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トリプルAのクオリティを効率的に~ UDKの新たな機能・・・「Unreal Japan News」第29回

エピック・ゲームズが無償公開しているUDK(アンリアル・ディベロップメント・キット)は、現在までに世界中で80万人以上のディベロッパーにダウンロードされています。

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エピック・ゲームズが無償公開しているUDK(アンリアル・ディベロップメント・キット)は、現在までに世界中で80万人以上のディベロッパーにダウンロードされています。

エピック・ゲームズではUDKに毎月新たな機能を実装し、アップデートを続けています。大規模なヒットタイトルの開発に多数採用されているアンリアル・エンジン3と同等のツールセットを組み込んだUDKは、そのパフォーマンスとフレキシビリティから、プロの開発者やアマチュア、教育関係者まで、幅広く利用されています。

毎月のアップデートで様々な新機能や改善点が紹介されていますが、2011年6月のアップデートはUDKユーザーにとって特に印象的なものでした。6月のアップデートでは、多数の新機能に加え、Simplygonへの対応が組み込まれました。

大きなアップデートとしては、新しい「Foliage(群葉)」システムが搭載されました。新たなFoliageシステムによる描画能力は、この記事のスクリーンショットを御覧ください。新しいFoliageシステムを利用することで、レベルデザイナーはまるでキャンバスの上に筆を走らせるような感覚で、レベル上に植物の枝葉を“ペイントする”ことができます。

FoliageによるインスタンスタイプはLandscape(地面や地形を制作するツール)のレイヤーとして扱うことができ、Foliageによるペイントに高度に基づいた自動計算を反映させることも可能です。Foliageのペイントツールはスピードとクオリティに重点を置いており、草や岩、茂みといった装飾物を、Landscapeで制作された地面、スタティックメッシュ、BSP等に手早くペイントすることができます。UDKの目標は、トリプルAクオリティのゲームを効率良く制作できる環境を提供することです。新しいFoliageエディターにより、ひとつひとつのオブジェクト制作に多大な時間をかけることなく、アーティストが思い描いたシーンを効率的に制作することが可能となりました。

6月アップデートのもうひとつの大型アップデートも、「効率良くトリプルAのクオリティを」というUDKの基本コンセプトを推進するものです。GUIによるイベント管理ツールであるUnreal Kismetに、デバッガーシステムが加わりました。これにより、ゲームを走らせながらKismet上のシークエンスの流れを可視化することが出来るようになりました。シークエンスを1フレームごとに進行させ、ブレークポイントを設定することも可能です。この新しいデバッグシステムにより、正確にシークエンス中のどの部分にどんな問題があるのか、簡単に確認することが出来るようになりました。

また、カスタマイズ可能なマップテンプレート(スクリーンショットを御覧ください)が追加されたお陰で、コンテントブラウザーからレベル上へサムネイルをドラッグするだけで、昼や夜、明け方、夕方といった各時間帯のライティングを設定することができるようになりました。ライティングの調整にかかる時間を大幅に削減するとともに、より複雑なライティングの設定に挑むことも簡単にできます。

PCとモバイル用のエディター及びゲームコンテントツリーが一つに統合されたのも大きな変化です。この統合により、PC向けとモバイル向けのゲームプレイロジックやアセットをより容易に共有することが可能となりました。クリックひとつで正確なプレビューが可能である機能は維持しつつ、マルチプラットフォーム対応を更に容易にすることは、我々にとって最優先課題の一つです。

さらに、Donya Labsがインテグレーテッド・パートナー・プログラム(IPP)に加わりました。Donya Labsが提供するSimplygonは、自動的にゲームプレイ用LODモデルの生成を行うツールです。手作業による調整を行えば数百~数千時間を要する作業を自動化することが可能で、アンリアル・エディター上から離れること無く、高品質なメッシュ・リダクションが行えます。Simplygonにより自動的にメッシュを単純化し、LODモデルを生成して、結果をマップ上ですぐに確認することが出来るのです。とりわけ、ハイエンドPC向けのアセットをモバイル向けに流用する際、Simplygonは特にその威力を発揮します。またひとつUDKのマルチプラットフォーム対応に切り札が加わりました。

[次回予告]
今回はUDKに追加された新機能をご紹介しましたが、「そもそもUDKでどこまで出来るのか」という漠然とした疑問を感じておられる方も多いと思います。
そこで、次回のUnreal Japan Newsでは、エピック・ゲームズ・ジャパン技術スタッフによるUDKの詳細解説記事を掲載します! 実際にUDKを使ってゲームを制作する流れを詳説した、日本初の公式解説です。ご期待ください。
《土本学》
【注目の記事】[PR]

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