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カジュアルゲーム世界最大手・ポップキャップゲームズに聞く『ビジュエルド伝説』と同社の戦略

ゲームビジネス その他

小椋洋平氏
  • 小椋洋平氏
  • カジュアルゲーム世界最大手・ポップキャップゲームズに聞く『ビジュエルド伝説』と同社の戦略
  • 荒木重則氏
  • カジュアルゲーム世界最大手・ポップキャップゲームズに聞く『ビジュエルド伝説』と同社の戦略
  • 様々なグッズ展開も開始
  • オフィスの壁には『プランツVSゾンビ』のキャラクターが
  • 楽しげな雰囲気のオフィス
  • ひまわりのキャラクターも
米シアトルに本社をおくカジュアルゲームの雄、ポップキャップ・ゲームズ。その同社が満を持して日本向けにリリースしたタイトルが『ビジュエルド伝説』です。同社の強力なフランチャイズをモバイル向けにアレンジする上で、どのような苦労があったのか。日本市場における戦略と合わせて伺いました。

―――お二人の自己紹介をお願いします。

荒木: 弊社エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターの荒木重則です。長く家庭用でゲーム制作やビジネス開発を行ってきて、弊社に入社したのが3年前のことです。当時は上海に本部を置くアジア地域の日本担当マネージャとして孤軍奮闘していました。その結果、タイトーさんとの協業で昨年5月に『ポップ☆タワー for GREE』(ポップタワー)をリリースできました。現在はビジネス分野を小椋に任せて、ゲーム開発に専念しています。国内だけでなく、アジア全般での開発・監修にも携わっています。

小椋: 同じくビジネスディベロップメント&マーケティングディレクターの小椋洋平です。読んで字の如く、ビジネス開発とマーケティングを担当しています。弊社はまだまだ日本での知名度が低いのですが、逆にそこは伸びしろがあると捉えています。遊んでいただければわかるのですが、弊社のゲームはどれも非常におもしろいので、うまく認知度を広げていきたいですね。

―――ポップキャップ・ゲームズ自体のご説明もお願いします。

小椋: はい、弊社は『ビジュエルド』というパズルゲームを作った3名の開発者によって、2000年に米シアトルで創立されました。最初は他社で販売することも検討されたのですが、ゲームが非常に面白かったので、最終的に起業することになったんです。当初は無料のブラウザゲームでしたが、すぐにダウンロード販売版が作られました。これがすべての始まりで、現在にいたっています。今では『ビジュエルド』は30を超えるプラットフォームで展開され、全世界で5億人がプレイするタイトルに成長しました。 その後『ズーマ』などのタイトルを世に出していく中で、カジュアルゲームに強いブランドを構築していきました。その中でも転機となったのが『プラントvs.ゾンビ』です。これも当初はダウンロードゲームでしたが、2008年にリリースされたiOS版が、全世界で爆発的に流行しました。アップルの「ベストゲームオブザイヤー」をはじめ、何十個ものアワードもいただいたんです。北米では昨年ニンテンドーDS版もリリースされて、サードパーティの中では1年間で最も売れたDSソフトとなりました。 もっとも最近の転機としては、2011年の8月EAのグループ企業になったことです。同社の買収額の中でも、最も高額なものになりました。もっともアメリカでも日本でも、EAと弊社は別の事業体となっています。弊社には完全な「自治権」が与えられていて、IPも弊社に属しています。その上でデジタル流通における知見を共有したり、アメリカでは互いのIPで共同プロモーションを行うなどの施策を進めています。

―――日本法人のミッションは何ですか?

小椋: 弊社のIPをどんどん日本でも紹介していくことと、日本独自のIPを立ち上げて、世界に発信していくことです。そのためにも、さまざまなパートナー企業さんと協業して、進めていきます。その第一弾となるのが、6月にGREEで配信が始まった『ビジュエルド伝説』(伝説)です。弊社の看板タイトルでもある『ビジュエルド』や、その派生作である『ビジュエルド・ブリッツ』(ブリッツ)を下敷きに、日本仕様にアレンジした内容になっています。

―――具体的に、どういった点がアレンジされているのでしょう?

