サイバーコネクトツー松山社長に聞くゲーム業界を盛り上げる宣言!・・・CC2訪問(前編)

サイバーコネクトツー松山社長に聞くゲーム業界を盛り上げる宣言!・・・CC2訪問(前編)

2010年8月21日(土) 17時56分
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福岡を拠点に『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズや『.hack』シリーズなどを手掛けるサイバーコネクトツー。7月には東京にも開発スタジオを開設し、更なる発展を目指します。8月31日から3日間にわたって開催されるゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2010」でもセッションを予定している同社の松山洋社長に同社の元気の秘訣と、ゲーム業界を盛り上げていく決意を聞きました。

サイバーコネクトツー 松山洋社長 東京スタジオ受付にて


―――昨年に続き、CEDECでセッションを持とうと思われたのはどうしてでしょうか。

業界を盛り上げるためです。ゲーム業界に勇気を!というわけです。

先日、サイバーコネクトツーは東京に開発スタジオを作りました。そこですでにいろんな方とお会いましたが、同業者、それもディベロッパー(開発会社)の方に「仕事をください」って言われるんです。

聞けば、「企画が通らなかった」とか、「プレゼンしても契約してくれない」とか、「プリプロ(試作品)の開発すらできない」という話ばかり。みんな「○○ができない」って話ばかりするんです。だから、「『できない』ことはないよ。こうすればできるから」って勇気を与えたいんです。愛すべきライバルたちに!

―――手の内を明かすというわけですか?

うちのディレクター・下田が言うんです。「自分のライバルくらいは自分で育てます」と。カッコいい言葉でしょ? 我々はライバルに塩を送るんです。だから今回、うちの講演はすごいですよ。単独のセッションだけで私とプログラマー・宇佐見のものがあって、その他「サイバーコネクトツー」の名前が載ってるものは全部で8つありますから。

特に宇佐見は、10人からスタートした弊社が160人規模になった現在に到るまで、プログラマー側からどのように支えてきたかという話をします。まさにポストモーテム(事後検証)ですね。何しろサイバーコネクトツーは160人中、プログラマーが30人しかいませんから。120人くらいがCGアーティストなんです。この構成は凄いでしょ?(笑) これは聞く価値のあるセッションになりますよ。

―――松山社長ご自身のセッションはどのような内容ですか?

『Solatorobo それからCODAへ』(以降『Solatorobo』)を中心に話します。『Solatorobo』はニンテンドーDSのアクションRPGですが、構想10年、製作に3年かかっています。設定資料だけで1000枚あります。実はこれ、対外的にキリがいいので「設定資料1000枚」と言ってきましたが、本当は2000枚以上あるんです。DSでこんな規模の開発は滅多にありません。こういうことは、他のディベロッパーさんでは難しいと思われるかも知れませんが、「こうすればできます」という話をします。本当のことを知って、みなさん驚愕されるはずです。

DS『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』公式サイト


よく「『.hack』シリーズや『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズで儲けたお金があるからできるんだ。他の会社では開発費が続かない」と言われます。ところがどっこい!お金はかかってないんです。それに『Solatorobo』は当初、パブリッシャーであるバンダイナムコゲームス様から否定されてるんです。「そんなゲームはいらん!」って。付き合いが長いからといってワガママが許されるわけではない。全否定からのスタートだったんです。それがどこで「じゃ、やってみようか」に変わったかたというところをお話しします。今回発表するやり方でやると、3年かけても自分たちが満足のいく作品を出せるんです。

・・・ね、聞きたくなったでしょ?

―――はい。聞きたくなりました。

うちはこれまで苦労して編み出した手法や技術に、まったく興味がないです。全部出しても惜しくはない。だから、どうやって企画を通したかというところから、すべて話すつもりです。もちろん話しすぎてパブリッシャーに怒られないようには気をつけますが、たいていのことは謝れば許してくれると思うんで(笑)。

そうやってうちが出しすぎるくらい出しすぎれば、他社のクリエイターは、なんかイラッとするはずなんです。そして次に「ウチの話も聞いてもらえますか?」とか「うちはこうやってるんだ」と言いたくなる。クリエイターってそういう生き物なんですよ。だから誰かが誰かに火を付けなきゃいけない。もらいっぱなしだと気がすまないのがクリエイターですから。

―――CEDECに参加することについて、どのようにお考えですか?

