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【TGS 2011】開発で日英の文化摩擦が激突!?『NeverDead』野尻真太氏インタビュ-

「死なない男」が主人公という、東京ゲ-ムショウで鮮烈な印象を残したKONAMIの新IP『NeverDead』。ステ-ジイベントに続いて、プロデュ-サ-の野尻真太氏に、本作の特徴と開発体制について、じっくり伺いました。

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「死なない男」が主人公という、東京ゲ-ムショウで鮮烈な印象を残したKONAMIの新IP『NeverDead』。ステ-ジイベントに続いて、プロデュ-サ-の野尻真太氏に、本作の特徴と開発体制について、じっくり伺いました。

■「君、英語しゃべれるんだって?」「はい!」でスタ-ト

―――よろしくお願いします。はじめに自己紹介と過去の作品を教えてください。

野尻:はい。私はコナミで働いて16年くらいになりまして、直近では小島プロダクションで『メタルギア』のアシッドシリ-ズや、本編のスタッフとして働いてきました。職種としてはディレクタ-となります。本作ではプロデュ-サ-とディレクタ-とプランナ-とシナリオもやっていまして、ちょっと手を広げたと後悔しています。

―――オリジナルIPですし、第2の小島監督の誕生ですね。

野尻:いやいや、あきらかに器が足りないのが、最近露見しまして。いつも周りから、尻をたたかれています。

―――プロジェクト発足の経緯を教えてください。

野尻:2009年の夏くらいに、弊社で現在は副社長の榎本(真司)が「君は英語がしゃべれるらしいな」と話しかけてきたんです。どうも何か勘違いているな、とピンと来て「はい、しゃべれます」と即答したんです。そうしたら「海外プロジェクトの担当者を探していて、オリジナルが作れるぞ」というんですね。それで「しゃべれます、しゃべれます」みたいな(笑)。そこから企画書の作成、ディベロッパ-の選定と進んでいきました。

―――それは大変だ。企画を出すのも時間がなかったでしょう。

野尻:当時、携帯ゲ-ム機向けの企画ストックはあったんですが、海外開発だと据え置き型か、PCにならざるを得ませんよね。それで急遽、世界市場向けのハ-ドコアなゲ-ムの企画を考えて提出しました。主人公は不死身な男で、バラバラになって進んでいく、というゲ-ムはどうかと。その企画が社内で通りまして、実際には2010年から開発がスタ-トしました。

―――相当な急ピッチですね。

野尻:なので、いろいろと無理が出ていまして。かなりバタバタしています。

■「不死身」×「デストラクション」=新体験

―――「不死身」というキ-ワ-ドが最初にあったんですか?

野尻:そうですね。ただ、「不死身」をどうゲ-ムシステムに落とし込むかが重要でした。「バラバラになる」というアイディアから、何が実現できるか。他のゲ-ムでは「死にそうな目に遭うから避ける」が基本ですよね。うちは「死にそうな目に遭っても続く」みたいなゲ-ム体験を、どうやったら提供できるか、考えました。

―――たしかに、不死身のままでは、すぐにクリアできちゃいます。

野尻:本作でもゲ-ムオ-バ-はあります。第一にパ-トナ-のアルカディアという女性がいて、彼女は不死身ではありません。そのため、彼女が死んだらゲ-ムオ-バ-です。敵から一定以上ダメ-ジを受けるとダウンして、そこから一定時間経過すると死亡するので、それまでに蘇生させる必要があります。

―――なるほど。

野尻:第二に、ダメ-ジを受けると、腕、足、体がどんどんとれていって、最後に首だけになります。このときにグランベイビ-という小型のデモンがやってきます。普段は無害なのですが、首だけの時に捕食されて、消化されると、胃の中で永遠に生きるということになって、これまたゲ-ムオ-バ-です。食べられたら、すぐに脱出してください。

―――そこでバランスをとっているんですね。

野尻:ええ。もっともゲ-ム中、あえて頭だけになって、狭い場所をゴロゴロと進んでいく場面などもあるんです。そのためグランベイビ-を最初に始末しておいて、またゾロゾロとわいてくる前に首だけになって進むなどの、リスク管理が重要になります。

―――たぶん皆さん同じことを聞かれると思いますが、日本発売はOKなんですか?

野尻:どうでしょうか(笑)。TGS向けにCEROレ-ティングの審査も受けました。そこを突破したので、たぶん本編でも大丈夫ではないかと。

―――TGSでプレイアブル出展できているところが、何よりの証だと。

野尻:そうですね。一番過激な部分を見せていると思うので。もっとも、けっこうドキドキしています。それこそロボットにするか、ろくろ首みたいに数珠つなぎにするとか、必要に応じて考えようとも思ったんですが。一つだけいうと、主人公は人間ではなくて、悪魔の体にされちゃってるという設定なんですね。

―――とはいえ、かなり衝撃的ではあります。

野尻:遊んでもらえるとわかると思うんですが、残酷な表現を狙って作っているわけではありません。逆に乾いた感じを受けるんじゃないかと思います。私としては、何か新しい体験を提供したかったんです。ゲ-ムプレイも普通の三人称視点シュ-ティングに見えますが、ル-ルが全然違うんですよ。

―――というと?

