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【TGS2007】「『痛車』は想定外だった」コ・フェスタ フォーラム in TGS2007

東京ゲームショウの開催にあわせて21日、「コ・フェスタ フォーラム in TGS2007」が開催され、ゲームを中心としたコンテンツビジネスに関する国際カンファレンスが3件開催された。

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東京ゲームショウの開催にあわせて21日、「コ・フェスタ フォーラム in TGS2007」が開催され、ゲームを中心としたコンテンツビジネスに関する国際カンファレンスが3件開催された。

「コ・フェスタ」は「JAPAN国際コンテンツフェスティバル」の略称で、東京ゲームショウをはじめ、例年秋に開催されるゲーム、漫画、アニメ、映画などの各種イベントを連携して開催する、世界最大規模の統合的コンテンツフェスティバルのこと。経済産業省の旗振りで本年より始まったもので、今回の「コ・フェスタ フォーラム in TGS2007」も、その一環という位置づけだ。

本日1回目のカンファレンスとなる「インターナショナルセッション」では、「Xbox360の今後の方向性とハードの機能を生かした大型主要タイトルの展開事例」として、マイクロソフト・ゲームスタジオ発売の主要タイトルにかかわる3名の開発者が登壇し、ゲームとコミュニティのあり方などについて講演を行った。モデレータはIGDA日本代表の新清士氏。

IGDA日本代表 新清士氏


まず登壇したのは、マイクロソフト・ゲームスタジオのゼネラルマネージャー、フィル・スペンサー氏。スペンサー氏はXbox360の『PGR3 -プロジェクト ゴッサム レーシング-』をはじめ、数多くのファーストパーティタイトルの開発に携わっている。スペンサー氏はペイント機能で一躍注目を集めたドライブゲーム『Forza Motorsport 2』(Forza2)を例にとりながら、マイクロソフト・ゲームスタジオとしての、ゲームコミュニティに対する方向性についてプレゼンを行った。

マイクロソフト・ゲームスタジオ フィル・スペンサー氏


ゲーム業界におけるマイクロソフトとは、スペンサー氏が入社した1988年当時は、PC向けのゲームパブリッシャーだった。これが大きく変化したのは2001年のXboxの発売だ。2003年にはXbox Liveと共に、オンラインコミュニティの創造が始まった。当時はどのようなコミュニティが形成されるのか、はっきりわかっていなかったが、今ではXbox Liveのおかげで、ユーザーと開発者の距離がぐっと縮まったとした。スペンサー氏によると、「ゲーマーがゲームにコミットするのと同じように、我々もゲームにコミットしていく」という。

スペンサー氏が例に挙げたのが、日本でも通称「痛車」ムーブメントが巻き起こったドライブゲーム「Forza2」だ。ユーザーがペイントしたカスタムカーが、ebayなどのオークションサイトで現金で売買されている例を示しながら、「Forza2」がゲームを離れたところで生まれたコミュニティの優れた成功例になったと述べた。マイクロソフトとして、こうしたリアルマネートレードを奨励しているわけではなく、事前にまったく予想していなかったという。ただしこうした事例は一度成功すると、コミュニティの力で雪だるま式にタイトルの価値を拡大させていくとした。

その上で、これからは単にゲームを作って売るだけではなく、ユーザーにゲームをカスタマイズして、自分なりのコンテンツを作り出す自由を提供することが重要だと述べた。ユーザーがコンテンツを作ってコミュニケーションをはかるということは、ユーザーにとってはXbox360やゲームソフトを買い、ある程度の時間を投資することを意味する。つまりゲームを開発することは、ユーザーがゲームに対して「資産」を投資するかわりに、コミュニティの一員になれる環境と機会を用意するということでもある。こうした意識を開発側も持つことが重要だと指摘した。

また、こうしたユーザーはコンテンツを作り出すだけでなく、ゲームそのものの熱烈なファンになってくれ、続編を買ってくれる可能性が高まる。つまりユーザー・クリエイテッド・コンテンツが可能な環境は、コミュニティの育成だけでなく、フランチャイズをより強固な物にもしてくれる。このようなフランチャイズに与える影響を、ビジネス面から検討することも重要で、これが今はまだ欠けている視点だとした。そして最後に「ゲームを作ることは、コミュニティを作ることだ」とまとめた。

