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【GDC08】岡本吉起氏のゲームデザイン哲学のキーワードは「結合」「分離」「調整」

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【GDC08】岡本吉起氏のゲームデザイン哲学のキーワードは「結合」「分離」「調整」
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米サンフランシスコで開催されたGDCで21日(現地時間)、ゲームリパブリック代表取締役社長の岡本吉起氏が「改造という創造」と題した講演を行い、開発に携わったゲーム開発のエピソードについて、ユーモアを交えて語りながら、自身のゲームデザイン哲学を「結合」「分離」「調整」という3つのキーワードで説明しました。

ゲームリパブリック代表取締役社長 岡本吉起氏


岡本氏は元カプコン専務取締役として『ストリートファイターII』『バイオハザード』シリーズをプロデュースするなど、ゲームファンに著名なクリエイターです。2003年に退社後はゲームリパブリックを設立し、SCEから発売された「GENJI」シリーズや、『ブレイブストーリー新たなる旅人』などの開発を担当しています。

岡本氏は初めに「ゲームは技術的進化を伴って発展するため、その最先端を走れば大きなビジネスチャンスに結びつきますが、僕はあまり得意ではありません」と切り出し、既存のゲームや他のジャンルの娯楽作品から可能性のあるものを選択し、改造することで、別の商品に変えていくのが自身の手法だと続けました。そして改造には大きく、複数の既存商品の要素を組みあわせる「結合」、既存商品から何かの要素を削る「分離」、既存商品のクオリティを上げる「調整」という3つの手法があると説明しました。

「改造」には「結合」「分離」「調整」の3つの手法がある


この「改造」の代表例に挙げられたのが映画「スター・ウォーズ」です。「スター・ウォーズ」はアーサー王伝説(出生の秘密・剣を得る・老人の導き)、フラッシュ・ゴードン(冒険活劇・動く悪の星に乗り込む・友好的異星人)、隠し砦の三悪人(チャンバラ・凸凹コンビ)など、さまざまな既存商品の要素を「結合」して作り上げられています。岡本氏は、ここで元になった要素がどれも古く、商業的に価値が低いものばかりだったこと。しかし、それらを大量に「結合」することで、まったく新しい商品を作り上げることに成功した点を指摘しました。

映画「スター・ウォーズ」はさまざまなヒット作の「結合」でできている


続いて例に挙げられたのが『バイオハザード』です。岡本氏は「初代『バイオハザード』については、完成直前に僕の管理下となったので、ほとんど関与していないのですが」と前置きし、このゲームが「スウィートホーム」の恐怖感や脱出という要素、「アローン・イン・ザ・ダーク」のインターフェースや恐怖感、映画「ゾンビ」のモンスターといった要素の「結合」で作られたタイトルだと解説しました。そして、これに『バイオハザード2』でストーリーが「調整」されたこと。さらに恐怖が「分離」され、爽快感と極端なキャラクターが「調整」されたものが『デビルメイクライ』。チャンバラ・伝奇性・有名俳優が「調整」され、恐怖が「分離」したものが「鬼武者」であると解説しました。また異なるゲーム性のゲームであっても、同じインターフェースを踏襲することで、開発コストが圧縮され、ユーザーの負担も減る点について補足しました。

「バイオハザード」から「2」そして「デビル」「鬼武者」への進化


次に岡本氏が示したのが、コナミ時代にゲームデザインに参加した『タイムパイロット』『ジャイラス』です。岡本氏は『タイムパイロット』は、『ボスコニアン』の8方向スクロールという制限を、32方向スクロールに「調整」することで生まれたゲームであること。『ジャイラス』が『ギャラガ』の水平方向の動きでは、自機がステージの端に追いつめられて撃破されてしまうため、円周という端のないステージに「調整」したものが『ジャイラス』であると示しました。しかし『ジャイラス』では、これによって「敵に自機を捕獲させて、奪い返す行為が面倒に感じられるようになってしまった」として、元の『ギャラガ』の長所を逆に消してしまった、とコメントしました。

ナムコの名作タイトルを「改造」して生まれたゲームの例


続いて紹介されたのが、格闘ゲームブームを作り出した『ストリートファイターII』です。本作は前作『ストリートファイター』の「圧力感知ボタンを押して、離した時に技が発動する」という入力方法を見直して「ボタンを押した瞬間に技が発動する」ように修正し、対戦相手のキャラクターがランダムに登場するなどの入念な調整を行い、グラフィックのクオリティ向上という「調整」を行った一方で、元のゲームの「圧力感知ボタン」というギミックを「分離」してデザインされました。さらに、主人公よりも脇役の方が派手で個性的である、という漫画やアニメの方法論を参照して、「ドラゴンボール」など、さまざまな格闘・対決漫画の要素を必殺技やキャラクターのデザインに「結合」して作られています。

「ストリートファイターII」は「I」を徹底的に分析し、「改造」することで生まれた


岡本氏は、このように「改造」をベースに新規タイトルを企画する利点として、開発チームへの説明が容易でイメージが共有しやすい点と、ユーザーに遊び方を想像させやすいという2点を指摘します。極端な例を上げれば、「AでBでCで…」と特徴を列挙するよりも、一言「**のような」と説明する方が端的に伝わります。まったく新しいアイディアほど、相手の頭にある知識を元に説明した方が、わかりやすいのです。また元のタイトルと比較することで、新しさやギャップを評価しやすい点もあるとコメントしました。ユーザーは新規性を求める一方で、保守的な部分もあるため、両者のバランスを保つことが重要だが、この差を客観的に示すことが容易だというわけです。

「改造」を意識する上で得られるメリット


また岡本氏は同じジャンルで進化を繰り返していくと、ゲームが次第に複雑になっていき、市場が狭まっていくと指摘しました。この時に重要なのが、「調整」によって複雑化を避け、純粋にゲームのクオリティを向上させることや、「分離」によって複雑化したゲームを単純化し、より多くの市場を狙うテクニックがあると解説しました。WiiやニンテンドーDS、携帯電話ゲームのヒットも、この「分離」によって複雑化したゲームを単純化することに成功したからだと分析しました。

「楽しさ」は常に飽きられ、複雑化する運命にあるので、常に回帰する動きが必要


最後に岡本氏はゲーム開発は集団作業であることに触れ、開発チームを構成する個々の才能をうまく組み合わせて、最大の効果を狙う「才能の相互補完」について解説しました。『ストリートファイターII』については、ゲームデザインとディレクションが「NIN NIN」こと西谷亮氏。アートディレクターが「AKIMAN」こと安田朗氏。チーフプログラマーが上山真一氏。そしてプロデューサーが岡本吉起氏となっていました。岡本氏自らが「天才」と称する西谷氏と安田氏の尖った才能を上山氏が下支えし、岡本氏が一歩引いた視点から監視し、軌道修正していくことで、『ストリートファイターII』は希代の大ヒットタイトルになったというわけです。

適切なチーム編成による「才能の相互補完」がヒット作を生む


本講演に先立ち、岡本氏は「今日お話する内容に、基本的に新しいことは何もありません」と前置きしました。しかし、その内容は岡本氏がこれまで経験によって培ってきたノウハウを整理し、体系化した「ゲームデザインの教科書」とでも言える内容でした。GDCの目的の一つは、ゲームクリエイターの知識や経験を共有することで、「車輪の再発明」を避ける点にあります。本講演はまさに「日本的なゲームデザイン手法」を海外、そして若手のクリエイターに示した点で、優れてGDC的な講演だったと言えるでしょう。
《小野憲史》

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