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世界に通用するゲーム作りはここから生まれる・・・プラチナゲームズの本音を語る座談会(前編)

ゲームビジネス 開発

世界に通用するゲーム作りはここから生まれる・・・プラチナゲームズの本音を語る座談会(前編)
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アクションゲーム開発に定評のあるプラチナゲームズ。『MADWORLD(マッドワールド)』『BAYONETTA(ベヨネッタ)』『VANQUISH(ヴァンキッシュ)』と、国内外で高い評価を受けるタイトルを、次々に生み出してきました。オンライン多人数乱戦格闘アクションを掲げる最新作『MAX ANARCHY(マックス アナーキー)』も、発表直後にもかかわらず、世界中のユーザーから高い注目を集めています。

では、なぜプラチナゲームズは、優れたアクションゲームを次々に世に送り出せるのでしょうか。そこにはプロデューサーの稲葉敦志氏、ディレクターの神谷英樹氏といったリーダーの存在だけでなく、実際のゲーム作りに携わる、開発者一人ひとりの力量があるはずです。リーダーと現場は車の両輪のようなもので、どちらが欠けてもプロジェクトは前に進まないのは、あきらかでしょう。

そこで本座談会では、同社のアクションゲーム作りの秘密を解き明かすため、『BAYONETTA』『VANQUISH』の制作にかかわったメインスタッフに参加してもらい、社風やゲーム開発のスタイルなどについて率直に伺いました。おりしも同社では開発職種の中途採用も行われていますので、参考になれば幸いです。

■座談会出席者

●プログラマー
・井上和憲
・大谷規之 

●グラフィックデザイナー
・小手川宗行 (キャラクターモデリング担当)
・山口孝明  (モーションデザイン担当)
・西村栄治郎  (モーションデザイン担当)
・村中高幸  (モーションデザイン担当)
・山本拓生  (エフェクトデザイン担当)


●プラチナゲームズの社風について

―――今日はよろしくお願いします。はじめにプラチナゲームズの社風について、お聞かせください。パーティションが存在せず、フロアが一望できるなど、かなり社内の風通しが良い印象を受けましたが?

席にパーティションはなく見渡せるオフィス


左から大谷氏、井上氏
井上:もともと弊社は、三上真司率いるカプコン第4開発部のメンバーが独立して誕生しました。カプコンから数えて、クローバースタジオ、SEEDS、プラチナゲームズと社名は変わっても、中核の濃いメンバーは、それほど変化がありません。そのため、ここにいるスタッフはみんな、家族みたいな感じですよ。わきあいあい、楽しくやってます。新しく入ってきた人は、最初はちょっと戸惑うみたいですけどね。

大谷:良い意味で、社内の上下関係などがないので、上からも下からも、いろんな意見が出てくる自由さがあります。新人でもアイディアが良ければ採用されますし、仕事も任されます。それがモチベーションの向上にもつながって、社内の雰囲気も良くなっていく。そういったところが社風ですね。

左から山口氏、小手川氏
小手川:わりと、やりたい放題やっても許されるんですよ。たとえ上からのオーダーでも、もっと良いアイディアを思いついたら、逆提案するのも日常茶飯事です。みんながみんな、そんな感じでガツガツとぶつかっていくことで、結果的に良い物ができているんじゃないでしょうか。

山口:セクション間の垣根を超えて、そうしたやりとりが行われているんですね。ディレクターやゲームデザイナーがネタやコンセプトを提示して、それをみんなで「作る」というよりは、みんなで「育てる」といった方が正しいんじゃないかな。もともとゲームデザイナーの数が少ないこともあって、みんながゲームデザイナーのような仕事を求められていますね。元のアイディアが一人歩きして、全然違う内容になることも、よくありますよ。

左から村中氏、西村氏
西村:自分の担当セクション以外でも、率直な感想や意見はどんどん言い合うようにしていますね。それ格好悪いとか、それイケてるね、とか。それによってゲームのクオリティが、どんどん上がっていくのが特徴かな。あと、語弊があるかもしれないけど、良い意味での「根性論」が、今のご時世で、まだ残っているんですよ。それもまた、プラチナゲームズのカラーじゃないかな。

