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【CEDEC 2011】女性視点でのゲーム運営 ― 『農園ホッコリーナ』がモバゲー女性ランキング1位になった理由

ゲームビジネス 開発

現在、Mobageでは農業系ソーシャルゲーム『農園ホッコリーナ』が女性に人気です。ユーザーの6割以上が女性で、Mobageの人気ゲームランキング女子部門でも『怪盗ロワイヤル』を押さえ常に1位を維持しています。しかし意外なことにリリース当初はまったく無名のタイトルだったとのこと。そんな『農園ホッコリーナ』がどのようにして女性ユーザーの支持を獲得したのでしょうか?DeNA ソーシャルゲーム統括部 企画部の山口隆広氏がその過程を語りました。

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山口氏は2010年8月にDeNAに中途入社し「農園ホッコリーナ」の企画を担当。しかし当時の農園ホッコリーナは、他社の農業系ソーシャルゲームに比べて機能が少なく「中途半端」なタイトルで知名度もほとんど無かったとのこと。またDeNA社内でも当時は「怪盗ロワイヤル」のPRに全力を傾けていた時期だったため、Mobage内でのPRすら難しい状況だったそうです。

(写真3)
その一方、可愛らしいデザインが女性ユーザーに支持されており、実際当時からユーザーの6割が女性だったとのこと。そこで山口氏は思い切ってターゲット層を女性ユーザーに”振り切り”、タイトルのコンセプトを練り直したそうです。

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そこでまず行ったのが、ゲームタイトルに「農園~」と入っているにも関わらず「農園ゲーム」であることをやめること。農作物や動物を育てるのではなく“可愛いものを手軽に育てるゲーム”に方向転換し、農業のリアルさよりも育てたくなる可愛さ、愛らしさを追求したデザインにしたとのこと。

(写真5)
すると農園ホッコリーナは20~30代の大人の女性ユーザーに支持されるタイトルとなりました。山口氏によれば「農園ホッコリーナのユーザーは忙しい社会人層。仕事の合間に携帯を開いて可愛い動物や植物を育てて息抜きしたいと思っている。比較するべきは他社のゲームではなく紅茶のようなもの」とのこと。当時は社内にもゲームを多機能化し“やりこみ要素”を強化した方がいいのではないかという意見も多かったそうですが、山口氏曰く「ゲームの難易度にやりがいを見出すのは男性的発想」で女性ユーザーのニーズと乖離しているのだとか。

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こうして女性目線で開発を進めていくうちに徐々にデザイン面でのリアルさも薄れていき、現実には無いファンタジーなアイテムが増えていきました。しかしこれも「農園ゲームであることをやめた」農園ホッコリーナの世界観にマッチし、より個性を出しやすい農園作りが可能となりました。この点でも山口氏は「女性は作物や動物の可愛らしさに引かれているのであって農業シミュレーションを楽しんでいるわけではない。例えば作物が病気になるなど自分の努力が無駄になるのはもってのほか。農業のリアルさを追求するのではなく、可愛さ最優先でファンタジーもアリ」と女性向けタイトルであることを強調しました。

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こうして完全に女性向けに振り切った運営を続けた結果、遂に農園ホッコリーナは女性ユニークユーザー数で怪盗ロワイヤルを越えることとなりました。また副次的に40代男性のユニークユーザー数も増加。男性と女性ではソーシャルゲームの合う・合わないの違いも明確であることが分かりました。

そして後半、山口氏は女子ゲーにとって大事な要素を紹介。

1.ユーザーの利用シーンとずらさない
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やり込み要素のある多機能なゲームを作ることにこだわると、いつの間にかユーザーが求めているゲームと違うことになってしまうこともあるとのこと。「『農園ゲームである』と考えることすら運営のエゴ」であり、山口氏は常にユーザーの利用シーンを想定しゲーム設計を心がけているそうです。

2.何をやっても嬉しくなれる?
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失敗経験を積み重ねて成功するシステムは女性向けゲームには合わないとのこと。なので農園ホッコリーナでは作物に水をやらなければ枯れるものの、再び水をあげればまた元通りになるシステムになっている。また山口氏はくじの当たり確立を例に挙げ「同じ1/10の確立のくじでも、1回ずつしか抽選できず9回はずれを重ねて最後に1回当たるより、10回分一気に抽選できて1回当たった方が達成感がある。計算の上では一緒でも気持ちの上では違う」と、どんなコンテンツを提供するにせよ必ずユーザーに達成感を与えることが重要だと説明しました。

3.そのかわいいに意味はある?
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女性向けゲームにおいて可愛らしさはもちろん重要だが、”ただかわいい”だけではダメとのこと。農園ホッコリーナでは以前クリスマスシーズンにツリーを飾れるオーナメントのアイテムをリリース。可愛いデザインだったので当初はウケると思っていたが、意外にもユーザーの反応は薄かったそうです。ただ可愛いだけでなく、ゲーム内で何かしら”メリット”が享受できるなど「意味」がなければユーザーに喜んでもらえないようです。

4.詰まないようになっている?
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ゲームを進めるのに「運」がなければ進めないといった“詰み”の要素は排除した方がいいとのこと。友達との協力や課金などによる救済の道を用意した方がよいそうです。

5.基本サイクルの延長で遊べる?
(写真15)
ソーシャルゲームでは頻繁にイベントが発生しますが、イベントの時だけ急に通常のシステムとは違うシステムに変わってしまうと、ユーザーはそこで離れてしまうそう。日常から離れず、いつもの頑張りが報われるイベントを開催することがユーザーの離脱防止に繋がるとのこと。

6.あざといと天然を使い分ける
(写真16)
ただ可愛らしさを追求していると”あざとい”可愛らしさになってしまいユーザーが引いてしまうことも。ユーザーの好きな可愛らしさを見逃さず、且つ動きや見た目でツッコミどころを盛り込むバランスが重要だそうです。

7.思わず出てしまう男性視点に注意
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極端なゲーム性やアクション性、攻撃要素は女性ユーザーにとってハードルになります。そのようなものが面白そうだと思ったら「要注意」とのこと。常に女性視点になって考えることが大事だそうです。

8.対同業者ではなく、ユーザーを見る
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他社の同ジャンルのゲームと比べ見劣りするような要素も、ユーザーにとってはメリットになっている場合もあります。農園ホッコリーナでは20面の畑しか使えませんが、畑が少ない分短時間で操作でき気軽に遊べるというメリットになっているとのこと。

なお、農園ホッコリーナの運営では今でもMobage内の公式サークルをチェックし、ユーザーがどんなコンテンツを気に入り、また何を求めているのかチェックしているそうです。最後に山口氏は「ソーシャルゲームの運営では、誰に、何を、どう伝えることでどんな楽しみ方をして欲しいのかについてチーム内で同一意識を持つことが大事」と、これまでのゲームの常識に囚われず、常にユーザーの方を向く重要性を語り講演を締めくくりました。
《籠谷千穂》

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