人生にゲームをプラスするメディア

実践する企業が語る「グローバルゲーム開発の現状と、その可能性」(前編)

国際ゲーム開発者協会日本グローカリゼーション部会は、8月27日、株式会社サイバーコネクトツー東京スタジオにて「グローバルゲーム開発の現状と、その可能性」と題した第9回目の勉強会を開催しました。

ゲームビジネス 市場
 
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
■ゲーム産業唯一のブルーオーシャン-中東モバイルゲーム市場を狙え!-Mozat

次に登壇したMozatの田村啓氏は開口一番「中東においてゲーム開発には適していない」としながら、「中東こそがモバイル・コンテンツのブルーオーシャン」として同地域の可能性について述べました。Mozatは創業者が中国出身。シンガポールの大学に留学してから卒業後に同国にて起業。現在は、上海、シンガポール、ならびにサウジアラビアに拠点を構えているとのことです。

Mozatが展開しているのは携帯上のSNS的サービスとコンテンツ開発用ミドルウェア。特に携帯向けSNSは、OEMとして提供するのが特徴。中東キャリアへの採用率が高く、サウジアラビアテレコムやクウェート、バーレーン、並びにボーダーフォンエジプトなどがMozatからSNSプラットフォームのOEM供給を受けているとのこと。

更に特徴的なのは課金のためのソリューションも提供している点。従って、Mozat経由でコンテンツを提供すると、中東1600万人、100万人の課金ユーザーへのアクセスが可能になると田村氏。現在中東は、2.5Gが主流。通信環境はいまだに脆弱なうえに、SIM Freeであるうえに課金方法もプリペイドカードであるが故に消費者にとってのスイッチングコストは限りなく低いのが特徴と田村氏。

使用されているOSも多様であり、フィーチャーフォンやスマートフォンのOSは、ブラックベリーが主流。ただ、高機能なこれらの携帯電話はあくまでも金持ちのものという意識が強いようです。従って、中東ではリッチなコンテンツの提供は不可能。Mozatが提供しているミドルウェア、Mozat Studioもそのようなコンテンツ開発には対応していないとのこと。コンテンツの受容状況は日本で言えばi-modeのサービスがはじまった頃のそれに近いと田村氏は比較しました。

従って、現在であれば日本製の競争力のあるコンテンツであればどの様なものも受け入れられるはずと田村氏は自信を示しました。ただ同時に検閲もあり、例えば、女性キャラクターの露出は一切出来ないなどの成約があります。また、3Dも中東における80%の端末では未対応であるとも。これらをクリアすれば大きなチャンスが待っていると中東市場の可能性を改めて指摘しました。

■欧米AAAタイトルの実績を有し、ハリウッドとも渡り歩く上海Virtuos

海外企業を代表する最後の登壇者が、Virtuosの日本総代理店を務めるカイオス株式会社の記野直子氏。04年12月にPS2、Xbox360向けゲーム開発の需要が高まるのを見据え、いずれゲーム開発には人海戦術が必要になるであろうと確信したGilles Langourieux氏が全ての開発スタッフを専任で雇用する選択は極めて困難になる可能性が高いことから、その二―ズを捉えるべく、「You Make、We Produce」をモットーに立ち上げました。その後、記野氏がエージェントをはじめた09年は400人だった人員も11年には800人と急速に成長しており、「その成長には自身も驚いている」と記野氏。

ます最初に解説したのがVirtuosの特性。同社は本社が上海にあるものの、中国企業というよりは、外資系デベロッパーであると記野氏。経営陣やマネジメントを担うデベロッパーも欧米人であることから、欧米式のマネジメントで中国人を管理しているとのこと。800人のうち、500名が上海、250名が成都におり残りの50 名が営業・マネジメントスタッフで構成されているとのことです。更に最近はベトナムで米国向け3Dアニメーションを制作する実力を持つ企業を買収し更にその競争力を高めているとのこと。10カ国以上から優れた人材を集めたグローバル組織であり、日本人の正社員も2名いるとのことです。

過去にゲーム開発をしていた人たちをトップに据え、中国の地場のひとたちは美術学の卒業生の中から100倍から1000倍の高い競争倍率を厳選して採用。更にそこから、3カ月間集中的に訓練をしてそこで優れた人材のみを正規雇用するという体系になっているとのこと。

