻略(工夫)の要素もあり、防御壁を上手く活用すれば容易に敵を倒せます。しかし錯乱要因もあり、インベーダーによるスピードの差や幅の差が駆け引きを生み出します。

例えば『スーパーマリオワールド』ではマリオはノコノコを踏んづけることで倒せるだけでなく、甲羅を蹴飛ばす事ができます。甲羅を蹴ると、それで敵を倒せる可能性がありますが、何かの障害物に跳ね返ってマリオの方に向かってきてしまう可能性もあります。これは「リスク&リターン」の設計であり、多くのリターンを得たいがためにプレイヤーはリスクを取って甲羅を蹴ろうとします。

桜井氏はこうした考えからゲームデザインを行なっていると言います。ただし「乱暴に言えばゲーム性を上げると一般性は下がります。それにゲーム性だけが楽しみではないし、それだけがプレイヤーを掻き立てるわけではありません」とコメント。一例として、先のシナリオを楽しみたいからという動機やムービーを見たいという動機も十分有り得るとのことでした。

■人には役割がある

「私は、自分が楽しむようなゲームを作っていません。そうしたいならもっとハードなゲームを作るでしょう。それは人には役割があると思うからです」桜井氏はこう言います。「あなたはなぜゲームを作るのか」という講演のタイトルに対する桜井氏の答えは「人は人の仕事によって生かされている」ことに対して自分も社会に恩恵を返すため、ということになりそうです。これは難しい事のようですが桜井氏は「ここに居る時点で皆さんは全員がスペシャリストであり、それを突き詰めればそれが貢献になる」と言います。

「『シルシルミシル』や『劇的ビフォーアフター』みたいな人の仕事を見られるテレビが好きなんです。でも、ああいった匠の技というのはゲームの世界にもあるはずです。"なんということでしょうか、匠の気遣いでゲームの操作性がこんなにも良くなりました"みたいな事はこの世界にも有り触れているはずです」

ゲームを欲しいと思う人がいて、それを満足させるようなゲームを作ることは立派な社会貢献ではないかと桜井氏は言いました。しかし一方で、ここには大きな競争が繰り広げられているのも事実です。あるスライドが紹介されます。

・同じものならより安いものを買う
・同じ値段ならよりよいものを買う
・同じ質のものならより信頼できるメーカーのものを買う

これを否定できる人は殆どいません。しかし同じ問いは商品だけでなく、今を生きる全ての人にも問い掛けられています。ゲーム開発者も同様です。同じ事が出来る人が沢山居れば競争は激しくなります。日本というコストの高い国で仕事をしていることはそれだけで不利です。「会社に勤めて、成功に関わらず給料が払われると感じにくくなってしまいますが、いかに自分の作ったものが人に貢献しているかというのは究極的に大事なことです」良いものを、たくさん、そして信頼を受けることが求められているのです。

桜井氏が言うのはスペシャリストとして自分の役割を自ら問い、そして突き詰めて行かなければ生き残りは無いということです。「どんなに混沌とした中からでも頭角を現す人はいます。ヒットは運に左右されますが、一緒に仕事をすればその人の事を理解できるものです。この仕事はお母さんに決められて入った道では無いはずです。自分が好きで選んだ道です。私も頑張りますので、皆さんも自らが選んだ道で得意を見つけて自分の役割を果たしていってくれることを期待しています」
《土本学》

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