各社いろんな事情があるでしょうけど、ゲーム開発の現場の人間がセッションを持ちたい、話を聞きに行きたいと思っても、「知的財産がうんぬん」とか「金のムダだ」とか、「そんなヒマがあるなら開発をやれ」と言われる。

でもゲーム業界って「技術=人」なんです。人に投資をせずにいるなんてバカげています。現場の人間に刺激を与えずして、先の発展はないですよ。だからうちはスタッフを送り込むわけです。

敗北感ですら大事な経験です。前回、セガ様が『龍が如く』を1年で作ったという話をされましたが、ああいうのを聞いて自分たちは2年半かけていることを反省するわけです。

―――御社からはどのようなスタッフがCEDECに参加する予定ですか。

うちはCEDECへの参加人数を決めています。「まだ行ったことのない人間を」とか「これからリーダーとなる人間の背中を押してやるべきだ」などの基準でマネージャーに選抜させます。160人の会社で10人が、それも福岡から参加するわけですから、他社に比べても多いと思います。

ところが、マネージャーが持ってきたリストを見ると、10名の他に5名ほど名前が書き加えてあるんです。「これ、なんなの?」って聞くと「彼らも行きたいと言っています」と。「いやいや、予算的には10人だって話したじゃない」と言うと、「はい。選考から漏れたので、彼らは自腹で行くらしいです」って。そんなことを言われると、個人的にはそういう奴らが大好きだから、「じゃ、この5人も仕事として行かせろ。飛行機代もホテル代も会社が出してやる!」ってなっちゃうんです(笑)。

彼らもそんな私の性格をわかってて、立候補してくるんですよ。「今年の定員は何名ですか?」って聞きにくるんですけど、意味がない。今年は定員10名に対し、20名分のリストを持ってきましたから。インタビューでこのことを話すと、社員が「なるほど!」となって、来年からまた枠が増えるかも知れません(笑)。

―――勉強熱心なスタッフが多いんですね。

ゲーム業界、給料をもらって仕事をしていることは確かですが、単にサラリーマンをやりたいんだったら、他の職業に就くべきです。この業界の人間は、サラリーマンである前にクリエイターであることを自覚しないと。歯を食いしばって良いものを作り、それが売れたらボーナスをもらっておいしいものを食べ、良い車に乗ればいいんです。それがいつの頃からか、大ヒットを生み出してもいないのに良いメシを食って良い車に乗って・・・という人間が増えた。それは間違っていますよ。まずは死ぬ気で良いゲームを作らないと。勘違いしちゃダメです。

―――日本のゲーム業界は元気がないと言われるようになりましたね。

「覚悟」が足りないんだと思います。

まず、「昔のようにゲームが売れなくなった」という考えをやめるべきです。昔がおかしかったんですから。どんな企画でも通って、簡単にわけのわからないタイトルが世の中に投入されてたじゃないですか。結果、一番被害を受けたのはユーザー様ですよ。

今、「企画が通らない」「仕事がない」と言われますが、それが正しいんです。世の中はそういう風にできてます。業界や版権にあぐらかいてた時代が異常だったんです。

いい時代ですよ今は。これまでサボっていた人間が勝手にいなくなってくれるんですから。「良かった、一生懸命やってきて!」とホントに思ってます。一生懸命やってきた人間だけが、今も胸を張って生きていけるんだと思います。

―――では、松山社長の今後についてお聞かせください。

日本のゲーム業界を変え、1つにしようと思っています。

苦しいのはみんな一緒。けれど「苦しい」と言って楽になるならまだしも、何も変わりません。そこで傾向と対策を練って、実践していきます。

CEDECもその一環ですね。誰もが同じ苦労をする必要はないんです。誰かがやってしまったんだったら、別の誰かは同じ過ちをしなくてもいいよう、お互い情報を共有すべきです。もちろん、うまくいったケースも含めて。クリエイティブな部分にまで立ち入らなくてもいいですが、ゲーム業界はタテとヨコでもっともっと連携すべきです。

欧米、特にバンクーバーやモントリオール、ユトレヒトはさらに先をいっていますよ。国の支援なんかも含めて。ですから私自身が前に出て、多くの人を巻き込んでいくつもりです。

―――今東京に開発スタジオを作られたのには、そういう意図もあるんですね。

東京スタジオでは開発者の席を60席ほど用意しています。福岡は開発するということに関してはメリットばかりなんですが、わかりやすい弱点があるんです。それが「情報」です。福岡のゲームソフト制作会社の団体・GFFには現在13社が加盟しており、毎月のように情報交換や技術交流をしているものの、まだまだ刺激が足りないというのも事実です。

九州・福岡のゲームメーカーが集うGFF(Game Factory’s Friendship)


それに、ネットや雑誌から得られる情報というのはいわば「死んだ情報」です。みんなが見られる情報ですから。ですから、我われには公の情報はあまり意味がないんです。CEDECでも実感してもらえると思いますが、「生きた情報」というのは「人」が持っているんです。それを得るため、東京に進出してきたわけです。

―――本日はありがとうございました

CEDECは8月31日~9月2日の3日間、パシフィコ横浜にて開催されます。様々なセッションが予定される国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス。ぜひ足を運んでみてください。

(Article written by D)
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