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木村雅人プロデューサーに聞く、『El Shaddai』で実現するゲームデザイン新境地・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第10回

ゲームビジネス 開発

Ignition Entertainment木村雅人プロデューサーに聞く、『El Shaddai』の世界観で実現する新たなゲームデザインの境地・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第10回
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このコラムをはじめてもう一年もたってしまいました。なかなか定期的な執筆が出来ないということが非常に残念ではありますが、一貫して取り組んできたのが「ゲーム産業における様々なイノベーション」にフォーカスをあてるということです。

そのような中で「イノベーション」という言葉をより広い視野でとらえることで、実に様々なことが業界内でおこなわれきたということを改めて実感出来ました。これらの取り組みが様々なムーブメントを引き起こし、業界の活性化へとつながっていったのです。私は00年からゲーム業界の研究をはじめましたのでこの業界を見続けて(時にはこの年になってゲームを徹夜でプレイしながら)10年も経ってしまったわけですが、その中でゲーム業界という視点でのイノベーションの傾向を図でまとめてみました。



これはあくまでも現段階での想定で、今後も修正をかけていかなければならないと思いますが、ゲーム産業におけるイノベーションというものを改めて俯瞰するうえでこの図を使えばより整理しやすいのではと思いました。今回のコラムで追及するのがインタラクティブナラティブならびにビジュアルデザインにおけるイノベーションです(図ではピンクになっています)。

そこで紹介するのが、UTV IGNITION Entertainmentの『El Shaddai』(ヘブル語で「全能の神」の意)。ゲームメカニクスは従来のアクションゲームそのままに、ビジュアルでオリジナリティを追及することでこれまでにない世界観を提示し、東京ゲームショウ2010で注目された作品の一つです。会場のブース内で我を忘れてプレイ中、偶然同作プロデューサーである木村雅人氏に出会ったので突撃インタビューを敢行。『El Shaddai』に如何なる想いをこめて開発を進めてきたのかじっくりと伺いました。



―――中村彰憲: まずはどのようなチーム構成なのか教えてください

木村雅人(以下、木村):現在120名で開発しています。3年ほど前から開発を進めていますが、最初は、ディレクターとプロデューサーの私、そして会社代表からスタートしました。メンバーとしては、『Devil May Cry』や『バイオハザード』、そして『大神』などに携わった人間が中心です。そこから序々に開発スタッフを増やし、現在やっとこの開発体制を整えることが出来ました。

―――『El Shaddai』のモチーフはどのような発想から生まれたのでしょう?

木村:もともとモチーフにしたのは旧約聖書のエノクの書です。古典ですね。いわゆる正典ではないほうですが、そのエピソードが非常に面白くて、それをゲームに使わせていただいています。冒頭部分で人間を監視していたグレゴリ天使団というのがいるのですが、彼らの中から、7人の天使が人間に憧れを抱いて堕天をしてしまうんです。彼を連れ戻すために主人公であるイーノックが旅に出る、という話です。

―――このゲームで表現されている世界はどのような世界なのでしょう?

木村:この世界は地上なのですが、7人の天使が天界からの監視を防ぐためにヴェールという天蓋のようなもので地上間を包んでいるんです。それで包まれたことで地上界は勝手に変質してしまい、このような世界になっているんです。

―――世界の雰囲気がどちらかというと欧米風アートというイメージなのですが、なぜこのようなビジュアルをつくりあげたのでしょうか?

木村:この画面をつくっていくとき、最近のゲームはどうも情報過多になってしまう傾向にあるので、そこを1画面1面ステージとすることにしたうえでとにかくシンプルにわかりやすく、そして何よりもよりたくさんの人に好んでもらえるような画面をつくることを目標に開発を進めました。女性であったりとか、ライトユーザーであったりと、まさに老若男女を対象に考えました。



―――ボタン操作はシンプルでもコンボのような操作が可能だったりという印象を受けましたがその辺は何を意識されて開発に取り組んだんでしょう?

