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【CEDEC 2009】海外重視でクローズアップされる"ローカライズ"~各社が事例を基に議論

ゲームビジネス 開発

【CEDEC 2009】海外重視でクローズアップされる
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大手パブリッシャーが海外重視策をとる中で、否応なしにクローズアップされているのがローカライズの問題です。

中でもメニュー画面をはじめとしたUIのテキスト多言語化は、ゲームの遊びやすさを左右する上で、大きなポイントとなります。一方で現世代機では内容も複雑になり、十カ国語以上に対応する例も珍しくありません。

ラウンドテーブル「多言語対応におけるGUIノウハウの共有」では、この「古くて新しい」問題が2コマ連続で議論されました。ケーススタディは『ディシジア ファイナルファンタジー』(スクウェア・エニックス)、『ワールドサッカー ウイニングイレブン2010』(コナミデジタルエンタテインメント)、『NARUTO-ナルト-ナルティメットストーム』(バンダイナムコゲームス/開発:サイバーコネクトツー)の3作です。

メイン司会を担当したのは、スクエニのUIデザイナー、栗城桂子さんです。これにローカライゼーション・コーディネーターの山本苗麻さん、そしてプログラマーの森高司さんが、それぞれの立場から話を交えつつ、多面的な議論が展開されました。

座席がほぼ埋め尽くされ、関心の高さがうかがえたスクエニの山本苗麻さん(左)と栗城桂子さんスクエニの森高司さん

日本語版に続いて、北米版、欧州版の開発がスタートした『ディシジアFF』。対応言語は7言語で、同社で初めてロシア語版も加わりました。また従来まではローカライズの後に海外版の追加仕様を盛り込む例が多かったのに対して、今回はより海外市場を重視した結果、仕様追加とローカライズ作業の並行作業も行われました。

まず栗城さんはデザイナーの立場から、PSPのフォントライブラリの活用や、ラインチェックツールの導入によるコスト削減を上げました。これは翻訳者がエクセル上で、翻訳文のオーバーフロー(文字のはみ出し)を手軽にチェックできるというものです。これにより実機環境がなくても作業が進められるようになります。

一方問題点として、グラフィックフォントを多用する結果となり、言語ごとの差し替え作業が大変だったこと。ラインチェックツールとメニュー画面の連動機能がなく、オーバーフローのバグチェックにコストがかかったこと。SCEA、SCEEのTRC判断基準の情報がスクエニ側で不足していたため、特にボタン周りの問題が最終段階で多発した、などが上げられました。

その上で今後の課題として、グラフィックフォントをフォントテーブルで管理したり、メニューの表示エリアなどの情報を取得して、ラインチェックツールで自動反映できるような環境を整えたいとのことでした。これらは現在開発中のFlashによるUIツールに機能を盛り込むことが検討されています。さらに日本語版の開発初期段階からローカライズチームと情報を共有し、問題を初期段階で解決できるフローの構築などを上げました。

PSPフォントライブラリを利用ラインチェッカーの導入グラフィックフォントがネック
さまざまな問題点開発との情報共有が重要Flashによるツールで対応

一方ロシア語対応については、スクエニ側にロシア語の翻訳体制がなかったことが課題となりました。翻訳とQAはSCEEが対応したため、作業自体はスムーズに進んだのですが、バランスの良いキリル文字の選定ができなかったり、SCEEとスクエニ側でQA体制がかみあわず、作業フローに混乱が生じた、などです。

続いて山本さんからは、開発側がメニューレイアウトを柔軟に変更してくれたため、翻訳のクオリティを下げずに済んだ点が語られました。ただし、これに伴い情報量が増加したため、開発後半で情報伝達フローが混乱したこと。翻訳者のヒューマンエラーの対応に追われたこと。さらには外注翻訳者が多い関係上、翻訳時に実機環境がない場合が多く、総じて翻訳調整コストが増加しがちだったこと、などが課題としてあげられました。なお、同社では今後ロシア語へのローカライズも視野に入れた体制を進めるとのことです。

最後に森さんから、これらの体制作りが語られました。森さんはラインチェックツールを作るのは容易だが、それをどのようにメニューの各情報と同期させるかがポイントだと指摘しました。もっとも今作では時間が少なかったことと、自分自身で実機確認すれば良いという甘い考えもあり、最終的にPCと実機での二段階チェックになったとのことです。そのため前述のように情報が混乱したこと。またグラフィックフォントが例外処理となり、最終確認が大変だったとのことでした。

ロシア語の翻訳はSCEEが担当開発後半で問題が発生共通ROMとUI切り替えで効率化

このほか全言語共通ROMで開発し、言語依存部分をデータ化、プログラムを共通バイナリにすることで、ROM作成などの手間を省く工夫がなされました。またテキスト部分だけでなく、レイアウトデータ自体も言語ごとに切り替えて読み込み、表示できるように設計がなされました。これによって文字調整によるコストが削減でき、ローカライズの品質が上がったとのことでした。

