【DEVELOPER'S TALK】据え置き機から携帯ゲーム機へ~追加要素満載でリメイクされた『ペルソナ3ポータブル』開発陣に聞く TOP >> ゲームビジネス >> 開発

【DEVELOPER'S TALK】据え置き機から携帯ゲーム機へ~追加要素満載でリメイクされた『ペルソナ3ポータブル』開発陣に聞く

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2009年12月16日(水) 21時00分


■ミドルウェアで開発の手間を大幅に軽減

―――PS2の『ペルソナ3』をPSPでリメイクする上で最も大変だったのはどういう点でしたか?

薄田: 一番大きかったのは容量の問題ですね。PS2の『ペルソナ3』が3.4GBくらいだったので、UMDの1.8GBにどう収めるかが悩みの種でした。やり方を変えなければどうしようもない。たくさんのデータを詰め込めば、それなりにロード時間もかかってきます。テンポやレスポンスが悪くなってしまっては携帯機の良さが失われてしまいますので、そこのバランス取りに一番苦労しました。

―――具体的にどのような解決法を取られたのでしょうか?

薄田: 頑張って3.4GBを1.8GBに収めるというよりは、考え方を変えて開発しましたね。具体的な個所では、3Dだった日常生活のフィールド部分が2Dになっています。ペルソナ3はイベントが大量にあって、そこに登場するキャラも出るのデータ量が膨大でした。3D部分には大きな容量を使いロード時間もネックになっていたので、最初にそこに手を入れることにしました。

―――なるほど。PS2とPSPでは画面の比率が異なるという問題もありますよね

薄田: そこも苦労しました。インタフェースは全て作り直して、配置し直しました。『ペルソナ3』ではFlashを使ってインタフェースを作っていたのですが、PSPで再現するのはさすがに厳しいという事情もありました。もちろん、同じような印象で見えるように調整はしています。ゲーム画面も横長になることで、前は見えていなかった部分が見えるために、処理が重くなってしまうとか、見せたくない部分まで見えてしまうというような調整の必要な個所は沢山ありましたね。カメラを調整したり、配置を変更したり、もちろんグラフィックデータにもかなり手を入れました。

画面比率に合わせて画面を調整


―――今回はペルソナシリーズとして初めて「ファイルマジックPRO(※)」と「CRI ADX(※)」を導入いただきました

三輪氏
三輪: 『ペルソナ3』『4』では音楽再生に「ADX」とファイルシステムに「ROFS(※)」、それとムービー再生に「Sofdec(※)」を使っていました。今回PSPで開発するにあたって、かなり高速化をしないといけないと思っていたのですが、自分たちで行うには限界を感じていたんです。そんな折に「ファイルマジックPRO」という新製品が登場し、ツール類のサポートも良いと聞いて乗り換えることにしたんです。

※はすべてCRIが提供するミドルウェア。
ファイルマジックPRO・・・ファイル圧縮&パッキングシステム。圧縮、パッキング、最適配置などでディスクメディアのロード時間を約1/2にまで短縮する。
CRI ADX・・・高音質マルチストリーム音声再生システム。
・CRI ROFS・・・仮想ディスクシステム。現在は提供を終了し、ファイルマジックPROに統合されている。
CRI Sofdec・・・高画質・高機能ムービー再生システム。


―――ADX+ROFSという組み合わせからADX+ファイルマジックPROという組み合わせへの切り替えは上手く行ったのでしょうか?

三輪: そこは遠山という人間が担当していたのですが、関数を置き換えるだけで対応できたので非常に楽でしたね。PS2で再生していたデータがそのままPSPで再生できてしまいました。それが本当に助かりました。あれがなければ『ペルソナ3ポータブル』は完成しなかったと言ってもいいくらいです。ほぼロスなく、PS2のデータを流用できたので、助かりました。

土屋: 本来はPSP版ADXが対応していない周波数だという事に気付かずPS2用のADXデータをそのまま流用したら一見普通に音が出てしまい、それが稀に発生する謎のノイズの原因だと気付くまで随分悩みました。最終的に音声データはPSP版ADXの仕様に合わせて全てエンコードし直しています。

三輪: それでも所定の関数をPSP用のものに置き換えるだけで、ハードが異なるのに同じデータが使えるというのは大きなメリットでしたね。

―――よく喋るゲームですよね。ボイスは何通りくらいになるんでしょうか?

土屋: 掛け声やボツになったものも含めてボイスのファイル数が1万2000個でしたね。女性主人公が追加されたので増えていて、『4』とほぼ同等になっています。

薄田: 男女の主人公が遊べるようになって、選んだ主人公によってイベントの掛け合いも変わってきます。台本も大変なことになりました(笑)。

―――音声データはすべて新たに録りおろしたものなのでしょうか?

