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RPGには無限の可能性がある!イメージエポック御影社長&宇田プロデューサーインタビュー 前編

「JRPGセカンドステージ」を掲げてパブリッシャ宣言を行ったイメージエポック。発表会の模様に業界は文字通り「震撼」しました。RPGの開発に特化して業績を拡大させてきた同社の今後の戦略と、RPG作りに関する熱い思いを伺いました。

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■コンソールメーカーだからできる「オンライン」の取り組み


―――家庭用以外のゲーム開発も手がけられていますね。またちょっと違った作り方というか、今までのRPGと違うモノになっていくと思います。

御影:そうですね。『モンスターハンター』がなんであんなに売れたんだろうって、よくうちの社員と話をするんです。PSPユーザーって中高生が多いですよね。一方で日本では、中高生にPCがあまり普及していません。そうした中で、オンラインで遊ぶ楽しさをはじめて体験したのが「モンハン」だった。だから爆発的にヒットしたんだろうと認識しています。もっとも「モンハン」はアクションゲームでしたが、同じように携帯ゲーム機向けに、同期型のオンラインRPGが、近い将来登場してくるんですよね。そこに僕らがアプローチするには、オンラインの考え方や、方法を勉強しなくちゃいけない。

―――方で国内デベロッパはソーシャルアプリに関心が高いですね。

御影:そうなんです。ソーシャルアプリやモバイルゲームを、コンシューマ会社が作る必要ってあるのかな?と思っていたりもするのですが。ただ、SNSやモバイルゲームの考え方(遊ばせ方)をコンシューマゲームに取り込むのは必要は近い将来あるんですよね。そのことを、ちゃんと考えた結果方今取り組むべきだという判断で現在制作しています。こうしたことを真剣に考えている会社って、ほとんど無いんじゃないかなあ。そうなると、よけいに技術に差が生まれてくるんですよね。技術や思想てブームになる数年前から仕込んでおかないとブームが来たときにはすでに手遅れになってるというケースが多いようで。なので絶対にその流れが来るとは断言できないですが、可能性を示唆した行動は必要であると考えています。

―――なるほど。

御影:そんなこんなで去年から口を酸っぱく社内に言っているのは、これからはHD機に対応する技術だけを追い求めるのではなくて、コンシューマゲームに本格的にオンラインの波が来たとき、オンラインに対応したゲームの作り方の概念を先行して学ぶことが大事だということを話しています。発表会でも、そのためのキーワードがたくさん含まれていたと思います。業界内でも、オンライゲームでパッケージ流通がなくなると思われている方がいるかもしれませんが、そんなに早くは移行しないですよ。イメージエポックでは、流通さんに対するアプローチや、オンラインに対するコミットメントの仕方も、早期に確立したいと思っています。基本のチャネルが移行するのは思いのほか遅い物です、また過去になるチャネルも確実に大きなシェアを占めたまま残ります。その点は注意しながら取り組んでいくつもりです。

―――そうした取り組みの結晶が、PS3/PCブラウザ/スマートフォン向けに発表されたSRPG『シュヴァリエ・サーガ・タクティクス』というわけですね。ハンゲームを運営するNHN Japanとの共同開発タイトルという異色作です。

御影:そうですね。ハンゲームさんと一緒に作る事で、ノウハウも勉強したいと思っています。実際、SCEさんにプレゼンに行ったら、最初は「何を話しているんだ、おまえたち」というような雰囲気だったんですよ。そこで「もっと未来を見なきゃいけない!」と、一生懸命プレゼンしました。最近では物凄く手厚いフォローを頂いていて本当に感謝の一言です。それとPS3版は安易な移植はしませんよ、そのままUIが同じとか。PS3版はきちんと作り込んで、操作性も含めて見劣りがしないモノにする予定です。それだけにPS3版のリリースは、PC版よりもしかすると少し遅れるとは思います、まだ未定ですけどね。

―――お話を伺っていて、RPGに特化した経営戦略が、改めて興味深いなと感じました。一方海外では、今年のGDCでピータ・モリニュー氏が『フェイブル3』について、おもしろいことを語っています。「自分たちはRPGを作ってきたが、RPGはニッチジャンルになってしまった。だから『3』ではアクションアドベンチャーを意識して作った。」と。

御影:そうですね。

―――このあたり日本とヨーロッパという、足下のユーザーの嗜好の違いが大きいのかなとも感じますが、いかがでしょうか?

御影:その通りだと思います。まずファーストインプレッションしなければらならいユーザーに、何を提供していくかという話ですね。さらに付け加えれば、彼はトップクリエイターで、ハイレイヤーに属していますよね。逆に僕はこれから成長していく、ローレイヤーからミドルレイヤーに上がっていく段階です。ハイレイヤーは面でモノを抑えなければいけませんが、僕はまだ点と点を示して、それを線にしようとしている段階です。そういったところでは、施策が当然違ってくると思います。


■RPGに正解はなく、無限の可能性があるジャンル


―――いずれにせよ、RPGに対するこだわりだったり、好きだったりという思いが、お二人からすごく伝わってきました。では、お二人にとって、RPGって何でしょうか?

