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「功労賞だけどまだまだ現役」宮本茂×河津秋敏・・・メディア芸術祭シンポジウム

文化庁メディア芸術祭で任天堂の宮本茂氏が功労賞を受賞しました。それを記念したシンポジウムが昨日開催されました。

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国立新美術館で2月14日まで、文化庁メディア芸術祭が開催中です。メディアアート、漫画、アニメ、ゲームの4ジャンルを大きく「メディア芸術」として捉え、優れた作品の展示や、アーティストの表彰などを通して、メディア芸術の振興をはかる催しです。

13回目を迎える今年度は、ゲームを含むエンターテイメント部門で『NARUTO-ナルト-ナルティメットストーム』(バンダイナムコゲームス)が優秀賞を受賞し、『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』など16作品が審査委員会推薦作品に選ばれました。会場ではこれらの作品がプレイアブル展示されています。

河津氏宮本氏多くの来場者が詰めかける


また今年は功労賞に任天堂の宮本茂氏が受賞し、5日に記念シンポジウムが開催されました。シンポジウムではエンターテインメント部門主査を務める、スクウェア・エニックスの河津秋敏氏が聞き手として登壇。宮本氏の過去の作品紹介から、ゲーム作りの考え方など、幅広い話題が飛び出しました。

まず受賞の感想として、宮本氏は「功労賞は年配の方がいただくものだが、まだまだ現役のつもりでいる」と、ユーモアを交えながら、ちょっと複雑な気持ちを覗かせました。その一方でゲーム業界を長く見てきた人間として、今後もできるだけ貢献できるように頑張りたいという抱負を示し、感謝の言葉を述べていました。

また河津氏からの「若い人に向けて一言」という質問に対しては「有名になりたいとか、世界に羽ばたきたいなどの憧れを持つことは重要だが、自分の足下を見て、コツコツと作り続けることが大事。それを続けていたら、評価してくれる人が、世界のどこかに必ずいる」と提言。自分もまた、若い頃に東京に憧れて出て行かずに、京都でゲームを作りづけていて本当に良かったと述べ、場所ではなく、個人の価値観や、まなざしが重要だと語りました。
 
そんな宮本氏はゲームデザインについても、「自分がおもしろいと感じる題材を見つけてきて、それを(ビデオゲームというメディアを通して)広く紹介すること」だと説明します。たとえば『スーパーマリオ64』の開発時には、家族で飼っていたハムスターを部屋に離したところ、部屋中を走り回る様が可愛らしく、こんな風にマリオを3Dで走らせて見たかった、というエピソードを紹介しました。また40歳をすぎて水泳を始めたところ、自分の体が毎日変化していくことがおもしろく、体重を量ってグラフをつけはじめたことが、『Wii fit』の開発につながったといいます。

宮本氏は業務用の『ドンキーコング』から最新作『Newスーパーマリオブラザーズ Wii』まで、代表的なタイトルも解説しました。宮本氏はこれらの作品は大きく「2Dゲーム」「3Dゲーム」「DS以降」と3つにわけられると振り返ります。

初めて開発に携わった『ドンキーコング』は、海外の在庫基盤を再利用した「捨てプロジェクト」で、これがかえって良かったと語りました。社内で誰も期待しておらず、自由に作れたことと、作ったゲームがすぐに海外で発売されたためです。初代『スーパーマリオブラザーズ』も当時、社内で「ディスクシステム」の開発が始まっていたため、カートリッジの卒業作のつもりで作ったそうです。ところが、このゲームがヒットしたことで、ファミコンの本格的なブームにつながったと話しました。

ドンキーコングスーパーマリオブラザーズスーパーマリオブラザーズ4


続いて3Dアクションのお手本となった『スーパーマリオ64』では、当時囁かれていた「ゲームクリエイター30代限界説」にふれ、自分も四十路を迎えたことで、クリエイターとして限界ではないかという不安があったそうです。そこでプロデューサー業務のかたわら、久々にディレクターとして、現場に張り付いて作ったというエピソードを披露。結果として大ヒットしたことで、すごく自信になったといいます。

