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『ファイナルファンタジーXIII』の美しい描写はこうして実現された〜SIGGRAPH ASIA 2009

ソニー PS3

FF XIII リアルタイムカットシーン・ワークフロー〜FF XIII のカットシーンができるまで〜
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スクウェア・エニックスは横浜パシフィコで開催中のSIGGRAPH ASIA 2009併催イベント「Autodesk Day at SIGGRAPH ASIA 2009」で16日、「FF XIII リアルタイムカットシーン・ワークフロー〜FF XIII のカットシーンができるまで〜」と題した講演を行いました。講演を行ったのは同社デザイナーの田中雄介氏、小林功児氏、吉田光陽氏、村松瑞樹氏の4名です。講演では発売を前日に控えた「FF XIII」のメイキングがいち早く聞けるとあって、500人の事前登録者で埋め尽くされました。


総合司会の田中雄介氏左から田中雄介氏、小林功児氏、吉田光陽氏、村松瑞樹氏会場は500名の関係者で埋まった



周知の通り「FF」シリーズは同社の看板タイトルの一つで、最先端の映像技術を追求することで知られています。特に「XIII」はPS3で初めての「FF」とあって、発売前から高い注目を集めていました。講演ではこの「XIII」のカットシーン作成におけるワークフローやツールが惜しげもなく公開され、会場を埋め尽くした聴衆は、そのレベルの高さに見入っていました。

なお、ここでいうカットシーンとは、1コマずつCGをレンダリングし、1本の動画データにまとめるプリレンダームービーと異なり、あらかじめ用意されたデータをもとに実機上でリアルタイムに表示し、プログラムでカメラやキャラクターなどを操作して、いかにもムービーのように表現するイベントシーンのことです。他に「リアルタイムデモ」などとも呼ばれています。

このうち「FF XIII」では「A:モーションキャプチャ(MC)データを使い、カットシーン班が作成するもの」「B:MCデータを使い企画班が作成するもの」「C:専用手付けモーションを使い、モーション班が作成するもの」「D:汎用モーションを使い、フィールド企画班が作成するもの」の4種類に分類されています。そしてプリレンダームービーが1時間なのに対して、Aだけで6時間分、合計で9時間分のカットシーンが収録されています。今回披露されたのは、このうちAのワークフローです。

もっともカットシーン全体の制作期間は16ヶ月でした。総合司会を務めたモーションデザイナーの田中氏は、「1年半で映画3本分のカットシーンを作れと言われたら、どうしますか?」と語り、決して長い期間ではなかったと振り返りました。そこでワークフローのキーワードとしてあげられたのが「フローの後戻りをしない」「多セクションでの並行作業」です。そして、こうした徹底した分業体制と工程管理は、「FF XIII」に共通してみられた特徴点でもありました。


FF XIIIのカットシーンは4種類に分類カットシーン制作のワークフロー全14セクションに分かれた開発体制



■絵コンテからシーン構築

はじめに小林氏が解説したのが、絵コンテからシーンデータ(モデルデータやテクスチャ、エフェクト、カメラの動きなど、そのカットシーンを構成する上で必要なデータのまとまりのこと)を構築し、実機に実装するまでの一連の流れです。

まずシナリオから絵コンテが作成されると、次にこれを元にPreviz(プレ・ビジュアライゼーション)と呼ばれる動画コンテが作成されます。これは絵コンテの内容をムービーに起こしたもので、動画資料のたたき台になるものです。この段階でのキャラクターモデルは仮に制作されたもので、モーションは社内の汎用モーションデータが用いられました。なおシーン制作にはMotionBuilderを使用しています。開発チームではこれを「Step1映像」と呼ばれていました。この段階では、まだ大まかなものとなっています。


