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【GDC2010】実に6時間も及ぶカットシーンの制作ワークフロー・・・『ファイナルファンタジー13』

ソニー PS3

【GDC2010】実に6時間も及ぶカットシーンの制作ワークフロー・・・『ファイナルファンタジー13』
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北米でも先日発売になり、全世界での出荷本数が500万本に到達したプレイステーション3/Xbox 360『ファイナルファンタジー13』。常に最先端のゲーム作りをしようと取り組む開発チームの事例は非常に興味深いものがあり、今年のGDCでも本セッションを含めて3つの講演が実施されています。

小林功児氏、田中雄介氏


金曜日の午前9時から行われたセッションでスクウェア・エニックスの小林功児氏、田中雄介氏が語ったのは「Real-Time Cutsenes in FINAL FANTASY XIII」(ファイナルファンタジーXIIIにおけるリアルタイムカットシーン)です。

カットシーンとは所謂ムービーシーンです。『FFXIII』には物語の重要性によって4種類のイベントシーンが用意されていて、そのうち最も重要な場面がカットシーンとなり、時間にすると計6時間あります。その制作期間は僅かに16カ月。映画3本分をこの期間で制作するために「後戻りしない」「複数チームが平行に作業できる」ワークフローを構築する必要がありました。一度決定した事項が後で覆らない、そして他のチームの作業状況によってチームが止まらない環境作りが求められました。これが実現できれば、工期の短縮ができ、アーティストの品質改善に割く時間も増やす事が出来ます。

FFXIIIのチーム構成カットシーン制作のワークフロー全体図


非常に大規模になった開発チームは大きく分けて14チームで構成される完全な分業体制です。特にカットシーンに関与するのはカットシーン、VFX、モーションの各チームです。カットシーンの制作は、全体のレイアウト、モーション、VFX、ライティングの4工程から構成されます。

■カットシーンのレイアウト構築

絵コンテを元に仮の動きを入れてプレビズムービーを作成する


ムービーの構成を決めるレイアウト構築は2部構成になります。前半では絵コンテを元にプレビズ(プレビジュアリゼーション=事前に映像で確認できる素材を作る)まで、後半ではプレビズを参考に各チームで素材を用意し映像を仕上げていきます。

シナリオが完成すると、必要なカットシーンを洗い出し、それぞれの絵コンテを制作します。絵コンテは社内にあるストーリーボードセクションが担当します。絵コンテが完成すると「Autodesk MotionBuilder」のストーリー機能を使ってプレビズの作成に入ります。「MotionBuilder」を採用したのは、後にモーションキャプチャーのデータを使用する際の親和性の高さや、64ビットOSに対応することで処理負荷を軽減できたからだということです。

こうして作られるプレビズは、カットシーンの中で各キャラクターがどのような動きをするのか、レイアウトはどうなるのか、といったものを仮に組み上げて、その後の過程の作業見積もりにするもので、社内ではステップ1ムービーと呼んでいたそうです。

入念な事前準備のもと小道具も様々用意モーションキャプチャーを実施


ステップ1ムービーで付けた仮のモーションは全てモーションキャプチャーで収録を行います。モーションキャプチャーは役者の費用など時間とコストがかかる作業なので、収録テイク毎に必要な情報をまとめた資料を用意し、事前の打ち合わせも入念に行われます。また、リアルさを出すための小道具も同時に制作し、ガンなどは重りを入れられる機構になっていたそうです。モーションキャプチャーの現場でもステップ1ムービーを流し、関係者全員のイメージを統一する事になります。

MotionBuilderを使用ステップ2ムービーに実機での確認も行う


モーションキャプチャーが終わると再び「MotionBuilder」にデータを流しこんで、最終的なカット割りを作成します。それを反映した試作ムービーがステップ2ムービーです。それをインハウスの「Crystal Tools」用にコンバートして、実機で動かしたものを関係者がチェックして確定させます。制作工程毎に後戻りさせない仕組みです。ここからはモーションチームとVFXチームが平行して作業を進めます。

■モーションチーム

モーションのワークフロー各工程の人員数2つの過程を同時進行する
様々な要素を統合して形にするボディモーションの調整


モーションチームではステップ2ムービーを元にモーションやフェイシャルの調整を行います。モーションの調整には三たび「MotionBuilder」が使用されました。これまでの同社製の作品には「Autodesk XSI」が使われていましたが、今回は前工程との兼ね合いもあり、乗り換えたそうです。普段使うツールの変更は困難がありますが、ステップ2のデータをそのまま編集できるため、結果的には作業効率は大幅に改善されたとのこと。

人間のキャラクターのモーションは「MotionBuilder」を使ったものの、一方でモンスターのモーションは「XSI」を使用したそうです。これはリグが作成されてなかったからだということです。

フェイシャルは2パターンで制作手動でリップシンク自働ツールで行う


フェイシャルは4種類のイベントシーンのうち、重要性の高いAとBは「XSI」を使ったフルスクラッチで仕上げ、CとDは音素解析を用いた自働リップシンクで制作します。音声収録はゲーム開発の中盤以降に行われる事が多く、それに引きづられてフェイシャルも遅れる傾向にあります。今回は作業を分散するために、モーションキャプチャーのアクターによる仮音声をベースに仮のリップシンクを作成しておいて、完成版の音声が出来た段階で前述の手法で最終形を仕上げるという形をとりました。

音素解析による自働リップシンクは旭化成の開発した「VORERO」というシステムを採用。早口のセリフでブレてしまうなどの課題があったそうですが、「伸びる分野だろうので期待している」とのこと。

キャラクターが動いた際の服や髪の動きはバッチ処理で生成し、破綻する場合にDCCツールで調整したそうです。

■VFXチーム

ビジュアルエフェクトチームでは、プレビズムービーをベースに作業量の見積もりを行います。実際の作業はインハウスの「Crystal Tools」に含まれる「Effect Editor」で制作し、慣れてない開発者でも簡単に複雑なシェーダーが書けるように整備されています。PCで開発しながら、すぐにターゲット機に転送して実機で確認できるようになっています。

■ライティングとポストエフェクト

絵を仕上げる最終段階です。『FFXIII』ではライティングを非常に重視したそうです。そのため、カット単位でキャラ個別に調整。使用したツールがライブエディティングに対応していたので効率よい作業が可能だったそうです。以下に示すのは、処理をする前と後の変化です。

ライティング調整前調整後確認は実機でテレビモニターを使用


ポストフィルターなし被写界深度フィルターグレアフィルター


■リアルタイム表現の可能性

最後に小林氏はリアルタイム表現の可能性について語りました。

近年の技術の進歩はすさまじく、グローバルイルミネーション(GI)も簡略化した形でリアルタイムに表現できるなど、リアルタイムの表現手法も急速に進化しています。「まだまだプリレンダリングとの差は大きいものの、『FFXIII』では良い線まで行けたのでは」。しかし、と田中氏は言います。「これに頼り過ぎればどれも似たような絵作りになってしまう可能性もあります。完全に頼るのではなく、手作りの部分と共存するのが大切なのではないでしょうか」
《土本学》

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