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【CEDEC 2009】iPhoneで精力的にゲームをリリース・・・ゼペット宮川氏の語る「独力セルフプロデュースの可能性」

今年のCEDECで特徴的だったのが、参加者のiPhone所有率の高さです。

ゲームビジネス 開発
【CEDEC 2009】iPhoneで精力的にゲームをリリース・・・ゼペット宮川氏の語る「独力セルフプロデュースの可能性」
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今年のCEDECで特徴的だったのが、参加者のiPhone所有率の高さです。

「セルフプロデュース 独力開発、独力セルフプロデュースの可能性」の講演者、ゼペットの宮川義之さんも、iPhoneに魅力を感じてスピンアウトし、ベンチャーを立ち上げて参入した一人。会場では『iNinja』『iYamato』にまつわる体験談や、新作『iCar Shoot』の発表も行われました。

ゼペット 代表取締役 宮川義之さん昨年12月に起業後、精力的にアプリをリリースiMacを購入し、iPhone開発に乗り出した

もともとスクウェア・エニックスのプログラマーとして『聖剣伝説2』『ファイナルファンタジーXI』などの開発に携わってきた宮川さん。iPhoneのムーブメントに押されるように独立、起業したのは昨年の12月でした。

第1作の手裏剣アクション『iNinja』はゲームカテゴリで2位を獲得。フィールドシステムと共同開発した『蛍』はライフスタイルカテゴリで1位を獲得するなど、高く評価されています。『iYamato』は有料版が約2万本、無料版もあわせると10万本のダウンロードを達成しました。しかし、残念ながら非常に参入障壁が低く、競争も激しいため、思ったほどには儲かっていないと、頭をかいていました。

ともあれ、まずはiMacを購入し、Apple iPhone Developer Programに参加して、アプリ開発の勉強を始めた宮川さん。第一印象は「ゲームハードに比べて、ドキュメントが非常に多かった」ことでした。「洗練されたライブラリがたくさんあるので、快適なアプリが作れるが、そのぶん勉強量が多かった」とのこと。まずはフリック操作を使った「おはじき」アプリを作成し、そこから『iNinja』へと進んでいきました。

ちなみに『iNinja』ではゲームエンジンに「Cocos2d」を採用しているそうです。宮川さん曰く、これは「サンプルをベースに年賀状を作るようなもの」だとか。Cocos2dではソースも公開されており、ゼロから作るよりも不都合に感じる部分は自分で直して、コミュニティに還元する方が早いとのことでした。なおライセンスはBSDベースで、ソースコードの公開義務がないが、Donation(寄付)の話がコミュニティでは盛んとのこと。オンラインランキング機能もあり、定番エンジンの一つで、お勧めとのことでした。

おはじきアプリを作り、iNinjaをリリースゲームエンジンにはOCOS20を採用プロトタイプを経て製品版へ

しかし、完成した『iNinja』の配信を開始したところ、いきなり国内ランキングで90位と低迷し、すぐい98位に落ちてしまいます。遅まきながらプロモーションの重要性について考え始めた宮川さんは、他の人気アプリを研究した結果、どれもムービーを効果的に使っていることに気づきました。そこで向かった先はアップルストアの無料ワークショップ。予約が殺到する中、なんとか潜り込み、動画編集ツール「Final Cut Pro」の使い方を学習。知人の役者サンに手伝ってもらい、紹介ムービーを作成しました。

ところがムービーをアップしたものの、あまり流れは変わりませんでした。自分なりに考えていたセオリーをやり尽くしたつもりだったので、頭を抱えたと言います。

ここで宮川さんはふと、iTunesの説明文章がそっけなさすぎるのでは・・・と考え、より詳細な内容に書き換えました。またトップのスクリーンショットをゲーム画面から、萌え風のタイトル画面に変更しました。こうした細かい修正を続けた結果、次第にダウンロード数が増え、ユーザーレビューが掲載され始めました。そこからムービーが再生されるようになり、さらにダウンロード数が増え・・・と好循環が始まり、最終的にランキング2位を獲得。有料版も1万本ダウンロードを達成しました。しかし開発には3ヶ月がかかっており、うま味がなかったのも事実でした。