スーパーマリオ64


第3期の例として上げられたのが『Nintendogs』です。宮本氏も「ここから僕はすごく変わります」と自己分析し、ゲームがどんどん複雑になっていく中で、インタラクティブの原点に戻って、ペン一本で遊べるモノを作ったと説明しました。その後も『Wii SPorts』『Wii fit』と、従来にないインターフェースで、世代を超えて楽しめるゲームを作っているのは、よく知られている通りでしょう。『Wii Fit』は現在も世界中で売り上げを伸ばしており、累計出荷台数が2500万台以上になっているとか。世界で最も売れた体重計とのことで、「ちょっと誇りに思っている」と語りました。

Nintendogs


また河津氏から「3Dゲームの『スーパーマリオギャラクシー』の次に、2Dゲームの『Newスーパーマリオブラザーズ Wii』を作った理由は?」と質問されると、「はじめてゲームを遊ぶ人にマリオシリーズを遊んでもらうと、いまだにオリジナルの『スーパーマリオ』が一番おもしろいと言われる」と語り、自分たちがマリオシリーズを3Dゲームにしていく過程で、もともとマリオが持っていた大事なモノが失われていないか、と考えたそうです。この仮説は原点回帰したDS版『Newスーパーマリオブラザーズ』の大ヒットで証明されました。そこで、続くWii版でも2Dスタイルのものをリリース。もっとも、こちらでは4人同時プレイを盛り込むなど、さらに新しいスタイルを提供できたと述べました。

Newマリオ原点


このほか話題はさまざまに広がりましたが、シンポジウムを通してのテーマは、終わってみると「世界中の人に楽しんでもらう作品を作る秘訣は何か」という点にあったように感じられました。実際に宮本氏がこれまで携わってきたゲームは、世界中で性別や世代を超えて親しまれています。このことは功労賞の受賞理由にも「言語や習慣を超えて愛される作品は、メディアアートの一つの理想型」と記されているほどです。そして、これはゲーム業界のみならず、日本のメディア芸術における課題でもあります。

これに対して宮本氏は、冒頭にも記したとおり、さまざまな発言を通して「周りと比較せずに、自分がおもしろいと思ったモノを、素直に作ること」の重要性を語りました。もっとも宮本氏は、そうしたスタイルを貫こうとすると、逆に周りから「それはおかしい」「そんなのはゲームじゃない」など、強い逆風があると言います。とはいえ、すでに世の中にあるゲームと同じモノを作ろうとすると、それより優れた内容に仕上げなければならず、どちらを選んでも大変なのが現実です。

つまり、どっちを選んでも大変なら、前者にエネルギーを注いだ方が、作っていて楽しいし、個々の国の事情を考える必要もなく、世界中でヒットするゲームになる。宮本氏の台詞を借りると「効率が良い」というわけです。また、このことに関係して「日本ではやっているモノと組むと、日本でしか売れない」と釘を刺しました。

このほか現在取り組んでいることとして、DSを街に持ち出して、ゲーム以外の用途に使う「DSパブリックスペース利用」という取り組みを紹介しました。マクドナルドで情報サービスが受けられる「マックでDS」や、美術館での音声ガイド端末への活用などです。また学校の教室で使用する授業支援システム「ニンテンドーDS教室」についても、春から販売が開始されるとのことです。

その上でメディアアートの分野では、ゲームよりもユニークな作品が多いとコメントし、もっとコンテンツの垣根を越えて、得意な要素を出し合い、つながっていきたいとアピールされました。宮本氏は小学生の頃は人形劇の人形を作る人になりたくて、中学生の頃は漫画家に憧れたとか。そのためゲームが漫画やアニメの中に加えられているのは光栄だが、根底に流れているものは同じなので、ゲームに対する固定概念を持たずに、どんどん入ってきてもらえたら、と締めくくられました。

展示会場では手書きの仕様書なども。必見です
《小野憲史》
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