続いてアンサンブルスタジオのシニアゲームデザイナー、ブルース・シェリーが登壇した。シェリー氏は自身が第一作から開発に携わった、同社の看板ゲーム「エイジ オブ エンパイア」(AOE)シリーズを振り返りながら、人気シリーズの成長の過程について解説した。

アンサンブルスタジオ ブルース・シェリー氏


アンサンブルスタジオは1995年にトニー・グッドマン氏が起業したゲーム開発会社で、シェリー氏はその右腕となって創立に携わった。すぐに「AOE」シリーズの原型となるRTSのプロトタイプを開発し、1996年にマイクロソフトと契約。1997年に第一作となる『エイジ オブ エンパイア』を発売し、大ヒットを納めた。その後、現在に至るまでPC、コンソール機、携帯ゲーム機など数多くのプラットフォームでシリーズを展開しており、現在までに2000万本以上のセールスを記録している。本年冬には最新作『エイジ オブ エンパイアIII:アジアの覇王』の発売が予定されている。

シェリー氏は成功の要因として「ゲームの品質」「幅広い層にアピール」「優れた価値を提供」「強力なパブリッシャー」という4点を上げた。

「ゲームの品質」についてはRTSとしての高い評価が裏付けているだろう。「幅広い層にアピール」では、「歴史」という題材や、暗い世界観が多いゲームの中で、常に太陽が降り注ぐ世界を探検していくという、明るく健全なイメージを上げた。実際にカジュアルゲーマーからハードコアユーザーまで、世界中の市場で、老弱男女の幅広い層に受け入れられているという。「優れた価値」については、シングルプレイによるキャンペーンモードから、オンライン対戦まで数多くのモードがあり、マップがランダムに生成されるなど再挑戦性も高いこと。「強力なパブリッシャー」では、マイクロソフトが大作ソフトの開発や発売、ローカライズに優れた経験を持っていることや、Direct Xなどの技術サポートをすぐに受けられることを述べた。アンサンブルスタジオは2001年にマイクロソフトによって買収され、子会社化しているが、両者の関係は非常に良好だという。

(左)新氏とスペンサー氏のQ&Aセッション(右)「Forza2」コミュニティの中心となっている公式サイト


続いてシェリー氏は最新作『エイジ オブ エンパイアIII:アジアの覇王』について、デモプレイを交えながら解説した。同作は「AOEIII」の2つ目の拡張キットで、日本や中国・インドなどの国々でプレイできる。こうした国々がヨーロッパ世界を発見するという、今までとは逆の視点で作られているのが特徴だ。ただし本作はアンサンブルスタジオではなく、ビッグヒュージゲームズとの共同開発となっている。これはアンサンブルスタジオが現在進めている、Haloを題材にしたRTS『Halo Wars』(2008年発売予定)に集中するためだという。

(左)エイジ オブ エンパイアIII:アジアの覇王(2007年冬発売予定)(右)Halo Wars(2008年発売予定)


シェリー氏は、これまでコンソール向けのRTSで大ヒットしたものはないと前置きし、『Halo Wars』では、新しいコントロールのスキームを持ち込むことが最も重要だと述べた。実際に2002年に発売された「AOE」シリーズの一作『エイジ オブ ミソロジー』をXboxのコントローラーで遊べるか、最初にテストをしたところ、プログラマーからマウスとキーボードよりもコントローラーの方がうまくコントロールできたと報告があったため、開発に着手したという。詳細については拙稿によるE3レポートを参照して欲しい。

「AOE」シリーズは、基本となるゲームデザインやコンセプトは共通のまま、背景となる時代や世界を変更したり、2Dから3Dにゲームシステムを変更するなどして、徐々にフランチャイズを強固なものにしてきた。これが『Halo Wars』は、PCからコンソールへの移行と、人気ゲームのキャラクターゲームという、2つのハードルに挑むことになる。ただし、その根底に流れているのは、高い品質を保ち続け、ユーザーを裏切らない姿勢だ。これがコミュニティ拡大の最も基本となる点であることは言うまでもないだろう。

エイジ オブ エンパイア(1997)、エイジ オブ エンパイアII:エイジ オブ キング(1999)、エイジ オブ ミソロジー(2002)エイジ オブ エンパイアIII(2005)



最後に登壇したのは、バンジーで『Halo3』のエグゼクティブプロデューサーを勤めるジョンティ・バーンズ氏。バーンズ氏は「Halo」シリーズとコミュニティの関係について、シリーズの流れを俯瞰しながら、『Halo3』で新たに追加された「シアター」モードについて、デモを交えながら解説した。

