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ゲームをいかに他の産業と結びつけるか・・・CEDEC吉岡委員長に聞いた

春のGDC、そして秋のCEDEC。今年は「CESAデベロッパーズ・カンファレンス」から、新たに「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス」と名称も変え、さらなる飛躍が期待されます。

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CEDEC吉岡委員長インタビュー
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■ゲーム開発コミュニティの今後

―――ソーシャルメディアとの連携などは考えられていますか?

吉岡:そうですね。ただ技術は移り変わっていくので、単純にFacebookやtwitterに対応させることが本質ではないと思っています。もっといえば、その中の人間がどう動き出すかが重要です。

―――モチベーションの問題ということですね

吉岡:そう思います。でなければ、これまで日本でゲーム開発者のオンラインコミュニティが、ほとんど成功していないことの説明がつかない。なぜ成立しないと思いますか?

―――それをしなくても、これまでご飯が食べられたからでしょう

吉岡:そのとおりだと思います。

―――僕もフリーランスになって11年目ですが、ここ数年の傾向として、100の仕事を100の時間でこなすだけでは、ご飯が食べられなくなる。そんな予兆を感じています。これからはGoogleではありませんが、100の仕事を80の時間でこなして、残りの時間をコミュニティのために使う姿勢が求められるのではないでしょうか

吉岡:それはとても興味深い考え方ですね。そうした実感のない人に、どうやって伝えればいいでしょう?

―――「フリーランスになれ!」の一言でしょう

吉岡:それはちょっとストレートすぎますよ。もうちょっと階段を作ってあげないと。

―――そこでCEDECなり、IGDAのイベントなりに、参加するのが第一歩ですよね

吉岡:なんだか、どっちがインタビューしているのか、わからなくなってきましたね。ただ、そこにはもう一つ階段があって。CEDECやIGDAのイベントなどに、まだ参加したことがないし、関心もない人の方が圧倒的に多数派です。CEDECでもプログラマー中心だったのが、ようやくアーティストの参加率が増えてきました。しかし、まだ狭い意味での「技術」中心というイメージがあって、プランナーやプロデューサーの参加が少ないんですよ。ここをどうブレイクしたらいいのか、いつも悩みどころです。

―――よくわかります。逆に言うと、ようやくその問題を議論できるくらいに、CEDECがステップアップしてきた

吉岡:もちろんテクノロジーはコンピュータエンタテイメントの根底にあるものだから、プログラマーが最初に危機感を覚えたのも、当然だと思うんです。ベースがコンピュータ技術だから、海外情報にもアクセスせざるを得ない。続いてアーティストも、なんで同じような絵が作れないんだと、危機意識を持ち出した。ただ、本来であれば最初に気がつくべきはずの、プランナーやプロデューサーの関心が、まだまだ低い気がします。

―――プランナーについては、最近は海外で売れるゲームを作れという社内圧力もあり、ようやく海外のゲームデザインの手法やトレンドを、勉強しはじめているのかなと感じます。あとは経営層ですね。昨今では中小ディベロッパーで、海外営業や国際協業のためにGDCを活用する例が増えてきました。ただし、まだまだ過去の成功体験に縛られているところも多いですよね。そこも含めて、講演者の質を高めていくことが重要でしょう

吉岡:CEDECではこの数年間、講演者のクオリティについては、けっこう自信があるんです。みんなCEDECの趣旨を理解して、一生懸命喋ってくれています。

―――僕もマイナー雑誌の編集長をした経験があるので、誰が喋るかではなく、何を喋るかが重要だと思っています

吉岡:まさにそのとおりです。それを分かってくれている人が、最近はちゃんと講演してくれています。今だから言えますが、まだCEDECが小規模だったころは、まずは開発者の皆さんを、場に引き出すことに注力していました。なので、人気タイトルのセッションなどが重要でした。今は、それだけのセッションは公募で却下しています。このあたりはフェアにしていかないと、CEDECが成長していきませんからね。

―――SIG-GLOCでも昨年は2本のセッションが通りましたが、今年はもっと多く公募を通すために、アイディアを議論している最中です。将来はCEDECでもローカリゼーションサミットを開催することが目標だと、Localization SIGで広言してきました。公募をパスしなかった企画も、SIGのセミナーなら実施できますし

吉岡:それは楽しみですね。お待ちしています。

―――それでは最後に、これからCEDECに応募しようと思っている方々に、メッセージをいただければ

吉岡:はい。GDCでは現時点で公開できる一番新しい情報が、一斉にオープンにされました。GDCに参加された方はもちろん、日本で情報を収集されている方なら、大きな刺激を受けられたと思います。そこで何かインスピレーションを受けたら、ぜひCEDiLにアクセスして、自分の気になるキーワードで検索してみてください。まだ2006年以降の資料しかありませんが、きっと公募の参考になると思います。

―――なるほど、それは重要ですね

吉岡:その上で重要なのは、CEDECは自慢話をする場所ではないということです。自分が日頃何をやっていて、何を思っていて、何がうまくいって、何がうまくいかなくて、次はこうしたい。こうした内容が含まれているのが、一番良いセッションです。それって、一生懸命仕事をしていれば、誰でもできるはずなんです。良く「CEDECに公募したいけど、ネタがない」という声を耳にしますが、それはちょっと違いますよと。皆さんがふだん何を考えて、何をしているか、そんな話をしてほしいんです。

―――ネタはどこにでも転がっている、それに気づくか否かだ、というわけですね

吉岡:ええ。それからもう一つ、CEDECは今年からゲーム業界外の知見にも幅を広げていきますが、それでもプロ向けのカンファレンスだということに、違いはありません。極端にいうと、分からない人に向けてレベルを下げる必要はない。分かる人にだけ分かるセッションというのが良いんです。ですから公募方法も、長く何枚もペーパーを書いていただく必要はなくて、A4の用紙一枚に収めていただければ十分です。なのでぜひたくさん、公募をお寄せください。

―――GDCが終わって、帰国して、次はCEDECの公募というわけですね

吉岡:実は去年も締め切り間際に、まとめてどどっと公募が届きました。でも、それだと運営側の胃が痛くなります。なるべく早めに公募を出してくださいね。

―――ありがとうございました
《小野憲史》
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