カットシーンの元となる絵コンテMotionBuilderで作成MC収録のために入念な準備



「Step1映像」が完成したら、それに基づいてMC収録の準備が行われます。MC収録現場ではモーションアクターに実際に演技してもらうのですが、その際にStep1映像をプロジェクターで投影して、全体イメージをつかみやすくする工夫がなされました。また、この時にアクターに台詞を喋ってもらい、マイクで音声を収録して、フェイシャルデータ作成用の仮ボイスに活用しています。その後MCデータをもとにシーンデータの土台が作成され、実機データにコンバートされました。コンバートにはMotionBuilderのカスタムプラグインを作成して、自動化されました。このようにして作られたのが「Step2映像」です。

なお「Step2映像」の段階ですでに、カメラの動きや演出意図、シーンの尺数などが決定されています。また台詞もこの段階ですべて決定されている必要がある点がポイントです。フローの逆流につながるため、後から気の利いた台詞を追加・修正するといったことは厳禁でした。以後の作業では、このStep2映像を土台に、さまざまな処理を加えて、見栄えの良い内容にしていきます。


動画コンテ的なStep1映像シーンデータの元となるStep2映像完成したカットシーンの映像



■モーション調整

続いて田中氏がモーションのワークフローについて解説しました。ここで言う「モーション」とは、ボディモーションの細かな調整や、髪やマントなどが風にたなびくシミュレーション、そしてリップシンクを行うフェイシャルという3つの要素があります。なおフェイシャルについては、Step2映像で作られた仮ボイスデータと、声優による本データへの差し替えという2つの段階を経て作られました。そしてボディモーションと仮フェイシャル、シミュレーションと本フェイシャルが、それぞれ平行して制作されました。

こうした分業を可能にしたのが、独自制作されたモーション中間ファイルのアスキーデータ「Miga」です。これは1つのキャラクターモデルに対して、ボディ、フェイシャル、シミュレーションを、それぞれ別々に動かしてチェックできるというものです。そのため1つのモーションに対して、体の動きだけ、口パクだけ、シミュレーションだけ、それぞれの組みあわせ、といった個別の動きをさせられます。これらを個別に調整して、最終的に一つに組みあわせ、完成データにしていったのです。


並行作業で効率化を促進決め手となった「Miga」中間ファイルが膨大に発生



しかし、この弊害として制作段階でのモーション関連ファイル数が膨大になってしまいました。たとえばあるカットシーンでは、30体のキャラクターが登場し、総ファイル数が3675個にも及んでしまったほどです。こうしたアセットデータを管理するのが、独自アセット管理ツール「Negi」です。ただしNegi本体のUIはエクスプローラ風で使い勝手が悪く、カットシーンモーション専用GUIが作られました。しかし、ヒューマンエラーを完全になくすことはできず、今後の課題となりました。

フェイシャルは、前述のカットシーンA、Bでは専用ツールによる手付け作業、C、Dでは音素解析による自動化ツールの組みあわせで作成されています。フェイシャル用のリギングツールは、スラスターの操作で口元の動きや視線の移動などが、直感的に調整できるようになっています。音素認識エンジンには、日本語はNHK技研、英語は旭化成の「VORERO」が用いられました。早口の台詞回しでは口の動きがついていかないことがあるものの、かなり効率化が図れたとのことです。田中氏は今後に大きな可能性が感じられる分野だと語りました。


アセット管理ツール「Neji」音声データのデータベースフェイシャルリギングツール



シミュレーションについては、ツール上で作られた動きと、実機上でリアルタイムに計算された動きが併用されました。前者はデザイナーが一つずつ手で設定するため、狙った画面作りができますが、高コストです。後者では低コストで自然な動きができ、イベント自体にインタラクティブな要素を持たせることもできます。ただし、まだまだ「ビックリするくらい」乏しい表現しかできないのが現状だといいます。

こうした中で解説を担当した村松氏は、開発にあたり「動くべきモノを動かす」ことと「次世代のモーション制作標準規格の検討」が指針に掲げられた、と説明しました。現状は手作業からプロシージャルへの端境期で、作業もハイブリッドなものにせざるを得なかったというわけです。その上で全体としてプロシージャルな方向に向かっていること。そしてデザイナーが物理パラメータになれつつ、セットアップスキルを上げることで、将来の作業形態に自然に移行できるとしました。