村中:僕はこのメンバーの中では唯一、カプコン時代を知らなくて、中途で入ってきたんですが、みんなゲーム作りに対する意識の持ち方や、レベルが非常に高いんですよ。何か頼まれてデータを作って、みんなの前で見せる時は、反応がものすごく気になります。

山本氏
山本:思いつきでモノを作ることが多いんですよ。その場の勢いでネタが生まれたり、一気に組んじゃうとか。仕様書できっちり固めてから作るんじゃなくて、とりあえず組んでみて判断するのが特徴ですね。そもそも、みんなどんなに理論的に説明されても、モニターで動いているモノを見ないことには、納得しないんですよ。結果的に何回も作り直すことになって、ムダも多いんですが、最終的にクオリティは高くなっています。

●若手の起用が多い?

―――若手の起用が多いという印象を受けました。

山本:そうした意識はないです。そもそも、そんなに人数がいないので、必然的に若手にも仕事が回ってくるし、任せることになるんです。もともと「ゲーム」を作りたい人間が集まっている会社で、みんな意識も高いので、やりたいんだったら、挑戦させてみるかと。それに対して先輩もフォローしていくので、クオリティが低いままで発売されることはありません。そのため若手にとっても、やりがいはあると思います。

山口:若手だけじゃなくて、途中からプロジェクトに参加した人にでも、平気で主人公クラスのキャラクターモデリングなどを任せたりしますからね。

村中:僕は最初に入った会社がすごく人数の少ない会社だったので、デザイナーの仕事なら、なんでも体験しました。それはそれで良かったのですが、レベルもそれなりだったんです。一方でプラチナゲームズでは、同じデザイナーでも、職種別にセクション分けされています。その一方でセクションを超える自由さもある。今の仕事に満足できていなくて、スペシャリストを極めたい人には向いていますね。

西村:若手スタッフの希望は、基本的に通すようにしています。やっぱり“好きこそ物の上手なれ”で、好きなモノや、やりたいことに挑戦するときが、一番力が出ると思うので。ただ、チャンスをモノにできるか否かは、その人のがんばり次第です。、一定以上のクオリティが達成できて、商品に組み込まれることになった時、ものすごい充実感が得られるし、実力がつくと思うんです。それを繰り返すことでプラチナゲームズ全体がレベルアップしていけるので、この方針を続けていきたいですね。

山口:ベテランなら管理業務などが加わったりもしますが、ことクリエイティブな仕事に限れば、若手もベテランも業務内容に差はないんです。そのため若手に対しても、ある程度の作業内容を、周りが求めるんですよ。もちろん、ちゃんとフォローしていますので、仕事をしながら覚えていってもらう感じですかね。僕も新人の頃はそうやって学んでいきましたし、今でもそうだと思います。若手が良い物を作ると、ゲームも面白くなるし、自分も嬉しいんです。

―――上の人に求められることって、何ですか?

小手川:そうですなあ。新人に仕事を任せるときは、仕事の内容と一緒に、責任もうまく持たせるようにすること、ですかな。責任があれば、新人でもがんばりますし、成長の糧にもなりますから。その上で失敗したときはフォローできると、ベストなんでしょう。

大谷:僕が心がけているのは、わりと普通のことなんです。ゲーム業界って自分も含めて、ちょっと変わった人が多いんですよ。その部分は認めてあげて、その上で普通に挨拶ができるとか。弊社は9:30~18:00の定時制を取っているので、朝は遅刻しないで出社するとか。弊社に入ってくる時点で、それなりの実力は持っているはずなので、後は社会人としての常識の部分ですね。実際、技術力では若いスタッフの方が高かったりしますよ。

井上:僕はもう、あまり難しく考えていないんです。だいたい、新しく入ってくるスタッフの方が知識が豊富なんですよ。僕らは、特定分野については詳しくても、新しいことを学んだり、挑戦する余裕があまりなかったりするんですよね。なので、あんまり先輩風を吹かせずに、新人に対しても、わからないことは謙虚に聞きます。逆にゲームの作り方については、僕らの方が経験があるんで、そこは教えてあげるみたいな。

小手川:現世代機で、シェーダーが使えるようになったりと、それまでのゲーム機とは、基礎技術が変わったじゃないですか。そのため新人もベテランも、その時点で仕切り直しになったんです。その上で僕らにできることといえば、「ゲーム」の作り方を教えてあげるくらいでしょうか。

●「秘伝のたれ」が生み出す独特のスタイル

―――ちなみに、みなさんはおいくつですか?