バンジー ジョンティ・バーンズ氏


「Halo」シリーズは、これまで全世界で1480万以上のリリースを記録した、Xboxの「顔」とも言えるFPSだ。特筆すべきは『Halo3』の発売を目前に控えた今もなお、30万人以上のユーザーがオンライン対戦を楽しんでいることで、強固なコミュニティが形成されている点だ。ただし初代「Halo」はオフラインのみで、Xbox LIVEでオンライン対戦が可能になったのは「2」から。そして、このオンライン機能がコミュニティ育成と大きな関係があるのは、言うまでもないだろう。

バーンズ氏は「Halo」シリーズを、ある種の社会性をもった「ソーシャルゲーム」だと述べ、その定義として「みんなでカラオケを楽しむような要素と、競技性が融合したようなもの」という考えを示した。そして今後も、このソーシャルゲームとしてのプレイヤー体験を中心にユーザーに提供していくと述べた。

実際に『Halo3』では「2」以上にオンライン機能が強化されている。それが「パーティシステム」「カスタムゲーム」「シアター」「キャンペーン」「フォージ」だ。

「パーティシステム」とは、オンライン対戦におけるマッチメイク機能だ。できるだけ簡単に、自分と同じレベルのプレイヤーをマッチメイクできることが重要だとした。「カスタムゲーム」とは、ゲームの諸要素を調整することで、さまざまな条件で対戦を楽しめる機能のこと。もっとも、これらは「2」でもある程度、実装されていたものだ。

一方『Halo3』の大きな特徴となるのが「シアター」以下の機能となる。「シアター」とはゲームのリプレイムービーをプレイ後に見たり、ムービーデータを共有できる機能のこと。もっとも、このデータは「動画」ではなく、一種のリアルタイムデモなため、マップ上の任意の地点にカメラを移動したり、一時停止してカメラの位置を自由に動かすなどの楽しみができる。「キャンペーン」は、Xbox LIVEなどを通して、最大4人まで協力プレイで楽しめるモード。「フォージ」はオンライン上で最大8名まで協力してカスタムマップなどを作り、シェアする機能だ。

『Halo3』のシアターモード


これらはユーザーがゲームを純粋に楽しむところから、ユーザー・クリエイテッド・コンテンツの創造にいたるまで、幅広いレンジで参加性を高めるツールとなる。中でも「シアター」機能は、ゲームの素材などを用いて作るユーザー制作の映画「マシネマ」の制作にも大きく役立つと予想される。「Halo」シリーズのプレイ動画をユーザーが再編集し、ネット上で公開して大ヒットしたコンテンツとしては「Red vs. Blue」が有名だ。講演中ではこうした行為の正当性について言明は避けられたが、制作側としても、かなり好意を持って受け止めているふしが感じられた。

バーンズ氏はコミュニティサイトとの関係構築がフランチャイズの発展に非常に重要だと述べ、今回来日したのも、日本のユーザーコミュニティと関係を作りたいからだとコメント。こうしたコミュニティから刺激を受けることは、続編制作時のヒントにもなるとし、「コミュニティがゲーム内容を決める」という考え方すら示した。

カンファレンスの最後には、新氏とスペンサー氏の間で簡単なQ&Aも設けられた。スペンサー氏は、個々のゲームタイトルに関するコミュニティ関連の具体的な仕様は、マイクロソフト・ゲームスタジオではなく、開発スタジオの個々のクリエイターが決定していると述べ、何らかの方程式に当てはめるべきではないとした。コミュニティによって不適切なコンテンツが生まれてしまう問題については、ゲームソフトもWORDなどと同じくツールの一つにすぎないとコメント。「Red vs.Blue」のようなコンテンツが誕生したのは、マイクロソフトにも想像できなかったと述べた。その上でユーザー保護の観点や、オリジナルのゲームだけを楽しみたいユーザーのために、しっかりとした「壁」を作ることが重要だとした。

また「Forza2」で日本ユーザーが作り出したペイントカーが多数登場したことについては、日本先行発売のタイトルだったため、欧米のユーザーに対する良い宣伝材料にもなったと述べ、「非常にラッキーで、まったく期待していなかった。日本のユーザーに改めてお礼を言いたい」と述べた。
《小野憲史》
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