実際のシミュレーション作業はSoftimage XSIが使用され、「FFX III」の技術基盤である「Crystal Tools」向けのプラグインが開発されました。さらに事前にイベント単位で物理リグのひな形とモーションを準備することで、できるだけバッチスクリプトで一括計算できるように工夫されています。これにより10カット1000フレームの処理を20分で処理でき、その半分が製品クオリティに達することができ、効率化が図れました。

■VFX

映像に爆発などのエフェクトを加える工程がVFXで、吉田氏から説明が行われました。まずStep1動画を元にVFXコストの見積もりがなされ、次にStep2動画で必要なデータをデータベースに登録して、エフェクトデータの作成が行われていきます。最後にエフェクトデータをシーンデータに実装して、最終出力というのが基本的なワークフローです。

エフェクトの元データとなるテクスチャやモデリングは、PhotoshopやMaya、After Effectで作成されます。次に「Crystal Tools」に内蔵された「EffectEditor」「CharaViewer」「CutEditor」を用いてシーンデータと統合していきます。

「EffectEditor」は爆発などのエフェクトをパラメータ調整で簡単に作成できるツールで、作成したエフェクトは実機上でリアルタイムに出力され、テレビモニタで確認できます。このエフェクトを「CharaViewer」でキャラクターにアタッチしていきます。最後に「CutEditor」でエフェクトデータをシーンに配置して出力します。またプリレンダームービーとカットシーンが融合するようなシーンでは、両者の整合性を取ることも重要なポイントとなります。


「EffectEditor」でエフェクトを作成「CharaViewer」でキャラにアタッチ「CutEditor」でシーンデータに配置


 
■ライティング&ポストエフェクト

最後のパートとなるのがライティングとポストエフェクトです。ライティングとは、その名の通り光線設定で、さまざまな演出効果をもたらします。ポストエフェクトは様々なフィルタや被写界深度などの処理を加えて、映像として完成させる作業のことです。説明を担当した小林氏はハードの進化に伴い、これらが非常に重要になったと語りました。

サンプルデモでも、もとの映像が暗く沈んでいるのに対して、ライティング調整を施した映像は明るくなっています。ポストエフェクトフィルターでは、ライティング調整をしたシーンデータに対して、カラーコレクションフィルターや被写界深度フィルター、グレアフィルターなどを設定して、最終バージョンに仕上げていきます。共に明確な演出意図をもって表現されているのがわかります


ライティングなしライティング調整あり


フィルターなしカラーコレクションフィルターを加味
被写界深度フィルターを加味グレアフィルターを加味


このように、非常に複雑な工程を経て、ようやく一つのカットシーンが完成となります。ポイントはカットシーンはプリレンダームービーと異なり、あらかじめ用意されたデータを元に、実機上でリアルタイムに生成され、出力されるため、さまざまな可能性を秘めているということです。キャラクターが武器や防具を変更した場合でも、プリレンダームービーでは変更がききませんが、カットシーンでは装備に合わせた映像を出力できます。スクリプト制御でプレーヤーが実際に操作できるデモイベントなども、カットシーンに組み込めます。



もっとも、カットシーンはプリレンダームービーと比べて映像的に一段劣るのは致し方ないところ。しかし主要キャラクターが全員そろったカットシーンを見て、田中氏は「カットシーンもここまできた」と感慨深い思いを抱いたとのことでした。最後にStep1映像、Step2映像と同じパートで、完成映像が流されましたが、素人目にはプリレンダームービーと見分けがつかないほどです。田中氏も「ぜひ製品版を購入して、そのクオリティを確認してください」とアピールしていました。

なお、本講演は近く主催のAutodeskのサイトに、ユーザー事例として公開される予定です。
《小野憲史》

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