座談会メンバー最年少の村中氏(左)
井上:ほとんど35歳以上ですよ。

村中:僕はまだ32歳ですよ。(一同「若っ!」と声が上がる)

大谷:若いスタッフから「小学生の時に初代『バイオハザード』を遊びました」とか言われると、もうそんな年になったかと思いますね。それ、自分が係わったゲームなんやけど。

井上:カプコンから独立して、会社名が変わる中で、古くからいたスタッフが抜けたりもしましたが、濃いところは変わらず残っているんですよ。その一方で新しい人も入ってきて。
小手川:老舗ラーメン屋の「秘伝のたれ」みたいになってますよね(笑)。

―――以前、制作風景を見学させてもらった時は、開発室のそこかしこで人が集まって、モニターを見ながら雑談っぽく打ち合わせをされている姿が印象的でした。みんな、よく喋るなあと。

井上:実際、カプコンで一番うるさかった部署が独立したんですよ。カプコンでも他のフロアは静かなのに、うちだけ特殊だったというか(笑)。

西村:フロアにパーティションがなくて、立ったら一望できるとか。顔と顔をつきあわせてゲームを作ろうとか。そういうのは昔から変わってませんね。

小手川:みんな、やいのやいの言いながらゲームを作るのが、楽しいんですな。他のチームからも、バンバン意見が飛んできますから。逆にあんまり口を挟んでいると、そこのチームに突然、編入されたりしますからね。

井上:そうそう(笑)。僕も最近「ちょっと、うちのチームに来ない?」って、別々に2カ所から言われていて。あんまり口を挟んでいると自分が作ることになっちゃった、なんてことがたまにあるよね。

●みんな他の仕事の内容について、すごく関心が高い

―――具体例はありますか? たとえば『VANQUISH』なら、最初はこういう感じだったのが、現場でどんどんアイディアを加えていって、がらっと変わってしまった、みたいな。

西村:全部がそうだったからなあ(笑)。

井上:何か新しい絵とか、動くモノができたら、「関係ある人、ちょっと来て~」みたいな感じで声がかかるんです。そしたら、わーってそっちの席に集まって、寄ってたかって見るんですよ。何か新しいモノができたら、みんな見たいんですよね。見たら、口を挟みたくなるじゃないですか。それで、わいわい言って、新しいアイディアが出てきて。そうした場には、たいていディレクターもいますから、みんなが賛成したら、その場で仕様が変わっちゃうんです。

山本:みんな自分の作業以外のことも、すごく知りたがっているし、気にしているんですよね。いま現場がどういうモノを作っているか、常にアンテナを張り巡らしています。そのため、何か新しいモノが出てきたら、気になる人間がみんな集まって、あーでもない、こーでもないと、やりだすんですよ。

―――自分の仕事以外のことに興味があるって、すごく面白いですね。

井上:そうやって、わいわい作るのが楽しいんですよ。開発中のモノでも、やっぱり遊びたい。遊んで口を挟みたい。だから仕事じゃなくて、趣味みたいなもんです。

常にコミットしていないと知らぬ間に仕事が増えていたり
小手川:主人公のモデリングを作ったら、そのモーションも見てみたいじゃないですか。モーションがついたら、敵キャラクターを殴ってみたくなる。そしたら、もっと拳を大きくした方が迫力が出るとか、一瞬だけ光らせた方が格好いいとか、エフェクトについても、いろいろ言いたくなりますよね。そんな風に、アイディアが転がっていくんです。逆にそうした雑談に加わらなかったら、自分の知らないところで、勝手に仕事が増えていたりすることが、結構あるんです。だから油断がならない。

