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【3DSカンファレンス2011】速報コラム・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第22回

任天堂 3DS

戦略的な言葉は男女比の違いが語られたのみ
  • 戦略的な言葉は男女比の違いが語られたのみ
  • プレゼンテーションの後は体験会場がオープン
  • 景色はゲームショウと変わらない
  • パルテナの鏡など注目タイトルが並んだ
  • サードパーティからも多数のタイトルが
  • ゼルダの伝説Wiiも注目
2011年9月13日。
ニンテンドー3DSカンファレンス2011に行ってきた。
結論を先に述べる。
「ニュースはなかった。それがニュースだ」

今日のニンテンドー3DS、31作品の新作タイトル発表をうけてゲーム専門誌は、「豪華ラインナップが大公開!」と報じるだろう。

たまたまであるが、私の席の隣には経済誌の記者が座っていた。開幕前に同僚記者同士でフィリピンパブの雑談をしていた。内心、「場をわきまえろ」と思っていた。時は過ぎ、岩田社長のスピーチが終了した。

その瞬間、ひとりの記者は「ソーシャルの話とか、全然出てこなかったな」と吐き捨てるような口調で感想を述べていた。類推するに、その経済誌記者は「ソーシャルを無視した任天堂の見えない次世代戦略」とネガティブな報道をするのだろう。

煽か貶。

つまり、煽(あお)るか、貶(おとし)めるかの報道が大半になってしまった日本のメディアの中で、私はこの場を借りて「ニュースはなかった。それがニュースだ」と、おもしろくもない感想を書き残しておきたい。

雑誌の表紙を連想しよう。
「ニンテンドー3DS・豪華ラインナップが大公開!」
「ソーシャルを無視した任天堂の見えない次世代戦略」
いかにも読者の目をひきそう、ではある。
雑誌の表紙に書く大見出しの慣行からはずれていない。

だが、「ニュースはなかった。それがニュースだ」。
こんな見出しが載る雑誌は一冊たりともないだろう。
ゆえに私は、煽にも貶にもかたよらない結論を冒頭に書いた。
ただし、これは今日のカンファレンスに限っての結論だ。

■詭道と正攻法

今日起きた数時間の出来事を眺めればニュースはなかったのだが、他の出来事との連続性をつなげて見ると、今の任天堂の戦略は見えてくる。

他の出来事とは、7月28日に電撃的に発表。8月10日から実施されたニンテンドー3DS本体の価格改定。2万5千円から1万5千円への値下げを指す。

中国古代の兵家・孫子は、「正常なやり方に反した、相手の裏をかくしわざ、あるいは欺くこと」を詭道と呼んだ。発売後6ヶ月も経たないうちに1万円。率にして4割の値下げは、任天堂はもちろんのこと、他のゲーム専用機でも例はない。正常なやり方に反した‥‥まさに詭道と呼ぶのがふさわしい手を打った。私はこの戦略を、「シェアを費用で購入した企業行動」と解釈をしている。

詭道を使ったあとには、任天堂は正攻法に転じた。
値段を下げてもなお、「ソフト不足」と貶める声に対して、次に打つべき手はソフトがあることを証明するのは、理にかなった戦略だ。

ニンテンドー3DSカンファレンス2011で岩田社長は、あえて戦略的な事柄を語らなかった。
語ったとすれば、「ニンテンドー3DSはWii、ニンテンドーDSと比べて女性のお客様が少ない。女性の潜在顧客層にさらなる浸透をはかるため、10月20日に新色モデル、ミスティピンクを発売する」と述べた箇所くらいだろう。

そのかわりに、全国にインターネット中継していたことも意識してか、ゲームソフトの個々の部分の説明を丹念に行った。

『マリオテニス(仮称)』はジャイロセンサーを使ってプレイヤーが撃つ軌道を決めやすくなること。『ルイージマンション2』でルイージは懐中電灯とは異なるアイテムを使えるようになったこと。『マリオカート7』ではプレイヤーが載るカートが自由にカスタマイズされるようになったこと。『モンスターハンター3(トライ)G』では、拡張スライドパッド(右手側にスライドパッドを追加する周辺機器)の同梱版も発売し、ゲームの操作感を向上させたこと。‥‥等々の解説が、タイトルごとに語られた。

これらゲームソフトの細部にわたる説明を、フィリピンパブの雑談をしていた経済部記者は退屈そうに聞いていた。しかし、インターネット中継を見ていたユーザーは好きなゲームソフトの詳細がわかり、心を踊らせたことだろう。

ニンテンドー3DSカンファレンス2011は、物騒な比喩になるが30本以上の槍を会場外にいるユーザーに投げた。その槍が刺さる人には刺さるという、バリエーションを見せる戦略でもあったのだ。

私ごとで恐縮だが、mixiでコミュニティに入っている『カルチョビット(仮称)』、過去作品をすべてコンプリートしている『カルドセプト』の発表があったときには、ユーザーとして、キタ━(゜∀゜)━!!!!! という思いがした。

ハードの電撃的な値下げという奇策のあとには、ソフトの発表という正攻法に転じた。
私は将来的には任天堂は、大胆なビジネスモデルの転換や、ネットワーク戦略を明確にすべきだと思うが、それはWii Uの発売前段階で行われることになるだろう。そうなることを予測し、また期待する。

ともあれ、2011年9月13日時点で、任天堂は不確実な大きな絵を描くことをやめ、今、確実にできることを実行したのだ。

俗に「犬が人を噛んでもニュースにはならないが、人が犬を噛むとニュースになる」というが、ソフトの説明は「犬が人を噛んだ」に属す。

当たり前のことを当たり前にやったがゆえに、ニュースにしにくい。
どちらが正しいかは読者のご判断にお任せするが、今日の出来事を強引にニュースにした記事は、眉につばをつけて読んだほうがいいと私は考えている。

■ゲーム情報のパイプライン
《平林久和》

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