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これからの時代に不可欠なグローバルマインド・・・海外で活躍する企業が語るグローバル市場(後編)

「グローバルゲーム開発の現状と、その可能性」パネルディスカッションでは、「グローバルコンテンツ開発の展望」とテーマに、Gameshastra川上氏、Mozat田村氏、Virtuos記野氏、プレミアムエージェンシー山路氏がディスカッションを行いました。

ゲームビジネス 市場
 
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「グローバルゲーム開発の現状と、その可能性」後半のパネルディスカッションでは、「グローバルコンテンツ開発の展望」とテーマに、Gameshastra、川上氏、Mozat、田村氏、Virtuos、記野氏、プレミアムエージェンシー、山路氏をパネラーとしてディスカッションが行われました。

まず、「アウトソーシングを試みたい企業の立場に立った際、どのような業務から委託するべきか」という質問に対し、記野氏は、「まずはモデリングから開始しするべき」と断言。つまり見本を忠実に「模倣」出来る能力が重要であると指摘しました。ただそれをするには、「仕様書」は不可欠であるとの事。口頭による抽象的な発注は海外とのアウトソーシングにおいては通用しないと記野氏。従来の「以心伝心」的な開発プロセスの限界を示しました。これについては、川上氏も同感だったようです。Gameshastraでもクライアントは欧米が多いのですが欧米企業は国際分業をするうえでの考え方が明確であるのに対し、日本企業が漠然としたイメージしか持っていないという印象を持ったとのこと。やはりこの点については、Game Design DocumentやGame Technical Documentといった仕様書づくりを改めて考える必要性が浮き彫りとなりました。

一方、プレミアムエージェンシーの山路氏は、各国で教育事業に携わった事の所感を述べました。台湾には中国語版「ファミ通」などもあり日本語を読むというのにも積極的でとても教えやすいという印象を持ったのに対し、香港はどちらかというとプロデュース志向が強く、コンソール機の無い中国ではむしろゲーム業界というのはより高い給与を得られるという認識で勉強に来ているという雰囲気だったと山路氏。一方、タイ、ベトナムなどは社会システムに違いがあり密度も違う事から、教える内容の密度なども変えなければならなかったとのことです。

川上氏、記野氏は、それぞれの企業が設立している学校について言及。社内の学校は、各国から、生徒を集め教育をしており、中には日本からの来校する場合もあると川上氏。なお、クライアントにGameshastraを理解してもらうために敢えて学校にある程度の期間入ってもらう場合もあるとのこと。6カ月から1年かけてゲーム開発を学んでいきますが、むしろ業務内容の一部が課題として与えられているということもあり、学びというよりもインターンというイメージのようです。

Virtuosは、Virtuosアカデミーを最近設立。PS3やXbox360が中国国内で販売されていないからといってこれらの関連素材を開発しないわけにはいかないため、企業が積極的に人材教育に関わっているとその重要性を示しました。一方、中東において、ゲーム開発のレベルはまだまだ、と田村氏。やはりコンテンツを作るという場所より売る場所であると言う点を強調しました。

なお、Mozatの田村氏に対しては中東市場の可能性に関する質問が行われました。中東は、カジュアルゲームを飛び越えていきなりソーシャルゲームが受け入れられつつあるとのこと。 実際にローンチしてマネタイズしているのは1タイトルだけですが、課金率は低いものの、ARPUは高く、月20ドル強の支払いがあるとのこと。もし、中東で既に人気の『キャプテン翼』や、中世を舞台としたシミュレーションゲームなどが出れば広く受け入れられると予測しました。

ただ、「恋愛」という行為が文化的に受け入れられにくいことから、恋愛ゲームは難しいと田村氏。また宗教関連の表現は難しいとのこと。これについてはGameshastra川上氏もインド国内市場の状況について言及。中東と同様にインドにおいても宗教的表現をメディアに掲載するのはタブーとのこと。一方、川上氏はPS2ソフトの展開の詳細についても改めて言及。価格は1500円ということで、日本であれば廉価版と同等の価格ですが、原価もインドだと抑えられるので利益率そのものはあまり変わらないとのこと。これら従来市場として成りたちにくい地域も市場として確実に発展している様です。

これらを踏まえ総括して提示された質問が「各地域の10年後」についてです。これについて、Gameshastraの川上氏は、10年後の予測は困難であるものの、5年後であれば、人件費の割安感は維持出来るだろうと推測。英語圏であることから、英語ができる日本人が常駐さえすれば日本、欧米、インドをつなげることが出来るとその可能性について指摘しました。

一方、中東の市況について、「3年は大丈夫」と田村氏。Mozatは、中東エリアのキャリアと課金プラットフォームを握れている間がチャンスとその可能性について改めて示しました。一方で、スマートフォンへ以降する際にタイタニウムのような1ソースマルチソースのようなプラットフォームが普及すると厳しい状況になるであろうと予測。ただそれまでは、過去のコンテンツをアラビア語でローカライズすることで市場は狙えると説明しました。

一方、記野氏は、見積もりは米ドルベースであるため、円高が続いても現行コストの維持が可能。円高が更に進めば安くなるとのこと。中国の政策が不安定であるという問題が内在しつつも、Vituosは、欧米企業との関係において実績とノウハウがあることから、同社のほうが一般的な日本企業よりも欧米市場に近いと述べました。また、日本が欧米AAAタイトルに対抗する一案としてサードパーティエンジニアリングの導入を提案。全てを自前主義にするのではなく臨機応変に対応し、必要な技術は海外のものでも応用すべきと主張しました。

プレミアムエージェンシーの山路氏は、日本が今後グローバル開発を取り込んでいくには20年は必要と持論を展開しました。現在、小学生が違和感なくYouTubeや洋ゲーを楽しんでいる様を例にあげ、このようなユーザー層が成長するにつれて、国際感覚や関心も自ずと高まってくるだろうとしました。ただ、アジア企業と連携するうえでもWin-Winの意識は大切と山路氏。雇用も産業も奪われている中で、如何にWIN-WINを維持出来るかを考えるべきとしました。また、それぞれの国において最低限でも携帯やスマートフォンの課金システムが整備されていくという状況を踏まえつつ、そこにこそ大きなビジネスチャンスがあると指摘。今後は、ゲーム=コンソール機という意識から脱却し、スマートフォンなどもプラットフォームとして意識し、ファミコン時代からの培っていったゲーム文化の意識をそちらにもつなげてくことが重要であると締めくくりました。

以上が講演会とシンポジウムの二部構成で行われた勉強会ですが、今後のゲーム業界にとっては-既存の企業にとっても新興企業にとっても-示唆に富む内容であったと改めて感じました。特にグローバル化については双方にとって最重要課題であるということが今回の講演からも改めて実感出来ます。特に新興企業にとって、中東は改めて見定めるべき地域であると実感。このゲーム業に現在存在する唯一のスイートスポットを日本企業がしっかりと掌握できるか否かに注目ですね。
《中村彰憲》
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