荒木: 大きく2つの点で変わっています。まず海賊になって七つの海を冒険するという、明確な世界観やストーリーを設定したこと。それからビジネスモデルを、日本のモバイルソーシャルで主流のアイテム課金モデルにしたことです。この2つに関連して、新しく体力ゲージという概念も加わっています。

小椋: ただ『伝説』について説明する前に『ビジュエルド』『ブリッツ』について説明した方がわかりやすいと思うんですが、どうでしょうか?

―――ぜひ、お願いします。まだまだ知らない読者も多いと思いますから

小椋: 『ビジュエルド』は宝石(ジェム)を3つ並べて消していく内容で、いわゆる「3マッチスタイル」と呼ばれるゲームジャンルを切り開いたパズルゲームです。全世界で5億人のユーザーが存在し、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の方々に遊んでいただいています。非常にシンプルながら奥が深いゲームプレイにより、30分でも1時間でもついつい遊んでしまうゲームです。そのせいか、プレーヤーには成人女性の割合が多い点が特徴です。アメリカでは全プレイヤーの約75%が35歳以上で、その多くが女性となっています。 『ブリッツ』は『ビジュエルド』をベースに、まずFacebookアプリとしてリリースされ、昨年iOS版も発売されました。本作の特徴は1分間限定のスコアアタックに特化している点です。また友達同士でスコアが競えるソーシャル要素も加わりました。1分間しか遊べないので、よりエキサイティングになっています。ユーザー層も若い人が中心で、男性の方がちょっと多いですね。 そして『伝説』は『ブリッツ』をベースに、さらに日本風にアレンジがなされました。パズルゲームなのにマップが出たり、ミッションが登場したり。ランキングも友達同士だけでなく、全てのユーザやチーム単位でも競えたり。さまざまな要素を加えることで、より深く遊べるようになりました。開発も国内で行っています。

―――国内独自の展開という点がユニークですね

荒木: これまでの積み重ねの結果です。もともと2009年に東京オフィスができたころから、モバイル・ソーシャル・アイテム課金の分野にフォーカスしていました。そこで最初に立ち上げたのが『ポップタワー』です。この運営を通して、いろいろなことが分かってきました。 まず全体ユーザーの8割が女性で、そのうち課金ユーザーの9割も女性だったんです。またゲームセンターでコインを投入して遊ぶように、プレイチケットに対して課金してもらう仕組みを採用しました。ゲームを有利に進められるようなアイテム類も販売していますが、圧倒的にプレイチケットの消費率が高いんですよ。 こうした特殊な市場に対して最適なゲームをリリースするには、単なるローカライズや他社との協業では限界があるだろうと。そこで大きな挑戦ではありましたが、パブリッシャーになる道を選択したんです。

―――世界観はどのように決められましたか?

荒木: もともと『ビジュエルド』って、ゲーム画面が半透明になっていて、背景が何かゆらゆらしているじゃないですか。キャラクターが配置できそうなスペースも周囲にあります。これを活用しない手はないなと。そこで、ざっくり海賊・魔法学校・秘境探検というテーマを考えまして、市況だったり、イベントの作りやすさなどから、海賊に決定しました。そこからキャラクターだったり、七つの海を股にかけて冒険を進めていくストーリーが生まれました。

―――体力ゲージについても、意図を教えてください

荒木: アイテム課金というビジネスモデルにあわせた仕様です。『ポップタワー』の成功で、モバイルでもチケットシステムが成立することはわかっていました。ただ「冒険」というテーマを考えれば、ゲームオーバーのたびにチケットを消費するよりも、有料の回復アイテムを使用して体力ゲージを回復させていく方が、より適していますよね。冒険で傷ついた体を、アイテムで癒しながら先に進む、みたいな。 またエリアを自由に行き来できるのも、ストーリー的にどうかなと思いましたので、思い切ってマップ構造は一直線にしました。現在はさまざまなイメージの海が7つあり、それぞれに4つずつマップがあるので、全体で28のマップが存在します。これらを順々にクリアしていきながら、ストーリーを楽しんでもらう構造になっています。 まとめると、いろんな世界観の違う海(マップ)があって、冒険を進める中で、いろんな仲間と出会って、ミッションをクリアしていくというのがコアなゲームメカニクスです。他のソーシャルゲームと違って、課金しなければ先に進めなくなることはありません。がんばれば無料でクリアできますし、アイテムを購入すれば効率的に進められます。 もっとも、それだけでは先に進めなくなってしまうお客様もいらっしゃいますので、いろいろな「お助け」システムや、イベントも用意しています。こんなふうに、いろんな楽しみ方を実装することで、ユーザーの遊びをふくらませていく予定です。

―――ユーザー層はいかがですか?