井上:ホントに危険ですよ。どんどん仕様が変わりますから。

小手川:『VANQUISH』でいえば、変形する超巨大戦艦が登場するステージがあるんです。あれはもともと背景の一つで、遠くの方で戦艦が変形する、くらいの内容だったんです。作業分担もキャラクターモデリングじゃなくて、背景チームの担当だったんですよ。でも自分は変形モノが好きなので、お願いして、作らせてもらったんですね。

井上:そうそう。そうしたら誰かが「せっかく戦艦が変形するんだから、その上に乗りたい」って言い出して。

小手川:挙げ句の果てに「動力部に侵入して、コアを引きちぎって、大爆発させたい」とか言い出して。結局、背景パートのスタッフに教えてもらいながら、自分で全部作ることになっちゃいました。自分で撒いた種とはいえ、死ぬかと思いましたよ(笑)。もっとも、その作業を通して新しい技術も学べたので、結果的には良かったんですが。

山口:そんな風に作業分担についても、その場のノリでコロコロ変わってしまうことが、結構多いです。それも、かなり大きな仕様のところまで。こんな風に、最初にがちがちに決めてしまうわけではなくて、そのアイディアを実現するために一番適したモノは何かを、作りながら選んでいくという。

西村:紙っぺら一枚みたいな仕様書はありますが、イメージが伝わってくるだけで、5~10分で意味をなさなくなりますから。

小手川:あまりにそういうのが多すぎて、最近では「良い感じにしといて!」というフレーズが禁句になってます(笑)。

井上:僕はいまだに使うなあ。「これ、良い感じにしといてくれる?」って。

三上真司ディレクターを迎えて開発された『VANQUISH』


●意見の対立があっても、最後はディレクターが判断

―――なんだか、みんなで殴り合いながらゲームを作っている感じですが、喧嘩にならないんですか?

さすがに殴り合ったりはしてませんでしたが…
井上:しょっちゅう喧嘩をしていますよ、良い大人が(笑)。

山本:その程度で心が折れるようなタイプだと、ウチ、無理。

山口:悪意のある意見はありませんよね。みんなゲームを面白くしたいがために、意見を出し合うので。だから、そういうのがエスカレートして、喧嘩とか言い合いになったりしても、後にひかないんです。

井上:時には感情論でぶつかることもありますけど、向かっている方向は同じなので。

山本:最終的にはみんな、ユーザーのことを考えて作っていますし。その気持ちは共通して、がっつり持っていると思いますから。時が経てば自然と落ち着きますね。

西村:それに、最終決定はディレクターの権限ですからね。意見が割れたり、言い合いになったりしても、ディレクターがしっかり舵取りをしてくれますので。ディレクターもガンガン、現場に入ってきますからね。

井上:そこはもう、ディレクターを立ててあげないと(笑)。時には決めてもらうというより、決めさせることもあるよね。材料をそろえて、さあ、どっちやねん、みたいな。

山口:だから一日でもディレクターがいないと、現場が回らなくて、困るんですよ。もっとも、ディレクターの判断が迷走して、ぐちゃぐちゃになって終わることも、たまにありますけど。

西村:それでダメになったとしても、もう一回作り直せばいいんです。

井上:よう失敗するんですよ。じゃあ次、みたいな。

大谷:たまにディレクターのオーダーでも、明らかに違うやろう、という時もありますよね。そんな時でもあえて作ってみて、「な、あかんやったろ?」って言ったり。

井上:確かに、それが一番楽しい(笑)。

小手川:それを楽しめるという時点で、もう一周回ってますよね。

(後編に続く)

BAYONETTA(ベヨネッタ) (C)SEGA
MAX ANARCHY(マックス アナーキー) (C)SEGA
VANQUISH(ヴァンキッシュ) (C)SEGA
MADWORLD(マッドワールド) (C)SEGA. SEGA, the SEGA logo and MADWORLD are registered trademarks or trademarks of SEGA Corporation.
《小野憲史》

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