「ウイイレ2010」ローカライズチーム

続いての事例は『ウイイレ2010』です。本作は6機種(PS3/Xbox360/Windows/Wii/PS2/PSP)、13言語で、文字総数は約18万ワード、翻訳期間は半年にも及びました。しかも本シリーズの特徴として、海外版が先に発売されるため、開発と翻訳を同時並行で行う必要があります。セッションでは、それゆえの苦労も語られました。

ローカライズの手順としては、「1:日本語をベースに仕様作成」「2:仮英語版を作成し、デザインと表示確認」「3:翻訳発注と反映」「4:ローカライズチェック用のビルド作成」「5:ネイティブチェックと反映」「6:修正確認」「7:マスターチェック対応」「8:マスターアップ」となります。

中でもポイントが、日本語版に続いて英語版を社内で作成し、それをもとに各国語版を作成している点です。一時翻訳のクオリティを上げることが、多言語展開時のクオリティアップとリスク低減のために重要だとされました。

6機種で全13言語に対応ローカライズのプロセス英語版は社内で作成

このほか文字列編集に特化したエクセルマクロの開発を行い、時間節約やヒューマンエラーの回避を行っていること。ローカライズチェック用に画面遷移せず、UIを全言語に切り替えられるシステムをプログラム側で実現することで、実機での表示チェックにかかる時間を節約している点などが上げられました。

ただし問題点として「翻訳中に仕様が変わるため、翻訳完了後のマージ作業が必要になる」「文字列を縮小して表示しており、文字つぶれが発生する箇所がある」「テクスチャ(グラフィックテキスト)を使用している箇所が繁雑」「容量の問題からマスターROMを複数用意せざるを得ない」などがあるそうです。

言語の増加で問題が拡大エクセルからの脱却もめざす

そのため今後は「表示領域やフォント、アセット管理の効率化」「テクスチャでデータを持たないようにする」「翻訳会社とのデータ共有の推進」「各地域でのTRC対応の体制強化」「クオリティチェックの向上」などに取り組みたいとのことです。特に社内にネイティブが存在しないマイナー言語については、翻訳のクオリティ評価が難しい点がネックだが、できるだけ解消してきたいとのことでした。

サイバーコネクトツーの面

上記2社が主に効率化の側面からの議論だったのに対して、文化的な意味合いの強化という点でのケーススタディとなったのが、『NARUTO』のローカライズ事例です。本作はPS3で1月にバンダイナムコゲームスから発売された対戦アクションですが、実はもともと北米、欧州向けに開発が進み、途中で急遽日本語版の発売が決まった経緯がありました。結果として、対応言語は全6言語となっています。

これまでの講演にもあったとおり、ローカライズ作業の効率化でネックとなるのが、テキスト管理が難しいグラフィックフォント(テクスチャ)部分の処理です。効率化の上では文字表現は少なく、テクスチャもシンプルな方が楽ですが、これがタイトルの魅力を削ぐ恐れもあります。そのため本作ではモード選択などで、手書き文字(筆文字)表現が用いられました。また単語の先頭文字のみを大きめにするなど、抑揚のついたテキスト表現も行われました。

これらは手描きでフォントを作成し、フォトショップなどで組み合わせて作成していったそうです。登場する25キャラクターにつき、それぞれ勝利画面、キャラ選択画面、バトル画面中のゲージの名前表記などを言語ごとに用意した結果、グラフィックフォントが全450ファイルにもなりました。しかも文字間などを手作業で調整した結果、作業コストが膨大になったそうです。もっとも「一枚絵での文字表現は避けられない道」とのことで、フォントライブラリの活用などで、より効率化を進めたいとのことでした。

手描きの筆文字表現6カ国語で用意原作への思い入れを反映
抑揚文字も活用テクスチャ活用のために

ラウンドテーブルではこのほか、SDテレビへの対応や各種フォントの活用、UIデザイナーの醍醐味などについても議論が交わされました。ある出席者からは、UIはきちんとできていて当たり前で、あまり評価されない部分もあるが、ゲーム全体の仕様に大きくかかわっており、キャリアパスの選択肢が多彩である、といった考えが示されました。仕様変更に振り回されるのは運命で、自分も企画に積極的にかかわる意気込みが必要、などの発言もありました。

また他の出席者からは、UIデザイナーはディレクター的な視点が要求され、ディレクターと二人三脚で仕事を進めていくポジションであるというように、業界的な認知を深めていくべきなどの発言がなされました。このほか海外ユーザーに自然に受け入れてもらえるUIをデザインするために、各市場の子会社や販売店などと、より積極的な意見交換が必要だ、などの意見も聞かれました。
《小野憲史》

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