荒木: ランキングを見る限り、女性が多いですね。中でもアバターをもりもりデコレーシヨンしているような、SNSを積極的に活用されている女性が中心です。課金率も女性の方が高いですね。パズルゲームと女性の相性が良いのだと思います。私見ですが、20代後半から30代の、結婚してお子さんがいらっしゃるような方が中心ではないでしょうか。

小椋: もっとも、弊社のゲームの作り方として、最初から特定のユーザーを念頭におくことはありません。あくまですべてのユーザーが対象です。それでもリリースしてみると、タイトルによって違いが出てくるのがおもしろいですね。

―――一番苦労された点は何でしたか?

荒木: 技術的な面で言えば、iPhone・アンドロイドのマルチプラットフォームにするため、Unityで開発したことです。ところが、これが思いのほか難産でした。もっとも、これらは他社さんでも同じ苦労をされていると思います。

小椋: それよりも端から見ていて感じたのは、1分間のスコアアタックで盛り上がれるような、スキル性の高い『ブリッツ』の魅力を損なうことなく、いかに超えられるか。そのためには、どのようなゲームメカニクスやキャラクター、ストーリーを加えると良いのか。そういった部分かなあと感じていました。たとえば前述の体力ゲージも、もともとはモバイルソーシャルの主流となる課金メカニズムを組み込む必要から生まれてきたものです。ただし、これによってゲームを遊ぶ回数が制限されることになります。そのため緊張感をもってゲームをプレイするという要素が加わりました。こんな風に、もともとの『ブリッツ』の良さをいかに膨らませるかに心を砕いていたようです。

荒木: はい、その通りです(笑)。弊社のIPにはスキル軸のあるゲームが多いので、どのようにソーシャル化していけばいいか、今後も追求していきたいですね。ソーシャル化したことで、つまらなくなったとは言われたくないですから。たとえば国内で主流のカードシステムについても、僕らの強みを生かす形で取り入れたいですね。

―――アジアでの展開も考えられていますか?

荒木: 実際のスケジュールはお話しできませんが、粛々と仕込んでいます。もともと自分自身がアジア地域でのコンテンツ監修をしていますから。もっとも、国によって状況は全然違います。中にはパラメータを変えれば良いとか、何も変えなくてもヒットするなどと言われる人もいます。しかし個人的には受けるキャラクターや、ヒットする仕組みがそれぞれの地域にあると思っていますし、総合的な調整を行わなければ駄目だと感じます。

―――海外ではキャラクターグッズなどの展開も行われていますね

小椋: 発端は中国で『プラントvs.ゾンビ』が爆発的な人気を博したことです。理由はいろいろですが、一番は海賊版が出回ったからだと思っています。一説には中国のiPhoneは7割が脱獄されていると言われますし、実際にコピーされた『プランツ&ゾンビ』が非常に多くの人にプレイされていました。そこから自然発生的に、ぬいぐるみやステッカーなどの未許諾アイテムが販売され始めたんです。中には勝手に新しいゾンビが作られたり、他の有名キャラクターが勝手にゾンビにされたり、といった例もありました。

―――多くの企業が中国市場で苦しんでいます

小椋: もっとも、見方を変えればチャンスでもあったので、きちんとローカライズして、中国のApp Storeで正規版アプリの販売を開始しました。そうしたら、北米を上回るヒットを記録したんです。さらにミーターズボーンウェイという、中国でユニクロに相当するようなアパレル企業と協業して、ロゴ入りTシャツの販売を開始したところ、同社の過去の販売記録を1日で塗り替えるほどになりました。そこで、本格的にマーチャンダイジングに力を入れるようになり、アメリカで販売を開始したんです。国内販売も検討していますし、強力なマーケティングツールになると思っています。ただし、まずはゲームがヒットすることが大前提だと思っていることに、変わりはありません。

―――ビジュエルド以外の人気タイトルはどうですか?