野尻:本作のもう一つの柱として、デストラクション(環境破壊)があります。銃撃や爆破によって、建物の壁や床を壊して、敵を下敷きにできるんです。一匹ずつちまちまやっつけるより、ドカンと爆破させて、まとめて下敷きにして倒した方が、効率的な場面もあります。もっとも、自分も瓦礫の下敷きになる恐れもあります。その場合でも不死身なので死にはしません。

―――環境破壊がしっかりしていて、それがゲ-ム性に融合していると。

野尻:そうですね。「デストラクション」と「不死身の主人公」はセットです。これで瓦礫の下敷きになっても、腕や足がとれる程度のリスクですむわけです。走って、撃ちまくって、周りを破壊しまくって、最後に首だけ残れば勝ちという。普通のゲ-ムが「避けて撃つ」なら、このゲ-ムは「肉を切らして骨を断つ」でしょうか。もっとも、瓦礫からジャンプして逃げるくらいの努力はしてほしいですが。

―――ゲ-ジ制のアクションゲ-ムで、ゲ-ジが体になっている印象ですね。

野尻:ああ、そうかもしれませんね。そのかわり、このゲ-ムでは一般的なライフゲ-ジがないんです。

■国をまたいで、イメ-ジを共有させる難しさ

―――世界観を見ると、ガチな洋ゲ-という印象ですね。英Rebellion社との協業ということで、現場のスタッフから出たアイディアなどはありましたか?

野尻:いやいや、実は海外スタッフからはジャパンっぽいと言われているんですよ。

―――確かに、ヒロインだけジャパンっぽいですね。

野尻:僕の好みで作っています(笑)。

―――なるほど。でもヒロインに思い入れがあるというのは、すごく重要ですよね。

野尻:ちなみに、ビジュアル的には洋ゲ-風に見えるかもしれませんが、ゲ-ムデザインやキャラクタ-デザイン、シナリオ、世界観設定などの上流工程は、すべて日本側でやっています。それに基づいてRebellion社が実作業を行うスキ-ムです。それも大元の部分は僕が決めています。つまり、すべて僕の好みで作っているところがあるんです。

―――お互いに異文化同士で、初めての顔合わせで、オリジナルIPですよね。舵取り役がしっかりしていることが重要だとは思いますが、もめませんか?

野尻:徹底的にもめます。なので二言目には「こっちがクライアントだから」(笑)。

―――それは大変だ。

野尻:小島プロダクションでは実力主義というか、基本的には上の人が決めたことを、みんなで全力で作るというスタイルだったんですよ。もっとも、それは日本人同士だから成立したのかもしれません。イギリス人は違っていて、二言目には「ディスカッションしようよ」と言ってきます。

―――海外ディベロッパ-の方が、ボトムアップを求めたがるところがありますよね。

野尻:そうなんですよ。ただし今回のゲ-ムは、現代戦FPSなどではなくて、オリジナルIPです。それも腕がとれたり、頭だけで転がったりするので、イメ-ジを共有するのが、かなり困難なんです。そのため、ゲ-ムの哲学的な部分を共有することは、最初から難しいだろうなと思っていました。それで仕様書を詳細に切って、それに沿って作ってもらうスタイルをとったんです。そうやってパ-ツをどんどん作っていって、全体を組み合わせていけば、自然と何がやりたいかわかってくるからと。ある意味で日本人っぽいやり方かもしれません。でも、現場を動かすのは大変でしたね。

―――それはそうでしょうね。何がおもしろのか、わからないんだから。

野尻:でも、僕はわかっているんですよ。

―――そこが悩ましいところです。

野尻:たとえば本作では、首だけの状態になっても、ごろごろ転がって腕や足に近づくと、合体できるんです。このときに最初に体をつけなくても、首からいきなり腕や足をつけられる。というのも、最初に必ず体をつける必要があるとしたら、探すのが面倒じゃないですか。それよりも、好きな順番につけていって、最後にパッと戻れれば良い。それが現場では、なかなか理解できなかったようです。そんな風に、いろんな場面で、かなり時間がかかりました。

―――では、まさにこれからおもしろくなってくるんじゃないですか? 日本的なゲ-ムの作り方では、作っている間は全然おもしろそうに見えないけど、ある程度形になってきたところで、急速におもしろくなっていくと言いますよね。

野尻:ああ、それはありますね。実はもう、そのレベルになってなきゃいけないんですが、まだバタバタしていまして。

―――ちなみにイギリスでは、他に日本人スタッフはいないのですか?

野尻:いないですね。先週ちょっと来ていましたが、基本的には僕が一人です。

―――じゃあ、仕事が終わった後でパブに飲みに行ったりしないんですか?