実は『iNinja』は全30ステージあり、セーブ機能や対戦機能も盛り込むなど、かなりのボリュームとなっています。しかし、こうした要素が本当に必要だったのか、後になって疑問に思えたそうです。同じくらいの売り上げなら2週間で作りたいとも続けます。そこで次回作では、「2週間限定で作れるもの」で、iPhoneの主要ユーザーである30代後半の男性を狙い撃ちする企画が立てられました。それが第2段『iYamato』でしたが、実はプロトタイプでは戦艦大和は登場しませんでした。単に高射砲で敵機を撃ち落とすゲームだったのです。

これが戦艦大和になったのは、Twitterで『iNinja』をプレイしたユーザーからメッセージをもらったことがきっかけ。たまたまグラフィッカーだったことから方針が変わり、戦艦大和で敵機を撃墜するゲームになったのでした。このように小回りがききやすいのが、少人数開発の長所だと宮川さんは語ります。2週間という短期間でプロジェクトを終わらせるためには、トラブルの発生要因を減らすことが重要で、そのためには開発スタッフの総数を減らすことが重要。リセットして方向転換をするのも容易というわけです。

もっとも、プロモーションが重要なことは前作で証明済みです。そこで宮川さんは、6月にアメリカで開催されたWorldwide Developers Conference 2009へと向かいました。そこでプレイアブルデモを起動したiPhoneを首から提げ、プレスを含めたパーティの参加者に遊んでもらったのです。さらにMac Bookを会場に持ち込み、彼らが遊ぶ姿を肩越しに観察して、遊びにくい点をその場で改善していきました。こうした努力の結果、アプリのリリース時に全世界のウェブメディアで『iYamato』が取り上げられ、効果的なスタートを切ることができました。

高射砲ゲームから戦艦大和へWWDCでiPhoneをぶら下げて宣伝全世界のウェブメディアに紹介された

そんな宮川さんの最新作が、スーパーカー消しゴムを飛ばしをモチーフにした、新感覚のレースゲーム『iCarShoot』です(ティザームービー)。iPhoneのカメラで撮った写真をテクスチャにして車体に貼り付け、オリジナルカーも作れます。対戦レースで相手の車を奪えるなどの要素も盛り込みました。さらにリリース後は、車やコースなどの追加コンテンツを配信するサービスも予定しているとのこと。なお本作は音楽アプリ『NEWTONICA』をリリースしたRoute24の西健一さんとの共同開発で、ゲームエンジンには「Unity」が使われています。

スーパーカー消しゴム飛ばしがモチーフの新作「iCarShoot」

写真をテクスチャに張れるゲームエンジンにはUnityを採用

宮川さんはゲーム開発について、「以前は資金力ありきで、数多くの人を雇えるか否かが、ゲーム開発の決め手だった。しかしiPhoneアプリではアイディアが重要で、それを人に伝えられるかの方が重要だ」と語りました。ただし、iPhoneアプリのディベロッパーの多くはベンチャーなので信用がありません。そのためにもアイディアと、納得のいく計画が重要だと言います。ギャランティの分配なども最初にきちんと決めておくことが重要だと指摘しました。
廉価でゲーム開発が可能だ開発環境やサポートが充実している市場規模から大手は参入しづらい

最後に宮川さんは、iPhoneアプリの開発に必要な手順を語りました。まずアイディアを思いついたら、Macを購入し、Apple iPhone Developer Programに登録して、ツールの使い方はアップルストアの無料ワークショップで学習する。必要な情報はインターネットで検索する。そしてゲームを作ったら、動画共有サイトなどでプロモーションをする。その結果、なにかしら共感を得てくれる人が集まる。それを元手に広げていく・・・というサイクルです。日本には優秀でエネルギーを持った人がたくさん存在し、環境が充実しているので、やる気があればすぐにできる。一緒にiPhoneアプリを盛り上げていきましょう、と呼びかけて、講演を締めくくりました。
《小野憲史》
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