小椋: 日本で一番人気があるのは『ビジュエルド』で、次が『プラントvs.ゾンビ』です。他に『チャズル』も人気がありますね。一つには『ポップタワー』の中に入っていることが大きいと思います。ただし日本ではおしなべて、他国に比べると弱いので、これからです。

―――『ビジュエルド伝説』のように、日本仕様にチューニングしていくのですか?

小椋: そこは二軸で考えています。ローカライズには時間がかかりますし、品質担保も必要なので、中にはローカライズしないで、そのままリリースするタイトルもあると思います。総じてデジタル流通の浸透が追い風になっていますね。今までは日本国内で海外メーカーが大きな成功を収めることが難しかったのですが、これからは十分にチャンスがあると思っています。

―――会社として一番大切にしていることを教えてください

小椋: 「楽しさ(ファン)」の追求です。そこから軸足がぶれることはないと思います。これは本社の人間ともよく話をするのですが、弊社のゲーム作りで一番重要視している点が「もう1回やりたくなる」ということです。これがどのゲームにも、大切な要素として含まれています。

―――もっとも、「楽しさ」の意味も変わってきています

小椋: まず弊社の考え方をあきらかにしておくと、今のモバイルソーシャルが最終形で、これからのゲーム業界を規定していくとは思っていません。弊社がリリースした『ビジュアルド伝説』についても、モバイルソーシャルの現状に対する提案という意味合いも込めました。先ほども「スキル軸」という言葉を使いましたが、ゲームと名前がつくからには、ゲーム自体がおもしろいことが避けられないのではないでしょうか。たとえば『スーパーマリオ』や『テトリス』は、隙間時間にぽちぽち遊ぶようなものではなくて、ゲームとちゃんと向き合う必要がありましたよね。遊び込むことで高得点がとれるようになり、高得点がとれるから、さらにのめり込んでしまう。その過程がゲームのおもしろさだったと思います。

―――なるほど

小椋: コンソールとモバイルソーシャルは違うメディアなので、まったく同じことができるとは思いませんが、根本的な部分は同じだと思います。『プラントvs.ゾンビ』にしても、単に植物を並べれば良いのではなくて、頭を使う要素がありましたよね。ゲームのおもしろさの核となる部分と、ソーシャル性をうまく組み合わさること。しかも、それらがモバイルという、可搬性のあるデバイスで楽しめる点がミソです。まとめると、ゲームの核となるおもしろさと、つながりと、可搬性。この3つを追求していくのが、我々のミッションです。

―――新しいプラットフォームが、どんどん増えています

小椋: コンソールも含めてオールラウンドで取り組んでいきます。コンソールが衰退するという人もいますが、弊社ではそれぞれに波があると思っています。たまたま今、コンソールが停滞していてモバイルソーシャルが盛り上がっていますが、またそれも変化していくのではないでしょうか。それこそ去年リリースしたDS版『プラントvs.ゾンビ』が好例でした。また海外ではXbox Liveアーケードで『ズーマ・リベンジ』を出したところです。もともと弊社はデジタル流通に強い企業ですが、プラットフォームを選ばない企業でもあります。そこにユーザーがいる限りは出していきたいですね。

―――スマートテレビに対する期待感も高まってきました

小椋: そうですね。弊社では各地域で販売のチャネルやパートナー選定などの裁量が、ある程度みとめられています。日本ではスマートテレビは低調ですが、アジアでは盛り上がっている国もあります。そこにタイトルを投入するという話も、そう遠くない未来だと思います。

―――最後に日本のユーザーにメッセージをお願いします

小椋: 正直、北米で『ビジュエルド』の画面を見たことがないユーザーはいないと思います。一方で日本では、まだ画面を見せてもわからない人も多いのが現状です。そうした中で、日本の皆様にお伝えできることがあるとすれば、とにかく弊社のゲームは「誰もが遊べる楽しいゲーム」だということです。これを一番大切に考えています。ものすごくゲームが好きな人から、あまりゲームを遊ばない人まで、どんな人でも楽しんでもらえると思いますし、あらゆる人々に遊んでもらえる日が来ることを、強く信じています。

―――ありがとうございました
《小野憲史》

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