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【CEDEC 2011】イスラム世界とゲーム、課題と対策法は

ゲームビジネス その他

世界の人口分布を見た時、巨大なイスラム世界は決して無視することができません。しかし余りにも手に入る情報が少ないのも事実。慶応義塾大学の斎藤成紀氏は「イスラーム法とゲームパブリッシング」として貴重な情報をCEDEC 2011で発表しました。

まず市場の現状です。家庭用ゲーム機は余り普及しておらず、その中ではPS3が優位ですが、ソフト市場としては海賊版のWindowsが圧倒的な立場にあるそうです(約半数が海賊版)。この地域でもフェイスブックの普及が始まっていて、アラブ22カ国で2800万人になっているそうです。ゲームのジャンルとして人気なのはFPS、アクション、レースなどだそうです。

イスラムの市場でハードルとしてあるのは「イスラム法」(シャリーア)の存在です。イスラム法は宗教法であり、法学者による解釈によって運用されています。その事からある事柄が厳密に許されるか、許されないかというルールが存在しません。そもそも「ゲーム」というものが許されるかについても法学者によって判断が分かれるものであり、許されるという立場では「イスラム法の理解を進めるものであれば問題ない」というようなものや、許されないという立場であれば「架空のファンタジーなどイスラムを貶めるものは許さない」といった考え方が存在します。このイスラム法との付き合いはその外の世界に住む我々にとっては困難な課題です。

ゲームで問題になった例も多数あります。例えば「ポケットモンスター」がドバイで発売禁止になった例です。ポケモンでは進化という概念が存在しますがイスラム法においては進化論を否定していること、神の創造物ではない架空の創造物で偶像崇拝に繋がること、そしてポケモンカードではカード交換というルールが消費サイクルを高め賭博に繋がるもの、というような判断がされたそうです。

また、ヨルダンのゲーム会社が作った『Arabian Lords』というストラテジーゲームは7~12世紀くらいのイスラム世界で領地を広げていくゲームですが、非常に政治的、宗教的な内容を含んでおり、サウジアラビアではイスラム教徒が作ったゲームでありながら発売禁止となってしまいました。このように実情を理解している現地の会社でも簡単ではないようです。

さらに、ポケモンでは偶像崇拝に繋がると判断された架空の生物についても、国によって判断は分かれます。同じイスラム教徒でもサウジアラビア、インドネシアなどスンナ派の国は偶像崇拝に対して厳しく、逆にイランなどシーア派の国は偶像崇拝に憧れに近い感情があり問題にならないそうです。ですから一概に「イスラム世界は~」という議論は難しく個別に考えていく必要があります。

斎藤氏が参考になるモデルとして紹介したのは金融業界の手法です。イスラム法では貸付で利子を取ることは禁止されています。しかしこれは金融を大きく制限します。直接的に利子ではなくとも、それが実質的には利子と判断されてしまう事もあります。そうした事を防ぐため、各銀行はシャリーア・コンプライアンスとしてシャリーア・ボードという法学者で構成される判定組織を設けているそうです。

日本企業の味の素は「味の素」を作る工程で豚から抽出した酵素を使っていたとして回収を命じられ大きな事件となったことがあります。同社は食品の基準である「ハラール認証」を取っていましたが、工程の一部が変わったことでそれに違反した状態になってしまっていたのです。この事件では幹部数名が逮捕されています。

現地の法に適応しないことは大きなリスクになります。その基準はなかなか外部の我々には理解が難しいものですが、斎藤氏は「まずはイスラムやムスリムへのリスペクトが必要」と言います。今持っている常識を捨てて、その地域を知るという当たり前の作業が必要になります。そして「判断は変わるものであり、対策は常に完璧ではなく、完全に予想するのは無理です。ですから、問題が起きた後にどう対処するかが課題になってきます」

ちなみに斎藤氏は「イスラム世界にも欧米化というものはあるか」という質問に対して「逆にアメリカ政府に対する反発のようなものがある。若い世代はむしろ保守化している」と指摘。問題はそう簡単ではないようです。ただし、例えばイランではイランイスラム革命以前を体験している上の世代では過去への郷愁から多様な文化への寛容が見られる、とのことでした。

とりあえずイスラム世界を知りたいという人には東京外国語大学が行っている「日本語で読む中東メディア」(http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/news_j.html)というネットニュースサイトがオススメと斎藤氏は話していました。
《土本学》

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