薄田: 女性主人公で追加された部分は全て新たに収録しています。もともとのストーリー部分はPS2版『ペルソナ3』で使った音声データを流用しているものもありますが、一部録りなおしているものもあります。

―――『ペルソナ3』は2006年の発売でしたが、声優さんの声が変わってしまう場合もあったのでは?

薄田: そこも苦労しましたね。やはり新旧の声を並べてしまうと差が分かってしまう部分もあったので、ちょっと間を開けて使ったり、組み替えたり、工夫しています。

―――音質はどのくらいに設定されていたのですか?

土屋氏
土屋: 収録時間としてはPS2とほぼ変わっていないです。PSP版ADXの対応周波数に合わせてエンコードし直しましたが、PS2版とほぼ同等の音質となっています。

土屋: また、細かい部品をたくさん用意しておき、それをシーケンス(MIDI)データで組み合わせて複雑な効果音を作っていたPS2版に対し、PSP版ではファイル数削減や処理負荷軽減のため、ひとつの効果音につきひとつの波形データに一本化し、シーケンスデータは使用していません。

―――UMDディスク容量の内訳はどのような構成だったのでしょうか?

三輪氏
三輪: 全体の使用容量は1.1GB程度です。音楽やボイスが約400MB、その他のデータが約560MB、インストール用データが200MB程度です。これらはすべて圧縮をかけた後のデータ容量です。音データの圧縮にはCRI ADX、それ以外のデータ圧縮にはファイルマジックPROを利用しています。特にファイルマジックPROの圧縮に助けられました。音以外のデータは、圧縮前は870MBだったのが560MBにまで圧縮できました。さらにインストール用のデータも500MB程度あったのですが、圧縮すると約200MBまで減りました。もしファイルマジックPROがなければ到底おさまり切らなかったでしょうね。

―――データインストールをすると体感のロード時間は変わりますか?

三輪: インストールすればだいぶ変わります。ただ開発中から、データインストールしなくても快適に遊べるゲームを目指して作りましたので、ロード時間は気にならないレベルにはなっていると思います。インターネットなどの評判をみると良い評価をいただいているようなので、頑張ったかいがありましたね。

―――インストールされるのはどういったデータになるのでしょうか

三輪: いつ呼ばれるか分からない、瞬発力のいるデータはインストールしています。例えば、キャラクターのバストアップ画像や日常のフィールド、バトルダンジョンなどです。ボイスやBGMなどはUMDからストリームさせています。

―――ロード時間の短縮という部分で工夫した部分はありますか?

三輪: 非常に基礎的な部分ですが、ファイルマジックPROのディスクレイアウトを調整する機能が非常にやりやすくて、それで配置を整理したというのが一番です。グループ化(※)して連続で読みだすファイルをまとめて読み込めるように配置を工夫しました。2秒かかっていたロードが1秒を切るようになったので、効果は大きかったですね。

※グループ化・・・「ファイルマジックPRO」に搭載されている、複数のファイルをグループという定義でまとめる機能。グループ単位での読み込みが可能で、同じグループのファイルは自動的に近くに配置されるため、シークを減らし読み込み時間を大幅に短縮できる。

―――ファイルマジックPROを使う前はどのように行っていたのでしょうか?

三輪: 以前使っていたROFSではディレクトリ単位でなるべく近くなるようにデータを配置していましたが、ファイルマジックPROではファイル単位で好きなようにグループ化できるので、とても楽になりました。例えばBGMは、バトル、フィールド、イベント、日常の4つのカテゴリに分けて、それぞれの近くに関連するデータを配置しています。バトルのBGMは、スキルのデータの近くに配置するという風ですね。それだけでも相当変わりますね。

―――メモリースティックからのデータ読み込みもファイルマジックPROの機能を使われたのでしょうか?

三輪: そうですね。ダブルバインド機能(※)を使うだけで実装できたので、あまり苦労はありませんでしたね。メモリースティックからデータが読めなかった場合などの対処などは全てファイルマジックPROに任せられるので、そこも助かりましたね。

※ダブルバインド機能・・・ファイルマジックPROに搭載されている機能。データの読み込み先を複数設定し、設定する優先順位によって自動で切り替えることができる。例えばメモリースティックからの読み込みが失敗した場合に、読み込み先を自動でUMDに切り替えデータを読み込み続けることができる。

―――今回はダウンロード版もありますね

薄田: 実は当初はUMDのみしか考えていなくて、ちょうどPSP goが出るタイミングでのリリースになったので、後から急きょ作ることになったんです。ダウンロード版を作ること自体はそう大変ではないのですが、デバッグの手間が単純に倍になります。それに主人公の男女、難易度の5段階、データインストールまで考えるとパターンが何通りにもなって、本当に苦労しましたね。

薄田: UMD版もダウンロード版もあらゆることを警戒しながら、既に経験のある人の話を聞きながら作っていきましたね。



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(Article written by 土本学 / Mr.Cube)


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