野尻:最初は行っていたんですが、途中から呼ばれなくなりました。僕としても辛いのは、仕事の間だけ英語力がパワ-アップする感じで、パブに行った瞬間に何を言っているかわからないんですよ。女の話か、サッカ-なのか、わからないんですね。

―――ビジネスト-クはできるけど、カジュアルト-クは苦手という日本人は多いですね。共通の文化圏にいないから。

野尻:そうそう。しかも英語がしゃべれるということ自体、嘘だから(笑)。簡単な英語と専門用語を組み合わせてしゃべっているんです。だから仕事をする上では、そんなに困らないんですが、雑談は違いますよね。なので、仲良くなるどころでもなくて。一番つらかったのはクリスマスパ-ティの時で、となりで会費の集金をしているんですよ。自分だけ仲間外れ状態という。あのときは凹みました。

■外見は洋ゲ-風でも、遊ぶとわかる「和ゲ-」的なゲ-ム体験

―――ちょっと話題を変えて、操作的には基本的なTPSと考えていいんですか? たとえば自分の手足を切るボタンがあったりしますか?

野尻: ええ。それに切る部位を決めることもできて、それがプラスアルファになっています。左スティック移動で、右スティック照準というのは変わらないんですが、本作は二丁拳銃なので、右と左の武器にそれぞれ、トリガ-ボタンをアサインしています。というのも、どっちの手を切り離して投げるかが、重要になったりするんです。あとは剣の操作もあって。ちょっとそこらへんが日本風ですかね。

―――いわゆる一般的なFPSじゃなくて、ちょっと操作系にプラスアルファがあって。

野尻: どちらかというと、アクションゲ-ムに近いかもしれませんね。操作系を快適にするために、いろいろと試行錯誤を繰り返しました。

―――スト-リ-の概要としては?

野尻:500年前は人間だったんですが、デモンとの戦いに敗れて、不死の呪いをかけられて、今は駄目なおじさんになっている主人公の話です。実際、勝つ見込みもないまま戦っていくんですが、お話が進むにつれて、いろいろあるという。

―――オンラインプレイは?

野尻:4人までプレイできます。アルカディアも操作できますが、彼女は不死身ではないので、ダウンしたら他のプレイヤ-に助けてもらう必要があります。モ-ド(チャレンジ)もいくつかあって、ステ-ジを進みながら敵を倒していったり、市民を助けるミッションなどがあります。オンラインプレイで稼いだ経験値はシングルプレイと共有されていて、ここで強くなって先に進むこともできます。

―――成長システムはどうなっていますか?

野尻:単にパラメ-タが上がるだけじゃなくて、アビリティの組み合わせで能力が上がるイメ-ジです。たとえば、手を切り離すのもアビリティの一つだし、切り離した手足に限り爆破できるというアビリティもあるんです。これを組み合わせると、投げた後で爆破させるという、グレネ-ドみたいな攻撃もできます。手足を蘇生する時間を短縮するアビリティもあるので、これらを組み合わせると、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、という戦法がとれます。

―――海外発売の予定は?

野尻:いちおう北米・欧州・日本で、言語数もそれなりに対応します。全世界で、ほぼ同時発売を予定していて、発売日は未定ですが、だいたい70%くらいまで開発が進行しています。いちおう仕様は全部突っ込んだんですが、ちょっとまだガタガタで。

―――ゲ-ムエンジンやミドルウェアは何を使われていますか?

野尻:Rebellion社の内製エンジンを使っています。Xbox360とPS3のマルチプラットフォ-ムに対応しています。

―――では最後にユ-ザ-に対してメッセ-ジを。

野尻:さっきも言いましたが、見た目はともかく、実は日本っぽいゲ-ムになっています。世界市場を狙う上で、それが正しいのか、是非はともかく、そう判断しました。
アビリティの組み合わせなども、ぶっちゃけ僕が『FF5』が好きなので、直接影響を受けていますね。「乱れ撃ち」と「二刀流」を組み合わせるとか。そんな風に本作でも、いろんな組み合わせが試せて、人とは違うプレイスタイルができるようにしています。

―――なるほど。

野尻:また野尻真太が作るゲ-ムとして、少なくとも他では体験できないゲ-ムにしたいと思っています。たぶん皆さんが今、想像しているモノがあると思うんですが、それとは違う「斜め上のゲ-ム」を狙っています。良い意味で予測を裏切りたいですね。

―――久々に変なゲ-ムが出てきて、楽しみです。

野尻:あともう一つだけ補足すると、ギャグのゲ-ムではないんです。復讐の話なので、お話自体は、けっこうシリアスにできています。500年間、生きるというのは、実はそんなにうれしいことでもなくて、絶望しながら生きているということでもあります。なので、お話の方にも注目してください。

―――ありがとうございます。あとはアルカディアですね。ヒロインは重要です。

野尻:そうですね。個人的になんですけどね。

―――でも、助けがいのないヒロインだと、つまらないじゃないですか。

野尻:そこも、もめたんですよ。「なんでミニスカなんですか」「普通のパンツを履かせてどうするんだよ」なんて、大げんかですよ。最後は強権発動で勝ちました。

―――首だけになると、視線も下がりますしね。つい足下をゴロゴロしたくなっちゃう。

野尻:そう。でも、その「さじ加減」も説明が難しくて。「大丈夫なのか、この日本人は」と思われたかもしれません。

―――様々な意味で期待しています。ありがとうございました。
《小野憲史》
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