御影:難しいことを聞きますね・・・。

宇田:哲学的な質問が来ましたよ。

御影:・・・インタラクティブ性のある、ファンタジーノベル。

―――なるほど。

御影:しかもそこに、音楽と映像がついているモノでしょうか。僕は幼少期、本当に読書くらいしか楽しみがなかったんです(※ゲーム禁止の家庭だったので)。ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」とか、親が買い与えてくれる、そういった作品をずっと読んで育ちました。そんな中で、ある日突然ゲームをやったら、音楽は凄いし、映像は凄いし、しかも主人公になりきって遊べる。まったく未知の領域に足を踏み込んだ瞬間でした。そういう感覚なんです。だからRPGは僕にとって、全く新しい表現の本との出会いみたいなものなんですよ。

―――それはおもしろい比喩ですね。

御影:たとえば「グラディエーター」や「ロビンフッド」などのハリウッド映画がありますね。あれをRPGにしたら、めちゃめちゃおもしろいと思いませんか? でも、それがアクションゲームだったら、自分は別に遊びたいとは思わないんです。というのも僕は主人公の物語を、できるだけ濃密に楽しみたいんです。それにはRPGという形式で最適化しなくてはいけない。アクションゲームって、遊んだ時の爽快感が大切なので、街の描写一つとってみても、展開が非常に速いんですよね。それに対してRPGは、一つひとつの要素を積み上げて進めていくので、ページをめくっていく感覚なんです。そこが大きな違いですね。

―――確かに、RPGのプレイ感覚は読書に似ています。


―――宇田さんはいかがですか?

宇田:うーん、改めて聞かれると困りますよね・・・。「RPGとは何か」ではなくて、「なぜRPGを作るのか」という質問に対する応えでも良いですか? それなら『ウルティマ』と『ウィザードリィ』を、どうやって自分の中で再解釈・再構築していくのか、ということなんだろうと思います。実際RPGを作っていて思うのは、そこなんですよね。

―――再解釈・再構築ですか。

宇田:ええ。『ウルティマ』でいえばリチャード・ギャリオットという、ウルティマ世界の「神」の頭脳を解体して再構築するには、どんなゲームシステムが必要なんだろう・・・。最近はそんなことを考えながら、みんなでゲームを作っています。『ウルティマオンライン』を一時期プレイしていたこともあって、リチャード・ギャリオットは本当にすごいなとリスペクトしているんです。その思いが根底にありますね。彼が考えるファンタジー観であったり、自分のキャラクターを動かして、彼が作り上げた世界を探索していくということ。その過程で体験する「行きて帰りし物語」とは何か、作っていて考えさせられます。僕にとってRPGを作るというのは、リチャード・ギャリオットに0.1ミリでも近づくにはどうしたらいいかを考える、探求の旅なんです。

御影:・・・吃驚した、実に良い回答だったと思います。感動しちゃいました。

宇田:一方『ウィザードリィ』でいえば、あのシンプルさ。極論すれば「地下迷宮に"龍"がいます。パーティを組んで倒してきてください」以上というだけなんですが、みんなものすごく妄想を膨らませながら、ゲームを遊びましたよね。この妄想エンジンを、僕やチームの仲間が今までの人生で身につけたクリエイティブの引き出して再現すると、どんなものができるかが、RPGを作っている意義なんです。もっとも、RPGって何かといわれると、やっぱりわからないんですが。

御影:まさにそこなんですよ。RPGとは何かと聞かれても、答えはそんなに簡単に出ないんですよ。そこにRPGの無限性があるんです。数多くの要素の組み立て方で、さまざまな作品が作れちゃうんですよね。たぶん「RPGが終わった」と語っている人は、既存のRPGのことしか考えていないんですよ。だから僕らは「RPGセカンドステージ」というキーワードを掲げた以上、この質問に回答しなくちゃいけないですよね。頭をめちゃめちゃ回転させて考えないと。そうすると、新しいモノが生み出される可能性があるんです。

―――なるほど。

宇田:実際、昔のRPGが持っていた様々な要素には、普遍的に面白いモノがたくさん隠されているんです。それらを、きちんと探そうという気になりましたね。

御影:ええ。最近チームのみんなと、RPGって何だろう、このゲームの面白さは何だろうって、よく話すようになったんです。以前は大作ゲームの続編制作に係わっていても、まったく話さなかったのに。これってものすごく脳の体操になるし、僕たちの次の一手にも、すごく大事なプロセスですよね。今、ゲーム業界が不景気だって言われていますが、これをやらないからで、このまま惰性で作っていくだけだと、たぶん衰退しちゃうんじゃないかなって思ってます。

(つづく)
《小野憲史》
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