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『ゴーストトリック』開発後記onインサイド(第4回)・・・巧節をローカライズする苦労とは

巧舟氏による完全新作『ゴーストトリック』。インサイドではなかなか読めない開発後記をお送りしています。第4回目はサウンドを担当した杉森氏とローカライズなどを担当したジャネット氏です。サウンドの苦労とローカライズの苦労、それぞれ必見です。

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『ゴーストトリック』開発後期onインサイド(第4回)
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巧舟氏による完全新作『ゴーストトリック』。インサイドではなかなか読めない開発後記をお送りしています。第4回目はサウンドを担当した杉森氏とローカライズなどを担当したジャネット氏です。サウンドの苦労とローカライズの苦労、それぞれ必見です。



杉森 雅和さん(サウンド)

担当箇所は?
BGM制作全般:作曲から音録り、落とし込みまで行いました。 効果音のお手伝いとして「テンテコの舞い」を作ったりもしています。
メッセージ
本作をプレイして下さった皆様。 テンポ良くサスペンスとコメディが行き交うテキストに、ぬるぬる動くアニメーション。 そしてそこに華を添える音はお楽しみいただけましたでしょうか。

今回の制作は巧さんのイメージをカタチにするために、 サウンド側も全力で「限界点」を攻めました。

たとえば、本作のBGMは全て内蔵音源で鳴らしていますがコイツには「効果音と合わせて16音まで」という制約があります。数え方は「音の鳴り始めから『完全に消え切るまで』」が1音であり、「音符の1音」ではありません。最初の3音から次の3音に変わる瞬間、音符上では3音なのに6音扱い・・・という事が起こるわけです。なので「最大の半分」が安定して鳴らせる音数となりますが、実際は効果音が鳴りますのでさらに使える音数は減ります。

それなのに・・・。「この音左右ステレオで鳴らしてやがる」「ベースに何音使ってるんだ」「ピアノいくつ重なった」というムチャぶり。曲のために色々調整して下さったスタッフの方達には頭が上がりません。

ムチャといえばもう一つ。 皆様がよく耳にされたであろう「テーマ曲」のベース。 あのベースの「うねり」は、フレーズをそのまま録音したのではなくうねった1音ごとを10種近く用意してパズルのように組み合わせて作っています。さらっと流れていますが実は「正攻法」では不可能な鳴らし方だったり・・・

リンネもよくムチャをしますが、僕らも負けていられないという気持ちでした。

まだ未プレイの方もこれから2周目な方も、ぜひ独特な世界観と一緒に音も味わってみて下さいね!
マダムの部屋
曲を考えている際、「妖艶なマダム」という事なので「えっちなシーンで流れそうなサックス」 を、イメージしていた記憶があります。(伝わるでしょうか・・・。) それが、蓋を開けると「壁ごと踏み潰す!!」なマダムで、驚きました。 部屋の雰囲気にはとても合っていると思うので気に入っていますが、 マダム用にスローテンポなヘビメタも作れば良かったかな・・・。

Janet Hsu(ジャネット スー)さん
(ローカライズチーム)

担当箇所は?
海外版(英・仏・独・伊・西)の翻訳・ローカライズ・企画の担当です。パブ素材(PV・体験版など)も担当しました。さらに、海外のイベントにも参加し、取材の時に竹下さんと巧さんの通訳もしました。

国内版では、OSTのタイトル名を巧さんと一緒に考えました。また一部のパブ素材に載っている英語も私の仕業です。
メッセージ
巧さんのゲームをプレイするぐらい楽しいことと言えば、巧さんのゲームをローカライズすることだと思います。

「ローカライズ…とは…?」
「日本語からそれぞれの国の人々が分かる言葉に翻訳することだよね?」

間違いではないですが、ローカライズはそれだけではありません。

ローカライズの重要な目的の2つは:
(1)文章を直訳するのではなく、原文の意味を保ったまま、面白い、自然な読みやすい文章にすること
(2) 文化の違いから理解しずらいものを、それぞれの国の人々が分かるようにアレンジすること

目的(1)は簡単にできそうだと思うかもしれませんが、テキスト以外をローカライズしなければならないところもあります。「逆転裁判4」で一緒にローカライズを担当した山川さんと企画のもう一人の大浦さんと私3人でローカライズ企画として国内版からシステム的な調整もしました。フォントのサイズや文字のカーニング(文字間隔)などの問題がありましたが、たぶん一番興味深い問題の1つは、言語によって単語の長さが大きく異なる点です。たとえば、「スパナ」のオブジェクト名を翻訳した時に:

ジャネット: あの…山川さん、大浦さん、「スパナ」は英語で「Wrench」になるけど、ドイツ語の単語はちょっと…問題があります。「Schraubenschlussel」になるから…!

山川と大浦: えええええええええええ!?

大昔だったら、単語を狭いスペースに入れるように無理やり省略するだけで終わりと片付けたかもしれませんが、これでは目的(1)を実現してないですね。逆に単語は読みづらくなります。なので、全言語の単語の長さに対応できるように植田さんと一緒に上画面のデザインを調整しました。(ちなみに、もっと長い単語がありましたよ!けど、ネタバレになるので…(泣))

目的(2)を実現するとき、かなり面白いことになります。たとえば、カバネラが口笛を吹いたシーンでは、私はこう思いました:

「うおお!誰かがリンネはセクシーと思ってる!
 ………
 あれ?ちょっと待て…そうじゃないよね…」

そう!欧米では、前半は上昇調で後半は下降調で鳴らす口笛は魅力的な女性を見て鳴らす口笛なんです!日本と海外では意味が全然違いますね!

そして、更には(1)+(2)を同時に実現しなければならない状況もあるのです! それは何かというと…

もちろん、巧さんの素敵な特徴「コトバ遊び」です!逆転裁判シリーズの翻訳でもそうでしたが、物語の中でとても重要なコトバに限って「なるほど!でもどう翻訳すれば!?」と、途方に暮れさせられるのです(一体どんなコトバかはゲームで見て下さいね!)。きっとこの難問は夢の仕事をする代償なのだと思います。

このタイトルのローカライズで経験のある先輩と一緒に働けたことを光栄に思います。他シリーズで何度かローカライズの経験はありますが、社内のプログラマとデザイナーと直接仕事ができたのは2回目です。たくさんの言語にローカライズすることは一人だけでできません。プロジェクトの成功のために開発チームとローカライズチームのメンバーはすごく大事だと思います。有能な開発の方から外注の翻訳者たち、社内の編集者たち、みんなのおかげで各言語の素晴らしいローカライズができました。竹下さんと巧さんをはじめ、開発チームとローカライズチームの皆さん本当にありがとうございました!

最後に、海外版をプレイする方は少ないかもしれないけど、海外版だけに特別に対応している仕様などを是非試してみてください。今回海外版では、5言語が収録されているので、もし外国語を勉強しているなら、『Ghost Trick: Phantom Detective』で楽しみながら勉強してみませんか? ;)
柔軟性が…何とッ!
このシーンを初めてプレイした時、シャンデリアが外れると彼女がどんな動きをするか知らなかったので、見た瞬間に爆笑しちゃいました。一歩下がるだけと思いましたが、さすがに巧さんのゲームですから、期待以上に面白かったです。彼女のBMI指数は高いですが、柔軟性も高い!

開発後記は毎週金曜日の公開となります。お楽しみに!
《土本学》
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