業務としておこなっているのは、モーションキャプチャ-以外の全てと記野氏。実際のモーションキャプチャ-は行わなくても、データさえもらえればモーションのクリーンアップも全て行っているとのことです。欧米企業からAAA級のコンテンツを請け負い、リポート受託も多いことから、安定したクオリティには自信があるとのこと。受託方法も全プロジェクトといった大規模から、一部のアセット、時にはプログラマー数名を派遣するという要望にも応えるとのこと。また、自社エンジンを持つとともに、第三者エンジンを使った開発、クライアント独自のエンジンも提供さえしてもられば対応。150人のプログラマーの多くがUnreal Engine、CryENGIE、Gamebryoなどでの開発経験があることからこれらが実現すると記野氏はVirtuosエンジニアの幅広い対応力の理由を述べました。

また、記野氏がVirtuosの特徴として挙げていたのが、自らオリジナルの企画書を提案することがないという点。これは競争相手になることを防ぐため。同社が開発した『Epic Mickey』の2Dステージは企画から全てVirtuosが開発したものの、これらはクライアントから指示を受け、それに合わせて企画を作り込んで始まったプロジェクトであったとのこと。アウトソーシング企業の中には、いずれはパブリッシャーといった、目標があるのが常としながらも、Virtuosは一貫して、クライアントの人海戦術部分でコラボレーションをするアウトソーシング専門業者に徹している事が強みであると記野氏は指摘しました。共同開発という視点においてもVirtuosは全てのメジャープラットフォームから正規ライセンスを受けているため可能と記野氏。

なお、グラフィックのアウトソーシングについては、ビークル(機械)、人物、背景などそれぞれ明確に切り分けられていると記野氏。また、ロシアのGRAFITというコンセプトアート専門スタジオを買収したことからコンセプトアートを専門におこなう部署も設立したとのこと。この部署は多種多様なコンセプトアートに対応し、一般的なコンセプトアートから、テクスチャー未貼付の簡単な3DCG素材を組み合わせたグレイボックスをもとにコンセプトアートを作り、最終のテクスチャーデザイン業務を改めて請け負うというケースもあったとのこと。コンセプトアート部門は20人のうち10人がロシア人、10人が中国人ですが、それぞれ欧米企業をクライアントとしていたことから、欧米志向のコンセプトをデザインするのが得意であると記野氏。

これらゲームアセット関連の実績としては『Uncharted3』や『Kill Zone3 』、『Medal of Honor』など名だたるプロジェクトを挙げていました。また、これまで、「Star Trek」、「Terminator Salvation」、「Ironman」、「Transformers Dark Side of the Moon」などに関わってきたことから、シネマ部門を独立して立ち上げたとのこと、ゲーム関連コンテンツの開発と同様に今後は、劇場用映画のVFXにも力を入れていくようです。

主なクライアントは、欧米が6、7割、残りはヨーロッパ、アジアで、日本は現在、そのうちの5%とのこと。今後は日本企業ともどんどんパートナーとして業務をしたいと今後の展望を述べました。

■ゲーム開発からバーチャルキャラクターまで常に3DCGのフロンティアを目指すプレミアムエージェンシー
《中村彰憲》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

ゲームビジネス アクセスランキング

  1. それは“絶望の一週間”―『シノアリス』のエンジニアがサービスイン時の混乱を語る【CEDEC 2018】

    それは“絶望の一週間”―『シノアリス』のエンジニアがサービスイン時の混乱を語る【CEDEC 2018】

  2. 令和に新作ファミコンカセットを自作!その知られざるテクニック&80年代カルチャーを「桃井はるこ」「なぞなぞ鈴木」らが語る【インタビュー】

    令和に新作ファミコンカセットを自作!その知られざるテクニック&80年代カルチャーを「桃井はるこ」「なぞなぞ鈴木」らが語る【インタビュー】

  3. グラビアアイドル×VR=けしからん!パノラマ動画「VRガール」公開

    グラビアアイドル×VR=けしからん!パノラマ動画「VRガール」公開

  4. 【レポート】進化を続けるLive2Dの現状と未来…「2Dと3Dのいいとこ取りを目指す」

  5. イケメンはこうして作られる!「「その口…塞いでやろうか…?」250人のイケメンをLive2D化してわかった、成人男性キャラの魅力的な見せ方」セッションレポート【alive2019】

  6. イギリス人が選ぶ歴代トップ100ゲーム―マリオシリーズが圧倒的

  7. PC版『バイオハザード5』画面分割を望む声、海外で高まる

  8. 目黒将司×LAM 無二の個性派クリエイター対談-「目黒サウンド」「LAM絵」と称される“キャッチーさ”はどう育まれた?

  9. 「2021年最も活躍したと思うゲーム実況者は?」第1位に輝いたのはあの“インターネットヒーロー”!

  10. 9割がお蔵入りする個人制作ゲーム、完成させる秘訣は - IGDA日本SIG-Indie研究会レポート

アクセスランキングをもっと見る