木村:それはまさに私たちがゲームデザインをするうえで意図したところです。ライトユーザーの方にはさわっていただけるだけでゲームをクリアすることができる、ヘビーユーザーの方には格闘ゲームのもとたらす緊張感であったり攻防の面白さを楽しんでいただけるような深さを作りこみました。ハードルは低く、奥は深くという考えです。

―――デモでは2Dスクロールアクションなどもプレイ出来たのですが本作のゲームメカニクスについてもう少し詳しく教えてください。

木村:このゲームには4つの柱があります。まずは3Dのバトル、そして2Dアクション。TGSではこれら二つの要素しか見せることが出来なかったのですが、更に3Dのアクションや2Dバトルも用意しています。この4つの柱がゲームの中でバランス良く配分されています。我々も含め様々な開発経験のある人間が集まっているからこそ出来ることだと思っています。

―――ここまで斬新なゲームを開発できた理由はなんでしょう?

木村:とにかく新しいものを表現したいというのがあったというのと、一つ何か突き抜けたものを作ってみようという想いを持っているというところからです。新しい会社なのでまだ守るものも何もないから出来ることですよね(笑)。

―――音楽も非常に不思議な感覚を感じる楽曲ですがどなたが作曲したのでしょう?

木村:『モンスターハンター』や『Devil May Cry』の楽曲をつくりあげた甲田雅人氏に書いてもらっています。


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インドマネー、自由度の高い上からの「お題」、そして想像力豊かな日本のクリエイティビティがアクションゲームの新境地を作り出す

木村プロデューサー


―――中ボスのヴェールが出現したときに、時間が止まってキャラクターが敵について解説するという演出がもりこまれていたのですがあれはどのような経緯で採用されたのですか?

木村:あれは、ルシフェルというキャラクターなのですが、彼は水先案内人として主人公を導いていくという役割を担っています。彼は天使として神から時間を操れる能力を授かっているという設定です。ディレクターが意識したのはポーズであったりとかセーブであったりとかロードというところをゲーム的に、つまり機械的にやってしまうのではなくて、ロマンを持たせたい、という点です。そのときに「なんでポーズになるのか」、「なんでロードになるのか」というところに物語性を持たせるという結論に至ったんです。ボス戦前のロードでは、ルシフィルが術をつかって時間を止めたから、セーブで画面が固まっているのはルシフェルが神にイーノックの状況を携帯電話で伝えているからという具合です。

―――インドのメディアコングロマリットUTV系列で本社がイギリスに所在するということですが、自分たちのモノづくりへの想いと企業のニーズを如何にマッチさせてきましたか?

木村:かなり自由なモノづくりはさせていただいています。親会社からのミッションというのは「とにかくこれまでの3Dアクションゲームを超えるような新しいIP(知的財産)を作れ」というものでした。チームとしては「みんなでそれに挑戦しよう」という想いで今でもつくっています。欧米市場を意識するというのもありますが、ディレクターの方針として打ち出しているのが「無国籍感」です。どこのゲームというのではなく、よく分からないけどこれが「ELShadai」の世界なんだというのを大事にしたいと思っています。興味深いのはゲーム映像をE3で披露したとき、欧米の方々は「すごく日本っぽい感じがする」と話されるんです。逆に日本の方からは「すごく海外っぽい」と言われます。なので「無国籍感」を出すというところは成功したと思っています。

―――外資系の企業の中で開発を進めてながら感じた現在の日本製ゲームの課題とはなんですか?

木村:私がUTV IGNITION  JAPANを立ち上げた理由は、やはり海外から資金調達をしてうえで日本の優秀なクリエイターにいいモノをつくってもらうという想いからです。同時にゲーム自体のボーダーレス化というのが起こっています。海外のゲームがたくさん日本にはいってきています。逆に日本のゲームも以前から海外にたくさんいっていたのですが、その評価はかなり変わってきているように思います。じゃあ日本のゲームが弱いのかというとそうではなくて、全体的に国際競争力はあると思うんです。それを如何に伝えてあげるか、もともと日本のゲームは出せば売れるという状態でした。ですのでその強みを伝えるというのは日本人はなかなかうまくないと思うんです。それを如何に伝えていってあげるか。まずユーザーに興味を持ってもらうことが重要なのですが、その興味を持ってもらうフックを如何につくるか、というところがすごく大事なのではと思っています。

―――ありがとうございました!
《中村彰憲》

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